目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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ユニーク

 

ボス部屋を覗くと、酷い現状だった。

床一面に青い炎が吹き上げられている。その中央でこちらに背を向けているのがおそらくボスだろう。

右手には巨大な剣が握られており、なんつーのかな。もうまさにボスって感じ。しかもHPは三割も減ってない。

そいつからもはや統制もあったものではない軍の連中。だが、すでに二人死んでいるみたいで人数が足りない。

 

「なにしてる!早く転移結晶を…!」

 

「使えてたら全員ここにはいねぇだろ。おそらく使えないんだろ」

 

キリトの台詞を俺が遮る。だが、それ以上に危険な状態の奴がいた。アスナだ、体はカタカタ震えている癖に剣を抜こうとしてる。

 

「おいアスナ落ち着け!」

 

「だめぇーーーっ!!」

 

俺が止めようとするがアスナは行ってしまった。続いてキリト、クラインも。仕方ない、軍の連中が何人死のうが知ったことではないが、アスナ、キリトに死なれると攻略に影響が出る。それに、その、なに…。

 

一応、フレンド登録してる奴を死なせたくない。

 

俺は自分の隠蔽を利用して、救助可能な奴からボス部屋から追い出す。で、俺達四人はなんとかボスにダメージを与えるがとても勝てるような奴ではなかった。キリトが着地する。その時、キリトの表情が変わったのを俺は見逃さなかった。それと共に、確信した。

 

「キリト、エクストラスキルを使うつもりか?」

 

それを聞いて驚く表情を見せたが、すぐに元の顔に戻る。

 

「そうだ」

 

「何秒稼げばいい?」

 

「10秒は欲しいな」

 

「任せろ」

 

それだけ言うと、俺は二人の元へ。

 

「クライン、アスナ。今から俺が20秒稼ぐ。だからお前らはここにいろ」

 

「え?」

 

「お前らの仕事は20秒経ったら俺を回収すること。ただし、無理そうなら見捨ててくれて構わない」

 

「ちょっとそれどーいう意味…」

 

「話してる暇はない!」

 

そして、俺はエクストラスキルを使用した。

 

 

「エクストラスキルー予知ー」

 

 

俺はボスの前に一人で立つ。そして、目が光る。ボスが攻撃してくるが、それを俺はぬるりとかわして反撃。が、特に応えた様子はなく、ボスは攻撃してくるが、それもかわして攻撃。周りのやつから見れば大したことはしていないが、この戦いで俺は攻撃に当たることはない。

エクストラスキル予知。相手の動きを先読みして、その上で反撃出来る。向こうがどんな攻撃をしてくるか分かるもんだからまず当たらない。ほぼチートと言えるスキルだが欠点がある。

まず、自分の目の前のことしか見えない。あと20秒しかもたない。で、使い終わると一定時間だけ目が見えなくなる。連続使用は出来ない。欠点だらけじゃねぇか。しかも、一定時間だけ目が見えなくなるってことはこれ、完全にとどめ用だ。だが、今は時間稼ぎのために使っている。つまり、捨て身です。

だが、こうなってしまってはもう遅い。俺が場を繋ぐしかない。

 

「よっと」

 

ボスの攻撃を確実にかわして反撃という流れを繰り返してる時、キリトの声が聞こえた。

 

「エイトマン!準備出来た!下がれ!」

 

「バーカ!ついでにHPも回復しとけよ!」

 

「え?キリトくん、20秒って言ったんじゃ…」

 

「え?10秒って言ったはずだが…あっ!あのバカ!」

 

「あの野郎…少しでもダメージ与えるために…!」

 

気づかれちった。てへぺろ。後で怒られそうだなー。まぁ、後があればの話だが。

と、そろそろ時間か。視界が暗くなって来やがった…。

そして、なにも見えなくなった。やっべ…なにも見えずにとどめ刺されるだけって怖いな…ちょっ、早くやれって…早く…。とか思ってるうちに気絶した。

 

 

______________

 

 

目を覚ますと、ボスがいなくなってた。周りにいるのはキリト、アスナ、クラインとその仲間、そして軍の連中だけだ。

あれ?俺生きてる?

 

「おぉ、目を覚ましたか」

 

クラインの声。そして、キリトとアスナも集まってくる。

 

「大丈夫か?お前、いい感じに戦ってる時に急に気絶したんだぞ」

 

「ボスは?」

 

「割となんなく倒せたよ。誰かさんがなるべくダメージを与えてくれたおかげでな」

 

その台詞には「また自己犠牲しようとしたな」という意味だろう。見るとアスナも俺のことをジト目で見てる。

 

「シリカちゃんに報告ね」

 

「あの、それは勘弁してください」

 

「どうしよっかなー」

 

いたずらっぽくアスナは微笑む。うわあ、面倒臭ぇ、話題をかえよう。

 

「……てか、なんで俺生きてるの?誰が回収してくれたんだ?」

 

「クラインだよ。『一人であそこまで踏ん張った奴を見捨てられるか』ってさ」

 

「そっか…サンキューな」

 

「いいんだよ。それよりキリト!オメエ何だよさっきのは!」

 

クラインがキリトに振り返る。キリトは余り気が引けるのか「言わなきゃダメか?」と、聞き返す。だが、クラインは逃がさない。

 

「ったりめぇだ!見たことねぇぞあんなの!」

 

俺は隣にいたアスナの肩をちょんちょんと叩く。

 

「さっきのってなに?」

 

「そっか、エイトくんは見てなかったもんね。キリトくんが剣を二本持ってボス相手に一人で戦って倒したの。まぁ一本で戦ってノーダメージで帰ってくる人もいたけど」

 

「…あの、怒ってんの?」

 

「別に?」

 

いや明らかに怒ってるでしょ…。こりゃ、後が怖ぇな。

 

「別に怒ってないけど、心配はしたんだからね」

 

「そうですか…」

 

なんて話してる間にキリトは説明しいた。

 

「エクストラスキルだよ。二刀流」

 

「しゅ、出現条件は?」

 

「解ってりゃ公開してる」

 

周りは驚いていたが、俺は何と無く分かっていた。てか昼飯の時の会話で検討はついていた。キリトがリズに頼んだのは自分の剣と同じくらいの性能と言っていた。その時はスペアと誤魔化していたが、昼飯の時のアスナの尋問の時になにかしらのエクストラスキルかなと思ってはいた。

にしても二刀流かーかっこよくていいなー。なんで俺はなんか地味なんだよ…。

 

「エイトマンはどうなんだよ」

 

「は?」

 

唐突にキリトに聞かれた。

 

「お前、明らかに尋常じゃない動きしてただろボス戦。攻撃一発ももらわずに20秒ももたせるなんてふつうじゃねぇぞ」

 

ば、バレテルー。

 

「そう、俺は普通じゃない。むしろ普通の人間なんていないだろ。みんなどこかしら普通じゃない部分を」

 

「素直に話してくれたら今日のことシリカちゃんには内緒にしてあげる」

 

「エクストラスキルです」

 

アスナに弱味を握られてしまった…。この女絶対面倒臭ぇよ…。

 

「お前もかよ!一体、どんな?」

 

「予知だよ」

 

で、俺は俺のスキルの説明。したのだが、なんか微妙な雰囲気。

 

「なんか、地味だな」

 

「それに欠点もデカすぎるし…」

 

「よくさっきそんなの使ったね…」

 

クライン、キリト、アスナと文句を言われる。なんで俺が悪いみたいな雰囲気になってんの?

 

「仕方ないだろ。俺なんかよりアスナやクラインに死なれた方が攻略に影響が出る。あの面子でキリトのための時間稼ぎが出来たのは俺しかいなかったんだから」

 

「まぁたそういう考え方してる。リスクとかそういうことの前に自分が生き残ろうとは思わないの?」

 

アスナに言い返されてしまう。そう言われるとこっちはなにも言えない。俺が黙っていると、キリトが立ち上がった。

 

「とにかく、俺は一旦戻るわ。もうヘトヘトだ」

 

「俺も」

 

そこからは俺も話に乗っけさせてもらおう。キリトは他の奴らにも指示を出す。

 

「クライン達は75層に行ってもらえるか?」

 

「おう」

 

「それと、軍の連中は今のことを上に報告しとけ」

 

「う、うむ」

 

「じゃあまたな」

 

キリトとアスナが帰ろうとした時だ。「キリト!」と、クラインから声がかかった。振り返るキリト。

 

「その…おめぇがよ。軍の連中を助けに飛び込んでいったときな…なんつうか、嬉しかったよ。そんだけだ、またな」

 

それだけ言うと、クラインは仲間を連れて75層へと足を踏み入れた。さて、俺も帰るか。ゆっくりと腰を上げて出口に向かった時、アスナに肩を掴まれた。

 

「なんだよ…疲れてるから早く帰りたいんですけど」

 

「あなた達、しばらく私とパーティ組みなさい」

 

「「は?」」

 

俺とキリトがハモった。なに言ってんのこの子…。

 

「あなた達ほっといたらまたどんな無茶されるか分かんないわ。だから私が監視してあげる」

 

「いや頼んでねぇんだけど」

 

「そもそもギルドはどうすんだよ」

 

「団長にお願いするし」

 

断ってやろうと思ったが、アスナをよく見ると真っ赤で俺から目を逸らしてる。その逸らした先にはキリトがいた。

ははぁーん、なるほどね。俺は出汁に使われてるわけだ。俺はアスナにそっと耳打ちした。

 

「キリトと一緒に居たいんなら別に二人で組めばいいんじゃねぇの?」

 

「んなっ…!ち、違うわよ!」

 

「まぁ二人きりじゃ緊張するとかなら一緒に居てやってもいいぞ。大丈夫、俺は修学旅行とか学校のあらゆる班が必要となる行事では大抵、上手く空気になり、他のやつの気分を害さない能力をもっている」

 

だが、アスナは諦めたように大きくため息をついた。

 

「もういいわよ…はぁ…とりあえずパーティだけ組ませて」

 

「おう」

 

で、俺達はパーティを組み、74層へ引き返した。

 

 

 


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