島津が隆信の本陣に奇襲を仕掛けて、少し経った頃。鑑連が鎮理、鎮信に島津が来たことを報告し、宗麟から討って出るように伝える。
鎮信「わかった。すぐに兵を隆信がいる本陣へ突っ込ませるぜ」
鎮理「しかし、兄上。向こうもこっちが本陣へ突っ込むことを知れば、他の龍造寺の隊が対処してくることは明らかだが・・・」
鎮理が鎮信にそう言う。
鎮信「なら、俺が他の龍造寺の隊を相手にするぜ。鎮理は、その隙に隆信の本陣へ突っ込んでいけ」
鑑連「鎮信殿だけでは、心もとないので、私も龍造寺の隊を足止めさせます。この体では、本陣へ向かうことは無理ですからね」
鎮信と鑑連がそう言う。
鎮理「わかりました義姉様、兄上。必ず、本陣に突っ込み、隆信を討ち取って見せます」
鎮理がそう言う。
こうして、鎮理、鎮信、鑑連は、城から討って出るのであった。
■
佐賀城外
龍造寺兵1「おい、見ろ!大友兵が城から出てきたぞ!」
龍造寺兵2「隆信様のところへ行く気なんだな!」
龍造寺兵3「直茂様の言う通りになったぞ」
龍造寺の兵達がそう言う。
龍造寺兵4「おい。今すぐに成松様と昌直様に伝えるんだ!ここは、俺らで食い止める!」
そう言うと龍造寺兵の1人が昌直、成松のところへ行く。
龍造寺兵4「よーし、皆!大友をここで食い止めるんだ!」
龍造寺兵が大友軍に襲いかかる。だが・・・。
龍造寺兵2「うぎゃあああああああ」
龍造寺兵4「な、なんだ!?」
「雑兵ども、吉弘鎮信を食い止めるなんて、100年早いぜ」
龍造寺兵の前に現れて、そう言うのは、鎮信だった。
龍造寺兵1「吉弘鎮信だと!?」
龍造寺兵5「こ、こいつの首を取れば、いい手柄になるぞ!俺が奪ってやる!」
そう言うと龍造寺兵が鎮信を襲う。
鎮信「お前らの腕じゃあ、俺の首は、取れん!」
鎮信かそう言うと龍造寺兵を斬っていく。
「鎮信殿だけでは、大変ですから。私も加勢します!」
龍造寺兵3「誰だ!」
龍造寺兵が振り向くとそこには、車いすに乗った女性がいた。
「大友宗麟様の家臣、戸次鑑連!」
鑑連がそう名乗る。
龍造寺兵3「戸次鑑連だと!?」
龍造寺兵4「こんな、へんてこりんなものに乗っている奴など、簡単に首を取れるぜ」
龍造寺兵がそう言う。
鑑連「簡単に首が取れるかどうかは・・・(ピキーン)。私の実の力を見てからにしなさい」
鑑連がそう言うのと同時に龍造寺兵が襲い掛かるのであった。
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成松「何!大友が出てきただと!?それに、隆信様の陣に島津軍が!?」
成松は、兵の報告を受けて驚きを隠せなかった。
百武「どうする信勝!」
成松「直茂殿や信胤殿が隆信様の救援に向かったが、そこに大友が挟み撃ちにあえば、ひとたまりもない。しかし、攻城戦をやめてしまえば、城の中にいる大友兵がさらに手で来るはずだ」
成松がそう言う。
百武「だが、信勝。問題は、昌直。あいつのことだから、きっと、攻城戦を中止して、隆信様の救援に向かっているはずだ」
百武がそう言う。
成松「く・・・。隆信に心酔するのは、人の勝手だが、隆信様の救援のために攻城戦を中止してまで、向かうとは、思いたくないんだが・・・」
成松は、そう言う。
結局判断ができずに時間だけが過ぎっていった。
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さて、その昌直はと言うと・・・。
昌直「隆信様が!?しかも、大友が城が出て来ただと!」
兵の報告を受けてびっくりする。
昌直「こうしちゃあいられない!すぐ、攻撃中止!隆信様の救援に向かう!」
龍造寺兵7「し、しかし、今中止してしまうと、城の中にいる大友が、さらに出て来る・・・」
昌直「それは、成松殿がなんとかするだろう。とにかく、皆!隆信様のところへ向かうわよ!」
そう言って、昌直は攻撃を中止して、隆信のところへ向かった。
結局成松の予想は的中してしまい、包囲は完全に手薄となってしまった。
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佐賀城・軍議の間
大友兵1「・・・とのことです」
大友兵が昌直が攻撃中止して、城から離れたことを宗麟に伝えた。
宗麟「なら、今なら北にいる成松隊と百武隊だけね」
大友兵1「はい。そちらは、救援に向かうか、攻城戦を中止するかで迷っているそうです」
大友兵がそう言うと宗麟は、指示を出す。
宗麟「北にいる鑑盛に、攻撃を一段と強めて、成松隊と百武隊を足止めするのよ!それから、南を守っていた千熊丸に連絡して、外に出た鑑連達に加勢するように伝えてちょうだい」
大友兵1「心得ました!」
そう言うと大友兵は、出ていく。
親貞「姉上様・・・」
宗麟「心配しないでね親貞。形勢は、逆転したから」
宗麟が笑顔で、親貞を見るのであった。
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龍造寺の救援が救援隊がやってきて、苦戦する俺ら。
颯馬「負けてたまるものか!」
俺がそう言いながら龍造寺兵を斬っていく。
晴信「颯馬殿。龍造寺の救援隊が来て、私達は苦戦をしています。大友は、来てくれるのですか?」
颯馬「来てくれるさ。救援隊が来たということは城に攻撃する部隊は、減ったはず。それに、俺は、大友宗麟を信じているから!」
俺は、晴信殿にそう言う。
「怯まないでください!」
「このまま、島津を押し返すのです!」
遠くで、2人の女性が指示を出していた。
宗運「あれは!?鍋島直茂殿と円城寺信胤じゃないか!」
宗運殿がそう言う。あれが、龍造寺家軍師・鍋島直茂と円城寺信胤だと!?
「おらおらおらおら。どけどけ!龍造寺家家臣、木下昌直を討ち取りたい奴は、かかってきなさい!」
威勢よく、声を上げる少女。木下昌直、確か龍造寺隆信に心酔していた人物だね。
直茂「昌直殿!何故、ここにいる!」
昌直「隆信様が危ないと聞いて、全兵を率いて、救援に来たのです!」
信胤「全兵?!まさか、攻城戦を中止して、きたのですか!?」
信胤の問いに頷く昌直。攻城戦を中止して、来た・・・。ということは・・・。
「うわわわわわわわわわわわ!!!!!!!!!!!!」
突然、後ろから声が聞こえる。
直茂「何事です!」
直茂がそう言う。
「やあやあ、我こそは、大友家家臣、吉弘鎮理である!島津家を助太刀に来た!皆、龍造寺をこのまま、挟み撃ちにして、壊滅させるのだ!」
なんと、そこに鎮理が兵を率いて来てくれた。
大友がやってきたことで、状況は一変する。一進一退の攻防だった島津は、大友の救援を好機に形勢を、再びひっくり返し、龍造寺を追い込む。
義弘「ハアハアハアハア・・・」
隆信と一騎打ちしていた弘ちゃんの息が荒れていたが、体力は保っていた。
直茂「隆信様!」
隆信「なんだ、直茂!今は、鬼島津を私の手で討ち取るところなんだぞ!」
直茂「隆信様!大友が城から出てきて、攻めに転じ、現在挟み撃ちにされて、押されています!このままでは、壊滅されてしまいます!」
隆信「は、挟み撃ちだって!?」
直茂「はい。隆信様!このまま、撤退して、平戸城へ逃げ込むべきかと」
直茂がそう言う。
隆信「撤退だと!ふざけるな!ここで、撤退などと・・・」
直茂「お気持ちは、わかりますが、挟み撃ちは、まぎれもない事実です!どうか、どうか、撤退を・・・」
頭を下げる直茂。
隆信「・・・わかったわ。全軍、これより、撤退する!成松と百武にもそう伝えろ!」
直茂「それと、隆信様。殿は、私がやります。その間に、隆信さまは、お逃げを」
隆信「わかったわ直茂。だが、死ぬんじゃあないぞ。それから、鬼島津!この勝負は、預かるぞ!」
隆信がそう言うと、その場を走り去る。
義弘「撤退か。でも、勝ちは、もらったからね」
弘ちゃんがそうつぶやくのであった。
その後、龍造寺家は、直茂の殿で、龍造寺隆信、円城寺信胤、木下昌直、成松信勝、百武賢兼は、無事に撤退したのであった。
龍造寺が撤退後、鎮理と弘ちゃん、俺は、その場に残っていた。
鎮理「ふ~。どうやら、敵大将の首は、取れなかったが、これで龍造寺の戦力は削れたな颯馬殿」
颯馬「そうだな鎮理」
俺が鎮理にそう言う。
義弘「それより、向こうのほうはどうする?」
弘ちゃんが俺にそう言う。向こうとは、多分島津本体とにらみ合っている江里口信常のことだろう。
颯馬「心配するな。あれを飛ばしたから、今頃信常を降伏させている頃だろうよ弘ちゃん」
俺がそう言う。
鎮理「あれとは、なんのことだ颯馬殿?」
颯馬「そのうち、教えるよ鎮理」
俺が鎮理にそう言うのであった。
■
その頃、江里口常信は・・・。
信常「これは、虚報です」
信常は、手紙を見終えてそう言う。
信常「島津と大友が隆信さまらを挟み撃ちにして、形勢不利となり、撤退し、降伏をするように勧告するなど、隆信さまは、今だここにいると島津家に言ってきなさい!悟られては絶対ならないのです!」
信常がそう言う。
信常がここまで、不機嫌なのは、島津家からの手紙であった。
そこには『島津家の一部の隊を大友の救援に向かい、隆信殿の陣に奇襲をかけた。また大友が城から出てきて、隆信殿らを挟み撃ちにして、隆信殿は形勢不利となり、その場を撤退した。あなた方の策は、崩れた。島津に降伏することを勧める。降伏すれば、信常殿の命と兵達の命を助命することを約束する』と書かれてあった。
しかし、常信は、これは敵の虚報だと思って、受け入れを拒もうとする。
龍造寺兵9「しかし、信常さま。これがもし、本当なら我々は、危機に立たされています。今、島津軍が我々に攻められれば、ひとたまりもありません」
兵の1人がそう言う。確かに、たった数百人の兵では、島津の1万の大軍と戦うなどと無謀に等しい。
そんな時であった。
伝令兵「の、信常さま!」
そこに伝令兵がやって来た。
伝令兵「先刻の隆信様が佐賀城へ攻めるも、島津軍が突然背後から攻め入られて、さらに大友軍が城から出てきて、挟み撃ちにされ、隆信さまは苦渋の決断で平戸城に撤退をしたとのことです」
伝令の言葉を聞いて、信常が驚きの顔を隠せなかった。
信常「(そ、そんな・・・。じゃあ、島津が言ってきたことは、本当なの!でも、どうやって・・・。馬で全力で走っても、かなり時間はかかる。それなのに、我が伝令より、先に島津軍はその情報をいち早く本隊に届けたんだ!)」
心の中でそう言う信常。
龍造寺兵10「信常さま・・・。どうか、ご決断を。討ち死にする覚悟で、攻め入るか。降伏するかを」
兵の1人がそう言う。
そして、信常が出した決断は・・・。
信常「おい、そこの者」
龍造寺兵9「私でしょうか?」
信常「はい。私とともに島津の本陣へ行ってくれ。島津に降伏の願いを受け入れを伝えに行く」
龍造寺兵9「は、ははははああ!」
信常の言葉に兵の1人が頭を下げた。
こうして、江里口常信は、島津に降伏をしたのであった。