島津家の天下取り物語   作:夢原光一

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第10話改

貴久「・・・・・・・。ここに書いてあることは本当なのか?」

島津兵1「はい。大友宗麟殿がこの条件を飲んでくれさえすれば同盟を結び、今後、島津家とともに戦うと」

貴久「ん・・・」

兵士さんにそう言われるとお父さんは黙って考え込む。

先ほど、兵士さんが本陣に飛んできた。内容は、大友宗麟が同盟を結びたいという話である。この話を持ちかけたのは、颯馬くんらしい。もちろん、この話歳ちゃんや弘ちゃんも賛成していると兵士さんがそう言っていた。あとは、お父さんが頷けばこの話まとまるんだけどね。

貴久「悪いが、少し考える時間をよこしてくれないか?」

そう言うと兵士さんは、後ろに下がって本陣を出て行った。

貴久「天城め、勝手にこんな話を宗麟なんかに持ちかけるなんて!」

家久「でも、お父さん。条件さえ飲んでくれれば島津家と一緒に戦ってくれるんでしょう。それに、これ以上、戦わなくってすむじゃない。だったら、いい話じゃない」

豊久「それに、ひろねぇちゃんやとしねえちゃんの了解ももらっているしいいんじゃないかな?」

貴久「・・・・・」

義久「お父さん、もしかして、宗麟が出した条件は飲めないの?」

貴久「いや、条件はそんな難題じゃない。『豊後1国の所領安堵と吉弘千熊丸を使者として臼杵城の派遣。筑後を1国島津に譲る』という条件だよ」

お父さんがそう言う。

家久「条件は、悪くないみたいね」

義久「じゃあ、どうして2つ返事しなかったの?この条件、別に島津に不利という訳じゃないし」

私がお父さんにそう言うと口を開く。

貴久「会見が嫌だから」

豊久「そんなことですか?!」

貴久「そんなことじゃないよ。正式に同盟を結ぶことになれば宗麟と会見しないといけないし。時間かかるし、疲れるんだよ!」

家久「お父さん、それじゃあ、ただこねる子供じゃない」

貴久「だって、本当のことだもん」

義久「お父さん、そんなこと言っちゃあダメだよ。颯馬くんの面子が丸つぶれになるわよ」

貴久「天城の面子なんてつぶれてもかまわないわ!」

お父さんたら。しょうがないわね。

義久「お父さん、こんな理由で同盟を結ばないと歳ちゃんにいいつけるからね」

貴久「え?!」

それを聞いてビックリするお父さん。

家久「としねえが聞いたらどうなるかな?」

豊久「多分ひどい目にあうんじゃないかな?としねえちゃん、怒らせると何をするかわからないからね」

豊ちゃんがそう言う。

貴久「(歳久を怒らせたら、きっと義久の料理を食わされる!)」

お父さんが私を見ながら震える。何で、私を見て震えているのかしら?

貴久「わ、わかったよ、この同盟を受けるよ」

義久「よかったわ」

家久「うん」

豊久「じゃあ、兵士を呼んでくるね僕」

そう言って豊ちゃんが兵士さんを呼びに言った。

これで、戦も終わるわね~。

 

 

 

 

翌々日、臼杵城内

鎮理「義姉様!義姉様!」

鎮理が廊下を走りにながら鑑連、鎮信、鑑盛がいる部屋に入ってくる。

鑑連「どうしたんですか鎮理?」

冷静をたまもつ鑑連が鎮理に問いかける。

鎮理「義姉様、兄上、鑑盛殿!先ほど城門にて、千熊丸が来たんです!」

鎮信「千熊丸がか!?」

鎮盛「それは、誠ですか鎮理殿?」

それを聞いて驚く鑑連、鎮信、鑑盛。先日、千熊丸は宗麟と親貞とともに府内城にて捕縛されたと言う情報があったこともあり、鑑連達が驚くのも無理はない。

鑑連「とりあえず、通してくださいと言ってください」

鎮理「わかりました!」

そう言うと鎮理は城門へと急いで向かう。

そして、しばらくすると千熊丸が鎮理と共にやって来た。

鑑連「千熊丸、無事でしたのね」

千熊丸「はい。宗麟様も親貞様も府内にいますけど、丁重に扱われています鑑連様」

千熊丸がそう言う。

鑑盛「千熊丸殿。ここへ来たと言うことは島津の使者として、来たんですね」

鑑盛がそう言うと千熊丸は頷く。千熊丸が牢を破るという可能性はない。その場合、宗麟の命が危うくなるからだ。そして、この城の回りには、島津兵がうじゃうじゃいる。入ることは容易ではない。

そして、残る可能性は、ただ1つ島津に頼まれて使者を買って出た。それしかない。

千熊丸「鑑連様、まずはその文をお読みください」

そう言うと千熊丸は、手紙を鑑連に渡し、鑑連は、文を読む。そして、一通り見て千熊丸を見る。

鑑連「ここに書かれていることは本当ですか?」

千熊丸「はい。すでに宗麟様も承諾しています。また、島津貴久もこの条件を受け入れました」

千熊丸がそう言う。

鎮信「鑑連殿、その手紙には何と書いてあるんですか?」

鎮信が鑑連に聞く。

鑑連「宗麟様は、島津と同盟を結び、今後島津とともに戦っていくと。さらに、宗麟様は同盟と引き換えに、豊後1国の所領安堵、吉弘千熊丸の臼杵城への使者派遣、筑後1国を島津に譲る。この3つの条件を島津が飲んだので、戦は停戦し、臼杵城にいる私達に投降するようにという内容です」

鑑連が鎮理にそう説明する。

千熊丸「義姉上、義兄上、鑑連様、鑑盛様。どうか投降してください。でないと、兄様の面目に泥を塗ってしまいます」

千熊丸がそう言う。

鎮信「兄様って、どういう意味だ千熊丸!まさか、颯馬が島津方にいるのか!」

鎮信が千熊丸にそう言う。

鑑連「やはり、この件は颯馬殿が持ち出したのですね」

鑑盛「え、鑑連殿。颯馬殿が島津にいたことご存知だったんのですか!?」

鑑連「ええ。ついこの間ですけどね。まあ、颯馬殿は、私達を助けるために持ち出したんでしょうね。なんらかの言う形で」

鎮理「まったく。颯馬ときたら、敵方になっても、私達のことを思っているとは~」

鎮理と鑑連がそう言う。

千熊丸「それで、鑑連様。ご返答は?」

鑑連「宗麟様の顔に泥を塗るわけにはいきません。大人しく投降します」

千熊丸「ありがとうごさいます鑑連様!」

こうして、鑑連、鎮理、鎮信、鑑盛ら兵達は投降し、臼杵城は無血開城となった。

 

 

 

 

そして、2日後。鑑連殿、鎮理殿、鎮信殿、鑑盛殿が臼杵城から府内城に移送されて、そして、拝見の間で宗麟、親貞、鑑連殿、鎮理殿、鎮信殿、鑑盛殿、千熊丸と貴久様、義久、弘ちゃん、歳ちゃん、家ちゃん、豊久、そして、俺の計14人で会見を行うことになった。

宗麟「島津貴久殿ですね。私は、大友宗麟です」

貴久「あなたが宗麟殿ですか。お美しいですね」

宗麟「まあまあ。お世辞がうまいこと。あなたも歳をとっている割にはお若いですね」

貴久「いや、それほどでも」

宗麟と貴久様がお互いそう言う。

貴久「まあ、世間話はいいとして。宗麟殿、先の件のことですが」

宗麟「ええ。もちろん、この同盟正式に結びたいと思います」

宗麟がそう言う。

貴久「では、これからは島津とともに九国統一を目指し協力してくれますね」

宗麟「あらあら、視野が狭いですね。九国統一と言わず天下統一まで軍事協力しますわ」

宗麟が貴久様にそう言う。

貴久「天下統一ですか。アハハハ、宗麟殿は噂通りのお方だ」

宗麟「ほ~、それはどのような噂ですかな?」

貴久「悪戯好きだが余人の及ばない才覚を有した天才肌の武将だと」

貴久様がそう言う。

宗麟「悪戯好きだが余人の及ばない才覚を有した天才肌の武将ですか。まあいいですわ、それで同盟先立ち、私の条件ですけど」

貴久「ええ。その条件を飲みましょう」

宗麟「そうですか。では、筑後は島津にお譲りします」

貴久「わかりました。では、宗麟殿」

宗麟「ええ、お互いこれから協力しましょう」

そう言うと宗麟と貴久様は握手する。こうして、大友と島津は同盟を結び、これを後に薩豊同盟(さつぶんどうめい)と呼ばれるのであった。




次の更新日は、来月1日です。

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