なんだか今回書いてて少し欝になった
主人公が可哀想(´;ω;`)
まぁこれくらいされて当然!!
今回は後半にif話があります
それでは今回も!!
白色の肌の少女、水色の混じった青髪に真紅の瞳を持ち、白に近いピンクと赤色のリボンが付いたナイトキャップを被り、そのナイトキャップの色に倣ったレースに身を包む幼げな少女。
レミリア・スカーレットが月夜の光に照らされながらそこに立っていた。
「お姉様……………」
「レミリア様!?」
レミリアを憎らしげな目で見るフランと驚いた様に声を上げる翔。そんな二人をどこか冷たい笑みで見据えていた。
夏の夜。生温い風に吹かれながらレミリアの綺麗な青色の髪が揺れる。紅い瞳から発せられる視線は氷の様に冷たく、笑みは薄っぺらい。今にも崩れ落ちそうなそんな笑み。
レミリアはゆったりとした口調で二人に話しかける。
「こんな時間に二人きりで密会かしら? 楽しそうね、私も入れてくれない?」
「残念だけどお姉様が入る席は無いよ」
「そう、それは残念、至極残念」
生暖かい空気が段々と肌を突き刺すように鋭くなっていく。周りには赤黒い霧が発生し三人を包みこむ。レミリアは酷く冷たい表情でこう言った。
「それじゃあフランにはこの場から退場してもらおうかしら」
笑みすらも消え能面の様な、西洋の人形の様な無表情でそう言い放つ。余りの冷たさに凍える様な、悪寒にも似た寒さが体全体にまとわりつく。
ただ……………………ニタリと口角を上げながら笑うフランを除いて。
翔はただ体を震わせる事しか出来ない、なぜならこの場にいるのは列記とした悪魔しかいないのだから。まるでこの状況化を楽しむ様な口振りでフランが口を開く。
「退場して貰うのはお姉様の方だよ。招いてもないのに出てくるなんて余程寂しがり屋なんだね」
「貴方に翔を任せでもしたらただの人形になって返ってくるじゃない、だから心配して出てきたのよ」
「人形にしたのはどちら様でしょうか? 魅了の力を使わなきゃ翔を傍に置けない姉を持って苦労するよ」
「ただ壊すことしか出来ない出来損ないの妹よりかマシよ」
能面の様な無表情を浮かべる吸血鬼と口角を釣り上げ笑うが目元が笑っていない吸血鬼の妹。そしてガタガタと体を震わせる退治屋。
空気までもが凍りついたかの様に風の音も、木々のざわめきも、虫の鳴き声までもが聞こえなくなる。……………………一時の沈黙。
体感で何時間も続いたかと錯覚する様な重い沈黙の中、二人の悪魔が同時に口を開く。
「それじゃあ…………邪魔な姉は今のうちに始末しちゃおうかな」 「それじゃあ…………邪魔な妹は今のうちに始末しちゃおうかしら」
ドン!! と地響きにも似た大きな音を立てフランとレミリアが動く。二人が居た場所は五センチ程地面が抉れていた。
あっという間に間合いを詰めた二人が顔面にパンチを入れる。ゴキリと何かが折れる様な鈍い音が聞こえてくる。次にもう片方の拳を両者またも同時に顔面に入れる。
最早殴り合い等のレベルでは無い、殺し合い。スペルカードルールを無視したただの殺し合い。辺りに赤い血が飛び散る。拳を入れた後蹴りを腹に入れ、次に顔面に頭突きを食らわす。両者一歩も引かない殺し合い。
二人同時に後ろに飛び間合いを離す。抉れた頬や飛び出た肋骨が一瞬で治り傷一つ無い状態に戻る。そんな人外同士の殺し合いを翔は体を震わせながら見ているしかなかった。
フランが数メートル離れたレミリアに手の平を翳し次に力強く握り締める。
「きゅっとしてドカーン!!」
握りこぶしを放すとレミリアの左腕が途端に爆発しちぎり落ちた。そんな物はお構いなしにと残った右腕の手の平に赤色の魔法陣が浮かび上がる。
右手を縦に描くようにして振ると赤色の槍が現れまたも間合いを一気に詰め右手に持つ槍の先端をフランの喉元に一突き、そのまま槍を離し右拳で鳩尾を思いっきり殴る。
殴られた衝撃でフランが水を跳ねる石の様にバウンドしながら後ろに吹き飛ぶ。苦しそうに喉元を押さえながら立ち上がり刺さった槍をズルリと抜くと傷跡が綺麗さっぱりなくなっていた。レミリアの左腕までも生えるように修復される。
「さっさと死んでくれない?」
「そんな弱い攻撃じゃいつまで経っても死ねないよ」
「そう……………じゃあ死ぬように心臓を抉りとってあげる」
「出来るものならやってみてよ」
「今実践してあげる所よ!!」
手を鋭く尖らせ猛牛の様に突進するフランとレミリア。数十メートルはあった距離を一瞬で詰める。
ズブリという肉が貫通する音、だが二人は無傷だ。
目の前を見ると黒と白色の何かに遮られていた。向こう側の景色は見えない、見えたのは………………………燕尾服に身を包む斎 翔の顔だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初に感じたのは胸と肺辺りに異物が挿入されるような、そんな何とも言えない不快感。次に痛みよりも刺された場所から凍える様な寒さが襲う。
血を吐く俺を見て何が起こったのかわからない表情を浮かべるフランとレミリア。いい気味だ。
二人が貫通した腕を抜き取ると足に力が抜ける様に重力に従いながら地面へと音を立て落下する。暖かい血がドンドン流れ出て体温が低くなっていくのを感じる。
やっと状況の整理が付いたのか涙を流しながら俺を揺さぶり必死に話しかけてくる二人、意識が朦朧としてくる。
もう目の前も見えない、暗い、寒い、痛い、誰かに抱き抱えられる感覚、きっとレミリアかフラン辺りがパチュリーらへんにでも助けを求めるんだろうな。
だけど………………きっと間に合わない。吸血鬼の速度を持ってでも間に合わない。
だって………………………もうフランの叫び声も聞こえないもん、あんなに大きな声で涙を流しながら叫んでいたフランの声が。
ほら…………もう何も聞こえない…………何も見えない………………五感を失った様な、真っ暗な世界。
もう間に合わない…………間に会えない。
ここで…………………死ぬのか………………………………嫌だなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
薄暗く埃っぽい大きな図書館の中には血に染まった吸血鬼が二人、幾つもの魔法陣を浮かべて人間を治療する魔女、そして怒りに顔を染めた魔法使いとそれを宥めるメイド。
そして……………………胸と肺に大きな穴が空いた退治屋。
「おい!! これはどういう事だレミリア!! フラン!!!」
「落ち着きなさい魔理沙!!」
「落ち着いてられるか!! 翔がそこの机の上で血まみれになって横たわってるんだぞ!!」
「貴方達静かにしなさい!!! 治療に専念出来ない!!」
何時も静寂を保っている紅魔館の図書館が酷く喧しい。
魔理沙がフランとレミリアを怒鳴っても二人は涙を流すか体を震わせるだけ、身に付いた血を眺めながら涙を流すだけだった。
そんな二人を怒鳴り続けても治療の邪魔にしかならないと思ったのか別の椅子に腰かけ机の上にある魔道書を力任せに地面に落とす魔理沙。
肩で息をしながら落ち着かせるが横に倒れ伏せている翔を見て勢いよく立ち上がりまたもレミリアの胸ぐらを乱暴に掴む。
「なんで翔がこんな目に会ってるんだ答えろレミリア!!」
「違う……………違うの」
顔を横に振りながら涙を流し弱々しい声で答えるレミリア、とても五百年生きた妖怪には見えない、何かに怯える少女だった。
胸ぐらを乱暴に放し机を思いっきり叩く。その音は魔理沙の心を落ち着かせる事など出来ずなびやかな金色の髪をワシャワシャと掻き毟る。
全員の内心が穏やかでは無い中、パチュリーがさぞ言いづらそうに魔法陣を消し口を開く。
「………………残念だけどもうこれ以上翔を治療しても意味が無い………………死体だから」
パチュリーの言葉に落ち着きがなかった四人の動きがピタリと止まる。表情は絶望に染まり、魔理沙はパクパクと口を開くだけだった。
活気のある彼女からは想像も出来ない色を失ったかの様な顔色で魔理沙が震える口調で言う。
「じょ…………冗談だろパチュリー…………なぁいつもの様な質の悪い冗談だろ?」
信じられない、信じたく無いと言わんばかりに、冗談だと願う様にパチュリーにすがり付くがそんな魔理沙を突き放す様にパチュリーが口を開く。
「残念だけど……………彼はもう死体よ、瞬き一つしないただの死体」
何かが抜け落ちた表情を浮かべヘタヘタと座り込む。肩を震わせ嗚咽を漏らしながら力なく涙を流す。
段々と泣き声を上げ最終的に泣き叫ぶ様に声を上げる魔理沙をやるせない表情で見るパチュリー。そんな中レミリアがポツリと言葉を漏らす。
「そうよ……………吸血鬼にさせればいいのよ……………」
パチュリーが咲夜が、泣き叫んでいた魔理沙までもがレミリアの方を向く、それに気づいているのか気づいていないのか抑圧の無い声から段々と声を荒げるレミリア。
……………妙案を思いついたと言わんばかりの表情で。
「そうよ吸血鬼にしちゃえばこんな傷へっちゃらじゃない!! それに私達と永い時を過ごせられるし一石二鳥よ!!」
どこか吹っ切れた様な、どこか壊れた様な笑みを浮かべながら虚空を見据える。その言葉に釣られ横で泣いていたフランまでもが笑みを咲かす。
そんな二人を見てパチュリーと咲夜は息を呑む。この二人は自分の知っている者では無いというような表情で。
フラフラとした足付きでレミリアとフランが横たわる翔の方へと向かう、フラフラと。
だがその二人の前を阻む様にして立ち上がる魔理沙、この先は通さないと言わんばかりに。
「どきなさい白黒ネズミが………殺されたいの?」
「翔を殺した上吸血鬼になんてさせるか…………せめて翔は人間のまま死なせてやりたいとは思えないのか?」
「微塵も思えないね、このまま死なせる方が余程可哀想だよ」
「そうか……………なら絶対にこの先は通さない!!」
涙を拭いながら八卦炉を構える魔理沙、そして赤色の槍を構えるレミリアと剣を構えるフラン。目付きを鋭くさせ互が動こうとした瞬間ーーーーーー。
「どんな状況だこれ?」
………………………一人の男性が疑問の声を上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
if.BAD END、壊れた吸血鬼姉妹
ここは………………どこだ? 俺は死んだんじゃ?
辺りを見回すと無数の本が並んでいた、図書館…………? パチュリーの所か?
良かった…………生きていたのか、後でパチュリーにお礼を言っとかないとな。
だがどこかが変わった様な、そんな違和感、自分が自分で無いようなそんな違和感に見舞われる。考えても考えてもわからない疑問に悩んでいると二人の少女の声が聞こえてくる。
「翔!! 良かった…………良かった!!」
「ごめん翔…………本当にごめん!!」
「…………………フラン、レミリア……………そんなに謝らなくていいよこうして俺は生きてる………………」
涙を流しながら俺の方に駆け寄ってくる二人を見て言葉を失う、二人の洋服には……………大量の血が付着しているのだから。
退治屋をやっているからわかる、この量の血は………………致死量だ。
「フラン…………レミリアその血は………?」
おずおずとした感じに聞くと二人はまるで花が咲いた様な笑みでこう言った。
「ネズミを退治してたら返り血浴びちゃった」
ネズミ……………………うそだろ
指を指した方向を向いてみると血だらけになって倒れ伏す魔理沙が居た。
「魔理沙ッッ!!?」
魔理沙の元に急いで駆け寄ろうとするとレミリアに体を押さえられる、振りほどこうとしても溶接されたかの様に動かない。ふと俺の腕に目がいく。
前の色を失い、まるで死人の様に白い腕、自らの腕を不思議そうに見る俺に気付いたのかフランが明るい笑顔で言った。
「やっぱり気になるよね、翔は私達の眷属。吸血鬼になったんだよ!!」
意味がわからなかった。
眷属? 吸血鬼? ニコニコと笑う二人を見てただならぬ鳥肌が立つ、こいつらは誰だ、俺の知っているフランとレミリアじゃない。
…………………とにかく魔理沙の救出が最優先だ、俺の体を押さえつけるレミリアに向かって怒鳴る様に声を荒げる。
「とにかく放せ!! 魔理沙が死ぬ…………アガッッ!!」
バキバキと嫌な音を立て腕に激痛が走る、右腕を見てみると………………有り得ない方向に曲がっていた。
「あああああああああああああああああああ!!!!!!」
余りの激痛に悲鳴を上げる、フランは俺の折れた右腕を愛おしく撫でる、その度に体中を走る激痛。レミリアに押さえつけられ暴れる事も出来ない。
歯を噛み締め痛みに耐えながらこの二人をどうにかすべく辺りを見回すと咲夜とパチュリーが居た。
「咲夜!! パチュリー助けてくれ!!!!」
こんな緊急事態だ、言葉遣いなんて気にしてる場合じゃない。
助けを求めるべく二人に声をかけると……………………二人は気まずそうに俺から目を逸らした。
「おい!! 咲夜!! パチュリー助けてッッッ!!!!」
「私達が居るのに他の子に声をかけるなんていい度胸してるじゃない」
鈍い音を立てフランに左腕を折られる、その度に来る激痛、悲鳴。そんな俺の悲鳴を嬉しそうに聞き始める二人。
笑顔が怖い………………声が怖い…………この二人の何もかもが怖い。そんな恐怖に歪む俺の顔を見て嬉しそうに笑みを零す
顔を俺へと近づけると二人は笑みを零しながらこう言った。
「私達以外の女を見た罰。足………………折っちゃおうか」
ニタニタと笑みを浮かべる二人に俺は……………。
「やめ…………やめッッあああああああああああ!!!!!」
悲鳴を上げる事しか出来なかった。
if.1BAD END
書いてて欝になりました…………
主人公に同情したの初めてかも
ヤンデレってタグに付けた方がいいですよね………
それでは次回まで………ドゥワッチ(´;ω;`)
(主人公が死んだ事よりも魔理沙を死なせてしまった事に対して欝になってます、実際主人公どうでもいいです)