目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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プロローグ2

 

 

現実世界に戻って二ヶ月経った。俺はソファーでボーッとテレビを見ている。横では小町がお菓子をポリポリ齧りながら漫画を読んでいた。

 

「お兄ちゃーん、ジュース飲みたーい」

 

「お兄ちゃんは執事じゃないんだけどな」

 

「いいじゃん。動くの面倒なんだよー」

 

「それは俺も同じだ。ったく…」

 

いつからこんな顎で使われるようになったのか…。二年前から宿題手伝ったり自由研究代わりにやらされたりと使われてたか。大して変わらないな、うん。と、無理矢理納得した。

 

「しかし、よくがんばったなお前。あのアホさ加減で総武高校に入れたなんてお兄ちゃんちょっと驚いてるぞ」

 

「まぁねー。なんだかんだで小町、要領いいし」

 

「自分で言うな」

 

「お兄ちゃんと同じ高校に行きたいという愛と欲望の力だよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

 

「それ、久々に聞いたな」

 

今、それ聞くとやけに可愛く感じる。二年前はすっごくウザかったし台無しにするワードだったのになぁ…と、染み染み思ってると、小町が飲み物を取りに行った俺の横に立って、急に抱きついて来た。

 

「なんだよ…」

 

「もうどこにも行かないでよお兄ちゃん…こっちだって心配するの大変なんだから」

 

「心配するの大変ってどういうことだよ」

 

「いいの!結衣さんや雪乃さんだって週一くらいのペースでお見舞いに来てくれてたんだから、ちゃんとお礼言うんだよ?」

 

「お前は俺の母ちゃんかよ。ていうか雪ノ下も来てたのか?」

 

「リハビリの時に何度か話してたじゃん」

 

そーいやそうだったな…。しかも、俺と最初に顔合わせた時泣いてたし、そんなに俺に生きてて欲しくなかったのか…それちょっとひどくない?いや、流石にそこまで鬼じゃないよな雪ノ下さんは…鬼じゃないよね?

なんて考えてると、インターホンが鳴った。

 

「小町、悪いけど出てけれー」

 

「はーい」

 

玄関にとててと向かう小町。俺は小町の頼んだジュースを机に置き、ソファーに座った。

 

「お兄ちゃーん!お客さーん!」

 

んだよ、座ったばっかなのに勘弁しろよ。これで材木座だったら腹パン決める自信がある。

玄関に向かうと、二ヶ月ぶりに見た顔が立っていた。

 

「キリト…」

 

反射的に声が出た。向こうは二カッと笑うと手を振って言った。

 

「久し振り」

 

しばらく、なにを言えばいいのか分からなくなり、アタマがこんがらがってると、小町が出てきた。

 

「どーもどーも。いつも兄がお世話になってます。妹の小町です。こんな所で立ち話もあれですから、上がってください」

 

「お前はサラリーマンかよ」

 

「あ、あはは。いつもっていうか、二年間だけどね」

 

小町の対応に戸惑いながらも、キリト…いや桐ヶ谷か。桐ヶ谷はうちに上がってきた。とりあえず、ソファーに座らす。

 

「で、何の用だ桐ヶ谷」

 

「名前、覚えててくれたのか」

 

「ぼっちは人より記憶力がいいんだよ」

 

言うと、桐ヶ谷は苦笑する。

 

「あのさ、ちょっと外出ないか?あまり大きな声で言える話じゃないんだ」

 

「…分かった。家の前で待っててくれ」

 

それだけ言うと、桐ヶ谷は家から出る。そんな俺の肩を小町がチョンチョンとつつく。

 

「なんだよ」

 

「どういう関係?さっきのイケメンさんと」

 

「SAO時代の戦友…だな」

 

「お兄ちゃんに…友達…」

 

「失礼な反応やめろ。じゃ、ちょっと出てくるから」

 

で、俺は桐ヶ谷と外に出た。

 

 

 

________________

 

 

サイゼ。俺と桐ヶ谷はドリンクバーだけ注文し、話を始めた。

 

「で、何の用だ」

 

「SAO生還者の中でまだ意識が戻ってない人がいるのは知ってるか?」

 

「…初耳だな」

 

「その中に、アスナが含まれてるんだ」

 

「……!」

 

「まだ戻ってきてない事情は分かっていない。だけど、これを見てくれ」

 

スッと、パソコンの画面を見せる桐ヶ谷。そこには鳥籠のような物が映っていた。

 

「…これがなんだ?」

 

「よく見ろ」

 

言われて俺は目を凝らす。そこには、茶髪の女の子がいた。

 

「おい、お前これ…」

 

「間違いなく、アスナだ」

 

「……」

 

思わず黙り込んでしまう。おいおいマジかよ…。

 

「このゲームはアルヴヘイムオンライン。このゲームでは魔法が使えて、飛べる」

 

「で、お前はなにがしたいんだよ」

 

俺が聞くと、桐ヶ谷は真っ直ぐな目で俺を見た。

 

「助けたいんだよ。アスナを」

 

…マジかこいつ。

 

「このゲームがクリアされたのに帰って来れないなんて、こんなに酷いことはないだろ。それも、俺達と一緒に攻略した仲間だ」

 

「……」

 

なるほど、一理あるな。でもそれはすべて建前でしかない。相変わらず俺の言葉の裏を読むスキルは完璧である。

 

「本音はなんだ?」

 

俺が聞くと、桐ヶ谷は驚いたような目をしたが、すぐに冷静な顔に戻った。

 

「好きなんだよ。俺はアスナが」

 

「……は?」

 

今なんつったこいつ。

 

「でも、アスナはもうすぐとあるお偉いさんと結婚するんだ」

 

「あらら」

 

「そのお偉いさんがALOのゲームマスターなんだ。つまり、さっきのアスナは監禁されているかもしれない」

 

「だったら警察に言えよ」

 

「まだ確定じゃない。それに、子供の俺が言っても聞いてくれないだろ」

 

それもそうか。

 

「つまり、アスナをゲームから助けたいから手伝え、と?」

 

「…そうだ」

 

なるほどな。

 

「そういうことなら仕方ない。だが、一つだけ聞かせろ」

 

「……なんだ?」

 

「お前、なんで俺ん家知ってるわけ?」

 

「エギルに教えてもらったんだ」

 

これって、犯罪じゃないですかねー。

 

 

 

 


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