ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.5 やるったらやる!

生徒会室を飛び出した俺はすぐに3人の後を追いかけた。

彼女たちが生徒会室を出てから時間は経っていないため、まだそう遠くへは行っていないはずだ。

――――いた!

視線を巡らせた先に丁度階段に差し掛かろうとしていた3人の背中を見つけた。

 

「ちょっと待った3人とも!」

 

咄嗟に声をかければ、穂乃果、海未、ことりの3人は駆け寄る俺の存在に気づいてくれた。

 

「あれ、清麿くん。生徒会の仕事はもういいの?」

 

「んなことはどうでもいい!」

 

いやどうでも良くはないんだが、そうも言ってられるか。

 

「とりあえず、まずは説明してくれないか?」

 

3人が廃校を阻止するために思考していたことは知っている。

俺自身も当事者のひとりだからな。

ただ俺の知らないところで、予想を遥か斜め上を行く結論を叩き出した彼女たちに置いてきぼりをくらった気分だった。

 

「私たちスクールアイドルを始めることにしたんだよ!」

 

うん、それはわかってるんだよ。

俺も絵里との会話を聞いてたからな。

俺が聞きたいのはなぜ廃校阻止の着地点がスクールアイドルなのか。

正直な話、穂乃果たちがスクールアイドルを選択した理由は大体察しがついていた。

全国各地に存在するスクールアイドルの活躍によって人気のある学校は絶大な支持とともに現在も生徒をたくさん集めているという話を聞いたことがある。

大方スクールアイドルとなって活躍することで学校の知名度を上げて入学希望者を集めようといったところだろう。

だが俺はその経緯を知りたいんだ。

昨日の今日で一体何があった?

しかし俺の動揺など知る由もなく、さらに先に行こうとする穂乃果の言葉に頭を抱えそうになった。

普段はその裏表のない素直さはお前の美点だが、今はただの悪い癖でしかないからな、穂乃果。

いや、落着け、俺。

ここで穂乃果のペースに乗せられれば話は進まない。

どうにか怒鳴りたい衝動を抑え込んで俺は視線で海未に助けを求めた。

こういう時は3人の中で一番の常識人である海未に聞くのが手っ取り早い。

俺の言わんとすることを理解してくれたのか、海未は小さくため息をついた。

 

「場所を変えましょうか」

 

                      ☆

 

連れ出されたのは普段からお世話になっている木陰のベンチだ。

そこで俺はまず穂乃果から一枚のパンフレットと数冊の雑誌を手渡された。

パンフレットの表紙には『UTX学院』と見出しが書かれている。

UTX学院―――確か秋葉原にあるエスカレーター式の女子高だっけか。

中を開くと学校の簡単な概要や設備の説明などが記載されてある。

そして中盤に差し掛かった辺りでUTX学院が擁するスクールアイドルグループ『A-RISE』の紹介ページが開かれた。

中身に目を通しながら、聞けば昨日初めてスクールアイドルの存在を知った穂乃果は今日の登校前にUTX学院に足を運んでいたとか。

その時の経緯を嬉々とした表情で語っている。

なるほど、これがきっかけか。

脚光を浴びるA -RISEの姿に魅了され、穂乃果はその人気ぶりに目を付けたということだ。

今度は地方ごとに結成されたスクールアイドルについて特集された専門の雑誌に目を向ける。

 

「その雑誌のように私たちがスクールアイドルとなって生徒を集める。それが私たちの出した答えです」

 

やはりそういうことだったか。

よし、ようやく理解が追い付いてきたぞ。

穂乃果たちは学校を救う方法を探すのではなく、自分たちの手で作り出すことを選んだわけだ。

そしてその答えがスクールアイドル。

アイドルの力というものはすでに身をもって実感しているが、これは完全に盲点だったな。

確かに、これなら上手く事を運ぶことができれば短期間で結果を出すことができる。

だが、これはある意味賭けだ。

 

「というか、よく海未も協力する気になったな」

 

正直なところ、海未も一緒にスクールアイドルに賛同するとは思わなかった。

普段は凛とした振る舞いが印象的な彼女だが、元々恥ずかしがり屋の一面があるからな。

まさか海未だけ裏方というオチじゃなかろうか……。

だが、俺の指摘に海未は顔を赤らめながらわずかに身を強張らせた。

 

「そ、それは……その、穂乃果は一度言い出したら聞きませんし、止めても無駄だってこともわかってますから……その、仕方なくです!」

 

「フフ、でも本当は海未ちゃんもスクールアイドルに興味があるんだよね?」

 

「もう、茶化さないでください、ことり!」

 

さらには大きく取り乱してしまっている反応を見るに、どうやら俺の思い過ごしだったようだが、それはそれでまた別の不安が残る。

 

「……だが正直、好奇心だけで上手くいくとは思えないし、始めるからにはプロのアイドルと同じくらい努力が必要だってことぐらいは俺でもわかるぞ。………それでもやるのか?」

 

俺の言葉が一瞬にして静寂を生み出す。

これから進む先が途方もない道のりであることをきっと覚悟はしているのだろう。

だが、やはりアイドルという未知の領域に足を踏み入れようとする彼女たちにとっては絶望的なスタートになることは間違いない。

失敗して当たり前、それが常識と言ってもいい。

だからこそ、ここで確かめておかなきゃいけない。

彼女たちの覚悟が生半可なものなら、多少強引でも今ここで説き伏せておかなければならない。

 

「もちろん!絶対に諦めたくないから、必ずやりとげてみせるよ!」

 

俺の問いに対して彼女たちはどう出るか静置するつもりだったが、しばしの静寂は穂乃果の言葉で呆気なくかき消された。

ここまで力強く食い下がってくる穂乃果は見たことないな。

それだけ必死なのだろう。

だが、まだ足りない。

決意はわかったが、同時に彼女たちを否定した絵里の思いも理解できるんだ。

俺は鋭い視線を突き付け、さらに厳しい言葉を投げかける。

 

「口だけでならなんとでも言える。廃校の決定まであと1年もないんだ。もっと現実的な方法を探すべきじゃないのか?」

 

「そんなことないよ!」

 

―――ッ!

まさか即答されるとは思わなかった。

しかも虚を突かれた俺を見つめる穂乃果の瞳は無理矢理わがままを押し通そうと駄々をこねるガキの瞳じゃない。

 

「確かに清麿くんの言うとおり1年もないかもしれない。でも裏を返せばまだ私たちにはそれだけ時間が残されてるってことだよ!やっぱり私たちはこの学校が大好きだから、何もしないままで後悔したくないから……やるったらやる!そう決めたの!」

 

その時、今までの穂乃果からは想像できないほどの力強い言葉が俺の心を強く揺さぶった。

今、確実に、彼女たちに期待する俺がいる。

 

「それでね、清麿くんにも協力してほしいの!」

 

「………なぜだ?俺が協力したところで上手くいく保証なんてどこにもないんだぞ」

 

まだだ、まだ折れるわけにはいかない。

予想外の申し出に眉を顰めながらも動揺を押し殺す俺に、さらにことりと海未が前に出てきた。

 

「勝手なことを言ってるのは承知しています。ですが、私たちだけでできることには限界があるんです。この学校を救うために、私たちには清麿くんの力が必要なんです!お願いします、清麿くんの力を私たちに貸してください!」

 

「生徒会としての立場もあることはわかってるよ。でも、私からもお願い、きーくん!」

 

俺は彼女たちの姿から目を離せなかった。

どうやら、海未もことりも成り行きに身を任せたままこの場にいるわけではなさそうだ。

俺の目に映る彼女たちの姿が、これまでに培ってきた絆の証なのだろう。

穂乃果も、海未も、ことりも、その瞳に強い意志を宿していた。

俺は、この瞳を知っている。

こうして向かい合ってるだけで俺の中から熱い何かが湧きあがってくるのがわかった。

この想いは決して理屈なんかじゃない。

………………そうだよな。

『あの時』だって何もわからないままから始まったんだ。

だからこそ、どんなに可能性が小さくても、どんなに無謀でも、挑戦する価値はある。

例え俺の『能力』がどんな答えを出そうと、俺の意志は決まった。

お前らの決意、しっかりと見させてもらったぜ。

 

「……やるからには徹底的にやるぞ。一度始めたからには『やっぱり無理でした』は無しだからな」

 

強張った顔の力を抜き口元を綻ばせる俺の表情の変化に、3人にも笑顔が咲いた。

 

「それじゃあ………!」

 

「ああ、俺たちで作り出そうぜ。俺たちの学校を救う『答え』をよ!」

 

俺の言葉に安堵し、弾けるように3人が喜びを分かち合う。

そんな彼女たちの姿と舞い上がる残り少なくなった桜の花びらを眺めながら思う。

始める前からあきらめるなんてバカげている。

そうだろ?―――ガッシュ。

 




むう……一話が短い割にはなかなか進まない。
予定では本編第2話のAパートまでいくつもりだったんですけどね……。
やはり個人的にガッシュのクロス作品を書いてるからにはやっぱりガッシュを、ガッシュキャラを出したい!
ちなみに、一番最初に登場するガッシュキャラはもう決まっています。
クウガとウィザードともどもできるだけ早めに投稿していくんで、いろいろよろしくお願いします!
以上、最近はエリチカに矢印が向いている青空野郎でした!

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