鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

66 / 90
五話 新たな風

 アリーナ。

 

 昼食後の今の時刻は本来なら教室で子守唄のような講義を聞きながら睡眠にいそしむ時間であるのだが、僕とシャルの二人は何故かこの場に呼び出された。

 

 アリーナには真耶ちゃんが待っていた。そしてその後ろにはカバーで覆われた何かが鎮座している。大きさは僕らより一回り大きいくらい。

 

「山田先生、僕らはどうして呼ばれたんでしょうか」

 

 シャルが付いて早々にそのような質問を真耶ちゃんにぶつける。当然の質問ではあるけどね。

 

「それはですね、デュノアさんにフランスから新たな専用機が送られてきたからですよ」

 

「おお!」

 

 新たな専用機というと、あの束姉が技術提供した第三世代兵器が搭載されてるってやつだよね。シャルの第三世代兵器……ラピッドスイッチだけでも第三世代機と対等以上に戦えてるのにそれに第三世代兵器が追加されるってことは、まさに鬼に金棒だね!

 

「楽しみだね、シャル!」

 

「う、うん。あ、でもなんで氷雨も呼ばれたんだろう?」

 

 確かにそうだね。シャルの新しい専用機が来たからと言って僕が付き合う必要はないよね。

 

「えと、それに関してはデュノアさんの第三世代兵器の試運転に付き合ってもらうというのが目的ですね。射撃も格闘も高い技術を持ち合わせている篠ノ之くんが適任だったというわけです」

 

 なるほどね。

 

「それじゃあ、早速見てみましょうか」

 

 そういうと真耶ちゃんは自身の後ろに合ったカバーを引きはがした。そうして現れたシャルの新たな専用機の外見はほとんど以前と変わりがないように見えた。

 

「こちらはラファール・アドヴァンス。アルカディア社がデュノア社を買収したことで新たに作られた機体ですね」

 

 基本構造は以前のそれと似ているけれど、発達した背部スラスターは四つから二つに減り、その代わりに脚部の側面に大型のスラスターが設置されていた。

 

「拡張領域はラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡと同様に、デュノアさん用に増設されてるみたいですね」

 

 手に持つ端末に目を落とす真耶ちゃん。その説明を聞きながら僕とシャルはラファール・アドヴァンスに近付く。

 

「これが僕の新しい機体……」

 

「コアは変わってないの?」

 

「あ、うん。そうだね。だから以前からの戦闘データは引き継がれてると思うよ」

 

 代表候補生の戦闘データが詰まったコアを初期化するなんて勿体ないことするわけないから当然コアは変わってないよね。

 

「それでは早速デュノアさんはフィッティングお願いします」

 

「はい」

 

 真耶ちゃんに促されるようにしてシャルはアリーナに隣接しているピットに向かう。

 

「真耶ちゃん真耶ちゃん」

 

「あの、その呼び方は……。私は一応先生ですよ?」

 

 そう言われると呼び方は改めるしかないね。

 

「真耶ちゃん先生」

 

「あまり解決してないような気がしますよ」

 

 やっぱり駄目かぁ。親しみやすいからみんなこんな感じで呼ぶけど、真耶ちゃんとしては先生としての威厳を出したいみたいだからね。

 

「山田先生」

 

「それでお願いしますね」

 

 そうして納得してくれた真耶ちゃんに質問を投げかける。

 

「このラファール・アドヴァンスの第三世代兵器ってどういうものなんですか?」

 

 試運転に付き合うのだから先に特性を知っていた方がやりやすいよね。うまく立ち回ってその兵器の性能を試しやすくするにはどんな奴か把握しないとね。

 

「えと、ちょっとしたサプライズと言うことで、篠ノ之くんは普通に戦ってくれればいいですよ」

 

「え、教えてくれないんですか?」

 

 まあ、それでもいいけどね。確かに知らない方が面白そうではあるけどさ。

 

「楽しみだな~」

 

「そうですね~」

 

 二人でシャルの帰りを待つのだった。

 

 

 

 

 

 数分すると更衣を済ませたシャルがやってきた。

 

「それじゃあ、フィッティング始めますね」

 

「お願いします」

 

 作業をする二人を少し離れて眺める。

 

「さてさて、ペイルライダー」

 

『さんを付けましょう、でこ野郎』

 

「えぇ……」

 

 いきなり罵倒されたんだけど、どうしたのさ。

 

『冗談です』

 

「いきなりびっくりさせないでよ……」

 

 最近ラウラがべったりだから話しかけられなかったのを怒ってるのかな?

 

『それでどうしたのですか?』

 

「いやー、どういう兵器が来るかなっておもってさ。ペイルライダーの意見も聞いておこうかなと」

 

『フランスですから、騎士のような武装ではないでしょうか』

 

「騎士か~。でもシャルは中距離タイプだよ?」

 

 近距離武器を使用したこともあるけど、インファイトする感じではないよね。

 

「僕的にはシャルは相手との距離感を大事にしてるから相手を引き離すような武装じゃないかと考えたんだけど」

 

『引き離す……』

 

「どうかな?」

 

『引き離し方にもよりますが、戦術で代用できるので兵器としての価値はあまりないかと』

 

 そう言われると反論しにくいね。事実、シャルはできてるからね。

 

 そんな会話をしていると、シャルのフィッティングは終わったようで新たな専用機を身にまとい僕に対峙した。

 

「新しいISも似合ってるね」

 

「えへへ。ありがとう」

 

 シャル自身もしっくりきているのか、僕の言葉を素直に喜んでくれる。シルエットは異なったものになっており、やや重心が低いように見えた。それは大型のスラスターが脚部についてるせいであるが、そのおかげで安定感があるように見える。

 

「じゃあ、二人とも始めてくださいね」

 

 アリーナの外に出た真耶ちゃんから通信が入り、試運転が始まる。

 

「シャルはもう知ってるんだよね?」

 

「うん」

 

「どんな攻め方したほうがいい?」

 

「いつも通りの氷雨でいいよ。その方がいつも見てる分対処しやすいと思うし」

 

 じゃあ、いつも通りの戦闘でいいのかな。

 

 両脚部から三連装ミサイルを発射させる。弧を描き、誘導弾はシャルのもとへと迫るも、シャルが楯を構えた瞬間、その誘導が解かれたようにミサイルはシャルから逸れ、後方の地面に着弾した。

 

「?」

 

 あの楯に第三世代兵器が搭載されていることは明らかだろうけど、ミサイルの誘導を解除するだけの限定的な能力なわけがないよね? というか、そんなものを束姉が作るわけないし、もし作るとしても、誘導解除の上で乗っ取るくらいはしそうだしね。

 

 ということは別の何か……。

 

「考えてもしょうがない。試すのが一番だよね!」

 

『ジャイアントガトリング、レディ』

 

 構えるガトリングの銃口をシャルに向ける。シャルはその楯の性能を使いたいので射線から逃れようとはしない。

 

「ファイアー!」

 

 爆ぜる音と共に弾丸がシャルに降り注ぐ。しかしそれは構えられた盾に阻まれて……いや、盾にすら当たらず、軌道がねじ曲がり、シャルから逸れた。

 

「むむむっ?」

 

 どうやら僕は実弾でも偏向射撃ができるようになったようだ。弾丸の魔術師とでも呼んでもらおうかな。

 

『全て外れる弾丸に意味はありません』

 

「確かにね。というか、実弾を曲げる芸当なんて聞いたことないよ」

 

 まあ、詰まる所シャルの持つあの盾が僕の放ったミサイルやガトリング砲の軌道を強制的に変更させたんだろう。

 

「じゃあ、射撃は完封かな?」

 

『ビームはどうでしょうか』

 

 確かにAICのようにビームには適応できないものかもしれない。その辺を試す意味でも僕とペイルライダーは適任だったというわけだね。

 

「よーし、パパ、ヒュージキャノン撃っちゃうぞー」

 

『それは実弾です』

 

 マジで? あの高威力で実弾兵器だったの? 逆に怖いね。

 

「じゃあ、無難にホーミングランスでいいね」

 

 でもただ撃つだけじゃ面白くないので、シャルの周りを回りつつ、多角的な攻撃を行った。

 

「くっ」

 

 シャルは一瞬眉をひそめるも、一方向のビームに自ら迫り、その面のビームの軌道を曲げ、避けきると同時に身体を回しつつ、随時せまるビームに盾を合わせていく。

 

「……え、全部避けるの? 受けとめることもなく?」

 

『予想以上に厄介な兵器ですね』

 

 厄介どころじゃないよ。あの盾一つで取り囲んでの集中砲火の優位性を無に還しちゃうわけだよ? その上でシャルのラピッドスイッチによる弾幕があれば、物の数は意味を成さないね。

 

「……そう言えば、真耶ちゃんは僕を呼んだ理由に格闘の技術も高いからってのを含めてたよね」

 

『そう記録してます』

 

 つまりはそう言うことなのかな?

 

 何となく嫌な予感を抱きつつ、僕はジャイアントガトリングを収納し、両手にビームブレードを握る。

 

「抱きしめたいなぁ、ガンダム!」

 

『ISです』

 

 二刀流するとこのセリフを言いたくなるよね。

 

 ブーストを吹かし速度を落とさず、シャルに迫る。肉薄した瞬間、僕はシャルめがけてビームブレードを振り下ろした……はずだった。

 

「は?」

 

 振り切ったビームブレードはアリーナの床を焦がすだけであった。

 

 僕とシャルの立ち位置を見る限り、シャルが避けたわけではなく、僕の腕ごとビームブレードの軌道がずらされたと考えるべきだろう。

 

 盾で受けとめられるものと考えていたから、行き場を失った速度が僕をそのままシャルへと突っ込ませた。

 

「うおっ!」

 

「え? きゃっ!」

 

 衝突されたシャルも予想していない衝撃に踏ん張ることができず、巻き込むように二人でゴロゴロと転がる。

 

 その回転も収まったところで、僕はシャルを押し倒すような形に収まってしまった。

 

「ひ、氷雨……」

 

「うわぁ! ご、ごめんね」

 

 邪魔にならないようにペイルライダーをしまい、立ち上がり離れる。そして、シャルに手を差し出す。

 

「ありがとう、氷雨」

 

「いやいや、こっちこそごめんね」

 

 シャルが僕の手を掴み、立ち上がると真耶ちゃんが駆け寄ってきた。

 

「だ、大丈夫でしたか、お二人とも」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

 安堵した顔を見せる真耶ちゃん。絶対防御があるから安全は保障されてるけど、こう心配されるとなんだか嬉しいね。

 

「なんか中断しちゃったけど、あんな感じで十分だった?」

 

「うん。付き合ってくれてありがとね、氷雨」

 

 シャルもラファール・アドヴァンスを解く。

 

 そうして、シャルの新たな専用機の試運転は終了した。

 




完全に閑話ですね

久しぶりに小説を書いていると書き方を忘れていますね
何てことない一文も結構時間かかりました;;

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。