秘書艦の曙ちゃんに手伝ってもらいながら執行しているんですが……
あれ、何やら不穏な空気?
まぁ、全然気にしないんですけどねー。
「な、何これ……?」
焦りながら問い掛けてきた曙ちゃんの額には大粒の汗が浮かんでいましたが、分からなくもないんですよねー。
目の前の床に置かれているのは、私が先程憲兵=サンにお願いして持ってきてもらったオシオキ用の道具なんですけど、ちゃんと説明しておきましょうかー。
「左から順に、焼いた石が入っているただの熱湯と、たっぷり満載のかち割り氷。それに燃える寸前まで熱した油が入ったバケツですねー」
「そ、それは見れば分かるけど……、もう1つの蓋のついた箱は……?」
「そっちは開けてからのお楽しみですよー。数を集めるのが大変だったみたいですけど、オシオキの為には必要な労力ですよねー」
「そ、そう……なんだ……。
それで、この4つを使って……いったい何をしようと……」
「それはさっきも言った通り、提督の性癖を矯正する為に使うんですよー?」
「で、でもどうやって……?」
恐る恐る問いかけてくる曙ちゃんにニッコリ笑った私は、人差し指を立てながら説明を続けます。
「この腐り切った提督の足に、曙ちゃんが長靴を履かせてくれましたよね?」
「え、ええ……」
「説得や強制をするときには、同じところを使ってやるのが効果的なんです。
ですから、長靴の中にバケツの中身をたっぷり流し込むんですよー」
「んなっ!?」
私の言葉を聞いた瞬間に驚愕の顔を浮かべたチンピラ提督は大きな声をあげ、ワナワナと肩を震わせました。
「そ、そんなことをしたら大本営の中将が黙って……っ!」
「その情報が届いた頃には時既に遅しですけどねー」
「……っ!」
ハッと息を呑んで言葉を詰まらせてチンピラ提督ですけど、私に脅しは通用しないことを未だに理解できていないんでしょうか?
まぁ、色々と情報を操作しないと具合は悪いですけど、その辺りは憲兵=サンにお任せしておきますし、私はこのチンピラ提督の口を塞いでしまえば良いだけのことですからねー。
もちろん始末する訳にもいきませんから、精神的にビシバシいっちゃいますけど。
あっ、やっぱり肉体的にもキツイかなー。
受けるのは私じゃないから別に良いですよねー。
「そういうことで……。
さぁ、曙ちゃんの出番ですよー」
「ふぇっ!?」
「何を驚いているんですかー?
ここはしっかり曙ちゃんの恐ろしさを提督に知らしめないと、ヤられちゃいますよー?」
「……っ!」
私の言葉に顔をしかめた曙ちゃんは、提督とバケツを何度も交互に見てから頷きました。
「わ、分かったわ」
その目にはしっかりとした意思が宿っていて、ほんの少しだけ別の何かがあるような気も……って、別に気にしませんけどねー。
「……なっ!?
や、止めろっ、止めてくれ曙っ!」
「五月蠅いわね、このクソ提督っ!
今まであたしにしてきたことの重大さを、身をもって知りなさいっ!」
「ゆ、許してくれっ! 頼む、頼むからっ!」
激しく頭を左右に振って謝るチンピラ提督ですけど、既に曙ちゃんはやる気になっちゃっていますから手遅れです。
「それじゃあまず、熱湯の方からいきましょうかー」
言って、私は長靴を入れていた袋から柄杓を2つ取り出して、1つを曙ちゃんに渡します。
「それじゃあこうやって熱湯を柄杓ですくって……。
あっ、曙ちゃんは左足の方にお願いしますねー」
「や、止めろぉっ!」
「聞く耳持ちませーん」
暴れて逃げようとするチンピラ提督ですが、椅子にしっかりと縛られているので不可能です。
つーか、もしそれで外れちゃったら、憲兵=サンにオシオキしちゃいますからねー?
「く、クソ提督に……仕返し……ふふ、ふふふ……」
そして何やら曙ちゃんの眼がちょっぴりダークサイドに落ち気味なんですけどー。
まぁ、今まで色々と足に関してやられちゃっていましたから、その反動がきちゃっているんじゃないですかネー。
なんだか語尾が英国帰りの戦艦みたいになっちゃいましたけど、気にせずにぱぱっとやっちゃいましょうかー。
「はい。それじゃあいきますよー。
だばだばー」
「だ……、だばだばー」
「た、頼むっ、やめ……ひっ、ひぎぃぃぃっ!」
バケツの中でグツグツと煮えている熱湯を柄杓で長靴の中に注ぐと、チンピラ提督は顔を真っ赤にしながら悲鳴をあげ、身体を激しく揺さぶり始めます。
おおよそ90度近くある熱湯が長靴内に溜まり、素足が一気に茹で上がります。もちろんこの温度に耐えられるように特別に拵えた長靴なんですが、後に控えている油は大丈夫ですかねー。
「ああああああっ! 熱い熱い熱いーーーっ!」
「あんまり動くと熱湯が飛び出ちゃうから、動かないで下さいよー」
「ザッケンナコラーーーッ! こんなん耐えられるかボケェッ!」
「ふむー、そうですかー。
それじゃあ今度は冷やして差し上げましょうー」
ということで、次は2つ目のバケツに入っているかち割り氷の出番ですねー。
「それじゃあ曙ちゃん。氷をガッツリ入れちゃって下さいー」
「こ、今度は氷ね。
う、うん。大丈夫。大丈夫……」
曙ちゃんはぶつぶつと呟きながら柄杓で氷をすくっていますけど、目つきが怪しい感じになってきましたねー。
これは期待できそうな予感がバリバリですが、今はオシオキに集中いたしましょうー。
「はい、だばだばー」
「だばだばー」
2人揃って長靴の中に氷を投入すると、チンピラ提督の表情が徐々に和らいできました。
「あ、熱いのがマシに……。た、助かった……」
大きく息を吐いて胸を撫で下ろしていますけど、これが休憩だと思わない方が良いんですよねー。
「更に、だばだばー」
「だばだばー」
「えっ、あ、いやっ、もうこれ以上は……」
「聞く耳持ちませんー。だばだばー」
「だばだばー」
「い、いやいやっ、今度は冷たくなってるからっ!」
「そりゃあ、オシオキですからねー。だばだばー」
「だばだばー♪」
「ストップストップ! もういいからっ! マジで勘弁してくれぇっ!」
「んっ、何か言いましたかー?」
「だばだばー。だばだばー。あははははー♪」
精神的にも追い込もうとした私は手を止めてチンピラ提督に笑みを向けたのですが、曙ちゃんは勝手に両方の長靴の中に氷を投入しまくっていました。
……曙ちゃん、恐ろしい娘ッ!
「冷たい痛い感覚がないっ! マジで止めてお願いしますっ!」
「えー。どうしましょうかねー」
「本当に勘弁して下さいっ! マジで曙には二度と変なことをしませんからっ!」
「こんなことを言っていますけど、どうしますか曙ちゃ……」
「だばだばっ、だばだばっ、だーばー♪」
「んひぃぃぃっ! 冷たあぁぁぁぁぁっっっいぃぃぃっ!」
サスペンスなドラマのCM移行曲を口ずさみながら氷を投入する曙ちゃんと、今度は冷たい激痛に身体を揺さぶるチンピラ提督が、なんともまぁシュールと言いますか……、何ですこれ?
曙ちゃんったら完全に目覚めちゃっていますよね? やろうと思えば瞬●殺くらい出せそうですよね?
誰ですかこんな状況にしちゃったのはーーーって、私ですよねー。
まぁ、別にオシオキに悪い影響が出る訳じゃないので無問題ですし、さっさと続きをやっちゃいますかー。
「それじゃあ今度は油の方にいっちゃいましょうかー」
「も、もう勘弁して下さいーーーっ!」
「うっざいぞ、クソ提督♪」
「満面の笑みを浮かべてる悪魔がいるーーーっ!」
「たかが両足の指と足首とスネがボロボロになっちゃうだけでしょ?」
「それって死活問題だから……ひいっ!?」
泣きわめくチンピラ提督が抗議の声をあげていると、いきなり曙ちゃんの表情が一変しちゃいました。
簡潔に言うとアレです。メンチ切ってます。
「あんたはあたしの足をまさぐりまわした挙句に靴の臭いまで嗅いで、靴下で●●●●までしてたわよねぇ……?」
「な、なぜそれをっ!?」
………………
え、何それ。初耳なんですけど。
つーか、そんなことまでやっていたんですか、このチンピラ提督は。
完全にド変態です。もはや酌量の余地なしです。
もうこの際、ヤっちゃっても文句は……言われちゃいますよねぇ。
「だから自分の罪を認めて諦めれば良いわよね。クソ提督♪」
「だ、だ、だからってこれはいくらなんでも……って、何をする気だ曙ぉっ!?」
「何って……、油を投入?」
きょとんとした顔で首を傾げた曙ちゃんですが、その手には柄杓ではなく熱せられた油が入ったバケツが……。
やっぱり曙ちゃん……恐ろしい娘ッ!
「い、入れても良いわよね、クソ提督?」
「台詞だけだとなんだかエロく聞こえるけど、マジで止めてーーーっ!」
「うざいしさっさと入れちゃおっと。
だばだばー、だばだばー」
「ぎにゃあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
バケツから直で氷が満載になった長靴に熱せられた油を投入した曙ちゃんですが、その顔は満面の笑みを浮かべていて、本当に楽しそうでした。
「今度は熱いぃぃぃっ! らめぇっ! 足がおかしくなるのほぉぉぉっ!」
「あははははっ! 何それっ! どこのエロ漫画っ!?」
大爆笑でチンピラ提督を指差す曙ちゃんが大笑いをしていますが、これはチンピラ提督にとって完全に目覚めさせてはいけなかったかもしれませんねぇー。
まぁ、私にとってはどうでも良いんですが、あんまりオシオキをしたって気分になりませんでしたから、フラストレーションが溜まっちゃっています。
もう一つだけ憲兵=サンに用意してもらった箱があるんですけど、これはもう使う必要がなさそうですねー。
中身については……あまり聞かない方が良いと思いますけど、どうせなんで言っちゃいましょうか。
ボロボロになった両足のトドメに、大量のムカデを用意しただけなんですけどねー。
……え、最後のが一番ヤバいですか?
でも、あれだけ交互に熱いのと冷たいのが繰り返されると、感覚がマヒしちゃっていますからねぇ。
あんまり効果がないと思うので、これは別の機会に使うことにしますですよー。
それでは今回はこの辺で。
チンピラ提督の相手は曙ちゃんに任せておけば大丈夫そうですし、私は野暮用を済ませちゃいますかねー。
ではでは、さよならさよならー。
――で、終わらないんですよー。
「ということで、きちんと説明してもらえますかー?」
「む、むぐ……ぅ」
場所が変わってとある部屋。私はバケツを用意してくれた憲兵=サンを拘束して、尋問しちゃってまーす。
「今回の件についておかしいところがいっぱいありますよねー?」
「そ、それは……その……」
「秘書艦にセクハラをしていただけで私が呼ばれるなんて、さすがにおかしいですよねー。
そんなの、憲兵=サンたちがとっ捕まえて注意をすれば良いだけのことですし、大本営の偉いさんがもみ消そうとしてもそれ程痛手にならないでしょうー?」
「そ、そうなのだが……」
「言えない……って、ことですかー」
「さ、察してくれるとありがたい。だからこの拘束を……」
「お断りしますー」
「……ぐっ!」
「別に隠しごとをするのは問題ないんですよー。
でも、私を騙したまま有耶無耶にするのは良くないですねぇー」
「し、しかしこれは上の命令で……っ!」
「私にそんなことは関係ないですしー」
言って、ここぞとばかりに例の箱を取り出しました。
「……っ!」
「あっ、やっぱり分かっちゃいますかー?
そうそう。あなたが用意してくれた箱ですよー」
「や、止めろっ、止めてくれっ!」
「そうは問屋が卸すどころか、本社までもが倒産ですー」
「な、何を言っているか意味が……ひぎぃっ!」
五月蠅いのと面倒臭いので、箱の蓋を開けたらそのまま憲兵=サンの足を直接投入ー。
「あががががががががががぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
中に入っていたムカデたちはビックリして、憲兵=サンの足にガッツリと噛みつくんでしょうねー。
そして毒がまわってパンパンに腫れあがった足は、小さな箱の穴から取り出すことができなくて……。
うーん。まさに外道ですねー。
とまぁ、こんな感じのオチってことで、本当に終了しましょうかー。
次回はちょっとばかり遠出をしなけければいけない仕事があるので、準備に移りたいですからねー。
それでは、またの機会までさよならでーす。
ということで曙ちゃんが大活躍?
色々裏があったようななかったような。まぁ、あんまり気にしないんですけど。
近いうちに別の仕事もあるので、今回はこれくらいでお暇って感じですねー。
ではでは、また機会があればお会いしましょー。
え? 会いたくないですって?
そういうことを言う人は……こうですよー(サクッ
とりあえず筆者を刺しておいたので本当にこれにてー。
※余談ではありますが、現在ツイッターの方で艦これ二次小説『深海感染―ONE―』をまったり連載中です。
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