大友と同盟を結べた島津が次に狙ったのが肥後国である。
肥後は、相良家と阿蘇家の2つの代表格が支配している。この2つはお互い不可侵条約を結んでおり、そのせいか肥後は比較的九州の中では、穏やかな方である。
その肥後を攻めるのに辺り、俺と歳ちゃんは話し合いをしていた。
颯馬「さて、どう肥後を攻め落とすか?」
歳久「そうですね。まずは、国境に接している相良家を倒すべきですね。相良義陽は、それほど強くないのでそう苦戦はしません。阿蘇家もそんなに実力はありません。けど・・・」
颯馬「甲斐宗運だね歳久」
歳久「ええ」
俺の問いにそう言う歳ちゃん。相良義陽の後ろには、阿蘇家と言うより阿蘇家の家臣・甲斐宗運の存在である。宗運は、相良義陽とは、家は違うが親友関係である。この関係は周囲が認めるぐらいである。
颯馬「甲斐宗運がいる阿蘇家には、宗麟に頼んで抑えてもらおうか」
歳久「宗麟にですか」
颯馬「ああ。大友家が出てくれば、阿蘇家もそう簡単に動けないし相良家を落とせるはずだ」
歳久「確かにそうですが、この件に大友家がうんと頷きますかね。いくら、天城と宗麟の仲でも、私的では兵を動かせませんよ」
歳ちゃんがそう言う。
颯馬「心配するな歳久。宗麟には阿蘇家をけん制してくれるだけでいいと書いておくよ」
歳久「そうですか、わかりました」
颯馬「じゃあ、これで決まりかな?」
歳久「ええ。この方針でいいと思います」
歳ちゃんがそう言う。
颯馬「じゃあ、俺は宗麟に手紙を出してくる。歳ちゃんは、貴久様をお願いするよ」
歳久「歳ちゃんって言うな!」
そう言うと俺は、一目散にその場を後にした。
■
豊後国・府内城
宗麟「・・・・・・」
鎮理「宗麟様、颯馬殿は何と言ってきたんですか?」
義姉上が宗麟様にそう尋ねる。
宗麟「『阿蘇家を動かせないように国境付近に兵を置いて、けん制するだけでいいからお願いします』と書いてあるわ」
宗麟様がそう言う。
鎮信「じゃあ、島津家は・・・」
宗麟「ええ、肥後に進出するわ。それにしても、けん制か。別に遠慮しないで軍勢を出してあげてもいいのにね~」
宗麟様がそう言う。
千熊丸「まあ、とにかく兄様の書状通りにけん制させましょうか阿蘇家を」
鎮理「おや?千熊丸は、はりきっているな。もしかして、兄の株をあげたいのか?」
千熊丸「そ、そんなんじゃあないです。兄様は、島津の軍師です。家が違う私がどうして兄様を・・・」
鎮信「千熊丸。それじゃあ、言い方は説得力ないぞ」
千熊丸「う~」
鑑連「まあ、とにかく阿蘇家の国境付近に兵を出来るだけおいてけん制させましょう」
宗麟「お願いするわよ鑑連。それと、鑑盛、あなたも鑑連と千熊丸を手伝ってあげてちょうだい。」
鑑盛「かしこまりました宗麟様」
そう言うと鑑連様と鑑盛様は、早速兵を集めに行った。
■
ここは、肥後国人吉城のお膝元にある屋敷の一室で2人の女性がいた。
「宗運、こんな時に呼び出して」
「いや、そんなことはないわ義陽」
2人がお互いそう言う。
ふわりとした柔らかい印象の女性は、相良家現当主・相良義陽である。そして、赤い髪と怜悧な容貌が人目を引く女性は、阿蘇家現当主・阿蘇惟将の家臣、甲斐宗運である。
義陽「先日、物見から島津家がいよいよ攻めて来るらしいの」
義陽がそう言う。
宗運「ついに島津が動くのか。まさか、ここまで急成長するとは思わなかったわ」
厳しい顔をしながらそう言う宗運。
義陽「それで、阿蘇家はこれからどうするの?」
宗運「うちは、相良家と戦いたいと思っているけど、大友家が国境付近に軍勢を置き始めて動くことが出来ないんだ」
義陽「そうなの。それにしても大友と島津が手を組むなんてね」
宗運「ああ、それさえなけば大友と同盟を結んで相良家を助けれるんだけど・・・・」
義陽「いいわよ宗運。こっちは簡単にやられるつもりはないわ」
宗運「けど、厳しい戦いになるわよ」
宗運がそう言う。
義陽「覚悟を決めています。絶対に死守するつもりよ」
義陽がそう言う。朗らかな人柄の割りは、覚悟を決めていた。
島津と大友の大大名が脅威さらされている中、義陽は負けないことを誓った。そのたくましい姿を見た宗運は、少し一安心するのであった。