ヤンデル大鯨ちゃんのオシオキ日記   作:リュウ@立月己田

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 ル級の言葉に惑わされそうになっていた私。
そんな不安定な心のまま、戻ってきた提督は指示をしてきます。

 恐ろしい拷問が始まり、そして続けられるのです……。


私がヤン鯨になった理由 その6「水拷問」 ※過激な拷問シーンにより注意

「これを蛇口に繋げ」

 

 1番最初にバケツを見たとき、中に入っていたのは蛇口を捻るパーツとホースでした。

 

 提督はそのホースをいつの間にか手に持ち、私に命令をしてきたんです。

 

 逆らうことができない私は素直に頷き、言われた通りに蛇口の先にホースを取り付けました。

 

「これで……良いでしょうか」

 

「ホースが外れないように、針金でしっかりと固定しろ」

 

「は、はい。分かりました……」

 

 提督から受け取ったどこにでもあるような針金を使い、ホースと蛇口の重なっている部分をグルグル巻きにします。よりしっかり締まるように、パーツを一度取り外して針金に絡ませて何度も回転させ、ホースを引っ張ってもビクともしないようにしました。

 

「ふむ。それで良いだろう」

 

 納得したように頷いた提督は壁のボタンを指で押し、床に倒れているル級を再度拘束しました。

 

「グッ……」

 

 小さな悲鳴をあげて睨みつけてくるル級ですが、提督はそんな表情を見てニヤニヤと笑みを浮かべています。

 

 私は再び始まる拷問に身を震わせる一方で、ほんの少しだけですがいい気味だという気持ちが芽生えていました。

 

 ル級は私を騙そうとした。

 

 私の心の隙間に鋭い刃のような言葉を投げかけ、混乱させようとしたのです。

 

 ですが、その言葉が間違っていないのかもしれないと思ったのもまた事実であるからこそ、信じてしまいそうになったのですが。

 

 もし、提督が戻ってくるのが少しでも遅かったら。

 

 私はル級の言葉を信じ、提督を裏切っていたのでしょうか?

 

 それは、私が艦娘という立場と仲間を見捨てることになり、人間と敵対する行動になってしまうかもしれない。

 

 その行き着く先は、目の前に居るル級と同じ――深海棲艦と同じ。

 

 ル級は私に、仲間になれと言ったのかもしれません。

 

 今考えれば、なんて恐ろしい言葉だったのでしょうか。

 

 今考えれば、なぜ私は気づかなかったのでしょうか。

 

 少しでも心が揺れ動かされてしまったことを後悔し、パーツを取り外した針金の先をギュッと握り込んだのです。

 

「さて……、それでは再開と行こう」

 

 提督の言葉が私の心に染み渡るように感じ、コクリと頷いていました。

 

 もう二度と裏切るようなことは考えない。

 

 提督の命令には逆らわず、仲間を守る行動をしよう。

 

 そう――考えていたはずなのに、

 

 

 

 次の言葉に、私の心はまたしても大きく動いてしまったのです。

 

 

 

 

 

「ホースの先を持って、ル級の口にねじ込んで固定しろ」

 

「…………え?」

 

 バケツに水を汲もうとした私の手が、ピタリと止まりました。

 

「え、えっと……、さっきと同じように、水をかけるのではないのでしょうか……?」

 

「それならホースを使う必要はない。お前は私の言う通りに動けば良いのだ」

 

「で、ですが……」

 

 言って、私はル級の方を見ましたが、その理由は少しばかり問題があるからです。

 

 私とル級の間には鉄格子があり、隙間からホースを伸ばしてル級の口の中に入れることはできますが、ねじ込んで固定するのは無理があるでしょう。

 

 そんな私の考えを察知したのか、提督は無言で頷きながら壁のボタンを押します。すると、ガシャン……と小さな金属音が鳴り、続けてギギギ……と低い機械音が鳴り響き、鉄格子が天井部分に吸い込まれました。

 

「これで問題はないな?」

 

「は、はい」

 

 確かに問題はありません。

 

 しかしそれは、私がル級の口の中にホースをねじ込むということ。

 

 それから導き出される光景を予想するのは難しくなく、明らかに先ほどとは比べ物にならないモノだと分かります。

 

 ル級に向けていた小さな恨みは一瞬で消え、またしてもこれ以上続けたくないという気持ちで胸がいっぱいになりました。

 

「なにをしている、早くしろ」

 

 後ろからは提督がイラつくような声で急かすのが聞こえ、私は焦りながらホースの先を持って一歩ずつ進みます。

 

 先ほどまであった鉄格子の境界線を超え、足元には拘束された状態で、無言で睨みつけてくるル級の姿がありました。

 

「す、すみません……」

 

 提督には聞こえないように小さく呟いた私は意を決し、ル級の口を無理矢理こじ開けようと手を伸ばします。

 

「……っ!?」

 

 すると私の指がル級の唇に触れる寸前に、自ら口を大きく開きました。

 

「ど、どうして……?」

 

 その問いにル級は答えず、代わりのほんの少しだけ眉を動かしました。

 

 まるでそれは笑みを浮かべているような感じで、私にはまった理解ができません。

 

 今から行われる拷問がどれだけ苦しいものか、理解できないはずはないのに。

 

 仮にル級がMであったとしても、耐えられるモノではないでしょう。

 

 それとも、海で暮らす深海棲艦には水は効かないというのでしょうか?

 

 でもそうだったとしたら、水をかけ続けられて疲労する訳はありません。

 

 つまり、この笑顔はル級のやせ我慢か、それとも虚勢を張っただけなのか。

 

 もしくはそれ以外のなにかを感じ取ったのかも――と、私は考えつつ、恐る恐るホースを口の中に入れました。

 

「こ、これで……、宜しいでしょうか?」

 

「その深さでは口の中で溢れてすぐに逆流してしまうだろう。もっとねじ込んで、喉の奥まで入れろ」

 

「……っ、わ、分かりました」

 

 返事はしましたが、普通はそう易々とできるモノではありません。しかし、ここでもル級は自らホースを飲み込むように喉を動かしました。

 

「……っ、……っ」

 

 しかしそう簡単にことが進むはずもなく、私は四苦八苦しながらホースを動かして進めます。

 

「……グ、ムゥ……ッ」

 

 ル級の目には涙が滲み、明らかに苦しそうに見えました。それでもなお、睨みつけようとはしないのです。

 

 私は何度も心の中でル級に謝りながら、ホースを持つ手を動かし続けました。

 

「よし、その辺りで良いだろう」

 

 提督の声が聞こえた瞬間、私は安堵の表情を浮かべてしまいます。ホースを持っていた手は小刻みに震え、私は慌てて隠すように握り込んでいました。

 

 おそらくホースの先はル級の食道の辺りまでねじ込まれ、私が引っ張りでもしない限り、簡単には抜けない状態になっています。

 

「では、ここからが本番だ」

 

 そう言った提督の方へと振り返ってみると、その顔は悪意に満ちた笑みで染まり、私の背筋にゾワゾワと寒気が這い上がってくるようでした。

 

 そして提督は蛇口の上に取り付けてあるパーツを握り、勢いよく捻り込んだのです。

 

 

 

 シャアァァァァ……ッ

 

 

 

「ングゥ……ッ!」

 

 蛇口からホースを伝わった水はそのままル級の食道へと向かい、一気に胃の中へと流し込まれていきました。

 

「グボッ、ガッ、ムグゥ!」

 

「~~~っ!」

 

 ル級の目が大きく見開かれ、身体中をガタガタと大きく震わせたのを見た私は、居てもたっても居られずに顔を背けてしまいます。

 

 流し込まれていく水はしばらく止まることなく、ル級は声にならない悲鳴を漏らし続けていました。

 

「……ふむ、そろそろ限界だな」

 

 その言葉と共に提督はパーツを逆に捻り、キュッと栓を閉じました。私は内心ビクつきながら、恐る恐るル級の方を見ます。

 

「……っ!?」

 

 床に拘束されたル級のお腹は、まるで出産前の妊婦のように大きく膨らみ、口元からはゴポゴポと大量の水が溢れ出ていました。

 

 あまりに酷い光景に私は目を閉じたくなりましたが、それを阻止するかのように提督が声をかけてきたのです。

 

「大鯨、ル級の口に入れたホースを抜け」

 

「は、はいっ!」

 

 大きな声で返事をし、言われた通りにホースを持って引き抜こうとしました。

 

 しかし、提督はここでも非常に酷な命令を私に下したのです。

 

「ただし……、ホースを抜いたらすぐに手で蓋をしろ」

 

「……なっ!?」

 

 それではなんの意味もない。

 

 そう思った私は提督の方を向きましたが、あまりに冷たく鋭い視線を前になにも言うことができず、再びル級の方へと向き直しました。

 

「ゴ……ァ、ガッ……」

 

 身体の震えは更に激しくなり、明らかに苦しんでいるのが分かります。私は少しでもマシになれるのならば――と、ホースを抜くことにしました。

 

「ウグ……、ゴボ……」

 

 ズルズルとホースがル級の喉から引き抜かれ、一緒に大量の水が間欠泉のように飛び出してきます。

 

「抜き終えたらすぐに手で押さえるんだ」

 

「し、しかし……っ!」

 

「逆らうのなら、別に構わんのだぞ?」

 

「くぅ……っ!」

 

 反論する術を持ちえない私は苦悶の表情を浮かべるしかなく、命令通りにホースを抜いてからル級の口を押さえたんです。

 

「ウ……グ、ゥ……」

 

 ル級の顔は息苦しいというよりかは、お腹が張り過ぎて辛いようで、視線はめまいを起こしたようにギョロギョロと動きまわっていました。

 

 そんな姿を目の前で見なければいけないのが非常に辛く、私は何度も現実から目を逸らしたい思いでいっぱいです。

 

 しかし、ル級の苦しそうな声が私の耳入る度に胸が締め付けられ、心の中で謝り続けました。

 

 やがてその願いが通じたのか、提督は私にこう言いました。

 

「よし、そろそろ良いだろう」

 

「……っ、そ、それでは……」

 

「ああ、手を退ける前に……」

 

 話しをしている途中で、急に鼻で笑うような音が聞こえたんです。

 

「同時に空いている方の手で、ル級の腹を思いっきり押さえろ」

 

「……そ、そんなっ!?」

 

 私は驚愕し、ル級と同じように大きく目を見開きました。

 

「早く水を抜いてやるには、それが一番だろう?」

 

「で、ですけど、それではル級の負担が……」

 

「そのままの状態で放置するのが一番キツイと思うのだが?」

 

「それは……そうですが……」

 

「それに、苦しませねば拷問にはならんだろう」

 

 そう言いながら再び私に冷たい視線を向ける提督にこれ以上なにも言えるはずもなく、素直に従うしかありませんでした。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 懺悔の言葉を吐きながらル級のお腹に手を置いた私は、グググ……と体重を乗せて圧迫しながら、蓋をしていた方の手を退けました。

 

「グボ……、ゴボゴボゴボ……ッ!」

 

 勢い良くル級の口から吐き出されていく水が天井近くまで噴き上がり、一気にお腹が萎んでいくのが分かります。飛び散った水で私の身体はビショビショになりましたが、ル級のことを考えれば気にしている余裕は全くありませんでした。

 

 そうしてル級のお腹に入っていた水のほとんどが吐き出され、床一面に水たまりを作ったのです。

 

「ガ……ハッ、ゴホッ、ゴホォ……ッ」

 

 拘束されたままのル級は辛そうな表情を浮かべながら、何度も咳き込み続けていました。

 

「………………」

 

 私はその様子を黙り込んだまま見ていることしかできず、ジッとその場で立ち尽くします。

 

 しかし、そんな私とル級に追い打ちをかけるように、提督が再び声をかけました。

 

 

 

「大鯨、ル級の喉にホースをねじ込め」

 

 ――と。

 




次回予告

 ル級に対する拷問は熾烈を極めます。
それでも提督は止めることなく私に指示を出し続けました。

 そしてル級の様子が明らかに危険と感じたとき、私は恐ろしい言葉を聞いたのです。


 私がヤン鯨になった理由 その7「覚醒」


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