島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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ここから、新作です。


第21話

島津に仲間入りした有馬晴信ともに島津軍は、北上していた。

そんな報せは平戸城にいる龍造寺隆信らの元へ届いた。

隆信「おのれ、有馬晴信!まさか、生きていたなんて!」

隆信が槍を思いっきり床に叩きつける。それもそのはず、有馬家を殲滅するはずだったが、娘の有馬信晴らが姿をくらまされたことに悔やんでいるのだから。

信胤「それで、どうしましょうか隆信様」

隆信「聞くまでもないわ!すぐに打って出る!」

隆信が立ち上がってそう言う。

隆信「皆の者、すぐに兵の支度をしなさい!私がしきじきに快進撃を進める島津・有馬連合軍を打ち倒してやるわ!」

こうして、隆信は軍勢を用意して撃って出る準備を始めた。

直茂「(隆信様は、かなり意気込んでいるようですね。しかし、何か嫌な予感感じます。私のゆうつで済めばいいのですが・・・)」

残っていた直茂がそんなことを心の中でそう言う。しかし、直茂のこの予感は的中するのであった。

 

 

 

 

隆信らが島津を迎え撃つため島津軍の元へ向かったちょうどその頃・・・。

鎮理「しかし、有馬家の当主の娘が生きていたとは驚きですね兄上」

鎮理の隣にいる鎮信にそう言う。

鎮信「そうだな鎮理。その有馬は島津家に臣従したようですけどな」

鑑連「まあ、一度滅ぼされたです。お家再興のために島津家に臣従するのが一番だと考えてのことですね」

鎮信の問いにそう答える鑑連。

鑑盛「まもなく敵城ですね宗麟様」

鑑盛が宗麟にそう言う。

宗麟「それにしても、あの城、全然警戒心の気配がないわね~」

鎮理「まあ、龍造寺は大友が攻めてくるなどと考えていないんだろうな」

鎮理がそう言う。

宗麟「まあ、ともかく今があの城を簡単に落とす絶好の機会かもしれないわね」

宗麟が扇子を開いてそう言う。そんな5人の武将の中で1人だけおどおどする人がいた。

親貞「あ、あの・・・。なんで、私も行軍する必要があるのですか?」

親貞がそう言う。

鑑連「親貞様。いくらなんでもその歳で初陣しないのはあまりにもよろしくありませんわ。この戦を親貞様の初陣として働いてもらいたいです」

鑑連が親貞にそう言う。親貞も歳も歳なので、そろそろ初陣するのもいい機会だと思い、連れてきたのである。

親貞「しかし、私は鑑連達と違い、槍働きは・・・」

千熊丸「いや、親貞様。別に前へ出て欲しいとは行っていません。ここで、宗麟様の隣にいてくれるだけで結構です」

親貞「そう言うことですか。よかった~」

少し安堵する親貞。

鎮理「(まあ、前へ出られても少し困るしな)」

心の中でそんなことを思う鎮理。

宗麟「そんなことよりこの親貞の初陣のために勝利を飾るわよ!全軍、あの城を目指して突撃よ!!!!!!」

宗麟の号令とともに大友兵並びに鑑連、鑑盛、鎮理、鎮信、千熊丸が城へ向けて走り出した。

 

 

 

 

龍造寺家将「何事だ!」

龍造寺兵1「た、大変です!て、敵襲です!」

将の1人に向かってそう報告する。

龍造寺家将「て、敵襲だと!?こんな夜遅い時間に!?島津軍の別働隊か!」

将がそう聞くが兵士は首を横に振る。

龍造寺兵1「ち、違います!島津ではありません。旗印を確認させたところ丸十字紋でなく、杏葉の紋所です!」

龍造寺家将「杏葉!?大友家だと!」

その報告を聞いてビックリする将。

龍造寺兵1「大友軍の数はおよそ5千です!」

龍造寺家将「5千!?この城の守りはたったの5百人だ!とても、死守できるものではないぞ!」

将がそう言う。

龍造寺兵2「申し上げます!大友軍が城の門へまもなく入りそうな勢いです!」

兵の報告を聞き、将が慌てる。

龍造寺家将「こうなれば、退却だ!なんとかして、大友軍の足を止めるんだ!」

そう指示を出した。

しかし、それもむなしくその後、大友軍は勢いが止まらず城は陥落し、龍造寺の兵や将はことごとく討ち取られたのであった。

 

 

 

 

一方その頃、島津・有馬連合軍は、島原城を無血開城させた後、先へと進んでいた。しかし、そこに・・・。

歳久「龍造寺に動きはありませんね」

歳ちゃんが少し先で陣を構える龍造寺を見てそう言う。

島原から龍造寺の本拠地、平戸城へ行く途中で、せっこうから龍造寺隆信が自ら出てきて、陣を張っているという報告が入り、島津家は、龍造寺の様子が見渡せる場所に、陣を張った。

そして、歳ちゃんと俺は、陣に入ると、貴久様、義久、弘ちゃん、家ちゃん、豊久、晴信殿、家臣達が構えていた。

貴久「さて、龍造寺が動かないが、我々はどのように動こうか?」

貴久様が問いかけてくる。

島津家家臣1「このまま、にらみ合いをしても何も始まりません。ここは、いっそうこちらから攻撃すべきかと」

島津家家臣2「数では、こちらが優っています」

家臣2人が貴久様にそう言う。

歳久「確かに、数ではこちらが優位です。しかし、向こうには、龍造寺四天王たちがいます。下手に攻めれば、こちらが痛い目にあいます!」

義弘「私でさえ、龍造寺四天王1人に対して苦戦していたんだから、兵士達が四天王を相手にできるかも怪しいし・・・」

歳ちゃんと弘ちゃんがそう言う。確かに、この間の奇襲は、何とか退けたが、弘ちゃんは、四天王の1人、成松信勝に苦戦をしていたからね。

義久「でも、このままにらみ合いをしていても、打開策はないのも確かよ」

家久「よしねえの言葉も一理あるけど・・・」

晴信「颯馬殿は、何か秘策はありますか?」

晴信が俺に聞く。

颯馬「そうですね。今のところ、これといった策はありませんが、歳久様の言う通り、下手に攻めるのは危険です。ここは、しばらく布陣して、相手の出方をうかがいましょう」

俺がそう進言する。

貴久「わかった。しばらくは、このまま向こうの様子を見よう。異論はないな」

貴久様の問いに誰も反論しなかった。

こうして、しばらく様子を見ることにした。

 

 

 

 

龍造寺側の陣

隆信「敵が全然、動く気配がないわ。せっかく、私自ら出てきて、向こうが攻めてくることを期待したんだが・・・」

信胤「島津家には、どうやら、賢い人間がいるようですね~」

信胤がそう言う。

成松「では、どうしましょうか隆信様?」

「ここは、いっそうこっちから攻めればいいじゃないの?」

隆信に向かって、そう進言する茶色いロングヘアな美人は、木下昌直である。

百武「バカを言うな。相手は、我々より大軍で来ている。しかも、向こうには種子島(火縄銃)を850丁用意している。こちらが攻め入れば、種子島の餌食になるぞ」

百武が昌直にそう言う。

昌直「種子島が何よ!そんなのが怖くっては戦なんか出来ないわよ!」

昌直が百武にそう言う。昌直は、隆信に対しては、よくいうことを聞くが、それ以外な人には、いい加減な態度を取る。

信胤「あら、知らないのかしら昌直?島津家には、三段撃ちという戦法使って、鉄砲を撃ってくるわよ~」

昌直「三段撃ち?」

信胤「そうよ。鉄砲を1陣、2陣、3陣に分けるの。1陣が撃った後に2陣が。2陣が撃った後に3陣が。3陣が撃った後に、1陣。この繰り返しで撃ってきます。3段階に分けることによって、種子島のこめて、撃つ、速さは格段と早いのです」

信胤が昌直にそう説明する。

常信「それは、確かに恐ろしいわね。はあ~、飛び道具がなければ、島津家なんて、怖くないんだけど・・・」

常信がそう言う。

直茂「隆信様。こちらも我慢して時が来るまで待つべきです。下手に攻めては、向こうの思う壺です」

直茂が隆信にそう進言した。

隆信「わかったよ直茂。あんたの言う通り、しばらく様子を見る。お前達もわかったな」

隆信の問いに成松、百武、信胤、信常は、頷く。昌直は、不満そうな顔をするが、隆信の命令なので、従うしかなかった。そんな時だった。

伝令兵「た、隆信様!」

そこに伝令兵が慌てて入って来た。

隆信「どうした、そんなに慌てて?」

昌直「まさか、島津が動いたのか!」

昌直が伝令に聞くが、伝令は首を横に振る。

伝令兵「大変です。昨日、大友軍が突如城を襲撃!城にいた将を始め兵が討ち死に。城は落とされて、大友軍は、そのまま進撃しながら佐賀城へ向かっています!」

伝令の言葉を聞いて、愕然とする龍造寺家。

成松「い、今の言葉。誠であるか!」

伝令兵「はい」

成松の問いにそう答える伝令。

信胤「まさか、大友が兵を上げるなんて。島津の仕業かしら?」

信胤がそう言う。

百武「島津と大友が同盟を結んでいたことは知っていたが。まさか、我々の目が島津に向けている隙に進軍してくるとは・・・」

成松「いかがします隆信様?」

隆信「決まっている。すぐに兵を、大友の進軍を止めるのよ!」

隆信がそう指示を出す。

直茂「お待ちください隆信様。今すぐに兵を動かせば、島津家に感づかれてしまいます。ただでさえ、兵力は向こうが優位に立っています」

隆信「じゃあ、どうするの直茂!」

隆信がそう問うと直茂は、答えた。

直茂「まず、夜にたいまつをたくさん燃やして、こちらが島津を警戒して当たっているみせかけます。その隙に兵を移動するのです」

直茂がそう語る。

成松「なるほど。そうすれば、兵を動かせるのですな」

信胤「てすが、この陣が空っぽだと気付いて、島津が追撃される恐れもありますわよ?」

信胤がそう言う。

直茂「確かにそうです。が、この陣にある程度兵を残し、さらに旗を大量に掲げるのです。島津から見れば、我々がここにいるということが錯覚をしてくれます」

直茂がそう説明する。

隆信「わかった。直茂の策を是とする。兵は、敵に気づかれないように撤退準備をするのだ。それから、信常。ここに残って、島津家を警戒し続けるのだ」

信常「わかりました隆信様」

信常がそう答える。

こうして、龍造寺家は、大友家の進軍を止めるために兵のほとんどを向かわせるのであった。


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