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「ちょっと!トーマ!どうしたの?!」
主街区の出口についたリナツはトーマにそんなふうに驚きながらたずねた。
「ごめん。でも、良く考えて、あの場にいたら君もパニックに陥りかねないと思ったんだ。」
リナツは確かに完全に否定できないのであった。パニック状態のあんなところにいたら自分もそうなりかねない。そう考えるとトーマの判断は冷静でとてもよかったと言える。
「そ、そうね。ありがとう。それで、これからどうするの?」
そういうのとほぼ同時に二人のアバターは青いひかりに包まれた。
「「うわっ!」
青い光が消えると、現れたのは現実世界の自分たちだった。
アイテム《手鏡》は使用しなくても、10分後には自動で使用されるという効果がついていた。
そのため、強制的に二人は現実世界の姿となった。
「これが、茅場の言ってたアイテムの効果か。」
アイテムストレージから《手鏡》が消えているのを確認してトーマはそういった。
「これが、現実ってことを現した姿ね。」
「うん。 それでリナツ、これからどうするか真剣に決めよう。きっと、外からの救助は望めない。そうなると必然的にゲームをクリアするしかない。僕は攻略の先頭にたって、ゲームクリアを目指す。リナツ、君はどうする?HPが全損したら本当に死んでしまう、ついてきてとわ言わないよ。」
トーマの目は潤んでいた。当然ながら怖いのだ。そして、リナツと離れ離れになるのも・・・・・。
「私は、私もついて行く!だって、私達親友でしょ?どんな時だって一緒。」
リナツの答えに期待していなかったトーマはリナツの言葉についに涙を流した。
「もう、このくらいで泣かないでよ、ほらほら、そうときまったら次の町の〈ホルンカ〉に行こ。もちろん、慎重に。」
「うん。僕がおもに前衛で戦うから君はスイッチ時に攻撃を。」
「了解!」
二人は簡単な作戦をたてるとホルンカの町へと続く道へ一歩踏み出した。
街をでて、数分後、リナツのHPは赤いゲージの危険域まで落ちていた。
ほかのゲームのようにモンスターをナメていたからだ。
もちろん、トーマはそんなリナツを守るため剣を奮っていた。
その後ろでリナツはポーションを一気に飲み干し、回復最中に攻撃されないよう剣を構えている。
「トーマ、ゴメン!もう、気をつけるからもう少し堪えて!」
「おう!」
二人が相手にしてるモンスター《killer wolf》という名の狼は血に飢えた形相でトーマに噛み付こうとしている。それをトーマは円盾で顔を殴り(盾にダメージ判定はない)狼が後ろにのけぞったところを逃さず、短剣の下位ソードスキル〈ファッドエッジ〉で弱点である胸に攻撃した。
弱点というだけあってHPを五割も削った。
「リナツ!いいか!?」
「いいよ!」
「「スイッチ!!!」」
声をかけると同時にリナツは、スキル後の硬直で動けないトーマの前へて滑り込む。そして、片手用直剣、下位ソードスキル〈スラント〉の構えをすばやくとる。
「はぁぁあ!」
気合いの声とともにソードスキルのライトエフェクトを纏った剣が上段から斜めに狼の頭を直撃した。
大きな爆散音とともにキラーウルフはポリゴン片へとなった。
「よし、夜にならない内にはやくホルンカに行こう!」
リナツは無言の頷きを返した。
二人は今の戦闘でドロップしたアイテムやEXPに目もくれずホルンカへの道を走り出した。
ホルンカの町に日がくれる少し前にたどりついた二人は宿屋のトーマの部屋で近くの店でかった、10コルの硬いパンをかじりながら休んでいた。
「硬いなぁー。 リナツ、明日はこの町にあるクエストやらないか?」
「ん?いいけど、どんな?」
「えっと、〈クロムブレード〉っていう剣の貰えるクエストだよ。」
「そんな情報どこで知ったの?」
確かに不思議だ。βテストに当選しなかった二人はもちろん初心者で初見。
クエストの情報など、知るはずもない。
「ああ、友達に聞いたんだ。」
「え?友達なんてこのゲームにいたの?」
「え、うん、まぁ。」
そんな言葉で何かをはぐらかしたトーマは寝るからといって布団に横になった。
「え、うん、お休み。」
リナツは疑問を抱えながらも部屋に戻っていった。
戻る途中で、つぶやいた。
(今まで隠し事なんてしなかったのに)
翌朝、けたましいアラームで起きたリナツは一瞬、この世界の事を忘れていた。
しかし、目の前に表示されたメニュー画面がここをゲームの世界だと知らせる。
「トーマ、起きた?」
トーマの部屋の扉を3回ノックし声が聞こえるのをまつ。
と、突然トーマは部屋から出て来て、
「さっ、行こう」
と言った。
クエストの内容は鍛冶屋のおじさんが自分のうでを試したいから、素材を持ってきてくれないか?というものだった。
素材をドロップするモンスターは森の中にいるらしい。
名前は《rook stone》 岩、石と言うそのモンスターは森の中ではとても発見しずらい姿をしていた。岩そのものなのだ。
さらに、近づくとどこから出すのか、煙幕で逃げるのだ。
探している内になんども他のモンスターにタゲられてレベルも5まで上がった。
リナツはレベルアップボーナスの習得スキルの増加で索敵スキルをとった。
そのため、近づくモンスターを、次々に探知し、警告した。
そのため、不意打ちがなく、スムーズに戦闘をこなしていった。
しかし、肝心のロックストーンを発見するのことはできなかった。
5時間ほどたち、そろそろ体力、精神力も限界ということで帰ろうとしたその時だった。
目の前にロックストーンを見つけたのだ。
すかさず二人は立ち止まりアイコンタクトをかわした。
(俺がいく)
(了解)
そのようなものだった。
そして、トーマは行動にでた。
円盾はスピードを鈍らせるので背中に背負い、短剣を構えてロックストーンへと走り出した。
ロックストーンはまだ気付いていない。
残り5メートルというところでソードスキル〈ファッドエッジ〉を発動させ攻撃しようとしたその時、ロックストーンはトーマに気付いた。
即座に煙幕を放ち周囲を黒い煙りで覆う。
「リナツ!索敵でコイツを探して仕留めろ!」
トーマの指示でリナツは索敵スキルを発動させ、ロックストーンの位置を正確に把握した。
そして、片手用直剣下位スキル〈ホリゾンタル〉で水平に剣を横に振った。
手応えを感じたとともに爆散音が響いた。
「トーマ!やったよ!」
しかし、トーマの声は聞こえない。
煙の中を一つの影が横切った。
しかし、それはトーマのものではない。
それをリナツは発動中の索敵スキルで知った。
「トーマ!?」
感知していたトーマともう一人のプレイヤーはリナツが声を上げたと同時に索敵範囲から消えていた。
数十秒後、煙は晴れた。
リナツは即座に周りを確認するがもちろん誰もいない。
困惑と恐怖に怯えながらトーマにメッセージを送ろうとした。しかし、フレンド欄にただ一つあった、toumaの名前は消えていた。そして、パーティーもいつのまにか解消されていた。
トーマとのつながりは完全に無へと消えたのだった。
パニックに陥りながらも索敵スキルを使用しトーマを探した。
でも、やはりトーマを見つけることはできなかった。
ホルンカの町へと暗い表情で戻り、無心で今日受けていたクエストの依頼人の元へと向かった。
ロックストーンからドロップした素材の〈クロムインゴット〉を依頼人NPCに渡すと、ぶつぶつ言った後、インゴットを鍛冶用の釜戸にいれた。
青白い光とともにインゴットの形は変わっていく。
そんな、美しくも乏しい光景を見て、リナツはいつのまにか涙を流してした。
ポタポタと落ちる涙を見て、感情などないはずの依頼人NPCは確かに悲しそうな顔をした。
数回リズミカルに鍛冶ハンマーを振るいできた剣、それはわずかに紫めいた黒い剣だった。固有名〈クロムブレード〉。
NPCはその剣をリナツにクエスト報酬として渡すとまた剣を作るべく作業場に戻っていった。
そのままそこに立ち尽くしていると、後ろに気配を感じた。ゆっくり後ろを向くとそこにいたのは全身を黒い革装備で包んで、背中に銀の片手用直剣を提げている同い年くらいの少年であった。
若干女顔のその少年は泣いているリナツの顔を見ると、手をバタバタと振り口をパクパクさせ、何かを言おうとした。が、声はかすれてなんにも聞こえなかった。
そんな少年を見てリナツは目を拭い、「ふ、ふふふ」と笑った。