目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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サラマンダー

 

洞窟の中、俺達は黙々と歩く。そこで、いきなりリーファが立ち止まった。

 

「メッセージ入ってた」

 

「誰から?」

 

と、キリトが聞く。

 

「レコン」

 

「見なくていいのか?」

 

「いいわよ。どーせ碌なことじゃないし」

 

そう言ってメッセージを切るリーファ。レンコン可哀想…。すると、キリトが思いついたように言った。

 

「なぁ、ここってモンスター出ないのか?」

 

キリトが聞くが、リーファは首を横に振る。

 

「出るには出るよ。オーク型の変な奴」

 

「でもそのオーク型の奴よりも先に人間に出会いそうだぜ」

 

俺の声に二人は反応する。ていうかキリトは気付いてなきゃおかしいだろ。

 

「後ろから人の気配がする。人数は12人くらい」

 

「なんでもっと早く言わないの?」

 

「キリトは気付いてただろ」

 

「まぁね…」

 

「なんで言わないの!?」

 

「だってせっかくだし、戦いたいじゃん?」

 

「…ったく、戦闘バカだなお兄ちゃ…キリトくんは。罰として戦闘はさせないからね」

 

「そ、そりゃないよ!」

 

「それもそうだな。俺も戦いたくない。正確に言うなら働きたくない」

 

「あんた…まぁ、いいわ。隠れてやり過ごすよ」

 

「隠れるって、岩陰にか?」

 

キリトがもっともの質問をする。リーファはその質問にウィンクして答える。

 

「そこは任せてね」

 

で、俺とキリトとリーファは岩陰に入る。なんだよやっぱり岩陰じゃねぇか。思ってたらリーファはなんだかよくわからない呪文を唱えた。その瞬間、透明の壁みたいなのが俺達の前に出てくる。

 

「音とかは筒抜けだから、話す時は最低限の音量でね」

 

へぇ、これが魔法か。始めて見た。でも、でもなんか、

 

「なぁ、あそこのコウモリには見えてるみたいなんだが…」

 

「「へ?」」

 

俺の指差先には、目が赤く光ったコウモリがこっちをみている。やべっ、必殺技取られる。

 

「…いつから気づいてたの?」

 

「最初にローテアウトした時」

 

「なんで早く言わないのよ!」

 

「ばっか!声でけぇよ!」

 

「お前のが声でけぇよ!」

 

「こうなったら声なんて関係ないよ!行くわよ!」

 

リーファがまたわけ分かんない呪文を唱え、そのコウモリを殺すと、走り出した。

 

「お前!動物をそんなバンバン殺すな!」

 

「レベル上げのためにモンスター殺してた奴がなに言ってんの?ていうか、あれは追跡魔法!ぶっちゃけ動く監視カメラみたいなもんよ!」

 

「マジか…なんか悪い」

 

「しかもあれは火属性の使いなの!つまり…」

 

「サラダマンか!」

 

「サラマンダーだ!」

 

だが、このまま逃げてもいずれ見付かるだろう。なら、

 

「お前ら先に行け。俺があいつら食い止める」

 

「「え?」」

 

俺が立ち止まると、二人も立ち止まり、振り返る。

 

「ここで全滅するのは最悪だ。なんせ一ヶ月以内にクリアしなきゃいけないんだから。ならここで誰か止まるしかないだろ」

 

「でも…」

 

「安心しろ。あとから必ず追い付く」

 

俺の言葉に二人は頷き、先に行った。さて、これからは俺の仕事だ。待つこと3分くらい。ようやくサラマンダー共のお出ましだ。

 

「ここから先へは行かせねぇぜ」

 

俺の声に、サラマンダー達は魔法を唱える。

 

「やめときな。俺には秘密兵器がある」

 

その瞬間、ピタッと静かになるサラマンダー達。

 

「喰らえ!アバダケダブラァッ!」

 

 

________________

 

 

※ここだけ、リーファ視点になります。

 

私達はあいつを置いて先へ進んだ。後ろから「アバダケダブラァッ!」と、声が聞こえたが聞こえなかったことにしよう。そして、ようやく街に繋がる橋が見えた。

 

「あそこがゴールだよ!」

 

「おう!」

 

橋を渡り、半分くらいまで来た時だ。目の前に壁が出てきた。

 

「んなっ!?」

 

「こんなものっ!」

 

キリトくんが壁に斬りかかるがそれは無理だ。案の定、跳ね返ってくる。

 

「術者を倒さない限り消えないんだよ」

 

「水の中に飛び込むってのは?」

 

「それも無理、ウンディーネの援護なしじゃ自殺行為だよ。あ、あいつウンディーネだったわね…」

 

「戦うしかないってわけか…」

 

後ろから迫り来るサラマンダー軍団。

 

「にしてもおかしい、こんなに早くエイトマンがやられるわけない」

 

「でも、現にサラマンダーは近づいてきてるよ」

 

「……」

 

で、私達とサラマンダーは向かい合う。

 

「あなた達!さっきの奴はどうしたの!?」

 

私の問いにサラマンダーの一人があっけらかんと答える。

 

「さっきの奴…?あぁ、ウォルデモート(笑)なら1人に付き500ユルドで通してくれるって言うから通してくれたよ」

 

あんのバカぁぁぁっっ!なにカッコつけたこと言って逃げてんのよ!だが今更あいつを憎んでも仕方ない。こいつらをどうにかしないと。すると、キリトくんが前に出た。

 

「君の腕を信用してないわけじゃないんだけど…ここはサポートに回ってくれないか?」

 

「え?」

 

「その方が俺が戦いやすいんだ。ようするに回復役に徹してくれないか?」

 

あたしは仕方なく承諾。キリトくんはあたしの返事に満足したのか、前の連中に飛び込んだ。

 

「はぁっ!」

 

だが、サラマンダーの陣形は前列に盾装備を並べている。つまり、キリトくんの攻撃は跳ね返された。そして、盾の後ろから飛んでくる赤い光球。直撃して後ろに吹っ飛ぶキリトくん。

これは…対キリトくんの陣形だ!

 

「こんのぉっ!」

 

だが、キリトくんは諦めない。何度弾かれても向かっていく。あたしはそんなキリトくんを見ていられなくなった。

 

「もういいよキリトくん!今死んだってまたスイルベーンから何時間か飛んでくればいいだけじゃない!諦めようよ」

 

「嫌だ!」

 

ハッキリとした拒絶に私が怯んでしまった。キリトくんは続ける。

 

「俺が生きている間は、パーティメンバーを殺させやしない!それだけは絶対嫌だ!」

 

そして、キリトくんはまた立ち上がり、剣を構える。そして、

 

「うあああああっ‼︎‼︎‼︎」

 

吠えて、もう一回突っ込む。そして、盾と盾の間に剣を差し込み、無理矢理にでも通ろうとする。

 

「な、なんだこいつ…!」

 

だが、後ろからまた赤い光が出る。

 

「キリトくん!」

 

あたしは思わず駆け出した。キリトくんを守るために。だが、その光が急に消える。なぜ?そう思って魔術部隊の後ろを見ると、私達のことを金で売ったはずの男、エイトマンが立っていた。

 

「お前!なんのつもりだ!500ユルド全員払ったはずだろ!」

 

サラマンダー達があいつに怒鳴る。だが、あいつはまったく動じた様子は見せず、こう答えた。

 

「だから通したじゃん」

 

「……っ!」

 

「「「う、うわあ…」」」

 

あたしとキリトくんどころかユイちゃんもドン引きしていた。だが、これで形勢逆転したことは変わりない。ユイちゃんがキリトくんに言った。

 

「パパ!今です!」

 

その声と共にキリトくんが呪文を唱える。これって、幻属性の?で、目の前に出てきたのはなんかでっかい怪物そのもの。あたしは思わず息を飲んだ。

 

「キリトくん、なの…?」

 

で、しばらくキリト(怪物)の無双状態。途中で「馬鹿、体制わ崩すな!奴は見た目とリーチだけだ!」なんて声が聞こえたけど、バカは君だと思う。そして、最後の一人を睨み付ける。

 

「あ、キリトくん!そいつ生かしといて!」

 

言うと、おとなしくサラマンダーを地面に置く。ちゃんと理性はあるようでホッとした。と、思ったら今度はあいつを掴んだ。で、「ガウッ?」と私に振り向く。

 

「あーそれはやっちゃってもいいんじゃない?」

 

「いやなんでだよぉっ!助けてやったろ!」

 

「でも一人だけちゃっかり金儲けしてたよね?」

 

「悪かった!悪かったからさっさと下ろしてくれ!」

 

渋々下ろすキリトくん。すると、ようやくキリトくんは元の姿に戻った。

 

 

__________________

 

 

※こっから八幡視点に戻ります。

 

で、捉えた奴で尋問タイム。最初はリーファが首元に剣を近付けて脅そうとしたのだが、キリトが全アイテムと黙秘、どっちがいい?と、友好的に取引して今に至る。

話によれば、俺達がサラマンダーのなんらかの邪魔になるってんで抹殺しに来たらしい。その「なんらか」というのまでは、そのサラマンダーも知らなかったらしく、結局肝心なところは分からなかった。

で、キリトは約束通り装備をそいつに譲り、そいつはガッツポーズしながら帰って行った。

 

「甘いぞキリト。俺なら情報を得た上で約束破って向こうが反逆してきたら抹殺してさらに装備を掻っ攫ってたな」

 

と、言った俺の横に剣が二本。二人とも大分ご立腹のようで。

 

「お前さ、なに裏切ってくれてるわけ?しかも金取って」

 

「あんた、生きてて恥ずかしくないの?」

 

「それに、あれじゃ詐欺ですよパパ」

 

「い、いやいやいや!明らかに助けに来たじゃん!よく言うだろ!?人の弱味っていうのは勝てると油断した時だって!だから俺は一度勝ちを譲ったように思わせただけだよ。金はあれだ。副産物だ」

 

「ならその金、俺達にも当然くれるんだよな?」

 

「いや、それはないわー」

 

「は?」

 

「平等にわけよっか」

 

結局俺の手に入れた金は三分の一になってしまった。で、俺達はようやく街に入る。

 

「ここで武器買っておきたいな。初期装備じゃ心元ないし」

 

「それなら、武器屋さんに行こっか。多分、すぐそこにあると思うよ」

 

キリトの提案で武器屋へ向かった。

 

「そういえば、さっきのメッセージはいいのか?」

 

「あ、忘れてた。ごめん、ちょっと落ちて来る」

 

「あいよ。俺達は武器選んどくから」

 

「またね」

 

リーファは眠ってしまう。で、俺達は武器を選ぶ。

 

「これとか強そうじゃね?」

 

「中2感丸出しだな」

 

「そう言うなよ。ならエイトマンはどれを選ぶんだ?」

 

「これ」

 

「いやそれも中々に…」

 

「うるせぇ。自分の好きなもん買えばいいんだよ」

 

で、それぞれ購入。その時、急にリーファが覚醒した。

 

「ごめん二人とも!ちょっと急用が入っちゃった!」

 

「トイレか?」

 

その瞬間、パァンッ!と拳銃並みに鋭い音が響いた。

 

「ひどい…」

 

「さっきのはパパ二号が悪いです!」

 

そんな俺を捨て置いてリーファは続ける。

 

「シグルドが私達…いやシルフ全般を売ったらしいの!」

 

「なんだと?」

 

と、キリトが反応。話をようやくすると、ケットシーとシルフの同盟をシグルドがサラマンダーに売り、奇襲を掛けるつもりらしい。

 

「だからね、二人とも」

 

リーファは説明した後に続ける。

 

「これはシルフの問題だから君たちが付き合ってくれる理由はないよ。この洞窟を抜ければもうすぐアルンだし、多分会談場に行ったら生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しで何時間も無駄になるだろうね。ううん、もっと言えば…」

 

そこで言葉を切るリーファ。俺もキリトも黙って聞く。

 

「世界樹に行きたいっていう目的のためにはサラマンダーに協力するのが最善かもしれない。サラマンダーがこの作戦に成功すれば、充分以上の資金を得て、万全の状態で世界樹攻略に挑むと思う。だから、今ここであたしを斬っても、文句は言わないわ。あんたには言うけど…」

 

おっと、最後の一言で斬りたくなったよ?斬るどころか八つ裂きにしたいとすら思ったよ?だが、キリトはリーファを慰めるように口を開く。

 

「バカだなスグは」

 

「え?」

 

「こーいう時くらい、いやこーいう時こそ俺を頼れよ」

 

「キリトくん…?」

 

「なんだかんだでこの世界ではスグに助けられてばっかだからな。これくらいは恩返しさせてくれ」

 

「…でも、世界樹はいいの?上に、アスナさんがいるんじゃ…」

 

「大丈夫、まだ一ヶ月もあるんだ。少しくらい遅れたって…」

 

「ダメだな」

 

俺はバッサリ断ち切った。理由を問い詰めるようにキリトは俺を睨む。

 

「お前が挑もうとしてるのはこの世界のゲームマスターだ。万が一、お前の動きに気付いて大幅アップデートと言って一ヶ月サービス中止にしたら手も足も出ないぞ」

 

「それは…」

 

「それに、この先なにがあるか分からんし、結婚式を早めて来るかもしれない。つまり、お前がここで立ち止まる選択肢はないと思え」

 

「だからって…」

 

キリトは俺の胸ぐらをつかむ。

 

「だからってスグを見捨てろって言うのかお前は!」

 

俺を睨むキリトは確実に殺意を放っている。だが、俺はそれを冷静に返した。

 

「だから、代わりに俺が行く」

 

「え?」

 

呆気に取られたような顔のキリト。

 

「俺が会談場に行くって言ってんだ。それなら俺が負けたとしてもお前は先に進める」

 

「お前…」

 

「こういう時のための俺だろ」

 

「…すまん」

 

決定だな。

 

「じゃ、先に行ってろよ。俺達はすぐに追い付くから」

 

「おう!」

 

「またね、キリトくん!さっき呼び方スグに戻ってたよ」

 

リーファに言われ、顔が真っ赤になるキリト。それを捨て置いて俺とリーファは会談場へ向かった。

 

 


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