目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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S級食材

 

さらに四ヶ月後。

俺は74層でキリトを探している。ちょっと聞きたいことがあるからだ。エギルさんに聞いた話だと迷宮区にいるそうだが、迷宮区で人探しとか絶対見つからない。それこそハレー彗星並の頻度だろう。だって迷宮だよ?見つかるわけがないよね。

あーもうみつからねぇーし帰ろーかな。そんな大切な用があるわけじゃないしなー。なんて考えながら歩いてると、なんか釘みたいなのが足元に飛んできた。

 

「うはっ!?」

 

変な声と共に避けてしまった…。てか誰だ人様に向けて釘なんて投げやがって、文句でも言ってやろうかと思ったら向こうから謝ってきた。

 

「わ、悪い!まさか人がいると思わなくて!」

 

「は?ごめんなさいで済んだら警察はいらねぇよこのやろ…キリト」

 

「え、エイトマン!すまん大丈夫か?」

 

「なに、お前わざとなの?俺になんか恨みでもあんの?ぼっちにだって人権あるんだよ?」

 

「だってお前の隠蔽高過ぎるんだよ!だれだって気付かないわ!それに狙ったのはお前じゃなくてこっちだ」

 

キリトの指差す先にはラグーラビットがいた。って、S級食材じゃねぇか。…いいこと思い付いた。多分、俺今かなり目が腐ってて悪い顔してる。

 

「でも、お前が俺のHPを減らしかけたのは事実だ。だからこうしよう。そのS級食材の使用権を俺によこせ」

 

「は?どーいうことだよ」

 

「それをだれが食えるか、それを決める権利をよこせと言ってんだよ。もちろん、キリトが食えることは保証する」

 

「…なんか悪いこと考えてるだろ」

 

「人聞きが悪いな。ただせっかくのレア食材だ、多くの人に食べてもらいたいだろ?」

 

「…断ったら?」

 

「話に尾ひれどころか背びれ、胸ビレ付けて噂をばら撒く」

 

「お前…」

 

「どうする?」

 

「分かったよ。今日の五時頃にエイトマンが誘った奴を来るように教えてくれ」

 

「あぁ」

 

さて、これでしばらく金に困らないぜ。あれ?なんかキリトに用があった気が…ま、いっか。

 

 

_______________

 

 

 

キリトホーム。

 

「…なんだこの人数は」

 

キリトが苦々しく口を開いた。面子はアスナ、リズ、シリカ、エギル、クラインだ。

 

「いやぁ、エイトマンの野郎にお前の家でラグーラビット食えるって聞いてよ」

 

ちなみにクラインはエギルが誘われたついでに来た。

 

「それで、こんなに集まって来たのか?」

 

「そう、1000コルも払ってね」

 

アスナが説明する。それにキリトが「ん?」と、反応。

 

「ちょっと待てお前ら。まさか、金払ったのか?」

 

「うん。私も最初は渋ったけど『S級食材なんて食える機会ない』って言われて」

 

「しかも『たくさん食える』とまで言われましたからね」

 

リズ、シリカと答えて行く。その反応にキリトがバンッと机を叩く。

 

「たくさんなんてない!俺が捉えたのはたまたま見つけた1匹だけだ!」

 

その言葉に「えーっ!」と、声が上がる。

 

「じ、じゃあ…」

 

「一匹を、」

 

「この人数で、」

 

「分けるの?」

 

シリカ、エギル、リズ、アスナと声を漏らす。さらに、キリトが静かな声で聞く。

 

「ちなみに、料理スキル持ってる奴は?」

 

アスナ、一人だけが手を上げる。

 

「どーしよっか…」

 

「俺ん家、まともな器具ねぇぞ…」

 

「とりあえず、私の家に来る?」

 

「その前にエイトの家行かない?私、ちょっと用あるんだよね」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

「待ってください。エイトさんのホーム、誰か知ってます?」

 

「索敵使えば見つかるんじゃないか?」

 

「1〜74層の中を探すのか?」

 

「パーティ登録してればすぐに見付かるんじゃないか?」

 

「エイトのやつ、いつもボス攻略終わると『個人情報保護法』とか言ってパーティ解散しちまうぞ」

 

「……」

 

「と、とりあえずアスナの家で食べよっか。せっかくお肉あるんだし」

 

その日の夜、殺意の波動を放つ六人組がとある家に入って行った。で、それから一時間後くらい、

 

「じゃ、ごちそーさんキリト、アスナ」

 

「またな」

 

「またねー」

 

「ごちそうさまでした!」

 

と、エギル、クライン、リズ、シリカ達は帰宅。キリトも帰ろうとしたら、後ろから声を掛けられた。

 

「キリトくん、明日空いてる?」

 

「は?」

 

思わず聞き返すキリト。心なしか、アスナの頬は紅潮しているように見える。、

 

「ま、まぁ暇だけど」

 

「なら丁度いいわ。しばらく私とパーティ組みなさい」

 

「え、なんで?」

 

「そろそろ、ソロじゃ厳しくなってきたんじゃない?」

 

「つまんないぞ」

 

「ち、違うわよ!狙ってない!」

 

真っ赤になって怒るアスナを捨て置いて、キリトは答える。

 

「そーでもないよ。安全マージンは十分とってるし。それにパーティメンバーは助けよりも邪魔になることのが多いし、エイトマンみたいに例外はいるけどな」

 

「あら」

 

風が吹いた。よく見ると目の前にナイフがある。そのナイフはトランザムのように紫色に光っていた。

 

「き、君も例外だ…」

 

「そ」

 

脅した割には興味なさそうにしてナイフをしまう。

 

「なら、私と組みなさい。君が噂ほど強い人なのか確かめたいと思ってたし。私の実力も教えて差し上げたいし。今週のラッキーカラー黒だし」

 

「はぁ?大体、ギルドはどーするんだよ!」

 

「うちはレベル上げノルマとかないし」

 

「……」

 

そう、今アスナは血盟騎士団というギルドに所属している。血盟騎士団とは、まぁぶっちゃけ最強のギルドである。ちなみにアスナは副団長。

まだ納得いかなさそうなキリト。

 

「最前線は危ないぞ」

 

今度は頬を掠めた。キリトの顔の横をナイフが通り過ぎる。

 

「分かった。行きます」

 

キリトは渋々、承諾した。

 

 

 

______________

 

 

 

いやー儲けた儲けた。まさか他人の肉一つ売るだけで6000コル稼げるとは…。あいつらに会ったら殺されそうだが俺には隠蔽がある。つまり、次は丁度忘れている時間まで会わなければいいのだ。

さて、今日も迷宮区へ行くか。そう思って転移門まで向かった時だ。

 

「よぉ、昨日は随分儲かったんじゃないか?」

 

聞き覚えのある…というか聞き覚えしかない声。ギギギと音をたてて振り返るとキリトが立っていた。

 

「お、おう…」

 

「せっかくのレアアイテムを…量が少な過ぎて食った気しなかったぞ」

 

「バッカお前今の社会に求められてるのは量より質…」

 

「なら今度のボス攻略、一人で行くか?」

 

「昨日の儲けの半分払うので許して下さい」

 

「それなら考えてやらなくm…」

 

その瞬間、キリトになにか白い物がドサッと倒れこんで来る。締めた!このまま逃げれば…と思ったら目の前に変な死神みたいな顔したオッさんが現れる。

余りの近さにファーストキスを奪われるとこでした。キリトは美少女、俺はオッさん。なんか悪意を感じるんですが…。

とにかく、その人の通行の邪魔になってるなら退かねばならない。

 

「あ、すいまs…」

 

「どけ」

 

は?なに下手に出りゃ好い気になってくれてんの?三下裏切り野郎みたいな顔しやがって死神顔なのに三下ってどーいうことだよ。

てか、よく見たらこいつ血盟騎士団のメンバーじゃん。やだねー強くても常識のない奴って、これだから優等生ってのは嫌なんだよ。ギルドの連中なんてどーせ武器や防具だけチート臭いの使ってるだけなんだろ?わあ、超偏見。

とにかく、ここは一つ言ってやらねばならない。

 

「おい、目の前に」

 

「や、やぁぁーーっ‼︎」

 

突然、聞こえた悲鳴。見るとアスナが涙目で肩を抱き、キリトがぶっ倒れている。ははーん、キリトめ。やらかしたか…おそらくラッキースケベって奴だろう。

おっと、そんなことより俺はこいつに言わねばならないことがあるんだ。

 

「おい、目の前に」

 

「アスナ様」

 

目の前にアスナ様いねぇよ…俺の目の前にはお前がいんだろ…。どうやら完全にシカト体制に入ったようだ。ならば振り向かせるしかあるまい。

 

「へぇーそーやって無視しちゃうんだ。社会人の癖に人の話もきけないとかどういう教育受けて来たのかな。そんなんだからいつまで立っても学生の女の子に『様』なんて付けなきゃいけない身分なんだろ?この万年平社員野郎が」

 

俺の台詞に、シーン…と場が静まり返る。いや、クスクスと囁かな笑いが聞こえる。とうの本人はめちゃくちゃ頭に来てるのか頬をヒクヒク言わせ、眉を釣り上げて俺を睨んでいる。

 

「き、貴様ぁ〜…人のこと言えた義理か!バンシィに乗ってる時のリディみたいな目をしやがって!」

 

「いいじゃねぇかリディ!結局バナージを手助けしてたしニュータイプにもなってたしよ!目だってお前の死神フェイスよりましだ骸骨!」

 

今度は爆笑だった。誰も笑いをこらえようとしない。

 

「なぁ…っ!き、貴様ぁ〜許さん!決闘しろ!わたしが勝てばその、死神フェイスと万年平社員というのを取り消してもらおうか!」

 

「そっちこそ俺の目はSEEDキャラ並に輝いてると訂正しろ!」

 

「エイトマン、それはないよ」

 

キリトに真顔で返されてしまった。いつの間にか周りの視線は俺とおっさんに向けられている。あ、アスナが殺意の波動を向けてる…昨日のこと怒ってるのかな…怒ってるよね。だが、すぐにニヤリとなにか企んだ顔になった。

そして、俺とおっさんの前に立つと、言った。

 

「ならクラディール、この男は私の今日の自由を賭けます」

 

「は?」

 

「え?」

 

「この男が勝てば私はキリ…あと人と狩に行きます」

 

「ちょっと待てよ。俺かんけいねぇだろ。なんでそんな面倒なこと…」

 

「昨日のことチャラにしてあげてもいいけど?」

 

「おいこら死神デュークデスサイズさっさと準備しろ」

 

「ふん、良いだろう。せいぜい遺言でも考えておくことだな」

 

で、俺とクラ…クラ…クラシアン?クラシアンさんはデュエル申請をして剣を抜く。キリトがアスナに聞いた。

 

「アスナ、あのクラークって人強いのか?」

 

「クラディールよ。まぁそこそこってとこかしら?自分で決めといてあれだけど、エイトくんはどうなの?」

 

「まぁ、あいつは普段の戦い方があれだからなんとも言えないけど、もし本気でやれば、」

 

「やれば?」

 

「多分、俺と互角なんじゃないか?」

 

「……」

 

で、デュエル開始。対人戦では相手は人なので弱点突きが出来ない。なら武器破壊が手っ取り早いだろう。

クラシアンが剣を振り上げて斬りかかるが、その時にはすでに俺の仕事は終わっている。すでにクラシアンの後ろで剣を鞘にしまっている。そして、その瞬間にクラシアンの剣がバキィィィンッッ‼︎‼︎と砕ける。

ギャラリーはシーンと唖然で見ている。

 

「またつまらぬものを斬ってしまった」

 

「なんか最後ので台無しね」

 

…ドヤ顔で言ったらアスナに毒づかれた。

 

「ば、バカな!貴様一体なにをした!」

 

「五右衛門」

 

「いや最後じゃなくて。デュエル中になにをしたと聞いている!」

 

「斬っただけだよ。あんたの剣を」

 

実に簡単でシンプルに簡潔な回答をした。だが、クラシアンは歯を食いしばり納得のいかない表情をしている。

 

「えぇーいままよっ!」

 

「シャアかお前は」

 

剣を変えて挑んで来るが、俺はそれをかわしてまた武器破壊をしようとした瞬間だった。アスナがカキィンッ!と、剣を払った。俺のもクラシアンのも。あの、なんで俺のも払うんですか。

 

「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます」

 

「お前、副団長だったの?」

 

「エイトマン、黙ってろ」

 

「本日をもって護衛役を解任。別命あるまで本部で待機、以上」

 

「くっ…」

 

命令されると、おとなしく引き下がるクラディウスさん。あれ?クラシアンだっけ?まぁ、どっちでもいいや。

 

「これで俺は用無しだな。じゃ、またな二人とも…」

 

フェードアウトしようとした俺の首根っこをアスナが掴む。え?昨日のことはチャラじゃないの?恐る恐る振り返ると、ジト目でアスナに睨まれてた。

 

「な、なんでしょうアスナ様…」

 

「あなた、ちょっと来なさい」

 

「は?」

 

「行くよ、キリトくん!」

 

「は、はい!」

 

なにこれーカツアゲでもされるのかなーやだなー。そう思いつつも俺は連行された。

 

 

 


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