颯馬「さてと、今日は、どんな案を考えようか」
背伸びしながらそう言う俺。
肥後での戦いが終わり、今しばらくは内政に力を入れることになった島津家。
俺は、軍師であるが内政にも関わっている。
俺は、主に農業改革に力を入れた。農具の普及や外来の野菜、麦の生産、さらに堆肥の開発など軍師の仕事以外のことをこなした。それを歳ちゃんに提言し、許可をもらい実行している。おかげで、農業改革は上手くいき、農民は前より豊かとなった。石高も以前より2~3倍増えた。
また、九州という暖かい地方の特性を生かして、二毛作をさせて、米と麦を両方栽培した。
法令の方は、いくつか現代のものをいくつかこの時代に合ったものに整備した。これも農業改革同様、歳ちゃんからほめれたことがある。
いろいろとやっている俺だが、今は、隈本(現在の熊本)に城を築くことを提言しようと思っているが、熊本城を立てたのはあの加藤清正だ。真似して作ることは簡単に出来ないし、それにお金の問題もあるためこれは、お蔵入りすることにした。他にも兵農分離なども検討していく。
俺は、案に煮詰まっていた時だった。
義久「颯馬くんいるかしら?」
その声は、義久か?俺は、とりあえず襖を開けると・・・。
家久「ヤッホー、ソウちゃん!」
義弘「おじゃまするわね」
歳久「・・・・・」
なんと義久以外に家ちゃん、歳ちゃん、弘ちゃんもいた。
颯馬「義久、それに家ちゃん、歳ちゃん、弘ちゃん」
歳久「歳ちゃんって言わないでください!」
歳ちゃんがそう言う。
まあとりあえず、俺は義久達を部屋に入れる。
義久「颯馬くん、相変わらずいい試案を考えているみたいね」
颯馬「まあね。これも島津家のためさ。それで、俺に何か用事があって来たんだよね」
俺がそう言う。
家久「そうだよソウちゃん」
義弘「実は、ついさっきに重大な情報が入ったの」
颯馬「重大な情報?」
俺かそう言う。重大な情報・・・。一体なんだろうか?
歳久「有馬家から援軍の要請が来たんです」
歳ちゃんがそう言う。
颯馬「援軍の要請か。じゃあ、近いうちに有馬を助けに行くために兵を出すんだね」
俺がそう言うが、歳ちゃんが何故か厳しい顔をしていた。
歳久「実は、先ほどある情報が入って来たんです。龍造寺家が肥前を統一したと」
歳ちゃんがそう言うと俺は驚きを隠せない。
颯馬「それって、つまり・・・・」
歳久「ええ。どうやら、援軍の要請が来たときには、もう・・・」
颯馬「そうか・・・・」
俺がそう言う。
家久「龍造寺隆信が疲弊した有馬に総攻撃をかけて、攻め落として、有馬義貞を始めとした武将が討ち死にしました。しかし、肝心な娘の有馬晴信らは、姿を消したようなの」
家ちゃんがそう言う。
颯馬「消したと言うことは、まだ生きている。そう言うことだね」
歳久「はい」
俺の問いにそう言う歳ちゃん。
義久「有馬晴信もそうだけど、事実上統一した龍造寺が次に狙うのは肥後か筑後に攻めてくるはずなの。それについて、みんなで話し合うことになったの」
義久が俺にそう言う。
颯馬「でも、義久。そう言うのって、貴久様の前で話し合うの普通じゃないの?」
俺がそう言う。いくら、当主の娘だからといって貴久様抜きで話し合うのはまずいじゃないのかな?
義久「それが、お父さん。今豊ちゃんと一緒にとある港の建設の様子を視察に行ったのよ」
義久がそう言う。港の視察か。普段はあんな人なのにやる時はやる人なんだね。
歳久「まあ、ここ最近仕事がなく暇そうにしていたから港の視察に向かわたんです。まあ、お父さんだけじゃあ頼りないですから豊久と一緒に行かせたんですけどね。」
そういうことだったんだ。
義弘「帰って来るのが5日後だから、その間の時間がもったいないから歳ちゃんがみんなで集まって話し合おうじゃないかって提案してね。それで、颯馬にも参加してもらおうと思ったの」
義久「でも、颯馬くん。今内政のことで、いろいろと思案しているじゃないかと・・・」
颯馬「そ、そんなことないよ義久。内政は、いつでもできるよ。それに、そう言うことなら軍師である俺が出なくちゃあいけないしね」
俺がそう言う。
家久「それで、どうしようかとしねえ?」
歳久「とりあえず、こちらから攻めましょう。援軍要請の件もありますし、それにいつか戦う相手です。相手が疲弊している今叩いた方がいい思います」
歳ちゃんがそう言う。確かに相手が戦力を立て直す前に攻めた方がこちらとしても被害が少なくっていい。
義弘「攻められるより攻めた方がいいからね」
弘ちゃんがそう言う。
颯馬「それで、何処から攻めようか?」
俺は、歳ちゃんにそう聞く。
歳久「そうですね。肥後から島原へ攻めていく案と龍造寺隆信の居城がある佐賀城へ攻める案の2つがあります。しかし、この2つの案には不安要素があります」
義弘「不安要素?」
弘ちゃんがそう言うと歳ちゃんは口を開く。
歳久「ええ。まず島原から攻める案ですけど、島原は先日まで戦をしていた地域です。落とすのにはそう苦労はないでしょう。しかし、そうなると筑後が手薄になり、そこから敵が攻めてくる恐れがあります」
義久「もう1つの方は?」
義久が歳ちゃんに聞く。
歳久「龍造寺隆信の居城である佐賀城を攻める案は、城を攻め落とせば敵に動揺させることは出来るでしょうが、佐賀城は強固です。攻めてもこちらにも被害は出るでしょうし、兵糧攻めをすれば他の地域にいる勢力が島津家に襲い掛かり、さらに被害が出て、また肥後を攻められてしまう恐れがあります」
歳ちゃんがもう1つの案の不安要素について語った。
佐賀城を攻めるのにそんなにリスクあるとは・・・。
颯馬「となると、不安要素が少ない島原から攻めた方が島津にとっていい選択になるな」
歳久「ええ。しかし、敵が筑後に攻めて来るという不安要素をどう解消するかが問題です」
確かにその通りだ。これを取り除かなくては島津が肥前を取ることは出来ない。
家久「としねえ。勢力を2手に分ければいいじゃないかな?そうすれば、向こうも戦力を分けざるをおえなくなるよ」
家ちゃんが歳ちゃんにそう進言する。確かに、2つに分ければ向こうも戦力を分散して対応をしてくるだろう。確かにいい案。
歳久「2つに勢力を分けるのは確かに効率よくいけるでしょう。しかし、敵がそれを逆に利用する可能性も少なくともあります」
歳ちゃんがそう言う。例え戦力を2手に分けても敵が片方に大人数で攻めればひとたまりもない。また、桶狭間のような戦法を向こうが取ってくる可能性も少なくない。何しろ、向こうには鍋島直茂がいるから、下手な行動は出来ない。
俺は、軍師として何とか解消する方法考えた。と、1つの案が頭に浮かんだ。
颯馬「歳ちゃん」
歳久「歳ちゃんって言わないでください。で、天城。何かいい案でも浮かんだのですか?」
歳ちゃんがそう言うと俺は頷いた。
颯馬「うん。ここは、同盟国である大友に協力を依頼して、佐賀城に攻めてもらうのはどうかな?そうすれば、こちらが優位となる」
俺がそう提案したのは、島津と同盟を結んでいる大友家の共闘依頼だ。島津が島原へ攻めて、大友が筑後へ攻める。そうなれば戦力を分散せずに済むし、向こうは2つの勢力と戦わざるをえなくなるので、こちらに流れは傾くだろう。
歳久「確かに大友宗麟らが協力してくれれば、龍造寺を倒すことは難しくなく、また戦いも早く終わらせれれるでしょう。しかし、大友宗麟が協力してもらえるかは不透明です。前のことは、島津で使われたたい肥や農具などをお礼代わりに大友家に渡しましたが、今回は大友家にはえられる得などありませんよ天城」
歳ちゃんがそう言う。前は、兵を国境においてもらうことだったが、今回は兵を出して戦ってもらうことだ。例え共闘しても向こうには得することなどない。前回みたいに農具とかそう言うものでは動いてくれない。
もちろん、徳川家康のような人も得がなくとも戦ってくれる人もいるが、基本的に得があるから動いてくれる人がいる。
颯馬「まあ、確かにそうだよ歳久。けど、龍造寺を倒すためには大友の協力が必要不可欠だ」
それでも、共闘する案を諦めきれない俺。すると今まで口を開かなかった義久が口を開いた。
義久「ねえ、歳ちゃん。颯馬くんがここまで言うから大友宗麟に共闘依頼出してみたらどうかな?」
義久が俺を後押しをしてくれた。
義弘「そうだよ歳ちゃん。協力するかしないかは、依頼を出してみなければわからないじゃない」
家久「そうそうひろねえの言うとおりだよ。共闘の依頼を出してみようよとしねえ」
弘ちゃんや家ちゃんがそう言う。
3人の言葉を聞いた歳ちゃんはため息を1回つく。
歳久「わかりましたよしねえやひろねえ、家久がそこまでいうなら仕方がありません。共闘の依頼を出して見ましょう」
歳ちゃんがそう言うと俺と義久、弘ちゃん、家ちゃんも喜んだ。
歳久「大友宗麟に共闘依頼の使者として、私と天城で行きます」
颯馬「俺も行くの歳久!?」
歳久「当たり前です。この案を出したのは天城自身なんですから」
そう言われて俺は「わかったよ」と頷く。
家久「それで、いつ出立するの?」
歳久「明日の朝にでも出立します。本当なら今日にも出かけたいところですけど天城はお休みをもらっていますからね」
歳ちゃんがそう言う。
義久「ふふふ。やっぱり歳ちゃんは、なんだかんだで優しいのね」
歳久「な、何を言っているんですかよしねえ!!」
歳ちゃんが慌てながら否定する。なんか慌てている歳ちゃんがかわいく見える。
歳久「と、とにかく天城!明日は早く出立しますからそのつもりでいてください!」
そういい残すとそういい残すと歳ちゃんは歳ちゃんは部屋を出て行った。
義久「まったく歳ちゃんは素直じゃないわね」
義弘「そうかな?」
家久「ひろねえも素直じゃないところあるじゃない」
義弘「そ、そんなことないわよ家ちゃん!」
弘ちゃんが慌てて家ちゃんにそう言う。
まあ、ともかく大友家に軍事協力を依頼して、承諾してもらい肥前を取りに行かないと。しかし、どうやって大友家に共闘させるか、俺はそれも考えたのであった。