ヤンデル大鯨ちゃんのオシオキ日記   作:リュウ@立月己田

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 久しぶりに更新でーす。

 艦娘幼稚園の方をお休みしていましたが、リハビリを兼ねてこちらの小説を書いていたんですが……。

 なにこれ長い。

 思っていた以上に長編になってしまいましたが、まぁこれはこれでということで。


――――――――――――――――

 さて、今回はヤン鯨が生まれる切っ掛けとなった過去のお話? です。
艦娘幼稚園でのコラボや、青葉のスピンオフでの会話が元なっていたりするので、お読みになっていない方はそちらも宜しくです。

 それでは『私がヤン鯨になった理由(わけ)』、全8話を開始しますっ!



私がヤン鯨になった理由 その1「過去の記憶」

 

 ごっぶさたしってまーっす。

 

 元気にしてましたかー? ヤン鯨ですよー。

 

 最近作者が忙しいとかで休養してますが、そんな根性で務まるかって脅し……じゃなくて助言してあげたら、なんとか腰を上げたんですよー。

 

 ちょーっとばかり刺し過ぎちゃって時間がかかっちゃいましたが、とりあえず形になったのは結果オーライですねー。

 

 

 

 さてはて、今回は今までとは違い、少しお話が変わったりします。

 

 なんと、私の過去のお話……って、なんてことをするんですかっ!

 

 乙女の秘密を暴こうだなんて、やっぱり作者をオシオキです。それはもう、アイアンメイデンに入ったのと同じくらいに穴だらけにしてやりますっ!

 

 ちなみにアイアンメイ電って変換されたのはご愛嬌と言うことで……どうでも良いですけど。

 

 とは言え、ここまできたら後には引けませんかねー。

 

 それでは私の過去編。ちょっぴりお恥ずかしいですが、スタートです!

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 ある日の午後。

 

 正確に言えば、曙ちゃんと出会ってから1週間が過ぎたくらいでしょうか。

 

 空はどんよりと曇っていて、小雨がしとしと降っています。

 

 ここ数日は仕事の依頼もなく、私は住家に戻ってコーヒーを飲みながら暇を持て余していました。

 

 時間があれば仲の良い駆逐艦の娘たちの元に行って、キャッキャウフフタイム……としゃれ込みたいところだったんですが、あいにく都合が合わないとのメールが一斉に帰ってきて、しょんぼりモードだったりするんですよね……。

 

「ふぅ……」

 

 コーヒーカップに口をつけて一飲みした私は、大きなため息を吐きながら窓の外を見ます。

 

 窓とは言っても、洞窟の中から砲弾をぶっ放しただけの穴だったりするんですが、外の景色を見れるのはここしかありません。

 

 もちろん風避けのためにガラスをはめ込んでありますが、すき間があるので完璧ではないのですが……。

 

 それでもやっぱり、外の明かりが取れる場所は必要なんですよねー。

 

「それにしても、雨があがりませんねぇ……」

 

 引き篭っている私にとって天気がどうなろうとしてもあまり意味はありませんが、目にしてしまうと気分に多少の影響は出てしまいます。

 

 そしてなにより、あの時と同じ天気であることが……記憶を呼び覚ましてしまうようで、

 

「憂鬱……ですねぇ……」

 

 正直に言って、思い出したくはない記憶。

 

 ですが、これだけ暇になっちゃうと、他にやることもないですからね。

 

 私はもう一度大きくため息を吐いてから、今よりずっと前のことを思い返しはじめました。

 

 

 

 

 

 遡ること数年前。

 

 今の私とは違い、昔はとある鎮守府に所属する1人の艦娘でした。

 

 着任したときから遠征任務を繰り返し、ときには出撃をし、鎮守府内でもそれなりに顔が利くようになった頃、私は提督に秘書艦として命じられたんです。

 

 当時の私はそれが非常に嬉しく思い、少しでも提督のお役に立てるよう、全力を尽くす所存でした。潜水艦の仲間たちと共に艦隊を組んで遠征任務につき、少しずつではありますが練度を高めていったんです。

 

 そうして軽空母へと改装できるのも後少し……となったある日、私はいつもの艦隊で出撃した中部海域から戻ってきました。

 

「痛たた……。さすがに中部海域の深海棲艦、爆雷の激しさが半端じゃないでち……」

 

「ご、ごめんなさい……。私がもっと、上手に指揮をしていれば……」

 

「大鯨のせいじゃないのね。ゴーヤの練度が高くないのに、無理矢理出撃させる提督が悪いのねー」

 

 中破したゴーヤさんと落ち込む私を励ますように、艦隊の中で一番練度の高いイクさんが慰めてくれました。イクさんは既に改装され、魚雷の攻撃は非常に強く、戦いの中で非常に頼りになる存在です。しかしそんなイクさんでも小破してしまうくらい、中部海域の難易度は高いところでした。

 

「とりあえず、早いところ入渠しに行くのね」

 

「そう……でちね」

 

 ゴーヤさんの肩をポンポンと叩くイクさんに促され、2人はドックの方へと向かって歩いて行きました。私は運良く被弾を免れていたので、次の任務まで時間まで休憩をするため、甘味所にでも考えていたんですが……、

 

「あ、あの、大鯨さん。提督が執務室にくるようにとの伝達です」

 

 いつの間にやら近くに立っていたまるゆさんが声をかけてきたので、私はコクリと頷いて返事をし、提督の元へと向かうことにしました。

 

 ……しかし、まるゆさんの存在感って……薄いですよね。

 

 

 

 

 

 寄り道せずに提督が待つ執務室の前に到着した私は、小さく深呼吸をしてから気持ちを落ち着かせ、軽く拳を握って扉を2回叩きます。

 

「潜水母艦大鯨、提督の命により推参いたしました」

 

 ノックの後、中にいる提督に聞こえるように大きな声をあげると、「うむ、入りたまえ」と提督の返事が聞こえたので、ゆっくりと扉を開けました。

 

 執務室の中に入った私は提督に敬礼をし、しっかりと顔を見つめました。

 

 提督の鋭い目つきが私の視線を認知し、キラリと光ったように感じます。その瞬間、私の背筋に冷たいものが走るような感覚が襲いますが、これはいつものことなので……と、小さく息を吐いて冷静を保ちました。

 

「早速だが、今から重要な任務の為、私についてくるように」

 

 私のそんな気持ちを察しようともせず、提督は用件だけを言って私の横を通り抜け、扉を開けてスタスタと歩いて行きました。置いていかれる訳にはいきませんので、私は慌てて「りょ、了解いたしましたっ」と声をあげ、部屋を後にします。

 

 

 

 小走りで提督の後に追いついた私は、3歩ほど後ろに下がった位置を歩きました。

 

 提督はそんな私を一切見ることもなく、ただひたすら前を向きながら通路を歩いて建物の外へと抜けていきます。

 

 天気はあいにくの曇り空で、パラパラと小雨が降り始めています。中部海域から帰投してきた時点では降っていませんでしたが、空を見る限り本降りになりそうな雲行きでした。

 

「と、ところで、今からどこに向かうのでしょうか……?」

 

「………………」

 

 目的地が分からない以上、なんらかの拍子で提督とはぐれてしまった場合のことを考えれば聞いておくべきです。しかし提督は私の声が聞こえていないかのように、全くの無反応を貫いていました。

 

「あ、あの……、提督……?」

 

 元々寡黙な性格である提督ということはわかっているのですが、さすがに心配になってしまいます。無視をされる理由はないと思いますから、もしかすると聞こえていなかっただけなのではないかと考え、もう一度話しかけたんですが、

 

「ついてくれば分かる。それまでは黙っていれば良い」

 

「は、はい……」

 

 有無を言わせぬような口調に、私は少しだけ身体を震わせて黙り込みました。

 

 後ろから見える提督の顔は、いつもに増して冷たい感じがしているような気がします。まるで返事を拒否しているような雰囲気に、私はそれ以上なにも聞くことができません。

 

 そうして歩き続けること数10分。気付けば、提督と私は鎮守府内の海に面した埠頭の側にある、倉庫が乱立する近くに立っていました。

 

 それらの間にある細い道を通り抜け、いくつもの角を曲がり続けます。

 

 人気は殆どなく、もし提督とはぐれようものなら、完全に迷子になってしまうのではないかと、徐々に焦りがわき出してくるようでした。

 

 所属する鎮守府内であるというのに、一度知らないところにきてしまえば練度の高さなんて意味を成しません。

 

 提督の秘書艦なのに……と、自己嫌悪さえ感じてしまいますが、今はそんなことを考えている場合ではなく、しっかりと後についていくことに集中するべきでしょう。

 

 私は先程よりも提督との距離を少しだけ縮め、絶対に離れないように緊張を張り巡らせました。

 

 そして暫くして――、私の目の前には小さなコンクリートの箱みたいな建物がありました。

 

「こ、ここは……いったい……?」

 

 呟く私に提督は目もくれず、入口の扉についている鍵を解錠して中へと入ります。

 

 私は置いてかれないように後に続こうとしましたが、ふと扉の鍵が気になりました。

 

「これは、指紋認証……?」

 

 なぜこんな小さな建物に、このような鍵が取り付けられているのでしょう?

 

 鎮守府内は厳重に作られてはいますが、一度門をくぐればカードキーでほとんどが事足りるようになっています。いくつかの重要な施設もカードキーの種類によって解錠できるかどうかですし、私の記憶には指紋認証の鍵なんて見たことがないのですが……。

 

「なにをしている。早く着いてこい」

 

「は、はいっ。申し訳ありません……っ!」

 

 そんなことを考えていると、扉の向こうから提督から急かす声が聞こえ、私は慌てて建物の中へと入りました。

 

「……え?」

 

 内部はとても薄暗かったですが、それ以上に気になることがあった私は思わず声をあげてしまいました。

 

 なぜならこの建物は外見通りの大きさで、入口の扉以外は壁しか見えませんでした。

 

「扉を早く閉めろ」

 

「あ、は、はいっ!」

 

 私は言われた通り扉を閉めて振り向きます。すると提督は扉の正面にある壁へと歩いて行き、右手の人差し指を突き出して小さく動かしていました。

 

「……?」

 

 その動きが気になった私は、提督の背中越しにある向こう側を見ようと覗き込もうとした瞬間、

 

「きゃっ!?」

 

 急に建物が揺れ、大きな地震が襲ってきたのではと思った私は、慌ててその場に座り込もうとしました。

 

「下に降りているだけだから、慌てなくても良い」

 

「え……?」

 

 提督の声に驚きながらも顔を上げてみると、先ほど見えていたコンクリートの壁は既に私の身長を超えた高さにありました。

 

「こ、これは……、昇降機……ですか……?」

 

「……そうだ」

 

 提督は私の方を見ることなく答え、小さく息を吐きました。

 

 こういった態度を取ったときの提督は機嫌が悪いことの方が多く、おそらくは私が質問を繰り返しているのが原因だからであろうと思い、口を塞ぐことにします。

 

 どうして鎮守府内にこのような施設があるのか。

 

 そして、これから私はいったいどこに向かうのか。

 

 気になることは沢山ありますが、今は黙って提督の後について行こうと決めたんです。

 

 

 

 ……しかしこれが、私の今後の運命を大きく変えることになるなんて、夢にも思わなかったんですよね。

 





次回予告

 提督に連れられてやってきた場所。
そこで私はいったいなにを見るのか、
そこで私はいったいなにをさせられるのか。

 そして目の前に現れた姿に、驚きを隠せませんでした……。


 私がヤン鯨になった理由 その2「囚われの身」


 乞うご期待!

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