目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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PK

 

「訓練?」

 

次の日、ヒースクリフに呼び出された俺に告げられたのはその一言だった。しかも、ヒースクリフに呼び出されたのに目の前にいるのはゴドフリーとかいうおっさん。

 

「そうだ。君の地位を決める大切なことでもある。ま、気楽にやれ」

 

「は、はぁ…」

 

で、俺は隣にいる男に目を向ける。

 

「あぁ、君とクラディールとは色々あったそうだが、まぁ水に流そうではないか」

 

「は、はぁ…」

 

無理無理無理だって…明らかに目が死んでるもん…。だが、そのデス☆フェイスとは裏腹に、別の台詞が出てきた。

 

「先日は、ご迷惑をおかけしまして…二度と無礼な真似はしませんので、許していただきたい…」

 

「あ、おう…」

 

謝られた。でも、これは嘘の謝りだ。訳してみれば「この前はよくもやってくれたな。今回の訓練で無事に帰れると思うなよ」ってとこか。まぁこんなのに負けるほど俺は弱くない。警戒していれば問題はないだろう。

 

「それと、今回の訓練ではアスナ様も付いてくる」

 

「は、はぁ!?あいつ、一時的に辞めたんじゃ…」

 

「自分の意思で来たらしい。君の様子を見たいとかで」

 

あの野郎…余計なことを…。しかも、これでクラディールの復讐のメンバーが揃ってしまった。これはホントに用心しないとな。そこで、アスナが来た。

 

「ごめんなさい!遅れました」

 

「いやいや、待ってませんよ!それでは…っと、その前に結晶アイテムはすべて預からせてもらう」

 

「え、や、なんで?」

 

「危機対処能力を見たいからな。なに、本当にピンチになった時のみに配布する」

 

で、渋々俺達は渡す。

 

「うむ、では出発!」

 

そして、俺達は出発した。

 

「今日はよろしくねエイトくん」

 

「お、おう」

 

なんでこんな上機嫌なんだよ…。ていうか、

 

「キリトはいいのかよ」

 

「はぁ…いいの!ほら行くよ!」

 

なんなんだよ…まぁ、いっか。それよりもクラディールに集中しよう。

 

 

_____________

 

 

 

歩き始めて小一時間、モンスターを倒しながら進んでいたら、急にゴドフリーが止まった。

 

「よし、一時休憩!では、食料を配布する!」

 

で、配られたのは水の瓶と固焼きパン。はぁ、弁当持ってくればよかった。パンを齧ったした瞬間、ニヤニヤしているクラディールが目に入った。

あ、やべっ。

 

「あ、アスナ!それを食うな!」

 

「へ?」

 

だが、すでに齧ってしまっている。

 

「ゴドフリー!早く結晶アイテムを寄越せ!」

 

「ぬ、ぬぅ……」

 

だが遅かった。すでにゴドフリーには麻痺が回っている。俺にまで回って来た。だが、俺の防具には多少の麻痺耐性がある。動けなくなるほどじゃない。

 

「きゃあっ!」

 

アスナも倒れたか。そこで、笑い声が響く。

 

「ひゃはははははっ!」

 

「どういうことだ…この水を用意したのは…クラディール…お前か…!」

 

言いながらゴドフリーは結晶に手を伸ばすが、クラディールがその袋を取り上げ、全てのアイテムを取り上げてしまった。マジかよ…。

 

「く、クラディール…なんのつもりだ…!これも、訓練なのか……」

 

「バァーーーカッ!」

 

ゴドフリーにクラディールが剣を構える。

 

「死ねやカス」

 

「いや…っ!」

 

「このっ!」

 

俺がグラディールに体当たりし、二人で倒れる。

 

「テメェクソガキ!なんで動ける!」

 

「残念だったな…俺の防具には麻痺耐性が着いている。まったく動けないわけじゃない」

 

「はぁっ!?フラフラじゃねぇか!そんなんで勝てるわけねぇだろ!」

 

クラディールに蹴られ、俺はぶっ飛ばされる。そして、アスナの横まで転がって来た。だが、目的は達成している。

 

「エイトくん!大丈夫…!?」

 

「アスナ、これ飲め」

 

そっと、転移結晶を渡す。

 

「これ…」

 

「奴は袋を取り上げただけでアイテムストレージにしまってはなかった。これでキリト読んで来い。俺が時間を稼ぐ」

 

「でも、エイトくんは…」

 

「安心しろ。誰も殺させやしないし、死ぬつもりもない」

 

「うん」

 

そのままアスナは行った。よし、これで奴の目的は達成出来ない。

 

「おい死神フェイス」

 

「あぁっ!?」

 

俺に呼ばれてクラディールは振り返る。俺のこれからの仕事はキリトがくるまでゴドフリーを守ること。ならまずはこっちに気を引かないといけない。

 

「なんだテメェは、ぶっ殺されてーのか?」

 

「殺してみろよ。てめぇみてぇな平社員は麻痺有りのハンデで十分だ」

 

「上等だよコラ。ただし、楽には死ねねぇぞ…」

 

バーカ、その時点で時間稼ぎされてることに気づかねぇのかお前は。あとはどれだけこの状態で戦えるかってとこだな。と、思ってたら目の前にクラディールが迫っていた。

 

「なに…!?」

 

「なにぼーっとしてんだァ?」

 

そのまま肩を斬られて蹴られる。

 

「ぐあぁっ!」

 

「てめぇ状況分かってんのか?アァッ!?」

 

「っのやろうっ!」

 

無理して体を引きづり、斬りかかる。だが、顎に膝蹴りされ、腹を刺される。

 

「くっそ…」

 

キリトはまだか…。

 

「だァからさァ、今のお前に俺を倒せるわけねぇだろ。あんま暴れんのやめてくんない?」

 

「バーカ。最後を美しく飾り付ける暇があるなら、最後まで美しく生きるんだよ俺は」

 

「あーそーいうのいらねーから。だからもう死ねや」

 

おいおい、楽に殺さねぇんじゃねぇのかよ…。と、思った矢先、足に剣を刺された。

 

「ぐっ!」

 

「はっ、ぬるぬる避けられるのも面倒だからなァ。こうした方がいいだろ」

 

「……」

 

詰んだか…。クラディールは俺の前に仁王立ちする。

 

「じゃあな、ガキ」

 

俺は静かに目を閉じた。

その瞬間、キリトがクラディールの前に現れた。

 

「あ?」

 

「キリト…」

 

「俺の仲間に、手を出すな」

 

そして、クラディールの顔面に突き刺さるように拳がめり込み、ぶっ飛ぶ。

 

「エイトくん!」

 

アスナもかえってきた。遅ぇよ…。

 

「大丈夫!?今、抜いてあげるから!」

 

「悪い、助かった」

 

で、キリトとクラディール。にらみ合うように相対している。

 

「貴様ぁ、どうやってここに…?」

 

「は?お前気付いてなかったのか?アスナが消えてることに」

 

「な、なんだと!?」

 

「クラディール、もう終わりよ。投降しなさい」

 

俺の足の剣を抜いたアスナに言われて、クラディールは最初こそ悔しそうに渋ったが、すぐに吹っ切れた表情を見せた。

 

「分かりました。投降します」

 

で、つかつかとアスナの方へ歩くクラディール。アスナも「え、そ、そう?」みたいな表情でクラディールに手を伸ばす。違う、それは……

 

「罠だ!」

 

「え?」と、振り返るアスナと武器を取り出すクラディール。俺も武器を取り出し、アスナを横に突き飛ばした。

 

「貴様だけでもぉぉぉぉ!道連れにぃぃぃぃぃっっっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「っらぁぁぁぁぁっっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

そして、お互いの剣がお互いを貫通し、二人ともHPゲージか減っていく。が、俺はほんの2mm分くらい残り、クラディールは余りなくゲージが消えた。

 

「この、人殺しが…」

 

その捨て台詞を吐いて、クラディールは消えた。

 

「お前には言われたくねぇよ」

 

それだけ言うと、俺はそのままへたり込んだ。あっぶねー死ぬとこだった。と、思った瞬間、アスナが抱きついて来る。え?ちょっ…え?

 

「ちょっ…アスナ…?」

 

「バカ!私なんて庇ってあなたが死んじゃったらどうするつもりだったの!?」

 

「いや、死んだらどうにも出来ないでしょ」

 

「そういうことじゃない!もうバカバカバカ〜!」

 

「あの、いいからクリスタルくれ。死んじまう…」

 

「ほら」

 

キリトにひょいっと渡されるが、キリトはなぜか不機嫌だ。すいませんね、生き残って。

 

「さんきゅ」

 

「ほらアスナ、さっさと離れろ」

 

「あ、うん…ごめん」

 

で、俺はゴドフリーにクリスタルを飲ませる。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、あぁ。すまない。助かった」

 

「さて、帰りますか…あんたもエイトマンも今日は休んだらどうだ?ヒースクリフには俺が言っとく」

 

「いや、お前血盟騎士団じゃないだろ。アスナも連れてけよ」

 

「アスナもなんか疲れてるっぽいし、俺一人で行くよ」

 

「そうか、悪いな」

 

「いいって、さぁ帰ろうぜ」

 

で、街に戻る。キリトやゴドフリーと別れたあと、俺は帰宅しようとするが、なぜかアスナがついてくる。

 

「なんだよ…」

 

「べ、別に?ただあんなことがあったし、一人じゃ怖いだろうと思って…」

 

「怖がってるのお前だろ」

 

「わ、私は怖くないもん!ただ、その…」

 

「怖いならキリトと一緒にいろ。悪いけど今は一人にしてくれ」

 

それだけ言うと、俺は一旦フィールドに出た。

 

 

______________

 

 

 

フィールドで俺は夜風に当たっていた。

 

「小町ー戸塚ーお兄ちゃん人殺しになっちゃったよー」

 

思わず、そんなことを口走ってしまった。そう、あの時最後に言われた「この、人殺しが…」という声が酷く胸を締め付ける。正当防衛で俺のやったことは法では裁かれないと分かっているのに。

どうしてこうなった。どうして俺がこんな目に合わなければならない。と、今更思うようになった。リアルと仮想世界では余りにも大きく違った。こんな簡単に人を殺せてしまう世界に来てしまったのだ。どんなに消そうとしても消えない罪悪感、そこから涙が出た。そんな俺は酷く無様に見えた。

……はぁ、ったく。

 

「盗み聞きはいい趣味じゃないぞ」

 

そう言うと、こっそりとキリトとアスナが出てくる。

 

「なにやってんだよお前ら。一人にしてくれって言ったはずだが…」

 

「悪い」

 

「ごめんなさい。でも、心配だったから…」

 

こんなところ、見られたくなかったから言ったのによ。でも、こいつらになら言ってもいいかもしれない。

 

「お前らさ、人を殺したことあるか?」

 

「「え?」」

 

いや、今の質問は流石にないか…。

 

「あるよ」

 

「え?」

 

キリトの返答に思わず聞き返してしまった。

 

「少し前にラフィンコフィンのアジトを叩き潰したことあったのは覚えてるか?」

 

「あ、あぁ」

 

あの時は俺の隠蔽が高すぎで誰にも気付かれずにただ後ろから武器破壊をひたすらしてたな。

 

「俺は、その時に2人殺した」

 

と、キリトは答えた。

 

「その日の夜は流石に眠れなかったよ。でも、そいつらのことは考えないようにしたんだ。じゃないと攻略に支障が出るし、俺の仲間だって殺されたりして悲しかったからな」

 

「……そっか」

 

「でも、決してそれが正しいかなんて分からない。俺はその事を今まで忘れて生きて来ちまった。だからホントはよくないことなのかもしれない。なにが正しいかなんて分からないけど、とりあえずそいつらの分まで背負って生きるしかないのかもしれない」

 

「…そうか」

 

そいつらのことを背負って生きる、か…。クラディールなんて背負いたくねぇよ。でも、殺しちまった以上は、そうするしかないかな…。

 

「サンキューキリト」

 

「お前にお礼を言われるなんてな。明日は嵐じゃないか?」

 

「うるせえバカ」

 

「あの、二人とも」

 

そこで今度はアスナが言った。

 

「大丈夫、辛くなったら私が二人を支えるから」

 

言われて、俺もキリトも微笑む。

 

「また明日な、キリト、アスナ」

 

「おう」

 

「またね」

 

そう、ここ二年間で知り合ったこいつらなら信用してみてもいいかもしれない。なんだかんだで助け合ってる中だ。なら、こいつらに支えられるのは悪くないかもしれない。

 

 

 


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