島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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第25話

島津が隆信の本陣に奇襲を仕掛けて、少し経った頃。鑑連が鎮理、鎮信に島津が来たことを報告し、宗麟から討って出るように伝える。

鎮信「わかった。すぐに兵を隆信がいる本陣へ突っ込ませるぜ」

鎮理「しかし、兄上。向こうもこっちが本陣へ突っ込むことを知れば、他の龍造寺の隊が対処してくることは明らかだが・・・」

鎮理が鎮信にそう言う。

鎮信「なら、俺が他の龍造寺の隊を相手にするぜ。鎮理は、その隙に隆信の本陣へ突っ込んでいけ」

鑑連「鎮信殿だけでは、心もとないので、私も龍造寺の隊を足止めさせます。この体では、本陣へ向かうことは無理ですからね」

鎮信と鑑連がそう言う。

鎮理「わかりました義姉様、兄上。必ず、本陣に突っ込み、隆信を討ち取って見せます」

鎮理がそう言う。

こうして、鎮理、鎮信、鑑連は、城から討って出るのであった。

 

 

 

 

佐賀城外

龍造寺兵1「おい、見ろ!大友兵が城から出てきたぞ!」

龍造寺兵2「隆信様のところへ行く気なんだな!」

龍造寺兵3「直茂様の言う通りになったぞ」

龍造寺の兵達がそう言う。

龍造寺兵4「おい。今すぐに成松様と昌直様に伝えるんだ!ここは、俺らで食い止める!」

そう言うと龍造寺兵の1人が昌直、成松のところへ行く。

龍造寺兵4「よーし、皆!大友をここで食い止めるんだ!」

龍造寺兵が大友軍に襲いかかる。だが・・・。

龍造寺兵2「うぎゃあああああああ」

龍造寺兵4「な、なんだ!?」

「雑兵ども、吉弘鎮信を食い止めるなんて、100年早いぜ」

龍造寺兵の前に現れて、そう言うのは、鎮信だった。

龍造寺兵1「吉弘鎮信だと!?」

龍造寺兵5「こ、こいつの首を取れば、いい手柄になるぞ!俺が奪ってやる!」

そう言うと龍造寺兵が鎮信を襲う。

鎮信「お前らの腕じゃあ、俺の首は、取れん!」

鎮信かそう言うと龍造寺兵を斬っていく。

「鎮信殿だけでは、大変ですから。私も加勢します!」

龍造寺兵3「誰だ!」

龍造寺兵が振り向くとそこには、車いすに乗った女性がいた。

「大友宗麟様の家臣、戸次鑑連!」

鑑連がそう名乗る。

龍造寺兵3「戸次鑑連だと!?」

龍造寺兵4「こんな、へんてこりんなものに乗っている奴など、簡単に首を取れるぜ」

龍造寺兵がそう言う。

鑑連「簡単に首が取れるかどうかは・・・(ピキーン)。私の実の力を見てからにしなさい」

鑑連がそう言うのと同時に龍造寺兵が襲い掛かるのであった。

 

 

 

 

成松「何!大友が出てきただと!?それに、隆信様の陣に島津軍が!?」

成松は、兵の報告を受けて驚きを隠せなかった。

百武「どうする信勝!」

成松「直茂殿や信胤殿が隆信様の救援に向かったが、そこに大友が挟み撃ちにあえば、ひとたまりもない。しかし、攻城戦をやめてしまえば、城の中にいる大友兵がさらに手で来るはずだ」

成松がそう言う。

百武「だが、信勝。問題は、昌直。あいつのことだから、きっと、攻城戦を中止して、隆信様の救援に向かっているはずだ」

百武がそう言う。

成松「く・・・。隆信に心酔するのは、人の勝手だが、隆信様の救援のために攻城戦を中止してまで、向かうとは、思いたくないんだが・・・」

成松は、そう言う。

結局判断ができずに時間だけが過ぎっていった。

 

 

 

 

さて、その昌直はと言うと・・・。

昌直「隆信様が!?しかも、大友が城が出て来ただと!」

兵の報告を受けてびっくりする。

昌直「こうしちゃあいられない!すぐ、攻撃中止!隆信様の救援に向かう!」

龍造寺兵7「し、しかし、今中止してしまうと、城の中にいる大友が、さらに出て来る・・・」

昌直「それは、成松殿がなんとかするだろう。とにかく、皆!隆信様のところへ向かうわよ!」

そう言って、昌直は攻撃を中止して、隆信のところへ向かった。

結局成松の予想は的中してしまい、包囲は完全に手薄となってしまった。

 

 

 

 

佐賀城・軍議の間

大友兵1「・・・とのことです」

大友兵が昌直が攻撃中止して、城から離れたことを宗麟に伝えた。

宗麟「なら、今なら北にいる成松隊と百武隊だけね」

大友兵1「はい。そちらは、救援に向かうか、攻城戦を中止するかで迷っているそうです」

大友兵がそう言うと宗麟は、指示を出す。

宗麟「北にいる鑑盛に、攻撃を一段と強めて、成松隊と百武隊を足止めするのよ!それから、南を守っていた千熊丸に連絡して、外に出た鑑連達に加勢するように伝えてちょうだい」

大友兵1「心得ました!」

そう言うと大友兵は、出ていく。

親貞「姉上様・・・」

宗麟「心配しないでね親貞。形勢は、逆転したから」

宗麟が笑顔で、親貞を見るのであった。

 

 

 

 

龍造寺の救援が救援隊がやってきて、苦戦する俺ら。

颯馬「負けてたまるものか!」

俺がそう言いながら龍造寺兵を斬っていく。

晴信「颯馬殿。龍造寺の救援隊が来て、私達は苦戦をしています。大友は、来てくれるのですか?」

颯馬「来てくれるさ。救援隊が来たということは城に攻撃する部隊は、減ったはず。それに、俺は、大友宗麟を信じているから!」

俺は、晴信殿にそう言う。

「怯まないでください!」

「このまま、島津を押し返すのです!」

遠くで、2人の女性が指示を出していた。

宗運「あれは!?鍋島直茂殿と円城寺信胤じゃないか!」

宗運殿がそう言う。あれが、龍造寺家軍師・鍋島直茂と円城寺信胤だと!?

「おらおらおらおら。どけどけ!龍造寺家家臣、木下昌直を討ち取りたい奴は、かかってきなさい!」

威勢よく、声を上げる少女。木下昌直、確か龍造寺隆信に心酔していた人物だね。

直茂「昌直殿!何故、ここにいる!」

昌直「隆信様が危ないと聞いて、全兵を率いて、救援に来たのです!」

信胤「全兵?!まさか、攻城戦を中止して、きたのですか!?」

信胤の問いに頷く昌直。攻城戦を中止して、来た・・・。ということは・・・。

 

「うわわわわわわわわわわわ!!!!!!!!!!!!」

 

突然、後ろから声が聞こえる。

直茂「何事です!」

直茂がそう言う。

「やあやあ、我こそは、大友家家臣、吉弘鎮理である!島津家を助太刀に来た!皆、龍造寺をこのまま、挟み撃ちにして、壊滅させるのだ!」

なんと、そこに鎮理が兵を率いて来てくれた。

大友がやってきたことで、状況は一変する。一進一退の攻防だった島津は、大友の救援を好機に形勢を、再びひっくり返し、龍造寺を追い込む。

義弘「ハアハアハアハア・・・」

隆信と一騎打ちしていた弘ちゃんの息が荒れていたが、体力は保っていた。

直茂「隆信様!」

隆信「なんだ、直茂!今は、鬼島津を私の手で討ち取るところなんだぞ!」

直茂「隆信様!大友が城から出てきて、攻めに転じ、現在挟み撃ちにされて、押されています!このままでは、壊滅されてしまいます!」

隆信「は、挟み撃ちだって!?」

直茂「はい。隆信様!このまま、撤退して、平戸城へ逃げ込むべきかと」

直茂がそう言う。

隆信「撤退だと!ふざけるな!ここで、撤退などと・・・」

直茂「お気持ちは、わかりますが、挟み撃ちは、まぎれもない事実です!どうか、どうか、撤退を・・・」

頭を下げる直茂。

隆信「・・・わかったわ。全軍、これより、撤退する!成松と百武にもそう伝えろ!」

直茂「それと、隆信様。殿は、私がやります。その間に、隆信さまは、お逃げを」

隆信「わかったわ直茂。だが、死ぬんじゃあないぞ。それから、鬼島津!この勝負は、預かるぞ!」

隆信がそう言うと、その場を走り去る。

義弘「撤退か。でも、勝ちは、もらったからね」

弘ちゃんがそうつぶやくのであった。

その後、龍造寺家は、直茂の殿で、龍造寺隆信、円城寺信胤、木下昌直、成松信勝、百武賢兼は、無事に撤退したのであった。

 

龍造寺が撤退後、鎮理と弘ちゃん、俺は、その場に残っていた。

鎮理「ふ~。どうやら、敵大将の首は、取れなかったが、これで龍造寺の戦力は削れたな颯馬殿」

颯馬「そうだな鎮理」

俺が鎮理にそう言う。

義弘「それより、向こうのほうはどうする?」

弘ちゃんが俺にそう言う。向こうとは、多分島津本体とにらみ合っている江里口信常のことだろう。

颯馬「心配するな。あれを飛ばしたから、今頃信常を降伏させている頃だろうよ弘ちゃん」

俺がそう言う。

鎮理「あれとは、なんのことだ颯馬殿?」

颯馬「そのうち、教えるよ鎮理」

俺が鎮理にそう言うのであった。

 

 

 

 

その頃、江里口常信は・・・。

信常「これは、虚報です」

信常は、手紙を見終えてそう言う。

信常「島津と大友が隆信さまらを挟み撃ちにして、形勢不利となり、撤退し、降伏をするように勧告するなど、隆信さまは、今だここにいると島津家に言ってきなさい!悟られては絶対ならないのです!」

信常がそう言う。

信常がここまで、不機嫌なのは、島津家からの手紙であった。

そこには『島津家の一部の隊を大友の救援に向かい、隆信殿の陣に奇襲をかけた。また大友が城から出てきて、隆信殿らを挟み撃ちにして、隆信殿は形勢不利となり、その場を撤退した。あなた方の策は、崩れた。島津に降伏することを勧める。降伏すれば、信常殿の命と兵達の命を助命することを約束する』と書かれてあった。

しかし、常信は、これは敵の虚報だと思って、受け入れを拒もうとする。

龍造寺兵9「しかし、信常さま。これがもし、本当なら我々は、危機に立たされています。今、島津軍が我々に攻められれば、ひとたまりもありません」

兵の1人がそう言う。確かに、たった数百人の兵では、島津の1万の大軍と戦うなどと無謀に等しい。

そんな時であった。

伝令兵「の、信常さま!」

そこに伝令兵がやって来た。

伝令兵「先刻の隆信様が佐賀城へ攻めるも、島津軍が突然背後から攻め入られて、さらに大友軍が城から出てきて、挟み撃ちにされ、隆信さまは苦渋の決断で平戸城に撤退をしたとのことです」

伝令の言葉を聞いて、信常が驚きの顔を隠せなかった。

信常「(そ、そんな・・・。じゃあ、島津が言ってきたことは、本当なの!でも、どうやって・・・。馬で全力で走っても、かなり時間はかかる。それなのに、我が伝令より、先に島津軍はその情報をいち早く本隊に届けたんだ!)」

心の中でそう言う信常。

龍造寺兵10「信常さま・・・。どうか、ご決断を。討ち死にする覚悟で、攻め入るか。降伏するかを」

兵の1人がそう言う。

そして、信常が出した決断は・・・。

信常「おい、そこの者」

龍造寺兵9「私でしょうか?」

信常「はい。私とともに島津の本陣へ行ってくれ。島津に降伏の願いを受け入れを伝えに行く」

龍造寺兵9「は、ははははああ!」

信常の言葉に兵の1人が頭を下げた。

こうして、江里口常信は、島津に降伏をしたのであった。


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