遊戯王世界でばら色人生   作:りるぱ

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第33話 カードをトレードしよう

「行くか……」

 

 ついつい呟きが口から漏れた。

 万丈目はリュックを片肩に背負い、ブルー寮に背を向ける。

 思えば短い天下であった。一体何がいけなかったのだろう。

 

(なんて、昨晩さんざん考えたしな)

 

 それはもうどうでもいい。

 現状がなにか変わるわけでもない。

 今必要なのは、そう、断固たる決意だ。

 

(オレを笑った有象無象ともめ! 必ず成り上がって、貴様らの頂点に再び君臨してやる!

 その時は覚えてろ……)

 

 森の向こう、木々の向こうから突き出た純白の丸い屋根。

 万丈目はデュエルアカデミア本校舎を仰ぎ見る。

 

「さらば、デュエルアカデミア……」

 

 もう戻ってこれないかもしれない。

 そんな弱気な考えが万丈目の脳裏を過ぎる。

 何分失うものが多すぎるのである。

 地位、名誉、信用、未来。……そして友人。

 

 いつも営業スマイルを浮べている優男の顔を思い出す。

 神 拓実である。

 あいつ自身気づいてるか知らないが、表情が常に微笑なのだ。

 そのせいで、多分本人の想像以上に周囲から恐れられていたりする。なんか、いつもろくでもない策略を考えているような気にさせるのだ。

 

(友人……なんだろうか……?)

 

 実際そこまで関わりを持っている訳でもない。共にプライベートな時間を過ごすことも稀だ。

 しかし……。

 

(あいつだけだったな……。オレが素の自分を出して話せるのは)

 

 昨夜、食堂から逃げるように立ち去る自分に手を伸ばした彼を思い出す。

 無様な自分を見せたくなくて、ついついその手を払いのけてしまった。去る前に一言くらい挨拶をしてもよかったかもしれない。

 

(ここまで早いと、かえって迷惑か……)

 

 今は早朝の4時半である。結局昨晩は一睡も出来なかった。

 

「フッ……」

 

 それにしても、友人と想像してたった一人の人間しか脳裏に浮かばないとは……我ながら寂しい高校生活を送っているものである。

 そう考えながら万丈目は止まっていた足を前に進める。

 

 

 

「よっ」

 

「!」

 

 オベリスクブルー寮を出て僅か100m足らず。森の入り口付近で声をかけられる万丈目。

 

「行くんだろ?」

 

「……ああ」

 

 拓実だった。

 その足元には、最近良く見かけるメカメカしい猿が彼と手を繋いでいる。

 

 なぜこんな時間に? とか、オレがアカデミアを出ることをまだ誰にも話してないはず。とか、様々な疑問が万丈目の頭に浮かぶ。

 

「いいのか? 一か八かになるぞ」

 

 そう質問する拓実に、万丈目はとりあえず今ある疑問を捨てた。

 

「……ああ。

 今のアカデミアにオレの居場所は無い」

 

「そういうのは往々にして思い込みと勘違いだ」

 

 こんな場面でも微笑を浮べ続ける拓実の表情は、今回ばかりは万丈目の神経を苛立たせた。

 

「ならお前はオレがここにのうのうといて、それで再び以前の地位に返り咲けるとでも言うのか!?」

 

 食って掛かる万丈目。

 

「時間は掛かるが、いずれはきっと」

 

「ふん。きっとなどと言う曖昧なことでは困る!」

 

 拓実は顔の筋肉を引き締め、真剣な表情を作る。

 

「曖昧なのはここを出た場合も一緒だ」

 

「うっ」

 

 顔を俯かせる万丈目。そして、しばし無言の空間に野鳥の(さえず)りがやけに大きく響く。

   

「……一晩考えて決めたことだ。

 俺はここを出て、凱旋出来るだけの栄光を掴む」

 

「それはただの逃げかもしれない」

 

「……。

 もう……決めたことだ」

 

 そう万丈目は返した。

 彼自身、このままアカデミアにいて元の地位を取り戻すことは不可能に近いと考えている。

 そうする為には何らかの功績が必要なのだ。

 

「……そうか……。

 こう言っちゃなんだけど、多分お前ならそう言うと思ってたよ」

 

 そう話しながら拓実は猿から手を離し、上着のポケットから何かを取り出す。

 ――それはお守りだった。赤の袋に”出世成功”と書かれている。

 

「ほら」

 

 万丈目に手渡す。

 

「お守りか?

 随分とでかいな……」

 

「霊験あらたかなお守りだ。

 肌身離さず内ポケットにでも入れてろ」

 

「あ、ああ……」

 

 言われた通り内ポケットに入れる万丈目。

 もう拓実は剣呑な雰囲気がすっかり解け、いつもの営業スマイルを浮べていた。

 

「それでどうするんだ?

 この時間に船は出てないはずだけど」

 

「自家用のクルーザーがある。兄のお下がりだけどな」

 

「そっか」

 

「行ってくる」

 

「ああ、頑張れ」

 

 その言葉に万丈目は口の片端を持ち上げ、いつもの笑みを浮べる。

 

「ふん、天才に頑張りなど必要ない! 栄光は向こうから勝手にやって来る!」

 

「ああ、そうだな」

 

「楽しみに待っていろ! オレが更なる力と共に戻ってくるのを!」

 

 拓実に背を向け、万丈目は波止場へと歩き出す。

 その歩みは、さっきまでのそれよりも、大分軽快なものとなっていた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ジュンコさん! 分かりましたわ~!」

 

「もう調べたの? 随分早かったのね」

 

「お名前は綾小路 ミツル。オベリスクブルー3年でテニス部部長。

 そして綾小路モーターズの御曹司ですわ~」

 

「……すごい肩書きね」

 

 優良物件である。

 これは狙ってみようかしらと考えるジュンコ。

 

 話は昨日まで遡る。テニスの授業中のことである。

 場外にいる明日香に向かって飛ぶテニスボールを弾き飛ばしてくれたナイスガイ。ももえ風に言うならイケメン。その彼のプロフィールを調べてみようとももえとジュンコは朝から駆けずり回っていたのである。

 とは言え、最近とある悩みもあってジュンコはそう真剣に調べていない。ほとんどももえの独壇場であった。

 それにしてもたった半日で調べ上げるなんて……とももえのメンタリティに呆れるジュンコ。

 授業の合間の休み時間とお昼休みしか使えてないはずなので、実質的には1時間とちょっとか。

 

(あたしもあまり人のこと言えないけど、この子のイケメン大好きパワーはどこから来てるのかしら?)

 

 両手を胸の前で組み、あさっての方向に目線を向けているももえを見る。

 その精神はきっと何処か別の宇宙で遊覧飛行をしていることだろう。

 

「デュエルの腕もかなりのようですわ~。あの亮様に勝るとも劣らないとか~」

 

 本当かしら? とジュンコは首を傾げる。

 カイザー亮のデュエルはつい先日拝見する機会に恵まれたが、あのとんでもデッキと反則級のドロー能力と同等の人間がそうホイホイいるとは思えない。

 

(ま、人づての噂なんてそんなものよね)

 

 とりあえずここは幸せそうな顔をしている友人に突っ込むのはやめておこう。

 そう空気を読むジュンコであった。

 

「大変だ大変だ大へぶ」

 

「きゃっ」

 

 勢いよく廊下の角を曲がった影がジュンコに衝突する。

 ジュンコは2、3歩たたらを踏んで後ずさるだけだったが、ぶつかって来た影の方は地面にひっくり返っていた。

 

「ちょっと、危ないじゃない! 何すんのよ!」

 

「うぅ……ご、ごめん……」

 

 オシリスレッドの制服に水色の髪。――丸藤 翔であった。

 彼とは何度か行動を共にしたことが有り、そしてつい数日前に拝見したカイザーと猿のデュエルは彼のための物だった。

 最後には兄と和解したようだが、それ以前の情けない姿をジュンコは忘れていない。

 顔は三流、デュエルの腕も三流。自分にとっての理想的な男性像とは、正に逆の位置に存在しているレッド寮生である。

 

「で? 何があったの?」

 

 社交辞令的にそう聞くジュンコ。実は、内心ではどうでもいいと思っていたりする。

 

「ア、アニキがクロノス先生にボールをぶつけた罰でテニスの地獄の特訓をさせられてるんだ! だから今テニス部まで急いでて」

 

「テニス部?」

 

 タイミングのいい偶然もあったものだ。ついさっきまでそこの部長の話をしていたところである。

 

「ねぇ、ジュンコさん。わたくし達も参りましょう?

 なんだかおもしろいことが起こりそうな予感がしますの~」

 

「うん……そうね。

 どうせこの後暇だし、山猿のしごかれる光景でも見物してやりますか」

 

 

◇◇◇◇

 

 

「立て、立つんだ遊城十代くん! 

 これくらいでくじけちゃいけない!

 今頑張らないでどうするんだ! 今日と言う日は今日しかないんだぞ!」

 

 アカデミア本校舎内テニス場。やってきたジュンコ達一行。

 彼女らの目に飛び込んできたものは、テニスラケットで斜め上あさっての方向を指し、ニヒルに歯を光らせながら十代に意味不明な演説を垂れるテニス部部長、綾小路 ミツルの姿だった。

 

「そして明日という日は明るい日と書くのだ!

 さー、明日に向かってあと50球!」

 

「えー!? あと50球もあんの?」

 

 辟易する十代に対し、謎ポーズのまま顔だけを彼の方に向け、歯をキラつかせる綾小路 ミツル。

 

 キラリ~ン☆

 

「どうだ? 元気が出てきたろ!?

 目的の為に邁進する汗と涙は明日への糧となる!

 さー! 美しき青春に、乾杯!」

 

 ジュンコは思った。

 ダメだコイツ。

 優良物件ところが、とんだ地雷である。

 いったい彼は何で乾杯しようとしているのだろうか?

 

「うう~、可愛そうなアニキ……」

 

「て言うかー、意味不明なんだけど」

 

「いいんですの~、顔がよければ」

 

「え?」

 

 横で目からハートを飛ばす友人に敬服する。

 どちらかと言うと、なにそれこわい状態だったりするのだが、まぁ、ここはソフトに敬服すると言い換えよう。さすがの自分もここまで色々と捨てきれない。

 前々から思っていたことだが、ももえの言うイケメンと世間一般的に言うイケメンとは、似ているようでまったく違うものなのではないだろうか。

 

「ももえ、あたし、ちょっとそこで座ってるね」

 

 ジュンコは脇にあるベンチを指差す。

 なんと言うか、いろんな熱が一気に冷め、白けてしまったのだ。

 

「ええ……。お身体の調子が悪いんですの?」

 

「大丈夫、そんなんじゃないから。

 ただちょっと休みたいだけよ」

 

「ならばいいのですが……」

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ふぅ」

 

 ベンチへと移動し、ジュンコは腰を下ろす。

 そうして一息を付くと、肩から提げたかばんを開き、自分のデッキを取り出した。

 

「……報酬……どうしよう」

 

 そう一人ごちながら、一枚一枚とデッキのカードを眺める。

 特にテーマは決まっていない――強いて言えば、可愛いモンスターとイケメンなモンスターを適当に入れた”かわイケデッキ”となるのか。まぁ、所謂ファンデッキであった。

 

(まずは方向性を見つけるべきよねぇ)

 

 ついこの間のこと。ジュンコはももえの彼氏、神 拓実の開催するオークションのお手伝いをした。彼が作製したメンバーズカードを、信頼の置けそうな人物に配布したのである。

 その時のバイト代として4万円。そして特別に何枚かのレアカードを報酬としてくれると言うのだ。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息が漏れ出る。

 十代に剛速球を打ち込んでいるテニス部部長をキラキラした目で見ているももえ。中学の頃からの親友でもある彼女に視線を向ける。

 どこでこんなに差がついたんだろう?

 確かに、ももえのデュエルは中学の頃から周りより頭一つ出ていたが、さすがにこれほどではなかった。特にここ最近は一度も勝ったことがない。

 ももえのデュエルタクティクスはめきめきと上昇している。それを特に実感していたのは他ならぬ、一番の親友であるジュンコであった。

 ジュンコだって自分はこのままでいいとは思っていない。今回の拓実からの報酬を機会に、このファンデッキを実戦用のデッキに組み直すつもりであった。

 

 さらに一枚めくり、カードを眺める。

 そこにあったのは【マーメイド・ナイト】。鎧を着込み、両手にシールドと曲刀を持つ勇ましい人魚である。

 このカードをデッキに入れたときのことを思い出す。

 ――ももえの【プリンセス人魚】とあたしの【マーメイド・ナイト】でダブル人魚ね!

 そんなことを言った記憶がある。

 

(今じゃダブル人魚も片手落ちね……)

 

 明日香がここにいて、しかもジュンコの思考を読むことが出来ていたら、きっと片手落ちの使い方が違うと注意したことだろう。しかし今はそのどちらも叶うことはないので、ジュンコはカードを眺めながらの思考を黙々と続ける。

 

「どうしよっかな……」

 

 

◇◇◇◇

 

 

 15分は経っただろうか。ジュンコは最後の一枚をデッキに戻す。

 顔を上げると、何故か十代とあの意味不明なテニス部部長がデュエルをしていた。いつ来たのか、その傍らに明日香と拓実もいる。ジュンコ以外のいつものメンバーで観戦しているようである。

 

 しばらく頭を空っぽにしてボーとそれらを眺める。デュエルの内容は頭に入ってこない。

 変態部長が膝をつく。

 十代が勝ったようである。

 

 拓実が変態に近づく。カードを何枚か取り出し、彼のデッキと出したカードを交互に指差している。

 どうやらトレードを申し込みたいらしい。

 二人は手振り身振りで何やら話し込んでいる。――あ、トレードが成立したようである。

 

 

(……よし!)

 

 自分に気合を入れ、ジュンコはベンチから立ち上がる。そして、皆のいるところを目指して歩き出す。

 

「ジュンコ、大丈夫?」

 

「はい、明日香さん。ちょっと休んでただけですから」

 

 軽く明日香に会釈し、拓実のいる場所に向かうジュンコ。

 同時に、デッキから【マーメイド・ナイト】のカードを取り出す。

 

「ねぇ、拓実。あたし、決めたわ」

 

 これが彼女の転機となる。

 彼女のスタートはここから始まる。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「受けてくれんかね?」

 

「シニョール三沢のような成績優秀な生徒なら~ば、じゅ~ぶんにその資格はあります~ノ」

 

「しかし……」

 

 ラーイエロー寮生、三沢大地は校長室にいた。正面には鮫島校長とデュエル実技最高顧問のクロノス教諭がいる。

 

「元々三沢君は特別編入生に選ばれていたのです。それをまだ自分には荷が重いと辞退したのは私も残念でした。しかし、今ならもういいでしょう。三沢君は前回の試験で全教科満点、学年一位を採っています。十分にオベリスクブルーへと昇格する資格はあるはずです」

 

 机の上で手を組みながら、鮫島校長は諭すように三沢に語りかける。

 

「……しかし、私は真の一番になってからオベリスクブルーへと移りたいのです。

 今の私では……」

 

「一体何が不満なノ~ネ。試験は全教科満点、デュエルも全戦全勝。

 シニョール三沢は今間違いなくアカデミアで一番なノ~ネ」

 

「クロノス教諭、あなたは知っているはずです。そうじゃないことを」

 

「うっ」

 

 三沢の反論に言葉を詰まらせるクロノス教諭。

 そう、彼は知っているのだ。三沢の言いたいことが何であるのかを。学年にはもう一人の全教科満点、デュエル無敗の強者がいることを。

 

「三沢君……」

 

 再び鮫島校長に発言が移る。

 

「あまり直接的に言いたくはありませんでしたか、これはもう決まったことなのです」

 

「そんな! 俺の意思も確認せず勝手に!」

 

「優秀な者には優秀な地位を。

 三沢君がいつまでもラーイエローにいることは他の生徒達のモチベーションを下げる要因にもなります。

 頭のいい三沢君ならその意味が分かるでしょう」

 

 優秀な者が上にいけない。

 三沢がラーイエローに居続けることは、そうした認識をイエロー寮に広めることになる。三沢ほどの者が昇進出来ないのなら、自分など……。そう考え、やる気をなくす生徒も出てくるだろう。

 

「くっ……」

 

「オベリスクブルー寮への昇進試験を受けてください」

 

「シニョール三沢、これはあなたの為でもあるノーネ」

 

 逃げ場がどんどんなくなっていく。

 今や三沢には昇進試験を受けない正統な理由はない。

 実際、個人的な理由としてはただの意地なだけだったりする。

 

 完全無欠な一番になってからブルーへ。

 

 このままだとその願いは叶えられそうに無い。

 

「一つ……一つ条件があります」

 

「なんでしょう? 私に叶えられるのならば、出来る限り前向きに検討しましょう」

 

「昇進試験デュエル、私はその相手に神 拓実を指名します」

 

「分かりました」

 

「さ、鮫島校長~。それはまずい~ノ」

 

「彼は私への借りがあります。きっと断わらないでしょう」

 

「有難うございます。私の要望はこれだけです」

 

「デュエルは来週の月曜日、授業の時間を用いて第一デュエル場で行います。

 存分に準備をしてください」

 

「はい、分かりました。

 では、私はこれで失礼します」

 

 三沢は一礼して校長室から退室した。

 

「鮫島校長」

 

「分かっています、クロノス教諭。

 神君は強い。そう言いたいのですね」

 

「ええ……」

 

「クロノス教諭、生徒手帳に記載されているオベリスクブルー昇進試験デュエルの合格条件を言ってください」

 

「ええっとー」

 

 今までは相手に勝てば昇進できた。ずっとそのルールでやってきたはずである。

 クロノス教諭はキョロキョロと目を動かし、古い記憶を漁る。

 

「たしーか……オベリスクブルーとなるに相応しきデュエルをすること……」

 

「その通りです。

 三沢君が勝とうか負けようか、彼のオベリスクブルーへの昇進は決定事項です」

 

 

◇◇◇◇

 

 

(これもいい機会なのかもしれない。オークションで落札したカードも全て届いている)

 

 イエロー寮、三沢大地の部屋。

 彼は学習用デスクに腰掛ている。デスクの上には多くのカードが並べられていた。

 

 三沢は今日の出来事を思い返す。

 

(ずっとだらだらと先延ばしにしてもしようがない。この辺で一旦彼に挑んでみよう)

 

 だが問題はどのデッキを使うかである。

 三沢は属性をテーマに6つのデッキを作っていた。

 いつもなら相手のデッキを見極め、それと最も有利に戦えるデッキで挑むのだが……。

 

(今までの調査が正しければ、神拓実はいくつもの個人用デッキを持っている)

 

 それは事前に対策を立てることが不可能であることを意味する。

 

(だが)

 

 三沢は手元にあるカード、その中から一枚持ち上げる。

 

(全ては偶然このレアカードを当てた時から始まった)

 

 三沢はそれと同じ系列のカードをオークションで見つけたのである。

 そして、その全てを落札した。

 

「勝利の欠片はもうここに揃っている」

 

 自らを励ますように、三沢は感情を高め、声を上げる。

 ――確実に勝つ!

 そう、後はその意志を込めて――。

 

「……組み上げるだけだ」




主人公が常に営業スマイルでいるのはブルー寮でだけです。
仲間内では表情豊か。

次回は三沢と主人公のデュエル。

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