最近耳鳴りがヤバイ………キーーーンってモスキート音がヤバイ
それでは今回も!!
けたたましいアラーム音で目が覚める。
真上は赤い天井と如何にも高級そうな光を失ったシャンデリア。寝起きでグワングワンする頭を右手で押さえながらうるさいアラーム音を鳴らす携帯を手探りで探し出す。
音を頼りに携帯を左手で掴みとりアラームを解除。そのままロック画面に表示されている時間を見ると午後の四時三十分、夕方近くを指していた。
普段ならこの時刻は家で悠々とベットに寝転びながら最近ハマっている推理小説に目を通している筈。こんな時間に起きたのは初めてだ。
大きく欠伸をしてベットから降りる。ヨロヨロとした足付きで電気スイッチをONにするとシャンデリアが明るい光を発す。その明るすぎる光に少しだけ目を逸らし片目ずつゆっくりと光に慣れさせる。
もう一度大きな欠伸をして着ていた黒と白色の縞々パジャマ、いわゆるゼブラカラーのパジャマをベットの上に投げ捨て大きなクローゼットを両手で開く。
中にはこの高級そうな部屋とは似ても似つかない洋服が入っていた。ハンガーに掛けてある白色の骸骨の柄が入った半袖を手に取り慣れた手つきでするりと着用する。
次に着ていた茶色のズボンをまたもベットに投げ捨て、灰色のズボンが掛かったハンガーを取るとこれまたするりと着用する。
今日は九月の三日。八月頃と比べれば幾分か涼しくなったがまだまだ暑い。部屋の中に取り付けられた洗面所に行き蛇口を捻ると冷たい水が流れ出てくる。両手一杯に水を貯め、顔に思いっきりかけると少しずつだが意識が覚醒してくる。
三回程同じ行為をした後洗面台に置いてあるミニタオルで顔を拭く。コップの中に入ってある歯ブラシを手に取り歯磨き粉を付ける。ここまで来ると流石に意識も覚醒してあらゆる物に目を通す。
歯を磨きながらグルリと辺りを見回すと赤一色を基準とした部屋、じっと見つめると段々と視界がぼやけてくる。洗面所や洗面台、ベットのシーツまで赤いんだから勘弁だ。
歯磨きを終了させベットの上に放り投げてある携帯をポケットの中に突っ込みこれまた赤色のドアを開ける。
ドアを開けた先には左右に伸びた廊下、これもまた言わずもがな赤色だ。永遠に続くような長い廊下をゲンナリと眺めながらクラピカ理論に従い右側の廊下を歩く。
道行く羽の生えたメイドに挨拶をして暇を紛らわせる。大体は無視して焦った様に素通りしていくがへこたれない。
赤い廊下をどれくらいあるいただろうか? 未だゴールが見えない廊下をイライラとしながら歩き続けると向こう側から青と白色のメイド服を着た少女が現れる。
最早人に会えた喜びよりも赤色以外の色を見れた事に喜びを感じ、その人物に手を大きく振る。向こうも気付いたのかペコリと小さく会釈をしてきた。
早くこの無限に続く廊下から脱出したい。そんな気持ちでメイド服の少女に走って近づき話しかける。
「こんにちわ十六夜さん」
「ええこんにちわ退治屋さん」
皮肉たっぷりと言った感じで口を開く咲夜。その言葉に苦笑いで返し会話を始める。
「レミリア様のお部屋何処か知りません? さっきから歩けども歩けども見つからないんですよ」
「残念、お嬢様の部屋ならここから逆方向だけど?」
「……………本当に?」
「嘘を吐く必要なんて無いでしょうに」
もうクラピカ理論になんて従わない………。後ろを向くと先程目にしたような長い長い先の見えない廊下が続いている。
すぐに前に振り返りその勢いで首を横に振っていると咲夜が嫌味ったらしそうにニヤニヤと笑っていた。
「それじゃあ寝起きのウォーキングを楽しみなさい、私はやる事があるから」
「…………ラジャー」
ニヤリと最後に俺へと笑みを浮かべてからそのまま真っ直ぐに歩き始める咲夜。もう一度後ろを向くとそこには先程と変わらない先の見えない赤色の廊下が続いていた。
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一体どれくらいの時間が経ったのだろうか、ポケットに入ってある携帯を見ると五時の十分を指していた。部屋から出てから俺は三十分のウォーキングを楽しんでいた事になるのか………。
やっとレミリアが居るであろう部屋の扉前に着く。身だしなみを整え一度深呼吸をした後、扉を叩こうとグーの形を作ると。
「入れ」
「……………失礼します」
まだ扉叩いてないんですが………流石吸血鬼だなと改めて感じた。左右に付いた金色の棒状の取っ手を両手に掴みゆっくりと扉を開くと段々と部屋の中身が見えてくる。
この部屋の中も変わらず赤色、そして俺が寝ていた部屋よりも豪華そうな特大シャンデリアが薄暗い部屋の中を燦々と照らしていた。
だがそんな高級そうなシャンデリアも、ダブルサイズはありそうな大きなベットもまるで目に付かない。俺は奥の方にちょこんと玉座に座っている少女に目を奪われていた。
赤色の玉座に座った白色の肌の少女、水色の混じった青髪に真紅の瞳を持ち、白に近いピンクと赤色のリボンが付いたナイトキャップを被り、そのナイトキャップの色に倣ったレースに身を包む幼げな少女。
見た目は幼げな少女だが背中に生えている蝙蝠の様な翼が人外だよと語っていた。
扉から二、三歩歩くとその場に跪く。少ししてレミリアが口を開く。
「少し遅かったわね、何かあったの?」
「………お恥ずかしい話道に迷ってしまい」
「ップ、まぁ広いから仕方もないわね、そんな硬くならなくてもいいわよ、頭をあげなさい」
言われた通り頭を上げると微笑みながら俺を見下ろすレミリアが居た。その姿はとても五百歳とは見えない十歳程の小さい少女。
レミリアは玉座から立つとゆったりと近づいて来る。何故か一歩一歩レミリアは歩いているだけなのに俺の鼓動は段々と意味もわからず速度を早めてくる。
何故、何故目の前の少女が俺の方へと歩を進めているだけだと言うのにこうも鼓動が早まるんだ。地に付けた握りこぶしが手汗を帯びる。
もう手が届きそうな距離になると頭がクラクラしてくる。心臓が破裂しそうな、今にもその場に泡を吹いて倒れそうな。
ああ…………確か三日前もこんな気分に陥ったっけ?
…………あの時は確かーーーーー
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……………誰かが呼ぶ声がする。
誰かが俺を呼ぶ声がする。誰だ?……………誰だ俺を呼ぶのは。女性の声には違いない、しかもまだ幼そうな。
「起きろ」だって………? ああ、今俺は寝ているのか。だったら起きないとな。待てって………………今起きるから。
目をゆっくりと開けると…………肌が真っ白な女の子が見下ろしていた。
「あ、やっと起きたわね」
「……………えっとここは」
ガンガンと痛む頭痛に耐えながらゆっくりと口を開く。周りを頭に負担をかけない様にゆっくり見回すと肌の白い少女の他に二人の少女が立っていた。
一人は睨むように俺を見下ろし、もう一人は気だるそうに見下ろしている。
今がどんな状況かわからない、目が覚めたら三人の少女に見下ろされているんだ、意味がわからないだろう?
更に今の俺は上半身裸の包帯グルグル巻き、そして手首に白い包帯がキツく巻かれていた。混乱した目をしていたのか肌が真っ白な少女が口を開く。
「そうね、いきなりこんな状況に立たされちゃぁねぇ………一先ず自己紹介と行きましょうか、私はレミリア・スカーレット、吸血鬼よ」
あ………そうだった、思い出した、確かレミリアと戦った後盗賊達が来てそいつ等全員殺した後気失ったんだっけ。なら俺がこんな傷だらけな事も頷ける。
それにしても酷く頭が痛い。頭蓋骨を殴られている様な痛み。頭を押さえながら痛みに呻いていると気怠そうな目付きをした少女が口を開く。
「失血のしすぎで暫く頭も痛むだろうし体も思うように動かないと思うからじっとしてなさい。まぁ輸血真っ最中だから二、三時間程度で治ると思う」
「輸血………? している様には見えないんですが」
「失礼ね、今魔法でしているのよ」
見せる様に手の平から緑色の魔法陣が浮かび上がる。確かこの人は………パチュリーノーレッジだっけ。
「えっと…………パチュリーノーレッジさんと………隣のメイドさんは十六夜咲夜さんでいいですか?」
「あら………正解よ、よく知ってるわね、ストーカーって奴かしら?」
「誰が貴方みたいな引きこもりを………って痛い痛い痛い!!!」
小声でそう言うといきなり頭の痛みが酷くなる。涙目でパチュリーを見ると禍々しい赤色をした魔法陣を描いていた。
「ごめんなさい冗談ですから!! 痛い痛いって!!」
「謝って済む物と済まない物がこの世にはあるのよ、そして今の言葉は後者に値する事」
「いやホント痛いんで!! 許して下さい!!」
ようやく気が済んだのか禍々しい色の魔法陣を手元から消すパチュリー、痛みが収まった頭を回し咲夜とレミリアを見るとクスクスと笑っていた。
よく見ると三人共かなり肌が白い、一番白いのは断トツでレミリア、二番目にパチュリー、三番目に咲夜。全員普通の女性とは比べ物にならない程肌が白かった。
じっと見すぎたせいか訝しげな表情を浮かべてレミリアが訪ねてくる。
「何よジロジロ見て」
「いや………皆肌が白いなって思って」
「そりゃそうよ、吸血鬼とそのメイドと引きこもりだもの」
「ちょっと引きこもりって何よ、燃やすわよ」
レミリアとパチュリーのやり取りに思わず笑ってしまう。俺の笑い声に続き三人の少女が笑う。中々良い雰囲気じゃないか、気絶する前とは大違い。一体何が起きたのだろうこの三人に。
恐る恐ると言った感じに疑問を尋ねてみるとレミリアは微笑みながら返した。
「いいわよ、もう過ぎた事なんだし」
その一言に思わず涙が溢れそうになる。歯を強く噛み締めて、と言ってもあまり体が動かないからそこまで強くも無いがグッと堪える。
あの殺し合いには全面的に俺に非があったにも関わらずこんなに軽く、快く許してくれるなんて………。とても悪魔に見えない、天使の様な笑みでレミリアは更に言葉を続ける。
「ただし貴方が紅魔館の執事になったらの話だけど」
「…………え?」
ニッコリとした笑みで予想外の事を言い始めるレミリアに疑問の声が漏れてしまう。咲夜とパチュリーを見ると一人は溜息を、一人は興味も無さそうな顔をする。
狼狽える俺を更に痛めつける様に
「拒否権はあって無い様な物。拒否でもしたらパチュリーの魔法でさっきみたいに痛みつけるから」
「………………」
やっぱり悪魔は悪魔なのか、それ以外の何にでもなれないのか。レミリアは微笑みを浮かべてるつもりなのだけれど俺には紫様よりも恐ろしい表情に見えた。
この世界に俺の選択肢は無いのか、流石に泣きたくなってくる。
俺がこの状況をどう打破するべきかシワの少ない脳で必死に考える様に頭を両手で押さえているとレミリアがグイと両手で俺の顔を上げながらこう言った。
「許可しちゃえばいいじゃない、どうせ拒否しても痛みもがいて死ぬだけなんだから、貴方が私専属の執事になれば何でも願いを叶えてあげるわよ……………」
どこか艶のある、そんな声で口説く様に言葉を放つ。レミリアの綺麗な紅い瞳を眺めると呆然とした俺の顔が映る。
鼓動が早まっていく。息が切れる。レミリアから目を離せなくなる…………
気づけば俺は…………………首を縦に降っていた。
満足げな顔を浮かべるレミリア、面倒臭そうに本をパラパラと見始めるパチュリー、苦笑いを浮かべる咲夜、そして呆然と何も無い虚空を眺める俺。
「その言葉を聞きたかったわ、そういえば………貴方の名前は?」
嬉しそうに目を細めるレミリアに俺は返した。
「斎…………翔」
「そう………いい名前ね。それじゃあお休み翔、いい夢を」
レミリアが俺の額へと人差し指を向けてくる。
すると………段々と……………眠たく……なって。
「お休み………なさい」
気づけばベットの中に倒れ込んでいた。暗い暗い世界にまたも戻されたがーーーーー別に悪い気分でもなかった。
「ええ…………お休みなさい、翔」
どうでしたでしょうか?
現に今も耳鳴りヤバイです。キーーーーンって
まぁそれは置いといて主人公催眠にかかりすぎですよね、五三の時とかもそうでしたし
それでは次回まで!!ドゥワッチ
(飾った雛人形の位置が移動していた気がする、おや誰かきt)