島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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第2話改

今日は、軍議の日。軍議の間には、当主の貴久様、義久、弘ちゃん、歳ちゃん、家ちゃん、豊久はもちろん家臣一同、そして、軍師の俺もここにいる。

歳久「では、早速軍議を始めたいと思います」

そう言って軍議を進行させるのは、歳ちゃんである。

歳久「我が島津家は、大隈を全て制圧が終わり、残すは日向(現在の宮崎県)を残すのみです」

家臣2「日向だけとは・・・」

家臣1「あと少しで3州を取り戻すことができるな」

家臣3「日新斎様の夢もかなうのか」

家臣達がそう言う。

島津家は元々3州――つまり薩摩、大隈(現在の鹿児島県東部)と日向を守護とした大大名である。これは、島津が元々源頼朝の末裔と呼ばれている薩摩の一族で。室町幕府が開かれて以来この3州を島津家が納めていた。しかし、九州は戦国時代が始まる前から戦がたえない地。次第に3州の領土は豪族や他の大名家に奪われる始末。戦国時代が始まって以降は、小さな領地となってしまった。

しかし、そこに救世主として登場したのが先代の当主、島津日新斎様である。日新斎様は、周りの豪族を纏め上げて薩摩を統一、その後大隈、日向を半分まで取り戻し、残りの北部を攻め、このまま九州統一かと思っていたが、突如病気で他界してしまい、求心力は低下しせっかく取り戻した。日向、大隈も奪われてしまった。

薩摩は、貴久さまのおかげで国がバラバラにならずにすんだ。

日新斎様の元で4姉妹とともに勉強をしていた俺は、義久、弘ちゃん、歳ちゃん、家ちゃんは、その実力を発揮して大隈の領地を少しずつ奪い返して、つい先日大隈を制圧したのである。

日新斎様は、恩人である。見ず知らずの俺を孫のようにかわいがり、義久達とともに家族のように育てくれた。俺は、亡くなって以降もこの家のために全力で支えていくつもりだ。

義弘「それで、歳ちゃん。まず、何処から攻めるの?」

弘ちゃんがそう言うと歳ちゃんが口を開く。

歳久「まず、都城を抑えます。ここを拠点として日向を取りに行こうと思います」

家久「でも、そううまくいくかな?」

颯馬「それについては、問題ありません家久様。日向の南の地域は独立勢力が支配しています。そんなに強くないので南日向は、時間をそんなにかけずに島津家の領地となります」

家ちゃんにそう言う俺。なお、こういう公の場では、敬語を使って話す。

貴久「なるほど。しかし、南はいいとして北の地域はどうなんだ?」

貴久様がそう言う。

歳久「ええ。そこが問題です。北日向は、伊東家が堅く支配しています。落とすのは容易ではありません」

歳ちゃんがそう言う。伊東家、その存在は知らない。何しろ、歴史であまり知られていない家。でも、そんなことは関係ない。ここを抑えれば3州を取り戻せる。

家臣2「しかし、伊東家の後ろには大友家が控えている。日向が取られれば大友にとっては脅威となる」

家臣1「確かに」

家臣達がそう言う。大友か。その名を聞いてちょっと気が重い感じを感じてしまう。けど、今大友家の当主は、義鑑である。義鑑は、史実(‥)の宗麟と違い日向を取りに行く理由はないからな。

歳久「大友義鑑は、日向をそれほど重要視しておりません。それより今大友家では、お家騒動が起こりそうな雰囲気という噂があります」

家久「お家騒動?」

歳久「はい。現在大友義鑑には、娘2人と息子1人がいます。本来なら嫡子である大友宗麟が家督が譲られますが、大友義鑑は、宗麟より息子の塩市丸に家督を譲ろうとしています」

貴久「なるほど。それで、お家騒動になりそうな雰囲気だな。これは、伊東家に増援を送る余裕はないというわけか」

歳ちゃんの発言にそう言う貴久様。

やはり、このまま史実通りお家騒動が起こるのか・・・。

颯馬「・・・・・・・」

家久「どうしたのソウちゃん?」

家ちゃんが小声でそう言う。

颯馬「いや、なんでもないよ」

俺は、そう答えた。

歳久「とりあえず、まずは都城から攻め入ります。異議はありませんね」

歳ちゃんがそう言うと一同は黙る。

貴久「では、数日後都城に攻める。その日まで準備を怠らないように支度せよ」

全員「ははあ!」

そう言うと家臣達は軍議の間を出て行った。

貴久「出て行ったな」

貴久様が家臣全員が出て行ったことを確認する。すると・・・。

貴久「ふにゃ~」

だらしがない格好になった。

義久「お父さん、お行儀が悪いわよ」

貴久「悪くたっていいじゃない!」

義弘「もう少し家族の前で威厳をとれないのかな?」

貴久「家族の前ぐらいいいじゃないか!」

歳久「まったく・・・」

家久「呆れているねとしねえ」

豊久「まあ、当然と言ったら当然だよね」

貴久様の格好を見てそういう義久達。

颯馬「貴久様、もう少ししゃっきとしてください日新斎様も泣きますよ」

貴久「なんだ天城いたのか」

颯馬「いましたよ最初っから!」

貴久「別にいいじゃないか。父は別に気にしていないよ」

それを聞いて少し呆れてしまう俺。

歳久「天城の言うとおりですお父さん。これが、お祖父様の息子だと世間に知れたら威厳0は確実ですよ」

貴久「ちょっと、歳久。何よそれは、ひどいじゃない!」

歳ちゃんの言葉に反論する貴久様。

義弘「これで、お母さんが生きていたらもう少し威厳があったんだろうね~」

豊久「それには、同感です姉上」

弘ちゃんの言葉に頷く豊久。弘ちゃんたちのお母さん――つまり貴久様の奥様は2人いた。よく言う正室と側室である。正室方は、義久、弘ちゃん、歳ちゃん。側室方は、家ちゃんと豊久と腹違いなのである。2人の奥さんは戦で戦死したり、その傷で亡くなったと前に貴久様から聞いたことがある。

歳久「再婚してくれればもう少しよくなるかもしれませんね」

貴久「再婚!?でも、歳久。再婚したらその人がお母さんになるんだよ」

義久「あら、別にいいわ」

義弘「そうね」

歳久「お父さんが良くなれば再婚しても構いませんよ」

家久「確かに」

豊久「・・・・・・」

再婚について娘や息子たちはどうやら賛成ようだ。

貴久「ちょっと、誰も反対しないのかよ!あ、天城。お前はどうなんだよ!」

貴久様が俺に吹っかけてきた。

颯馬「義久『様』達がそれで言いというなら特に反対はしません」

俺は、貴久様にそう言う。ちなみに貴久様の前でも義久のことは一応様付け(強調するように)言っている。親しい呼び方や呼び捨てすると貴久様が暴れるので言わないことにしている。

貴久「天城までなんだよ!」

義久「あらあら、フフフフフ」

俺と貴久様のやり取りを見て笑う義久。

これが家臣達にも見せない島津家の日常なのである。




基本的に戦極姫で、主要武将になった家臣、または歴史的に有名な家臣以外は、家臣1とか家臣2と表現します。

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