島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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今回は、大友家の颯馬の妹・千熊丸の視点からお届けします。


第17話改

豊後国・府内城

拝見の間には、私を始め、義姉上、義兄上、鑑連様、鑑盛様、宗麟様、親貞様の6人が集まりました。

鎮理「薩摩、大隈、日向、筑後、肥後。とうとう島津が5カ国の大大名になりましたね義姉様」

鑑連「ええ。そして、肥前攻めに備えて、今は蓄えながら内政を進めているらしいです」

鑑連様が義姉上にそう言う。

鎮信「それにしても、颯馬たら、結構大胆な要求を俺達に出してきたな鑑盛殿」

鑑盛「ええ。私も、俺を見た時には、びっくりしました」

鑑盛様がそう言う。

実は、兄様は、阿蘇家に使者として向かわれた前日、宗麟様に当てて書状を送ってきたのです。

 

回想シーン

 

千熊丸「宗麟様、兄様は、何て言って来たんですか?」

書状を見ている宗麟様に私は問いかけた。

宗麟「どうやら、颯馬が阿蘇家に使者としていくらしい」

千熊丸「兄様がですか!?」

それを聞いてビックリする私。

鎮理「颯馬殿が阿蘇家に使者を向かうとは、どう言うことでしょうか義姉様?」

鑑連「大方、阿蘇家を調略するつもりでしょう」

鑑連様がそう言う。

鎮信「調略?なんで、阿蘇家を調略するのんだ?島津の軍勢なら調略せずとも倒せるはずなんだが・・・」

鑑盛「鎮信殿。おそらく、島津は龍造寺を警戒しているのでしょう。阿蘇家と戦い、その隙に攻められてしまえば元も子もありません。阿蘇家には調略し、力を温存させる、理にかなった考えです」

鎮信「なるほど」

鑑盛様の話を聞いて、私も親貞様、義姉上、義兄上も納得。でも・・・。

千熊丸「では何故、兄様が大友家に書状を?」

私は、素朴な疑問を宗麟様に聞く。

宗麟「『国境付近にいる軍勢をいつでも出陣できるよう準備しほしい』だって」

千熊丸「ちょ、調略する時に出陣できる準備をですか!?」

それを聞いてびっくりする私。すると、宗麟様は話を続ける。

宗麟「そうね。でも、これは明らかに脅しね」

鎮理「脅し?それはどういう意味ですか宗麟様?」

義姉上が宗麟様にそう言う。

宗麟「颯馬は、きっと阿蘇家に戦っても無駄という選択を全面的に出すつもりなのよ。そうなれば、島津だけでなく大友とも戦わなくてはならない。そんなことをすれば阿蘇家はあっという間とは言わないけど潰れるわね」

宗麟様がそう言う。

鑑連「では、国境付近に武将を派遣しませんと」

義母上がそう言うと私が手を上げる。

千熊丸「その役、私に任せてください鑑連様!」

私が鑑連様にその役を志願する。

鎮理「ほお、千熊丸が。やはり兄の株を上げるためにか?」

義姉上がそう言う。

千熊丸「ち、違います義姉上!私は、ただ大友家のためと思って・・・」

宗麟「千熊丸、そのような顔では説得力ありませんわ」

千熊丸「あ、あう~」

何も言い返せない私。

鎮信「しかし、千熊丸だけでは、少々心細いな」

鑑盛「では、私がその役をお引き受けしましょう」

鎮理「鑑盛様がですか!?」

鑑盛「はい」

宗麟「わかった。鑑盛、千熊丸を補佐しながら出陣準備をしなさい」

鑑盛「心得ました」

鑑盛様がそう言う。

こうして、私と鑑盛様は国境付近に向かいました。その後、阿蘇家が島津家に下ったことを聞いて、私はとてもうれしい気分になりました。

 

回想シーン終わり

 

宗麟「それにしても、島津が5カ国の大大名になってから活気がさらに良くなったね」

鑑連「ええ。島津は農業改革として、千歯扱きという物を普及させて効率化させ、米の石高を増やし、さらに麦を作らせています。なんでも健康的でよろしいようです。そして、九国を統一した暁には四公六民にするらしいです」

鑑連がそう言う。

鎮理「四公六民ですか?ですが、それだと税収が減るのではないでしょうか?」

鑑連「確かに税収は減るでしょう。しかし、島津は南蛮貿易に行っている場所に何らかの形で税を補う気らしいです」

鑑連様が義姉上にそう言った。

宗麟「それにしても、この農業改革といい、税といい。颯馬は、ずいぶんとやっているわね」

宗麟様の言葉を聞いて私は驚いた。

千熊丸「そ、宗麟様!今の言葉は、間違いないのですか!?」

宗麟「ええ、そうよ。颯馬が考えた案は、そのほとんどが実行されて、島津家の領内は豊かになっているわ。しかも、法に関しても、民にわかりやすいようにしているみたいだし。まったく、颯馬は戦だけでなく、内政面でも活躍するわ。く、義鑑をますます恨んで来たくなるわ」

宗麟様がそう言う。

鑑盛「宗麟様。内政という言葉を聞いて、1つそのことで思い出したことがあります」

宗麟「何かしら、鑑盛?」

鑑盛「はい。実は、先の一件で、阿蘇家を臣従すること成功したお礼として、島津家から千歯扱き、最新のたい肥、農具を大友家にくれるそうです」

鑑連「そは、本当ですか鑑盛殿!」

鑑連様の問いに頷いた鑑盛様。

鎮信「これで、少しは、大友家も豊かにできそうだな」

鎮理「そうですね兄上」

義姉上がそう言う。

宗麟「それはいいことね。この調子なら大友家が立ち直りそうね。そうなれば、島津が次の目標である龍造寺との戦いの時には大いに出陣できそうね」

宗麟様が扇子をあおりながらそう言う。

鎮信「宗麟様。それは、どういう意味ですか?」

宗麟「私の予想だけど、島津家――颯馬からきっと龍造寺に向けて兵を出してきてほしいと言われるかもしれないわね」

宗麟様が何処か嬉しそうな顔でそう言う。

鑑連「あ、宗麟様。話は、変わりますが」

そう言うと鑑連様が表情を変える。

鑑連「また、イタズラをしましたね」

宗麟「え、何のことかな?」

宗麟様が明後日の方角を見る。どうやら、図星のようです。

鑑連「宗麟様!いつもいつも、仕事のほとんどを私達に押し付けて、その裏でイタズラばかりです。今度という今度は許しませんわ!たっぷりとお説教しますわ!」

宗麟「また、お説教?鑑連、前にも言ったけどイタズラをしない私は、私じゃないと言ったんだけど・・・」

道雪「どんな性格だろうと、どんな理由だろうとイタズラをしてはいけないのです!いいですか、宗麟様。大体あなたはですね」

鑑連様が宗麟様をお説教を始める。

鎮理「やれやれ、義姉様の説教が始まったようね」

鑑盛「宗麟様も悪戯好きじゃなければ、立派な当主なんですけど・・・・・」

鎮信「同感です鑑盛殿」

義兄上がそう言う。

親貞「私、巻き込まれたくないので教会に行ってきます」

そう言って親貞様は南蛮寺へと向かっていた。

千熊丸「親貞様の言うとおりですね。ここは、私達も退散しましょう義姉上、義兄上、鑑盛様」

鎮理「千熊丸の言うとおりだ。さあ、私は稽古でもしてこよう」

鎮信「なら、俺が相手してやるぜ鎮理」

鑑盛「私は、書類の片づけをしてきますか」

そう言って私と義姉上、義兄上、鑑盛様は部屋を出て行った。

ちなみに、鑑連様が宗麟様へのお説教は、夕刻まで続いたらしいです。


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