島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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第14話改

同盟を結んでから1ヵ月後、ついに肥後へ軍勢を動かした島津家は、相良家の居城・吉城へ攻め始めた。

伝令兵「申し上げます。島津が吉城へ軍勢を動かし始めました!」

伝令が義陽達にそう言う。

相良家家臣1「それで、敵の数は?」

伝令兵「およそ1万5千!そのうち先鋒隊として、2つの部隊が5千ずつの分かれて、こちらへ進撃しています」

伝令兵がそう言う。

相良家家臣2「1万5千か。我が軍は5千か」

相良家家臣3「籠城して戦うべきです!」

相良家家臣1「籠城だと!?籠城して何になるんのか!阿蘇家は助けにこんぞ!」

相良家家臣2「では、野戦するつもりか?それこそ無謀すぎだ!」

相良家家臣3「阿蘇家は大友家が国境付近に兵を置かれて動けない以上、そうするしかない!それに、先鋒隊は2つずつ分けた。しかも1部隊5千だ。勝ち目はある!」

相良家家臣1「それでも、籠城するべきだ!」

家臣達が籠城派と野戦派がお互いそう言い争う。義陽は、そんな意見をいいあいを聞いていた。

義陽「静まってください!」

ついに義陽が口を開くと家臣達は黙った。

義陽「いろいろと意見がありましたが、私は野戦をして、島津をある程度被害を出して籠城するのはどうでしょうか?」

義陽がそう言うと家臣一同は反論はなかった。

こうして、義陽の決断を尊重した家臣達は具体的な作戦を決めて、その後島津を迎え撃つため出陣した。

 

 

 

 

肥後へ進軍していた先鋒を担当する2つのうち1つを俺、歳ちゃん、家ちゃん率いる5千百の兵は、順調に進んでいた。

歳久「今のところ順調ですね」

家久「そうねとしねえ。敵影もないし、このまままっすぐ行けば夕刻頃には、この山を越えれるね」

家ちゃんがそう言う。でも、こんな穏やかだと逆になんかなんか怪しい気がする。

颯馬「ねえ、歳ちゃん」

歳久「歳ちゃんと呼ばないでください。それで、何ですか天城?」

颯馬「順調に兵を進めているけど、順調しすぎていない?なんか不自然なぐらいに」

歳久「天城もそう思っていたのですか?」

颯馬「と言うと歳久も?」

歳久「ええ。でも、尖兵に確認をとらせましたが何も異常もありませんでした。異常がなければこのまま進んでもいいですけど、何故だか知りませんけど嫌な予感がします」

歳ちゃんがそう言う。

根拠はないのにこんなことを言う歳ちゃんは初めてだ。

俺は、考える。このまままっすぐ進むべきか、それとも時間はかかるが迂回して進軍するべきか。

家久「どうしたのソウちゃん?」

そこに家ちゃんが俺のもと来る。俺は、家ちゃんにさっきの話を話す。

家久「ソウちゃんもとしねえもそう思っていたんだ」

颯馬「と言うことは家ちゃんも?」

家久「うん。こんなにもの静けさ。もしかしたら、敵の罠かもしれないの。だから、ソウちゃん、ここは遠回りしてでも進軍しよう」

歳久「私も家久の意見に賛成です」

家ちゃんと歳ちゃんがそう言う。

颯馬「わかったよ歳久、家ちゃん。このまま迂回しよう」

俺がそう言うと歳ちゃんは、兵に状況を説明し、再度確認した。城を出る時、吉城へ向かうにはこの道しかないと思っていたけど、近隣の村人の話によるとこの林道があると言う。

歳久「・・・ということで当初の予定では地図に載っていたこの道を通る予定でしたけど、それ故敵にも知られている可能性もあります。そこで、これより、この林道へ進みます。こちらは敵兵に知られている可能性も低いです。少し狭いですけど我慢してこの道を進んでください」

歳ちゃんの意見に反対するものはいなかった。

家久「それと、このことはあとから来るひろねえ達に伝えてくれない?」

島津兵1「はあ!お任せあれ」

家ちゃんがそう言うと兵は後から来るもう1つの先鋒隊の弘ちゃん、豊久の隊へ向けて走り出した。

その後、俺らは林道へ向かい、目的の場所へ進んでいた。途中何度か迷いそうになるも歳ちゃん、家ちゃんのおかげでなんとかなり、そして、ようやく当初の予定の場所の近くまで到着した。

颯馬「ふぅ~。なんとか予定通りついたぞ。あとは弘ちゃん達と合流次第吉城攻めに入るぞ」

俺がそう言う。

島津兵2「軍師殿!」

そこに兵がやって来た。

颯馬「どうしたんだ?」

島津兵2「この少し先に相良軍3千5百を発見しました」

兵がそう言う。

歳久「そうですか」

冷静に歳ちゃんがそう言う。

島津兵2「あ、それからもう1つ。先ほど変更した道ですけど・・・」

家久「あ!最初に通ろうとしていた道だね」

島津兵2「はい。どうやらその道に伏兵1千が潜んでいて待ち伏せしていたようです」

その報告を聞くと俺と歳ちゃん、家ちゃんが驚く。じゃあ、もし、あのまま進んでいたら敵の挟み撃ちにあっていたかもしれないのか。慣れない地形と援軍も到着していない状況では全滅していたかもしれない。俺は、思わずゾッとしてしまう。

歳久「それで、伏兵は?」

島津兵2「こちらの動きを知り慌てて追いかけてきたところを義弘様、豊久様の隊と出会い頭となりそのまま返り討ちにしたとのことです」

歳久「そうですか。では、向こうにいる相良軍には・・・」

島津兵2「多分、報せは入っていないと思います」

兵がそう言うとニヤリと顔をする。

歳久「全軍、このまま相良軍へ突撃します。島津をなめてかかったことを思い知らせるのです!」

兵達「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

そう言うと兵らが走り始めた。

歳久「さて、私たちも行きますか」

家久「うん」

颯馬「弘ちゃん達が伏兵を倒したんだからな。こっちは、向こうの兵を倒しに行くか」

そう言うと俺と歳ちゃん、家ちゃんは兵達のあとに続き突撃していた。

 

 

 

 

相良家家臣1「まだかな?」

相良家家臣2「伏兵どもは何をしているんだ」

いらだつ家臣達。島津の先鋒部隊があの道を通れば必ず伏兵どもの奇襲にあい、そして狼煙を上げて義陽らの隊が叩く予定であるが、その肝心な狼煙は一向も上がらない。島津家の先鋒を撃退して、相良家に有利な条件をもたらしたいと思っている。

そんな時だった。

『ウワアアアァァァァァーーーッ!!』

島津の兵の雄叫びをあげる声が義陽らの隊まで聞こえてきた。

相良家家臣3「なんだこの声は!?」

相良兵1「大変です!?島津の奇襲です!」

相良家家臣2「奇襲だと!?伏兵部隊は何をしていたんだ!?」

混乱する義陽の隊。

相良家家臣1「義陽様、お逃げください!」

義陽「そんなのダメです。家臣を置いて逃げるなど主君としてあってはならないことです」

相良家家臣2「義陽様。どうか、どうか、お逃げください」

強く進言する家臣達。

相良兵2「まもなく、島津軍の隊がこちらの本陣へやってきます!」

そう報告が入った。島津の勢いでは、隊を保つことが出来ない。

相良家家臣1「義陽様、義陽様が吉城へ逃げ込めばまだ勝機はあります。ですから、早く」

家臣が懸命の説得についに義陽の心は折れた。

義陽「わかりました。では、ここは任せました」

そう言うと数名ばかりの人数で義陽は本陣を抜け出した。

相良家家臣1「さあ、皆の者。ここは、なんとしてでも抑えるぞ!義陽様が城へ逃げ込むまでは時間を稼ぐんだ!!!!!!!!」

そう叫び相良隊は、島津軍と戦った。

始めのうちは島津が押されていたが、もう1つの先鋒隊である義弘、豊久が合流して、相良隊を壊滅させた。

その頃には、すでに義陽は吉城へ逃げ込んでいたのであった。

しかし、その数刻後、島津1万の隊が吉城を包囲したのは、言うまでもなかった。

 

 

 

 

歳久「吉城を完全に包囲しましたね」

歳ちゃんの問いに俺は頷く。

家久「敵は、これからどうするかな?」

豊久がそう言う。

豊久「当然、籠城する気でしょうね。不可侵を結ぶ同盟国・阿蘇家が来るまでは」

義弘「でも、阿蘇家は大友家がきっちりと抑えてくれているから大丈夫じゃないの?」

歳久「いいえ、ひろねえ。大友はけん制するために国境付近に兵を置いてくれたのです。阿蘇家がそれに気づけば、遠慮なく兵を派遣するつもりです」

弘ちゃんの問いにそう答える歳ちゃん。確かに、宗麟にはけん制するために兵を置いてほしいと入ったけど、戦ってほしいとは言っていない。このことに阿蘇家が気づけばきっと兵を動かすだろう。そうなれば、ますます抵抗するだろう。

豊久「伏兵との戦いやさっきの野戦で兵に被害が出ているから攻城戦は、お父様とよしねえちゃんの隊が着てからやるべきかな?」

豊久がそう言う。1万5千の兵で出陣した俺らだが、隊を3つに分け、弘ちゃん、豊久隊と歳ちゃん、家ちゃんの俺の隊の2つに分けた先鋒隊として、進撃して敵を倒す。そして、義久と貴久様の本隊を通らせて城攻めへ移るのだ。この策は歳ちゃんの案で。一気に1万5千を城へ向けて行くと途中で狭い道がいくつもある。そんなところに大軍が入り込めばいい餌となり、部隊に被害を与えしまいかねないので、3つに分けて進むことを提案し採用されたのだ。流石歳ちゃんだな~。

家久「ねえ、ソウちゃんは、どうするべきかなこの状況?」

そんな時に家ちゃんが俺に話しかけてきた。

颯馬「そうだね。1回降伏するように呼びかけたらどうかな?向こうも先の戦いで疲弊しているし、それに命をとらないことを条件にすれば応じるかもしれないよ」

俺がそう提案する。

歳久「そうですね。では、早速敵に降伏するよう呼びかけましょう」

歳ちゃんがそう言うと兵に敵に降伏するように指示を出して向かっていった。

 

 

 

 

吉城・軍議の間

相良家家臣4「島津家は我が城を完全に包囲してしまった。これからどうするべきか?」

相良家家臣5「伏兵や先ほどの戦いで我が軍は疲弊してしまい、この城にも1千足らず。籠城するべきかな?」

相良家家臣4「しかし、あと5千の兵がこっちに来ます。そうなれば、いくら攻城戦でも簡単に落とされてしまいます」

相良家家臣5「ん・・・・」

家臣らがそう言う。

そんな時だった。

相良兵3「申し上げます」

相良家家臣4「どうした!?」

相良兵3「たったいま、敵方から降伏するよう勧告してきました」

兵士がそう報告する。

相良家家臣4「降伏勧告か」

相良家家臣5「義陽様、いかがしましょうか?」

家臣の1人が義陽にそう言う。

義陽「私は、当初悪あがきをしてで、島津家を退けようとしましたけど、私の判断で、たくさんの兵を失ってしまいました。例え籠城しようとしても、1万5千兵では1週間も持たず落ちてしまいます。私は、これ以上強情続けて兵を失うわけには行きませんので、この勧告を受け入れます」

義陽がそう言う。その発言に誰1人反対しなかった。

こうして、義陽は、島津に降伏したのであった。


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