勇者の家で目を覚ましてしまったんだが   作:nao.P

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17話。ライアスVSフォウ

シャンパーニの塔4階へ上がる。

 

彼らに引き返すという案は出なかった。

俺ならやれる。と言い張る輩ばかり。

皆ロマリアでは日々闘いに明け暮れていた屈強で死にたがりな戦士だった。

本気で魔王討伐まで考えているのだ。こんなところで止まる筈がなかった。

 

階段を登る途中にアメリアが僕に話しかけた。

「さっきの女の子、悪そうな子には見えないけど、なんで盗賊団にいるのかしら」

「え? うーん…。あっ。初め会った時に稽古中だとか言ってたな。強くなりたくて、とか」

「それならどうしてわざわざ盗賊団に入るのよ。ロマリアに来るんじゃない? ポポタって人みたいに」

 

すぐ側を歩いているポポタが自分の名前が出てきた所で振り返る。

「俺か? 俺は戦士だからな。ベクトルが違うんじゃないか。ロマリアは戦士の集う街だ。武道家はあまりいない」

 

「そうか。じゃあさポポタは。カンダタが剣の達人だったらついていくのか?」

 

「…それはない。俺の師ポカパマズは正義の塊の様な存在だった。悪党の剣術なんて身につけたくはない」

 

「悪党か。悪党なんだよなあいつら…」

 

 

4階のフロアには、またしても先程の武道家のフォウと名乗った少女と、賊が数人いるのみだった。

背後には上へと続く階段があった。カンダタはまだ先なようだ。

 

「来るなって言ったのに!!もう!本気で怒るよ!!」

 

少女が怒鳴っていた。

不思議なことに逃げたした筈の盗賊達も今度は曲刀を手に握り、戦う意思を見せていた。

 

ざっと50人対10人。

 

互いに退く気はなく。

 

何かの合図で直ぐにでも戦闘が始まりそうだった。

 

だと言うのに僕はあまり乗り気がしない。

 

それはマゴットちゃんもアメリアも同じような表情で戦いたくなさそうだった。

 

 

ロマリア剣闘士無敗を誇る男がやはり前に一歩出た。

 

「武道家のあの小娘は私が力を見る。もし相当な実力者であれば直ぐにでも引き返すことも頭に入れておけ」

 

彼の言葉は僕らにも向こうの少女にも聞こえる声だった。

 

「おもしろいね。だったら互いのリーダー同士一対一でやる? 」

 

少女が話に乗ってきた。

 

「君が? カンダタはどうした? 君のようなまだ幼い少女に戦わせて何をしている? 」

 

「ボス? ボスなら普段通りだよ。 昼間はお休みしてるから誰にも邪魔されたくないって。わかった? 怒らせたらホント怖いから帰って欲しいんだケド」

 

「それは無理だ」

 

「そう。じゃあやるしかないね」

 

少女は中央へと。

ライアスも距離を縮め。

 

あと一歩飛び込めば懐に入り込める距離になると互いに立ち止まった。

 

ライアスは既に抜剣し自慢の鍛え上げた体と腕で、鋼鉄の長剣を刹那にして振り払える容赦ない態勢をとった。

 

 

「やああああああああああぁ!!!!!」

 

 

少女から雄叫びが上がる。

 

遮る物のない正方形のフロアは残響凄まじく離れている僕の身体の中まで突き刺さる程の雄叫びか駆け巡った。

 

すくみ上がって動けないを初めて実感した。

 

その中、どうにか目だけは二人を追えていた。

 

ライアスは雄叫びになんら怯むことなく迷いない一撃を少女に向けて振り払っていた。

 

ザンッ!!

 

空を斬る。

 

空気が悲鳴を上げ、少女は地に這いつくばるようにして攻撃を避けていた。

 

少女は武道家らしく己の身体を作り上げていた。

 

地に顔がつく程身を屈め、その態勢から一気にライアスの顔面目掛け飛び膝蹴りを放った。

 

ガンッ!!!

 

ライアスの大盾が顔どころか上半身を覆い隠す。

 

鋼鉄の盾。

 

僕の盾とは違い、ちゃちい物でなく重厚で全てを防ぐ。

相当な重量だろうがライアスは鍋の蓋でも持っているかのように軽く扱った。

扱えてこその凄まじい防御力。

 

弾き返されたように距離をとった少女は再び猛獣のような咆哮を上げる。

 

あどけさのあったどこにでもいる少女の表情は無かった。

 

もし僕が対峙していたら漏らしているかも知れない。

 

少女は離れた所から構えを取り、何をするかと思うとその場で掌をライアスに向かって一気に突き出した。

 

「っっ!?」

 

キィィン!!!

 

鳴り響く金属音。

 

少女の掌から何かを飛ばした様には見えなかったが、ライアスは身を防いでいた。

 

「かまいたちか。やっかいな武道家だな」

 

ライアスの周囲には金属片が散っていた。よくみると鉄よりも何倍もの硬度を誇る鋼鉄製の鎧と盾に傷が入っていた。

 

「さすがのカンダタ盗賊団と言ったところか」

 

「でしょ? わかったら帰っ…」

 

ライアスは退かない。

 

距離をとっていても不利とわかったライアスはずんずんと距離を縮めていく。

 

 

「もう!!分からず屋だね! 戦ってわかったけどボスは君より10倍強いよ!人差し指でピン!だよピン!」

 

「ほう。それは楽しみだ」

 

再び剣と拳がぶつかり合おうとした時、斧を片手にした一人の大男が姿を現した。

 

 


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