勇者の家で目を覚ましてしまったんだが   作:nao.P

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11話。ポカパマズ?

赤地に白十字のラインの入った旗が揺れている。

 

ロマリア国旗だ。

 

城壁の上に高々と掲げられて存在を誇示するように風になびいている。

街を覆っている城壁は先が見えない程に果てなく続き壁自体も高く積み上げられ向こう側を伺え知ることはできない。

アリアハンとどっちが栄えているんだろうか。

それを聞くとアメリアが「ふんっ」と鼻を鳴らした。

 

「ロマリアに決まってるでしょ。ロマリア大陸はアリアハン大陸の何倍も大きいのよ」

アメリアは両手を一杯に広げて大きさを表現してみたが如何せん身体が小さいので「こーんなに!」とか言われても全く伝わらない。

 

「まっ、今もこの大陸を統治出来てるのかは知らないけど。ほら。扉開けて」

 

しかし城門は固く閉ざされていた。

 

「どうやって入んの?」

 

「さあ?」

 

人の何倍もある木製の扉を叩いてみた。かなり厚い扉で全く響かない。扉のすぐ向こうに人がいたとしても聞こえるか微妙だ。

 

「なんだお前たちは!?」

 

城壁の上に兵士が現れた。見張り兵だろうか。

 

「入れてもらえませんか?」

 

「今は厳戒中である。入りたくば夕刻まで待て」

 

「何かあったんですか?」

 

「大したことではない。ただ、誰であろうとも開門の時刻まで開くなとの国王の命令なのだ。済まないな」

 

それだけ言うと兵士は姿を消してしまった。

 

仕方なしに扉を背に僕ら3人座り込む。

周囲に人影は無い。他に中に入る人は今のところ誰もいないようだ。

 

「何があったんだろうか」

 

「さあ? 大したことないって言ってるんだからそうなんでしょ」

 

アメリアが面倒くさそうにそう言うと体育座りで組んだ腕に顎を乗せて目を閉じてしまった。

マゴットちゃんはぺたりと女の子座りでご自慢の銀色のサラサラロングヘアーが痛んでいないか気にしている。

だがホイミがあるので心配はいらないようだ。

 

「でも入れてもらえるようでよかったですね勇者様。夕刻ならもうそろそろですし」

「だね。2日ぶりにベッドの上で寝れるな」

 

欲を言えば自分の家で寝たいけど。

 

やっぱそろそろ恋しくなる。

 

 

などとホームシック気味にふけっていると、一人の男がやってきた。

 

革製の防具を全身に包んだ戦士だ。歳は僕らより上。でも若い。

 

「おや。中に入ることは出来ないのか?」

 

武器も僕のより全然良さそうだ。納められているのは鉄か鋼か。

欲しい。お金も貯まったし街に入ったら買いに行くとしよう。

 

「夕刻に開けるって言ってましたよ」

 

「そうか…。では待つとしよう」

 

その戦士は僕らに少し離れて腰掛けた。

使い込まれている武具が強そうなオーラを漂わせている。

僕の銅の剣も負けてないけどね。まぁそれは斬れないからボロボロなんだけど。

 

その男は僕らの方を少し眺めるようにして見ていた。

マゴットちゃんが恥ずかしそうに目をそらす。

 

体格もさることながら顔も男前なので僕は気になった。

一つだけ言っておくけどマゴットちゃんは僕のものなのだ。誰にも渡さないからな。

口にだして言わないけど。

だけどアレだ。少しばかりこっち見過ぎだ。

 

「何か?」

 

「いや、済まない…。ただ俺が幼かった頃に剣を教えてくれた恩師に君が似ていてな。雰囲気というか…。もう十年も会っていないのだが、少し思い出してしまい見てしまったんだ」

 

そうですか。それなら別に構わないな。一安心。

 

「君らはここの街の人なのか?」

 

「いや。アリアハンから来た」

 

日本って言ったってわかんないだろうし。

 

「何!? アリアハンだと!?」

 

男は一瞬のうちに表情が変わった。

 

「実は俺の恩師はアリアハン出身だと言っていたのだ。君がアリアハン出身だというのであれば似ていても不思議ではないわけだ。その恩師の名はポカパマズ。知らんか!? とてもつもない剣の達人なのだ」

 

ポカパマズ。 言いにくいな。

マゴットちゃんは首を横に振った。アメリアも伏せていた顔を上げ「知らないわね」とだけ言うと、眠いのか再び目を閉じた。

 

「そうか…。まあ気にしないでくれ。過ぎたことなのだ……。疲れているところ済まなかったな」

 

それ以降男は考えことをしているのか黙ってしまった。

僕たちがアリアハンから来たことに驚いていないということは、この男はそのことを知らない近辺の人間ではないということか。

 

 

……その後、しばらくすると開門の時刻を見計らって来たのか、荷馬車を率いた商人や周辺でモンスターハントでも行っていたかのような冒険者たちがぞろぞろと集まり始めた。

 

街への扉が開く。

 

 

 

 

 


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