「あれ!?勇者じゃないか!?」
「勇者だ!勇者がまた来たぞ!」
「変態勇者だ!へーんたい!へーんたい!」
「へーんたい!」
ルイーダの酒場へ戻るなり僕はよってたかって酷い歓声によって受け入れられた。
酒の入ってる輩が騒ぎ立てるその中、隅の方に隠れるようして座っているマゴットちゃんの姿をいち早く見つけるとすぐに目があった。
「ゆゆ勇者様!?どうして戻って来られたのですか!?」
マゴットちゃんは目を大きく開いて驚いた表情を見せた。
「やっぱりね僕。君と旅が出たいのです」
ちょっと告白みたいでドキドキした。
「えっ。でも。さきほどの女性の方は!?一緒ではないのですか?」
「うん。もう別れたよ。だって凄い怖いんだもん」
僕がそういうと、マゴットちゃんはあっけをとられた様な表情を見せたが少ししてクスクスと笑みをこぼした。
「ふふふ。勇者様も、怖かったんですね」
「そりゃね。去勢されたらたまったもんじゃないし」
「ですよね」
「で、いいのかな。一緒に冒険してくれるってことで」
「あっ。はい!それはもちろんです!改めてよろしくお願いしますね」
「うん!」
喜んで仲間になってくれた。
勇者として慕ってくるその表情は否が応でもその気にさせる。
裏切れない。頑張らなきゃ。
酒場を出ると、マゴットちゃんは買い物して行きましょうと言った。
西洋の町並みを並んで歩き、それはまさしくデートの様相だが残念なことに僕は金がない。
さきほどのスライムを倒した時に手に入った1ゴールドだけだ。
「あ、大丈夫です。欲しいのは薬草と毒消し草だけですから」
「え?マゴットちゃんは治癒魔法できるんだよね?」
「はい。でも疲労してきたりするとまだ上手く呪文唱えられなかったりしてしまうので•••。こんなんじゃ頼りないですか? 」
僕より頭一個分くらい背の小さいマゴットちゃんが、不安そうに上目遣いで僕を見上げてきた。
僧侶としてまだまだ修行中といったところなのだろうか。
年もいくつだろう。僕よか下なのかも。
「そんなことないよ。実は僕もまだ魔法使えないからね。一緒に頑張ろう」
そういえば僕は魔法が使える様になったりするんだろうか。
勇者なら、大抵は万能でできるよなぁ。
「おい勇者!」
聞き覚えのある声。
振り返ると、さきほどルイーダの酒場の場所を教えてくれた戦士の男だった。
「仲間が出来た様だな」
「おお。おかげさまで」
本当に感謝。
「なんだなんだ。やたら可愛らしい子を選んだじゃないか。勇者といえども所詮は普通の男子のようだな」
「うるせえよ。何が言いたいんだよ」
「いいや。ただな。勇者とて人間に変わるまい。くれぐれも気をつけてな 」
「はいはい。またな」
あのおっさんめ。隣にマゴットちゃんがいるってのに恥ずかしいこと言いやがって。
「見えましたよ道具屋さん。行きましょう勇者様」
「あ、うん」
僕たちは冒険の準備をを済ませ、今度こそ冒険の旅が始まるのだった。