島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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第15話改

島津が吉城に降伏勧告を出して、半刻後、相良義陽は降伏勧告を受け入れた。城は千人足らずの兵に対し、こちらは1万の兵。どうあがいても勝てるはずがない。さらに同盟を結んでいる阿蘇家は、大友家を警戒し兵を動かせられない。そこから悩んだ末、降伏することを決断たんだろう。

颯馬「さて、相良義陽の処置だけど、どうしようか?」

俺がそう言う。

相良家に関する取り扱いについて、俺、歳ちゃん、弘ちゃん、家ちゃん、豊久の5人で軍議を開き話し合っていた。

歳久「本来は、当主である相良義陽を挿げ替えて新体制の下で島津家のために働いてもらうのが一番の理想ですけど・・・」

義弘「何か心配事でもあるの歳ちゃん?」

歳久「ええ。肥後は元々阿蘇家と相良家が両家が不可侵の同盟を結んでいて九州の中でも穏やかな国です。このまま首を差し替えればこの関係は崩れて、島津に反発する勢力が出てくれば、それを討伐しなければなりません。そうなると肥前統一目前の龍造寺家が出てくる恐れがあります」

家久「確かに。反島津の勢力が阿蘇家と結託して、さらに龍造寺家が同盟を結べば長期化しちゃうもんね」

歳久「はい。いつまでも肥後にかかずらするわけにはいきません。ここは、相良義陽を含む全員を助命して、島津家に臣従してもらい人質なりなんなりを送ってもらうという事で手を打ちます。それの方が今後島津のためになります。これに異議がある人はいませんか?」

歳ちゃんがそう言うが、誰一人異議を唱えなかった。

歳久「では、この方向で調整を整えます」

歳ちゃんがそう言うと俺と弘ちゃんで吉城へ向かった。

 

 

 

 

島津家の使者が来たと聞いて、義陽は緊張の顔を引き締める。

場内には、おもぐるしい雰囲気となっている。島津家の条件次第では、明日の未来はないだろう。

そんなことを思っていた時、2人の人物が義陽の前に現れた。1人は青年、もう1人は少女、どちらも義陽とは同い年か少し下だろう。そして、この2人は島津家の代表格。

島津義弘と天城颯馬。

とりわけ、島津義弘は武芸にすぐれた島津貴久の次女である。

義陽「お初にお目にかかります。私が、相良家当主・相良義陽と申します」

丁寧に挨拶する義陽。

義弘「島津貴久の次女、島津義弘です」

颯馬「島津家、軍師天城颯馬です。以後お見知りおきを」

義弘と颯馬が礼儀よく挨拶する。

颯馬「今一度確認しますが、相良家は島津家に降伏するということでよろしいですか?」

颯馬の問いに義陽は頷く。

義陽「はい。相良家は全面的に島津に降伏し、以後島津家の指図に従います。それにともない私の命と引き換えに城内にいる兵士達の命をお助けしたいのです」

平伏する義陽が颯馬にそう言う。

冷静に保っているように見える義陽だが、内面は死ぬのを怖がっている。だが、一国一城の主として、兵達の命を守るためには自分の命を引き換えにしなければならない。そう思っていた時に颯馬が口を開く。

颯馬「義陽殿の兵士思いは感服しました。しかし、ながらそうはいきません」

義陽「っ!?」

その言葉を聞いて愕然とする義陽。もしダメなら討ち死に覚悟で一戦するのみの覚悟はあった。

颯馬「兵士だけでなく義陽殿も生かした上で、島津家の臣従となっていただくのが第1条件です」

義陽「な!?」

それを聞いて驚く義陽。

義陽「何故、私まで助命をするのですか?」

颯馬「軍議で話し合いの上で決めたことです。どうか、深く追求しないでください」

颯馬がそう言うと義陽は深く追求しなかった。

島津側には、義陽を失うと困る理由があるらしい。それがわかっただけでも今後の身の振り方を考える事ができるようになる。

その後、島津家が相良家に対し、小大名並みの石高を残したのは言うまでもない。

 

 

 

 

翌朝、義久と貴久様が到着し、状況を報告した。

貴久「わかった。歳久の決めたことだ。そうしたまえ」

島津兵1「は、かしこまりました」

そう言うと兵士は、立ち去った。

貴久「ねえ、義久!結局、俺の出番なかったね~」

いつもの貴久様の口調で義久にそう言う。

義久「あらあら、お父さんたら」

義久がそう言う。

義久「それで、どうするお父さん。残るは、阿蘇家のみだけど?」

貴久「そうだな。このまま相良家を連れて阿蘇家を潰しにいくか」

貴久様がそう言う。

颯馬「貴久様」

貴久「あ、天城。いたのか」

さっきからいましたよ!

義久「どうしたの颯馬くん?」

颯馬「あまり連戦をすると島津の兵が疲弊します。それに隣の龍造寺家が有馬家に活発的に攻撃を仕掛けています。下手に阿蘇家と戦い、島津が疲弊した隙に攻められれば下も子もありません。ここは、阿蘇家に調略をしたらよろしいかと」

貴久「調略?」

颯馬「はい。孫子の兵法にも『百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり』と書いてあります」

貴久「なるほどね。じゃあ、阿蘇家は調略で行くか。それで、阿蘇家の使者として天城、お前が行ってくれ。いいだしぺだからね」

貴久様がそう言う。

義久「もう、お父さんたら。何も颯馬くんが使者にしなくても」

貴久「いいじゃないか。それに義久はもちろん、義弘、歳久、家久、豊久に使者は立てさせないからね。天城以外にこんな大役を任せられないからね」

貴久様がそう言う。相変わらず、過保護だな~。

義久「ごめんね、颯馬。こんや役を任せられちゃって・・・・・・」

颯馬「いえ、そんなことはありません義久「様」。必ずや、成功させて見ます」

そう言って俺は、部屋を出て行った。

そして、俺はあるものを書いて、それを伝令に渡しあるところへやるよう指示を出す。その後、支度をした俺は阿蘇家に向けて出立した。


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