太陽が真上に登った頃、僕らは昼食を取ることにした。
小高い丘に登る。周囲はただただ草原が広がるのみ。すでにアリアハンの城下街の影も見えなくなった。
朝食に続き、またしてもパンだ。ジャムもある。マーマレード。
「用意がいいね」
「勇者様お好きですか?」
「うん。大好き。いろんな意味で」
マゴットちゃんを見つめながらにそう言い、ドキドキを飲み込むようにパンを頬ばる。
一面に広がる大草原の中で食べる昼食は開放的だし何よりすぐ隣に可愛い子がいたらそりゃ美味い。
気候も良いらしく緑が水々しく生い茂っていて、それは僕ら人間にとっても心地がいい。
「どうして僕はここにいるんだろう」
「勇者様?」
不思議そうな顔をしてマゴットちゃんは僕の顔を覗き込んでいる。
そのあどけない顔はやっぱり僕より年下に見える。
何よりマゴットちゃんの口端にジャムがついている。
僕が指で取って舐めてしまいたいが、指を差すとマゴットちゃんは照れながら自分の舌でペロリと舐めた。
マゴットちゃんにはまだ僕が別の世界から来たことを打ち明けていない。
いつ話そうか。マゴットちゃんならすぐに信じてくれそうだけど。
「なんでもないよ。それよりレーベの村だったっけ。あとどれくらいなんだろう」
地図の見方もよくは知らない二人でコンパスと懐中時計と広げた地図とを睨めっこしながらに考える。
うーん。さっぱりわからん。今どこだ。
「このまま北に進めば森に当たると思いますので、その森の外を北西に回り込むように進めば村は見えるはず…ですよね?」
「…そんな感じ、だね」
マゴットちゃんは結構しっかり者のようだ。
女の子だからって、可愛い子だからって、モンスターと対峙しても怖気付いたりしない。
まだ弱いモンスターとしか遭遇してないからだからかもしれないけど、スライムだって持っている棍棒で叩き潰していた。
それに身軽なようで僕より先に動く。モンスターよりも。
ツノの生やした兎のモンスターの突進だって華麗に交わす。
おっとりした表情に見えるが、性格的にはすばしっこいのかもしれない。
ただそのすばしっこさとは裏腹に、2つ大きいのが出ているのが僕はとっても気になっている。
モンスターと戦うたび、淡い青色がかった銀色の長髪とその2つの揺れに僕は釘付けにされ、注意散漫になった僕は無駄に傷を作ってしまった。
「勇者様大丈夫ですか?」
なんて心配されるもんだから罰が悪い。
そんなことを感じつつ、葛藤し、僕らはレーべの村を目指した。