目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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「まずはありがとうございます!」

 

迷宮区の壁に追い詰められ、アスナに追い詰められる。あの、完全にお礼を言う口調じゃないのですが…。

 

「それで、なんなのよあの速さ!私はあなたのこと何回かボス攻略で見て来たけどあんなの見たことないわよ!?」

 

「いや、その…えーっとですね…」

 

キリトに助けて視線を送るが、壁に寄りかかって欠伸して知らんぷりされる。てめぇ覚えとけよ…。

 

「まさか、今まで手を抜いてたの?」

 

「い、いや手を抜いてたというかですね…周りの方が強過ぎてそう見えてただけじゃないですかね」

 

「手を抜いてたんなら俺も許さないぞ」

 

キリト…余計なことを…。

 

「いや、あのマジ早くないですって…」

 

「そんなわけない!だってどう見ても私より早いもん!ていうかその敬語気持ち悪いからやめて」

 

「アッハイ」

 

うぅ、しばらく解放されそうにないな…なんで今日に限ってこんなめんどうなんだよこの人。

 

「…もしかして、さ。なにか隠してるの?」

 

「は?」

 

唐突に口調が変わったからつい声が裏返ってしまった。

 

「なぁんか最近、君とキリトくんがなにか隠してるようにしか見えないんだよなぁ。キリトくんはこの前リズのとこで作った剣、全然使おうとしないし」

 

ギクゥッ!と音がしそうなほどキリトの体が飛び上がった。そして、汗をかきながら「な、なんでもないよ…そう、なんでもない…」と、小声で呟く。おいおい、物事の隠し方下手くそ過ぎだろ。俺が手本を見せてやる。

 

「あぁ、俺は隠してる。ていうかそもそも、全世界で隠し事のない人間なんていねぇだろうし、いたらそれはそれで気持ち悪い。それに、隠し事は悪いことではないだろ。むしろ個人情報とかは常に隠さなきゃいえないわけであって」

 

「エイトくん、君がなにかあるときって普段よく言ってるどうでもいいことより遥かにどうでもいいこと言うんだよ」

 

…バレてるし。俺もキリトも気まず気に視線を逸らすが、アスナはジト目で俺達を睨む。だが、すぐにいつもの笑顔に戻った。

 

「まぁ、いいわ。スキルの詮索はマナー違反だもんね」

 

どうしてスキルって分かったんでしょうねー。ぶっちゃけもうバレテるんじゃない?今度は俺がアスナを眺めるが、本人は気にした様子はなく、別の話題に入る。

 

「あ、もう三時じゃない。少し遅くなったけどお昼にしましょうか」

 

「なにっ。て、手作りですか?」

 

キリトが聞くと、アスナは無言で微笑みアイテムストレージからサンドイッチを出す。

それをキリトが受け取り、一口。

 

「う、うまい…この味、どーやって?」

 

「それはね…」

 

と、アスナのお料理教室(仮想世界限定)が始まる。

……邪魔しちゃ悪いな。俺はその場をそっと立ち去るために立ち上がった。

 

「どこ行くの?食べないの?」

 

快く誘ってくれるアスナ。

 

「いや、せっかくキリトのために作って来たんだし二人で食えばいーんじゃねーの?俺は探索してくる」

 

「はっはぁ!?べ、べべ別にキリトくんのためじゃないもん!ただ、途中で小腹が空いた時のために二人分作ってきたぢけだもん!」

 

「二人分、だろ?それに俺は俺で作ってある」

 

その瞬間、二人の手からサンドイッチが落ちる。

 

「「嘘…」」

 

「おいお前ら、それどういう意味の反応だ」

 

ていうかさっきまで美味い美味い言ってたサンドイッチ星になっちゃったぞ。いいのか。

 

「エイトマンって、料理出来るのか?」

 

「あぁ、妹が小学校高学年になるまでは火とか刃物とか危なかったからな。リアルでもよくやってたよ」

 

二人は絶句していた。まるでこの世の終わりを見るような目で。もう死んじゃえよお前ら。

 

「あの、食べさせてくれない?」

 

「いいよ別に」

 

で、今度は俺がアイテムストレージからハンバーガーを出す。

 

「うわっ!懐かしい!」

 

「エイトくん料理スキルの熟練度どのくらい?」

 

「いや実はさ、俺一日に二本はMAXコーヒー飲まないと死んじゃうんだよね。で、この世界に来てから毎日のように研究してたらいつの間にかMAXになってた」

 

「なにその理由…で、MAXコーヒーは出来たの?」

 

「一応な。飲みたければ飲むか?定期用二本、緊急時用二本、常備用二本、気まぐれ用二本で八本はあるぞ」

 

「多いよ!ていうか気まぐれ用ってなに?」

 

「たまに無性にコーラ飲みたくなったりしたことない?」

 

「なるほどね…」

 

納得、というより呆れた顔のアスナ。

 

「ま、とりあえず食おうぜ。腹減った」

 

で、三人で放課後ティータイム。今覚えば、昼食を誰かと取るのなんて久しぶりだ。最後に取ったのは中三の給食だったからな。今までボッチを貫いていた俺だったが、誰かと飯を食うのも悪くないと思えるようになってしまった。

そんなことを考えてるうちに、食べ終わってしまった。

 

「さて、じゃあちょっと遅くなっちゃったけど始めよっか」

 

アスナが立ち上がり、キリトが首をコキッコキッと鳴らす。そこに、声が掛かった。

 

「おお、キリト!しばらくだな」

 

「クラインか…」

 

クラインか、このバンダナさんクラインっていうのね。あと後ろにいる方々はなんなんですかね。

 

「アスナさんと、あと…えーっと、よう!」

 

挨拶で誤魔化したか…まぁそりゃそうだ。俺もこいつの名前さっき知ったし、この人だけなんか俺となにかしたわけじゃない。

 

「どうしたんだよこんなところでクライン」

 

「攻略に決まってんだろ?しかも聞いて驚け、俺達はさっきボス部屋を見付けた!」

 

「「「!」」」

 

揃って驚く。

 

「まぁ、まだ中は見てないんだけどよ。とりあえず位置だけはマッピングしといたぜ」

 

「なるほど、そいつはサンキューなクライン」

 

「いやーそれにしても大変だったぜ。なぁみんな?」

 

クライン達はテンション高いが、俺達はそうはいかない。ボス部屋が見つかったってことは、近いうちにまた会議、攻略がおこなわれるということだ。軍の連中とかとまたモメるかもしれない。

しばらくクラインたちが話していたが、また後ろからガチャガチャと音が聞こえる。

 

「キリトくん、軍よ!」

 

「!」

 

やれやれ、今日はよく人と会う日だ。軍の連中はぞろぞろと歩き、俺たちの前に立つ。恐らくリーダーであろうプレイヤーが「休めっ!」と、言うと全員脱力したように座り込む。

俺達はそんな様子を眺めていた。リーダーの男が俺達に声を掛ける。

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」

 

「ぷはっ」

 

「なにか?」

 

思わず吹き出してジロリと睨まれてしまった。

 

「ぷ、ぷはぁーつっかれたぁー喉乾いたー」

 

全力で誤魔化す。そのコバヤシ中佐?そいつは俺のことを一瞥したあと、キリト達の方に振り返る。キリトもアスナもクラインも俺のこと睨んでいた。

いやだって仕方ないじゃん。なに中佐って…いくら軍って言ってもそこまでやる必要ないでしょ。はたからみたら軍人ごっこしてるおっさんにしか見えない。

 

「キリト、ソロだ」

 

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」

 

「あぁ、ボス部屋手前まではこのクラインがマッピングしてくれた」

 

「うむ。ではそのマップデータを提供してもらいたい」.

 

は?なに言ってんだこの中佐(笑)。当然だ、とでも言いたげな台詞にまたイラっときた。なんと反論してやろうか迷ってたら、クラインが怒鳴った。

 

「提供しろだと!?てめぇ、マッピングする苦労が分かってんのか!?」

 

「我々は君ら一般プレイヤーの解放のために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」

 

なるほど、そういう言い分ね。アスナもクラインも怒り爆発限界だ。仕方ない、俺の役目だな。

 

「あんたらさ、いっぷぁはっ!」

 

「やめろエイトマン。いいよ、どうせ街に戻ったら提供しようと思っていたんだ」

 

だからってさ、首根っこを思いっきり引っ張るってなくね?おかげでなんか変な声出ちゃったし。

 

「おいおいキリト!」

 

「すまんクライン。金ならあとで払うしマッピングも手伝う」

 

「…ったく、お人好しがよぉ」

 

それとなく許したようなことを言うクライン。ていうかいい加減手を離してくれませんかねキリトさん。まぁこの状況でも俺は喋れる。

 

「ボスにちょっかい出す気ならやめた方がいいんじゃねぇか?まだ中も見てないからなんとも言えないが前回のボスだって結構ギリギリだったんだ。その人数でどうにかなるほど…」

 

「私の部下はこの程度で音を上げるほど軟弱者ではない!」

 

「あ?そーいうことじゃなくてだな」

 

「とにかく!我々は我々のやり方でやる!行くぞ!」

 

なんで話を聞かない大人しかいないのこのゲームは。あーあ行っちゃったよ。

軍の連中が去った後に、クラインが心配そうに呟く。

 

「大丈夫なのかよ、あいつら…」

 

「いくらなんでも、情報なしでボス戦はしないと思うけど…」

 

クラインとアスナが心配そうに呟く。

 

「一応、様子見に行くか?」

 

キリトが提案する。クラインもアスナもそれに頷くが俺は言った。

 

「行かない方がいいだろ」

 

「なに?」

 

俺の言葉に三人が振り返る。

 

「あいつらを見殺しにするつもりかエイトマン」

 

「そーいうわけじゃない。こっちが止めたにも関わらずボスに挑むなんて普通じゃない。奴らにはその普通じゃないことをやり遂げられる自信、もしくは秘密兵器的なのがあるんだろ」

 

「で、でも」

 

「なによりこっちの命が危ない。感傷的になって行動すると命を落とすぞ」

 

俺の言葉に全員が黙り込む。だが、

 

「それでも、俺は見殺しに出来ない」

 

キリトはそう言った。

 

「まるで殺される前提のような言い方だな。別にあいつらが殺されても攻略に影響は出ないだろ」

 

「てめぇ…っ!」

 

クラインが俺に掴み掛かってくる瞬間、すごい悲鳴が聞こえた。

 

「っ!?」

 

「今のは…」

 

「やっぱりか!」

 

キリト、アスナ、クラインとその愉快な仲間達は走り出したが、俺は転移結晶を取り出す。が、その手をアスナが握る。

 

「あなたも来るの!」

 

はぁ…結局こうなるのか。

 

 

 


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