ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.1 廻る季節

今日も今日とて窓から朝日が差し込む。

明日への希望を見いだせず、あの頃の俺はただ自堕落に毎日を過ごしていた。

朝だろうが夜だろうが関係ない。

向かい合うのはいつだって大学首席卒業者にえらい医者や学者先生たちが書き連ねた論文や書物の数々。

しかし俺にとっては暇つぶしの単なる読み物に過ぎなかった。

恵まれすぎた天賦の才ゆえに周りから疎まれ、蔑まれ、いつしか俺も周囲の人間を見下し、自宅の部屋に引きこもるようになってしまっていた。

今日も部屋の向こうでお袋が学校へ行くように説得を試みている。

おそらく涙も流しているのだろう。

だが知ったことか。

外の世界に俺の居場所はない。

この部屋が唯一残された安寧の地なのだ、邪魔をしないでくれ。

これが当時の俺の日常。

自分は一体何がしたいのか、何のために生きているのか。

誰もが抱く当然の哲学でさえ、俺の中から消え失せるのは時間の問題だった。

何をしてもつまらない日々に、もはや生きる気力は枯れ果てようとしていた。

まだお袋が外で喚き散らしている。

.........いい加減ウザったくなってきたな。

 

「やかましいっ!何で俺があんな低レベルな連中と友達にならなきゃいけねぇんだよッ!」

 

また今日もお袋と何の利益も生まない口論が始まる。

相手をするだけ面倒だ、とっとと追い払っておとなしくしていてもらおう。

だがそんな時、お袋との口論に割って入る者が現れた。

 

「こらキサマ!母上に向かってやかましいとは何事だ!」

 

それは予想もできないほど突然の出来事だった。

俺の目の前で、ブリを背負った素っ裸の少年がオオワシにぶら下がって窓を突き破り部屋の中に飛び込んできたのだ。

なにを言ってるかわからないだろ?

本の読みすぎで疲れたのかと思うほどの衝撃だったのは間違いない。

適当に積み重ねた書籍やプリントの束が宙を舞い、ものの数秒で散らかってしまったが、さすがの俺もこの時ばかりは気にも留める余裕がなかったな。

これが俺、高嶺清麿とかけがえのない生涯の友、ガッシュ・ベルとの最初の出会いだった。

 

                      ☆

 

ガッシュとの出会いをきっかけに俺の日常は人生レベルで大きく変わった。

まずは友達が増えた。

ド天然、スポーツバカ、UFOオタク、ツチノコマニア、妖怪志願者、etc………。

他の誰かに紹介することは軽く躊躇ってしまうほど個性が強すぎる連中だが、俺にとっては約2年間をともに過ごした大切な友人たちだ。

関わる度に何かしらのトラブルに巻き込まれてしまうが、そんな出来事も今ではいい思い出だ。

友人たちと一緒に些細なことで怒り、泣き、そして笑った。

ああ、俺も笑えるんだな。

できることなら、ひねくれていた昔の自分をブン殴ってやりたいところだ。

そんな陳腐な考えさえを持つようになった自分にも驚きだ。

例え小さなきっかけでも、一歩踏み出せば自分は変われる。

ガッシュが教えてくれたことだ。

そしてガッシュと出会ってから間もなく知ることとなる魔界の王を決める戦い。

『神の試練』とも呼ばれ、1000年に一度、100人の魔物の子が王座を目指して争うバトルロワイヤル。

魔物は魔本に記された呪文を読むことができる人間とタッグを組み、互いの魔本を燃やし合う。

そして最後に勝ち残った魔物が次期魔界の王になるのだ。

かなりぶっ飛んだ話かもしれないが、これが俺の前に立ちはだかる新たな現実だったんだ。

激戦の連続に何度も死にかける思いをした。

いや、確か一度死んだのかな?

まあ、それでも俺は途中で逃げ出すことはしなかった。

ガッシュの『やさしい王様』という願いを叶えるために、共に戦うことを決意したんだ。

魔界の王候補の中には関係ない人たちを巻き込むことを何とも思わず、魔物の力を私利私欲のために使うクソッタレな連中もいた。

だが、魔物との戦いはつらいことばかりではなかった。

周りがすべて敵にも拘らずたくさんの仲間に出会えた。

勝利や敗北から成長を学んだ。

どんなつらい現実でもくじけずに前に進む強さを得た。

ひとりでは決して戦い抜くことなんてできなかっただろう。

やがて訪れるガッシュとの別れの時。

それははじめから分かっていたこと。

しかし別れは次にまた大きく成長するための旅立ちだ。

そしてガッシュは―――王になった。

いつか日か、また会うことを約束し、今もまだ、ガッシュとの思い出は『財産』として俺の心の中で生き続けている。

 

                      ☆

 

今日も今日とて窓から朝日が差し込む。

目覚まし時計の音が起きるようせかしてくるが、正直なところまだ寝ていたい。

まだ寝ていたいという気持ちはあるのだが、今日からはそうはいかない。

睡魔を振り払い、すでに着慣れた制服に腕を通しながら漏れ出るあくびを噛み殺す。

あれから一年の時が過ぎた。

高校生になった俺はそれなりに充実した時間を過ごしていた。

俗にいう青春だ。

そして今日は高校生活最初の春休みを終え、新学期が始まる日だ。

 

「おはよう清麿」

 

「おぅ、おはよう」

 

俺がキッチンに入ると丁度俺のお袋が朝食の準備をしてくれていた。

いつもの定位置の席に腰を下ろし、キッチンを見渡す。

当然のことだが、今この場所にガッシュの姿はない。

賑やかだった食卓が今では懐かしい。

同時に、ある種の寂しさという感情が心の中で渦巻く。

すでに慣れたつもりではいたが、ガッシュが魔界に帰って1年が経った今でもやはり寂しいものは寂しい。

思い出に浸りながらも、俺はもう一度あくびを漏らす。

 

「コラ、今日から新学期でしょ?シャンとしなさい」

 

「へーい」

 

温和な口調のお袋の小言を気のない返事で応じる。

俺自身も内心で気を引き締めなおさなければと思いながら、とりあえずテーブルの上の朝刊を手に取った。

コーヒーを含みながら紙面に目を通す。

何気なく朝刊を広げると俺の目にまず飛び込んできたのは、煌びやかなステージの上でかわいらしい衣装でポーズを決める3人組みの女の子の姿だった。

 

「確かスクールアイドルって言ったかしら?最近の高校生ってすごいのね。その子達まだ高校生なんでしょ?」

 

すでに朝刊の内容を把握していたのかお袋が話しかけてきた。

今、巷では『スクールアイドル』というものが流行っているらしい。

スクールアイドルとは、学校生活を送る女子学生がアマチュアながら自主的に活動を行い自分たちの学校を盛り上げるアイドルのことである。

スクールアイドルは全国各地に存在し若者たちを中心に人気を集めている。

新聞、テレビのほかにも、雑誌やネットなどあらゆるメディアがスクールアイドルについて取り上げない日はないほどだ。

さらには専門のグッズショップまでもが存在するほどの好評を博しているらしい。

日本のアイドル文化はここまで来たのかと思わず感嘆してしまう。

今紙面を飾っているのは『A-RISE』というスクールアイドルの中で頂点を極めたグループらしい。

特段、アイドルに興味のない俺でもその人気ぶりは新聞やテレビで何度も耳にしたことがある。

この分だといつか恵さんと並び立つ存在になってもおかしくはないのではないかと個人的に思う。

そんなこんなで朝食を食べながら流し目で朝刊を読み終えるころには丁度時間がきたようだ。

 

「ほら、そろそろ出ないと遅刻しちゃうわよ」

 

「わかってるよ」

 

最後にコーヒーを飲みほし、俺は鞄を取りに一度自室に引き返した。

今日の日程は始業式で終わり。

用事を済ませればいつもより早めに帰宅できるだろう。

さて、今年のクラス分けはどうなっているだろうか。

そんなことを思いながら鞄を手に取り、俺は机の引き出しを開けた。

そこにあったのは、奇怪な顔が描かれたお菓子の箱と割りばしで出来た簡素なおもちゃ。

今ではあいつの忘れ形見でもある『バルカン300』ーーーその胴体に収められた一枚の写真を取り出した。

 

「行ってくるぜ、ガッシュ」

 

写真に写る魔界の魔物たち。

そして今も魔界で『やさしい王様』として頑張っている友を思いながら窓から青空を見上げる。

さて、今日から心機一転、頑張るとしますか!

 




………やっちまった。
ほんと、何やってるんでしょうね、私。
とりあえず息抜き感覚で執筆するので更新速度は激遅です。
よければ感想お待ちしております!

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