谷口李夏(たにぐち りなつ)14歳は、どこにでもいる中学生であった。
容姿は、ほんの少し茶色のショートヘアーで小柄な体型、顔は「きれい」という言葉そのもののような顔であった。
勉強はそこまでできなかったが、スポーツ万能で人望も厚かった。
そんな彼女をデスゲームへと導いたのは、幼なじみの男の子と親友になったことからだった。
李夏の親友、長谷川統真(はせがわ とうま)は大のゲーム好きであった。
そのため、学校ではあまり友達がおらず、いつも一人であった。
李夏との出会いは、あるゲーム販売店でのことである。
統真は今週発売のゲームを買うために店に向かった。
その店の中に見慣れた顔、しかし絶対に話しかけてはいけないようなくらい自分とは格が違う、クラスの人気ものの少女いた。
李夏だ。
彼女も自分が今日買おうと考えていたゲームをちょうど購入したところであった。
店員に電子マネーでお金を払い、商品を受け取って出口へと振り向いた時、李夏は統真に気付いた。
「統真くん?こんにちは、君もなにか買いにきたの?」
統真には予想外であった。まさか、はなしかけられるとは思いも寄らなかったのだ。
「え?あ、えっと、こんにちは、僕は今日発売のゲームを買いにきたんだ。」
口ごもりながら統真なんとか言い終え李夏の反応を待った。
「ほんと?!私も同じの買いに来たんだ!」
統真は李夏がゲーム好きだとは全く知らなかった。
もちろんクラスメイトの誰もそんなことを知らない。
だから、李夏がゲームを買いにきたということだけで目を見開いて驚いた。
(あの、李夏ちゃんがゲーム好きだったとは。)
「ねぇ、よかったらこのゲーム、タッグを組んでやらない?知ってると思うけどこのゲーム、オンラインだしさ!」
と、また統真を驚かせるセリフをサラリと言ったのであった。
これが、二人の出会いであった。
それから、二人は「ゲーム」というものを通してどんどん仲良くなっていった。
統真にとってはかけがえのない一人の友達。
それは、李夏も同じであった。
人気ものといえど女子には女子のルールみたいなものがある。
それは、モテるやつは嫌い。そんなルールだ。
人気ものというのは表面上のことで、男子からの評価。
女子からは、確かに頼りにされているものの仕事を押し付けたりと、なかばイジメのようなことをされていた。
そんな李夏には男子とはいえ外見で人を選ばない統真は最高の友達だった。
そんな二人が出会ってから数ヶ月後には親友と呼べる程の仲になっていた。
もちろん、男子から超人気の李夏と話す統真は男子から妬まれていた。しかし、もとからハブられていた統真には全く無意味なことだった。むしろ、皆から気にされてうれしさすら感じていた。
そして、二人がデスゲームに出会ったのは半年後のことだった。
李夏はネットに「ソードアート・オンライン」という全感覚でゲームをプレイするという記事を見つけた。
ゲーム好きの二人だ。もちろん購入しようということになった。
高校受験まで一ヶ月というこの時期に二人はゲーム販売店から続く長い長い列の前方にいた。
かれこれ10日は並んでいる。
二人は近場の高校受験に一週間前ほど受かったので学校は休みなのだ。
開店の時、雪崩のように店内に流れ込みやっとの思いで買ったゲームを大事に持ちながら家に持ち帰り、早速ログインの準備をした。
李夏・rinatuは男性型アバターでログインしていた。
髪型は坊主。リアルは女性なの?というくらい女性離れしていた。
対して統真・toumaはいかにも紳士という感じのアバターであった。
二人お互いみたとき爆笑した。李夏が男性アバターにした理由は一つ、男性にチヤホヤされるのが嫌だからだった。
猪型モンスターがポリゴン片へと爆散したのを見届けると二人はふー、と息を吐きだした。
たった今、この初期中の初期のモンスターを倒したところだった。
リナツは片手用直剣を腰に、トーマは短剣と円盾を背中に戻した。
お疲れ!とハイタッチをする。
かれこれ狩りを初めてから3時間ほどたった。
レベルも1から2へと上がっていた。
「じゃ、わた、俺、そろそろご飯だからおちるね!」
「慣れないなら、女性アバターにしとけばよかったのにさ。うん、わかった、お疲れ様!」
「別いいじゃん!じゃ、バイバイ!」
そう言い終わるとリナツはログアウトのボタンを押した。
しかし、・・・・・・・・ログアウトできない。
「え?ログアウト、できない。」
と不安げな表情でリナツは何回もログアウトのボタンを押していた。
「そんな馬鹿な、、、あれ?できない?」
二人は焦っていた、全感覚なのだからゲームは中からしか捜査できないのだど
「どうしよう?、、、」
その時だった。エリア中に大きな鐘の音が鳴り響いた。
その鐘がなると同時に二人は第一層の主街区、〈はじまりの街〉
に転移されていた。
「どうゆうこと?」
リナツはトーマに尋ねた。しかし、トーマは黙っている。
その顔はいつもとは違う真剣さであった。
どうやら、ログインしているプレイヤーが全て集められたようで
広い広場をうめつくしていた。
ざわめく声が広場に響き渡る。
そのときだった、空一面に赤い文字が浮かび上がり空をおおった。それと同時に赤いフードをきた、正確には赤いフードのみのゲームマスターが姿をあらわした。
「私の名前は茅場章彦、この世界を唯一操作できる人間だ。」
それから、茅場は淡々と、
ゲームからログアウトできないこと。
ゲーム内で死ねばリアルでも死ぬこと。
第100層までクリアすることによって、ゲームから解放されること。を語った。
そして、プレイヤーのアイテムストレージにアイテム〈手鏡〉を贈ると姿を消した。
「でわ、見当を祈る」
トーマはそれを聞き終わると即座にリナツの手をとり、はじまりの街の北出口、つまり次の街へと続く門の前に引っ張っていった。
「ちょ!トーマ!?」