ラギアクルスのハンター撃退記(仮)   作:ディア

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第16話 クーデター

☆☆★★★★☆☆

 

リオレウス希少種、リオレイア希少種の二頭狩猟クエストを終えたマークが太刀の手入れをし終わると酒場に向かう。

「ちーっす、今帰ったぜ」

マークが呑気そうに他のハンターに挨拶するがその返事はなく、真剣な表情で机の上にあるものを見ていた。

「どうした? リーグ、そんな真顔になって」

「マークか……その様子だと知らないのか?」

リーグがそう言ってマークに返事し、顔を向く。

「何をだ?」

「ギルド長を始め、ギルドの幹部達が殺されたんだ」

「何だと!? リーグ、誰に殺されたんだ!?」

「主犯はマルス。てめえもそいつの名前くらいは聞いたことはあるだろ?」

その名前はラギシトリオンが火山で追い剥ぎしたハンターの一人であった。

「あの寄生虫か」

「寄生虫の方がまだマシかもな。あいつはハイエナだ」

「ハイエナのマルスだと無駄にかっけえじゃん。ハンターとしては理想っぽい渾名だし」

「あいつの渾名なんてどうでも良い。お前の手柄も皆あいつのものになったのを忘れたのか?」

「俺は手柄が取られたことに大して興味ない。無理に背を伸ばしてもてめえの実力がついていけなきゃ殺される世界に俺達はいる。元々ハンターランクってのは安全の為に作られたんだよ」

「そうか。ならマルスが今のギルドを総括するギルド長に任命されてもか?」

「……詳しく聞かせろ」

 

「マルスはそれまでのギルドに不満を感じていたハンターを集めクーデターを起こした」

「俺がいない間にそんな事が……」

「当然と言えば当然だ。異常とも言える数のハンターを雪山に派遣したのに関わらず、ラージャンブラザーズ狩猟の失敗。それによる信頼性の低下や経営悪化。そしてラギシトリオンの対応の間違い。ギルドが動くほど状況が悪化していったからな。そんなものを放置する程王国も馬鹿じゃない。王国とマルスをはじめとした不満を感じていたハンター達が結託し、ギルドにクーデターを起こしたんだ」

「王国がクーデターを唆したってことか。しかし妙だな。どうやって幹部達を殺したんだ? ギルドの幹部としては無能だがハンターとしてはかなり優秀な奴らだ。マルス程度の実力の持ち主相手なら百人いようが勝てる筈だ」

「詳しいことわからねえが俺が聞いた話によると、王国の暗部がギルドの幹部連中の子供達を人質にして、幹部の連中が大人しくなったところを殺したらしい」

「人質とはひでえな。それでリーグ、今のギルドはどうなっている?」

 

「独裁そのものだ。それまで死体となったモンスターから剥ぎ取れる回数はモンスター毎に決められていたが、死体を剥ぎ取れるのはただ一回だけになった。それだけじゃない。捕獲しても受け取れる素材が少なくなったんだ」

「そう言えば俺が受け取ったのも少なくなっていたな……」

「俺達が受けとるはずだった素材を貴族や商人に売っ払い、新ギルドの幹部の連中が猫ババしている」

「新しくなったギルドが早速横領かよ。どうすんだよ……」

「正義感の強い第二王子にも呼び掛けているんだが、マルスの言い訳が上手いのかどうにも動きが悪い。ロビー活動でどうにかするしかない」

 

「そうか。ところでリーグ、その紙は何だ?」

「これか。新ギルドの幹部の推薦状だ」

「推薦状?」

「お前にも届いてある。ほらよ」

マークが推薦状の紙が入った封筒を受け取り中身を見る。

 

【マーク殿、ギルド長マルスの推薦により貴方を副ギルド長補佐に推薦する】

「大方俺達を取り込んで自分に箔をつけたいんだろうな。他のハンター達は……って、マークお前の推薦状の中にもう一枚紙があるぞ?」

リーグに指摘され、マークがそれを覗くと確かにもう一枚紙があり、それを広げ熟読する。

【マーク、幹部の推薦を蹴る場合、ラギシトリオンの行方を追って貰いたい。その間オトモアイルーが必要な場合、俺が用意する。リーグより】

マークがリーグと目を合わせると二人は頷き、幹部の推薦状を破った。

「そうだよな。じゃあ例のものを用意するから少し待っていろ」

「わかった」

 

★★☆☆☆☆★★

 

俺達は塔から逃げ、だらだらと密林を歩いていた。

「『曲者ーっ!』」

「『殿や儂達兄弟に逆らうとどーなるかその身体で思い知れいっ!!』」

「『た、助け……』」

ラージャンブラザーズが俺の鎧の一部を盗もうとしようとしたゲリョスを撲殺し、殺しているにもかかわらず何度もラッシュし続ける。

いやー有能な弟分を持つと助かるわ。いやマジで。ゲリョスの野郎、俺の鎧に含まれているライトクリスタルを盗もうとしていたからああなったんだよな。ライトクリスタルはそこまで役に立つ訳ではないが転生者と会った場合、取引に使えるかもしれないから取られると面倒なんだよ。

 

『お前ら、ゲリョスの始末は崖に捨てておけよ』

「『『はっ!』』」

ゲリョスを食わない理由は奴がゴムのような皮で覆われているだけじゃなく、食っても意味がないからだ。必要もないのにわざわざ不味いものを食うほど俺は酔狂じゃない。

 

「しかし凄いニャ。相性の力を覆すニャんて……」

『互角の相手なら相性は大切だが、地力が大きく違うと相性云々は関係なくなってしまう』

「ニャるほどニャ。そう言えばここ数日ハンターの動きが鈍くニャっているそうですニャ」

『鈍くなっているってそれはハンターの動きそのものか? それとも、ハンター自体を見かけなくなったのか?』

「どちらかと言えば後者ニャ」

 

『だとしたら……おい、お前ら。急いで砂漠に向かうぞ!』

「何で砂漠ニャんニャ?」

『言いづらくないのか? まあいい。ハンター達の活動が鈍ている以上、移動するのは今しかない。砂漠に向かう理由は過酷な環境である砂漠はハンター達も近寄り難い場所だ。故に数多くの強力なモンスター達がいる。そいつらを僕にし、砂漠にやって来たハンター達をまとめて叩く』

「そんなに上手くいくかニャ?」

『さあ行くぞ、野郎共!』

「『『おおーっ!!』』」

こうして俺達は砂漠へ向かうことになった。


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