龍造寺家が、大友の進軍を止めるため兵を引く準備をしている頃、島津家でも、動きがあった。
颯馬「さて、長期戦はなるべく避けるためには、龍造寺を何とかして、おびき出さないと・・・」
俺がそんなことを龍造寺の策を考えていた時だった。
島津兵1「軍師殿」
1人の島津兵が来た。
颯馬「どうした?」
島津兵1「ただいま、甲斐宗運殿がお見えになりました」
颯馬「宗運が?わかった、すぐに会う」
そう言って、俺は宗運のところへ向かった。
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宗運「お久しぶりです天城殿」
颯馬「宗運殿。前置きは、置いておいて、私に何か御用で?」
宗運「あ、そうだった。実は、昨日吉弘鎮信殿から私経由で天城殿の手紙を預かっています」
颯馬「義鎮殿から?」
宗運殿から渡された手紙を俺が読む。
そこには、こう書いてあった。
天城颯馬殿へ
私達、大友家は、島津家の要請通り筑後入りして、そのまま龍造寺の出城1つを落とした。
私達は、このまま佐賀城、平戸城へ向こうが、敵も必ず私達に迎え撃ってくるだろう。
もし、そちらで膠着状態になっていたら、兵は必ず私達に向けて戻るだろうと、義姉様がそう言っていた。
私達も頑張るから、颯馬殿も島津家の悲願を達成してみるのです。
吉弘鎮信より
手紙の内容を読んだ俺は、宗運殿に向ける。
颯馬「宗運殿。大義であった。しばらく、そこで待っていてくれ」
俺がそう言うと宗運殿は、頷いた。
そして、俺は陣の方向へ向かった。
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貴久「・・・・・。なるほど、大友家が攻め入ったか」
颯馬「はい。敵もおそらくは、その情報を手に入れて、兵のほとんどを大友家に向けて、走り出すでしょう」
俺が貴久様にそう言う。
島津家家臣1「それが、誠なら、今が攻め時である!」
島津家家臣2「そうなれば、龍造寺家は混乱に陥り、我々の勝利が見えてきます」
家臣2人がそう言う。
歳久「それは、いいかがでしょうか?」
島津家家臣2「ん?歳久様、それは、どういう意味でしょうか?」
歳久「龍造寺は、気が付かれないようにしようとしています。今攻めても、鍋島殿が対処してくるでしょう」
貴久「なるほど」
貴久様が歳ちゃんの説明に頷く。
義久「それじゃあ、どうするの?何か、秘策はあるの?」
颯馬「あります」
俺がそう言う。
貴久「申してみろ天城」
颯馬「はい。龍造寺のほとんどが大友に向かうでしょう。なら、我々は、その裏をかくのです」
貴久「裏を?」
颯馬「はい。まず、龍造寺が陣から兵をほとんど連れて大友に向かって、少し経ったら千から二千の兵で龍造寺のあとを追いかけます。そのまま大友と龍造寺がぶつかった時に奇襲をかけて、龍造寺を倒すという策です」
俺がそう提言する。
歳久「なるほど。それは、いい考えです。少ないですが、大友の兵を合わせれば、負けることはないですし、なにより、龍造寺は島津があとを追ってくるとは夢にも思っていないでしょう。それに、千から二千ぐらい動かしても、減ったことに向こうは気づかないでしょう」
歳ちゃんがそう言う。
豊久「挟み撃ちか。おねえ・・・じゃなかった。姉上は、どう思います?」
家久「ソウちゃんの意見に異論はないよ」
晴信「これなら、勝ちはいただけますわ」
家ちゃんと晴信殿が賛同する。
貴久「では、颯馬の策を是としよう。早速、その部隊には、義弘、晴信、宗運、颯馬が当たってくれ。残ったものは、敵に我々の策が気づかれないようするように」
貴久様の問いに俺達は、異論なく頷いた。
こうして、龍造寺打倒する策が始まった。
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夜遅く。龍造寺の陣では、大友軍を撃退するため信常以外の武将と兵が集結した。
隆信「常信。ここは、頼んだわよ。島津軍に、私達の行動が見破れないようにしておいてね」
常信「もちろんです隆信様。常信、必ずや大役を果たして見せます」
常信がそう言うと隆信は、号令をかけた。
隆信「皆の者!これより、大友家を撃退にかかる!短期決戦で大友を倒して、ここへ戻ってくる!皆も、そのつもりでいるように!」
隆信がそう言うと隆信が乗った馬が駆け出す。成松、百武、信胤、昌直、直茂は、もちろん兵士達も駆け足で、大友に向かっていったのである。
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島津兵2「申し上げます。龍造寺隆信らは、兵のほとんどを大友軍へ向けて走り始めました」
兵士がそう言う。今晩のいつ出立するかは、わからない。そこで、俺は、物見を龍造寺が通りそうな場所に配置した。その1つから龍造寺が駆け足で大友に向かったと連絡が入った。
颯馬「よし。半刻後、我々も出立する。出来る限り、前に走っている龍造寺に気づかれないように進んでいく」
俺がそう言う。
晴信「わかりました颯馬殿」
宗運「私も全力で、参ります」
義弘「私も、気合を入れていくわ颯馬」
弘ちゃん、晴信殿、宗運殿がそう言う。
そして、半刻が経ち、そして・・・。
颯馬「時間だ!それでは、行ってきます」
義久「気を付けてね、みんな」
歳久「必ず、成功させてください」
義久と歳ちゃんがそう言う。
そして、俺は、弘ちゃん、晴信殿、宗運殿と兵二千を引き連れて、龍造寺向けて走り始めた。
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歳久「・・・・・・・」
天城達を見送る私。
義久「歳ちゃん。そんなに颯馬くんのことが心配なの?」
歳久「な、何を言うんですかとしねえ!わ、私が天城のことを心配するわけが・・・」
義久「無理しないでいいのよ歳ちゃん。こうして、颯馬くんを見送ったことが何よりも証拠じゃない~」
歳久「そ、それは・・・」
よしねえの言葉に私は、反論ができなかった。
歳久「そ、それより、私達は、ここで残った龍造寺に二千の兵を向かわせたことを悟られないようにしなければ」
私は、話題を変えてそう言う。
義久「そうね歳ちゃん。颯馬くんの策を成功させるためにも頑張らないとね」
よしねえはそう言って、陣の中へ入っていった。よしねえじゃないですが、天城の策を成功しなければいけませんね。