今回は前回のifとは違った正規ルート(?)を通ります
それでは今回も
暗い、暗い真っ暗な世界の中で俺は落ちていた。
どんどん下へと落下していく様なそんな気分、落下感、不思議と恐怖は無かった、黒色しか見えない世界の中誰かが見えてくる。
それは腕が鎌の妖怪だった、次に手が六本ある妖怪が出てくる、次に三つ目小僧が出てくる。ああ……………アイツ等は俺が殺した妖怪達か。
三つ目小僧は俺が殺した様な物だからな、ってことはここは地獄? 俺は今地獄の中に居るのか?
考えても頭の中で浮かび上がるのは「わからない」、そんな中急に下降感が止まり空中の中逆さまにピタリと止まる。何だ? 何が起きるんだ?
俺が殺した妖怪達が手招きして来る。ああ……………今行くよ、少し待っていてくれ。
空中の中で俺は妖怪達の方へと歩み始める。空中なのに地面がある様な感覚、不思議な感覚の中一歩一歩と歩みを始める。
だけど…………………不意に誰かに手を掴まれる。誰だ、誰だお前は、妖怪達の所に俺は行かなきゃいけないんだ放してくれ。
だが声は出ない、ヒューと空気が抜ける様な音しか出ない中なすがままに手を引っ張られる。妖怪達が段々と小さくなっていく……………。
妖怪達が見えなくなってきた、突然に手を放される開放感。睨みつける様に俺の手を引っ張っていた奴を見ると……………………。
俺の手を引っ張っていた奴の正体は真っ黒な世界の中真っ黒な花柄の着物を着ている女性だった。赤色の帯びと桃色の花柄がかろうじで見える。
何をするんだと怒鳴りつけてやりたいが声は先程と変わらず出ない、空気の漏れる音しか出せない俺を嘲笑うかの様に着物の袖で口元を隠す女性、小刻みに黒色のロングヘアーの髪が揺れる。
恥ずかしさやら怒りが混ざり何とも言えない感情になりながら睨み続ける俺の額に向かって人差し指を指しながら女性は口を開いた。
「お休みの時間は終わり、そろそろおはようの時間だよ」
するとまたも下に落ちていく落下する様な感覚、女性が段々豆粒みたいに小さくなっていく中、今まで詰まっていた言葉が抜き出る様に出てくる。
俺の喉からするりと通り出た言葉は暴言でも無く泣き言葉でも無い。
「 」様だった。
誰かの名前の様だが空白の中に言葉が当てはまらない、あの女性はもう見えなくなっている筈なのに……………………綺麗な笑みが見えた様な気がした。
落下感が終わり景色に色が付き始める、色とりどりの本が並べられた大図書館の机の上に俺は横たわっていた。
だるい体を無理やり起こし横を向く。そこには八卦炉を構える魔理沙と槍を構えるレミリア、剣の様な物を構え今にも戦闘が始まりそうな雰囲気の中俺はポツリと一言。
「どんな状況だこれ?」
全員の目線が一斉に俺へと向けられた。
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一斉に翔の方へと目線が向けられる。
誰もが信じられないという様な表情で見つめてくる。魔理沙が、レミリアがフランが手に持つ得物を地面へと落とす。
魔理沙が両手で口元を隠しながら泣きそうな表情でヨロヨロと翔の方へと向かう。その足取りは危なっかしく今にも転びそうな足取り。
翔が居る机へと危なげに到着し机に手を掛けながら力尽きた様にへたり込むと小さな声で、震える声で確かめる様に口を開く。
「ほ………本当に翔なの?」
今にも泣きそうな表情の魔理沙に翔は笑いながら言った。
「正真正銘の斎 翔だよ、それ以外の何者でも無い」
その言葉を聞いた瞬間魔理沙が飛びつく様に抱きついた、涙を流しながら大声で。
先程の涙とはまるで違う涙。力一杯と言った感じに抱きつきながら瞳から大粒の涙を流し続ける魔理沙を安心させる様に抱き返す。
小柄な彼女の身は力強く抱き返したら折れてしまいそうに脆く、優しく抱き返す事しか出来ない。
そんな穏やかな時間がどれくらい経っただろうか、翔がチラリとレミリア達に目線を戻す。レミリアとちょうど目が合いビクリと体を震わせる。
抱きつく魔理沙を一旦放すと涙で顔がグシャグシャになっていた、頭を一回優しく叩くとレミリア達の元へと歩く。
魔理沙とはまるで違う。フラフラとした足付きなどでは無く一歩一歩を踏みしめる様に力強く向かう。
一歩、また一歩と歩く度にレミリアとフランが体を震わせながら少し後ろに下がった、まるで翔を怯える様に体を震わせる。
咲夜とパチュリーは空気を読んだのか怯える二人から離れ距離を取る。後ろに居る魔理沙までもが鼻を啜りながら見守っていた。
手が届きそうな距離になると寒さに身を震わせる様にガタガタと震えながら目を瞑る二人に………………思いっきりチョップを食らわした。
顔を俯かせながら静かに痛みを噛み締める二人。いつまでも怯えているレミリアとフランに業を煮たしたのか思いっきり怒鳴りつける。
「御二人共姉妹同士で殺し合いをするなんて何考えてるんですか!!!!」
紅魔館全体に響き渡る様な大きな怒号、罵詈雑言を言われるかと思っていた二人は予想外の言葉に思わず顔を上げる。
顔は赤色の涙に染まっており頭から大量の血を出血しているのかと思うほど赤く染まっていた、だがそんな物は意にも介さず二人を怒鳴りつける翔。
「姉妹同士で殺し合うなんて狂気の沙汰ですよ!? 本当に何考えてるんですか!!全くですから…………」
余りの怒りに後半の言葉が意味のわからない言葉へと変わっていく、そんな翔をフランとレミリアを除く三人は笑っていた。
相も変わらずポカンとした表情を浮かべる二人は赤色に染まった顔で口を開く。
「翔…………怒ってないの?」
「怒ってますよ!! 何でこんな怒鳴ってるのに怒ってないと思うんですか!?」
「いや…………私達翔の事…………その…………殺そうとしちゃって……………だから………」
「ああそのことですか」
涙を流しながら言葉を必死に繋げる二人を見て納得した声を上げる。
別にそんな物はどうでもいいと言わんばかりの口調で翔は言った。
「別にこうして生きてるんですからどうでもいいですよ、もし死んだら怒ってたでしょうね」
翔の言葉がおかしかったのか口を押さえながら笑いを零す咲夜、何時ものポーカーフェイスぶりが消えた様な表情だった。
フランが不安そうにおずおずと口を開く。
「………………私達の事嫌ってない?」
「嫌うはず無いじゃないですか、御二人は今も大事な主君ですよ」
即答する様に、考える必要も無いと言わんばかりに答える。その言葉を聞き安心しきったのかヘタヘタと地面に座り込み泣きじゃくる二人。
そんな二人に赤子をあやす様にしゃがみ込み笑顔で頭を撫でる。
いつも静かな大図書館は泣き声と笑い声に包まれました………………………………………。
「なぁんだハッピーエンドか、つまらないの」
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赤色の絨毯が更に赤く染まっていく中やっと落ち着いたのか、それとも出す涙が無くなったのか苦しそうに嘔吐く二人の背中を優しく叩く。
昔を思い出すな…………母さんに怒られて泣いていた妹をこうやってあやしてたっけ?
背中を叩きながら昔の事を思い出していると後ろから声をかけられる、女性の、何処か訝しげな口調で。
「よく生きていたわね」
「パチュリー様の魔法が効いたんですよ、礼を言います」
「いや……………実はレミィが貴方を運んできた時には死んでたのよ、貴方」
一度死んだ者は生き返らない、生き返ったとしてもそれはただの死体だ。吸血鬼化やキョンシー化、ゾンビ化まで例え理性を持っても死体は死体だ。
なのにこうして俺は生前と全く変わらないままの人間、パチュリーはそこを怪しく思ったのだろうか、パチュリーが言いたい事はつまり
……………………お前は本当に人間なのか?
訝しげな、何処か言いづらそうに言葉を紡ぐ、多分このまま解決しないのはパチュリーの意に反するのだろう。
「私が図書館でやっていたのはただの死体弄り、あの時点で貴方は息を引き取った死体だったのよ……………なのに何で貴方は生きているの?」
「いいじゃないかこうして翔は生きているんだから」
「魔理沙は黙ってて、翔に聞いてるの」
魔理沙が止めようとするがパチュリーの一言に黙り込む。この場に居る全員の視線が一斉に俺へと向けられる、奇異や好奇が混ざった様な目で。
ここで俺は妖怪だ、と言ったらどのような反応をするだろうか、軽蔑? 悲観? それとも喜び?
いかにどう答えるかで数秒後の物語は大きく変わるだろう、悲劇に終わるか喜劇に終わるか、それともまだ物語は終わらないのか。
考える様に黙り込む俺に五人の顔、十個の瞳が向けられる中………………こう答えた。
「ご都合主義ですよ」
「………………………………………」
図書館内が一気に静まり返る……………あれ? 選択ミスった?
静まり返る大図書館の中………………一人の女性が静寂を打ち破る様に笑い声を上げる。
含み笑いの様な笑い声から手を叩いて笑う、笑い声の主はパチュリー・ノーレッジだった。それに釣られ魔理沙が笑う、それに釣られレミリアが、咲夜が、フランが笑う。
皆が笑う中俺だけが戸惑う様にして辺りを見回す、何で笑っているんだ? まるで的外れな事を言って笑われる様な感覚…………ヤメロ!! そんな顔で笑うな!!
腹を抱えながら笑うパチュリーを見て少し涙が出る、やっぱり選択肢を間違えたのか? 不安に陥る中喋るのにも必死と言った感じにパチュリーが口を開く。
「そうね……………ご都合主義ね、一番納得したわよ」
「え………納得したんですか?」
目に溜まった笑い涙を指で拭き取りながら言った、肩で息をしながら落ち着く為に深呼吸、だがまたも思い出した様に口を隠しながら笑う、そのループだ。
納得したという言葉に驚きを隠せない。ご都合主義……………この一言で納得する者がいるだろうか? いや恐らくこの場に居る俺以外の者しかいない筈。
そんな連中を眺めていると無意識に溜息が零れる、ああ…………マトモな奴は幻想郷にいないのか、今日やっとわかった。
辺りに散らばった何冊もの魔道書、きっと俺が片付けるハメになるんだろうな。
床に落ちた魔道書を拾い上げもう一度深い溜息が零れたーーーーーーー。
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重い空気、睨み合う目線、一触即発の状態。
何度めの修羅場だろうか、レミリアとフランが魔理沙を睨む。その吸血鬼姉妹の睨みを魔理沙は一身に受けていた。
魔理沙も負けてはいない、その睨みに負けず劣らずと睨み返す。
またの修羅場に咲夜とパチュリーはもう懲り懲りだと言った感じに重い表情を浮かべていた。そしてこの展開になった原因は言わずもがな斎 翔。
重たい空気の中魔理沙が口を開く。
「そろそろ翔を返して貰おうかレミリア、フラン」
「それは出来ない相談ね、このまま翔には執事として働いて貰うわ」
「今日はこんな時間だしもう引き返すが吉だよ? 何処ぞの吸血鬼に食べられちゃうかもだから」
火花を散らしながら睨み合う三人、先程までの姉妹喧嘩が嘘の様な一致団結ぶりを見せるレミリアとフラン。
どちらも譲らんぞと言わんばかりの表情を浮かべる。
もう見ているのも面倒臭いのか地面に落ちた魔道書を二、三回手で汚れを叩く様にしながら読み始めるパチュリーと図書館を後にする咲夜。
まだこの状況は慣れていないのかオタオタと困った顔をする翔がボソリと小さな声でパチュリーに聞く。
「……………何でまたこんな重たい空気になったんですか」
「さぁね、ともかく貴方が来てから紅魔館は悪い方向に進んだのは確かよ」
「みたいですよね……………」
元の静かな図書館に戻ってくれとパチュリーが願うも目の前には火花を散らし続ける三人、そして困った顔を浮かべる退治屋を見て深い溜息を吐く。
リラックスしながら本を読むことも叶わない現状に青い血管が浮かび上がる。
「そういえば小悪魔さんと美鈴さんはどこ行ったんですか?」
「美鈴は門番、小悪魔は貴方を治療する為の薬を買ってきてるわよ、意味ないみたいだけどね」
「……………後で小悪魔さんには謝っとかないと」
更に悩み事が増えた様な重い表情を浮かべる、最早何もかもが重い中いがみ合っていた三人の矛先が翔へと向けられる。
「それじゃあ翔に決めて貰おうか!! 紅魔館に留まるか!! 元の職に戻るか!!」
「そんなの紅魔館の執事に永久就職するに決まってるじゃない!!」
「どっちなの翔!!」
突然向けられた矛先に戸惑う事しか出来ない翔、安全策を考えるべく脳を回転させる。
どっちを選んでも死しか訪れない様な無理難題な質問、いつもの彼ならはぐらかし時間を稼ぐだろう。だが何度の修羅場に少し慣れたのか、それとも火事場の馬鹿力と言った物なのか妙案を見つけたと言わんばかりの輝いた表情を浮かべる。
自信満々と言った感じに翔が口を開く。
「それじゃあ数週間紅魔館で働いた後退治屋に戻るっていうのはどうでしょう!!」
これなら何も言われまい。ハッピーエンドだと言った表情で誇らしげに胸を張る、だが…………。
目の前に居たのはまるで納得がいかない表情を浮かべた三人だった。
「………あれ? ダメ?」
「……………………」
暫しの沈黙の後彼は察した、この沈黙はダメな沈黙だと。
案の定数秒後の彼女らはそれぞれ得意にする得物を彼へと構えながら脅す様に言った
「そんな中途半端な答え許可する訳ないでしょ……………?」
冷たい無表情の三人を見て翔は口を閉ざしたーーーーーー。
どうでしたでしょうか
とにかく後半のネタ切れがちょっと………って感じなんですよ
あれです、長距離走るやつで初っ端全速力で走って後半息絶える奴です
それでは次回まで!!ドゥワッチ
(晩御飯にキムチ食べたら口臭ヤバイ………歯磨きしないと)