鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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以前書いていたやつを完成させました


その4 学園最強との接触? 後編

 

 生徒会室

 

 会長は一通りの事務的な話を終えると生徒会室に設置されている小さな冷蔵庫からケーキを取り出してきた。

 

「食べるかしら?」

 

「もちろんいただきますよ」

 

 でも生徒会に冷蔵庫なんて必要なんだろうか? まさか仕事で使うわけもないだろうし、備品じゃなくて会長の私物を持ち込んだのかな?

 

 と、そんな疑問もわいてくるけど、別にそれがケーキの味に作用するわけでもないので差し出されたケーキを一口頬張る。

 

「わぁ、おいしい!」

 

「そう? それはよかったわ」

 

 会長さんは僕の反応を見て微笑む。その表情の一端になんだか裏があるように感じ取れたけど、ケーキがおいしいので良しとしよう。

 

「どうぞ」

 

 横から差し出される紅茶。虚さんが入れてくれたらしい。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 差し出された紅茶を飲む。ケーキの味を消さないように調和する風味に舌が鳴るね。

 

「それと、これは先日の事件とは関係ないけどね」

 

 そう話し出す会長さんの方に僕はフォークを咥えながら視線を向ける。

 

「一年の四組に日本の代表候補生がいるのは知ってるかしら」

 

「ああ、会長さんの妹ですよね?」

 

 そう僕が返すと会長さんは少し苦い顔をする。

 

「そう、妹よ。その妹、簪ちゃんのことなんだけど、専用機の開発が遅れててね、クラス代表になったのはいいんだけど、クラス対抗戦とか、トーナメントとかの参加を辞退してるのよね」

 

「ああ、それは知ってますよ。でも、専用機ができてないんじゃ仕方ないよね」

 

 僕だって、ペイルライダーが整備中で使えないってなったらそりゃ、辞退するよ。だってペイルライダー以外は乗れないからね。

 

「そうよね。私も仕方ないとは思うんだけど、あいにく偉い人はそれが分からんのです」

 

「専用機は飾りです」

 

「それが偉い人には分から……ってそれ簪ちゃんを否定してない?」

 

「まあ、そうなるな。……あ、嘘々。本気でそんなこと思ってませんから、怒らないで下さい」

 

 危ない。この人もシスコンの類の人だった。

 

「やっぱりほかの国に日本の代表候補生の力を示していないっていうのが、日本政府にとっては気がかりみたいね」

 

「まあ、そりゃそうでしょうけどね。でも、日本のISってことなら一夏が頑張ってるし、それで充分なんじゃないですかね?」

 

「んー、でもそれで注目されるのは日本じゃなくて男性操縦者っていう括りなのよね」

 

 まあ、確かに一夏の白式が日本製だとしても、興味は一夏本人の方に行っちゃうしね。

 

「それで、簪ちゃんはやけになって自分で専用機を作るって言い出しちゃったのよ」

え、いや、それ会長さんのせいじゃない? って言いたいけど、言ってもどうにかなることじゃないしねー。

 

「というか、やけになったわけじゃないんじゃない? ただ、自分で作った方が早いと判断したからそうしたんじゃないの?」

 

「んー、もしそうだとしても実際のところは苦戦してるみたいなの」

 

 まあ、結局タッグマッチトーナメントまで完成しなかったわけだしね。

 

「ということだから、簪ちゃんの手助け、お願いね」

 

「へ? なんで僕が?」

 

 というか、その台詞、僕の意向を聞く気なくないですか?

 

「え、だって、ケーキ食べたでしょ?」

 

「うん、出されたからね」

 

「それ、高いのよ?」

 

「う、うん、おいしかったもんね」

 

「じゃあ、頼まれてくれるわよね?」

 

「い、いやぁ、学園最強の生徒会長ともあろう人が、そ、そんなこすいことしませんよね?」

 

 そう言って会長の方をうかがうも、会長はいい笑顔を浮かべたまま何も言わない。

 

「……ちなみにお幾らのケーキですか?」

 

 小声で隣にいた虚さんに聞いてみる。

 

「3万弱ですね」

 

「ごはっ!」

 

 い、いや、高いにもほどがあるんじゃないでしょうか……。

 

「やってくれるわよね?」

 

「……仰せのままに」

 

 こうして、脅迫まがいに僕は頼まれごとをされたのであった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 会長さんに妹、簪ちゃんのことを頼まれたわけだけども、当然のごとく僕は何をしようということもない。いやー、だって期限を指定されなかったからね! だから機会があればするって感じで積極的に行こうとはしないよ。だって、僕の中での優先度は鈴ちゃんが一番だからね。僕に頼み事したかったら高いケーキじゃなくて鈴ちゃんを連れてくるべきだったね。ま、鈴ちゃんを人質に取られたら学園最強でもぶっ飛ばすけどね。不意を突いて、ヒュージキャノンで。

 

 早々に鈴ちゃんたちと合流しようと、第三アリーナを目指す。今日は鈴ちゃんとラウラと三人で特訓をすることになっている。一夏と一緒じゃないのは未だに鈴ちゃんと一夏の二人が仲直りしていないからだ。それに、ラウラもまだ一夏のことを認めていない様子だし。

 

 でも、あまり鈴ちゃんは僕と特訓しようなんて言ってこなかったんだけど、今日突然鈴ちゃんのほうから特訓しようといってきた。まあ、理由として思い浮かぶのは多分学年別トーナメントで一夏に負けたからだろうね。結構悔しがってたし、鈴ちゃんは負けず嫌いだしね。

 

 けども、順当にいけば鈴ちゃんが負けるとは思わなかったんだ、なにかあったのかな。

 

「……あれ、誰もいない?」

 

 アリーナにたどり着いたかと思えばそこには鈴ちゃんもラウラもどちらの姿も見当たらなかった。

 

 どこかにいるんじゃないかと思ってアリーナを見渡すも、やはり鈴ちゃんたちはいなかった。その代わりというわけではないけど、アリーナの端に見覚えのある人物がいた。

 

「ペイルライダー、あそこにいるのって」

 

『日本の代表候補生、更識簪とその専用機、打鉄弐式ですね』

 

 やっぱりそうだよね。実際に見るのは初めてだけど、そこにいるのは会長の妹である簪ちゃんだ。……いや、会長の妹って言い方は怒られそうだね。かんちゃんは優秀な姉の存在にコンプレックスを持っているらしいからね。

 

 同じ姉持ちでも一夏や箒は違う方向に育ったね。一夏は姉を誇りに思って、箒は姉を埃に思い……。あ、僕今うまいこと言ったね。

 

『うまくないです』

 

「え、そうかな? 結構自信あったんだけど」

 

 まあ、ペイルライダーの手厳しいコメントは置いといて、簪ちゃんはその二人の間くらいにあるんじゃないかな。

 

 姉を認めているからこそ、そこに劣等感を抱くし、その存在を疎ましく思うから遠ざけようとする。いっそどちらかの極端な感情であれば、楽だったんだろうと思うも、かんちゃんの性格を考えるにそんな風に割り切ることはできなかったんだろう。

 

「うーん、鈴ちゃんたちも来てないし、せっかくだからかんちゃんに話しかけに行こうかな?」

 

『先ほどから、更識簪のことをかんちゃん、などと呼んでいますが知り合いなのですか?』

 

「いや、全然」

 

『それなら呼び方は気を付けたほうがよいかと』

 

 え、なんで? 一瞬そう思ったけど、当たり前だよね。鈴ちゃんの時もだけど、どれだけ作品を読んでた頃の愛称があったとしても、ここで使ったらただ馴れ馴れしいだけの不審者だもんね。鈴ちゃんの時失敗したんだから、同じ轍は踏まないよ!

 

「うん、わかった。忠告ありがとう」

 

『当然のことです』

 

 そうと決まればさっそく話しかけに行こうか。一応、会長にも頼まれてはいるし。律儀に果たす気もないけども、目の前にいるし、困ってることを知っているのに放っておくのはなんだかちょっと気が引けるもんね。

 

 ということで、かんちゃんの方に歩いていく。

 

 僕の足音に気付いたようでかんちゃんは打鉄弐式の方から視線を上げてこちらに移す。僕の顔を見てなんだか不思議そうな顔をした後、なんだか嫌そうな表情を顔に浮かべた。

 

「初めまして、かんちゃん!」

 

「えっ?」

 

「あっ」

 

 やぁってしまったあああ! あれだけ気をつけなきゃいけないって思ってたのになんで開口一番そんな失態をしちゃうかな!

 

「あ、今のなし。もう一回! もう一回チャンスをください!! ワンモアチャッス!」

 

「え……、あ、う、うん」

 

 気圧されたようにかんちゃんは僕のワンモアチャンスプリーズに承諾する。

 

「ありがとう。じゃあ、ちょっと待っててね」

 

「え?」

 

 かんちゃんの不思議そうな声を置き去りに僕はアリーナの入り口まで走り去る。そして少し呼吸を整え、口を開く。

 

「……あれ、誰もいない?」

 

『そこからですか』

 

 かんちゃんの視線を受けながらもう一度やり直すのさ!

 

      ◇   ◇   ◇

 

「こんにちは、更識さん」

 

「こ、こんにちは」

 

 うん。今度こそは成功したね。バッドファーストコンタクトなんてそうそう繰り返したいものじゃないからね。

 

「あ、僕のことわかる? 初めましてだよね」

 

「う、うん。……でも……知ってる。一組の……篠ノ之、氷雨」

 

 おお、覚えてもらってるみたいだ。まあ、僕や一夏は学園で有名人の一角だしね。他の有名人で言ったら、千冬さんとか会長とか。あと、僕のとばっちりで鈴ちゃんも有名だね。

 

「……なにか……用なの?」

 

 かんちゃんはそう僕に問いかける。確かにいきなり声をかけられたんだから、何か用事があるんだろうと考えるよね。

 

「いや、別に何もないよ?」

 

「ふえ?」

 

 でも何にもないんですよねー。だって、僕が声かけた理由は鈴ちゃんたちがいないからだもんね。まあ、会長さんに頼まれたっていうこともあるんだけど、それを実行するにしたって僕にできることなんてないけどね。

 

「え……じゃあ、どうして……?」

 

 当然の問いが来ました。なんて答えましょうかね?

 

1 会長に頼まれたから

 

2 鈴ちゃんがいなくて暇だったから

 

3 君の存在に心奪われた男だ!

 

『正解がない気がします』

 

 人生に正解なんてないのさ。踏みしめ歩いてきたその軌跡が結果として道になるだけなんだよ。

 

『言葉としては間違っていませんが、回答としては不適切です』

 

 あれ、そうかな?

 

 と、僕が返事を返さないのでますますかんちゃんの不信感は増していく。その不信感は眉を顰めることでしっかり僕に伝わっているので早く返事をした方がよさそうだ。

 

「会いたかったぞ! ガンダム!」

 

『よりによってその選択ですか』

 

 だってこれが一番当たり障りないしね!

 

「あ、グラハム……」

 

「!」

 

 この感じ、まさか!

 

「かんちゃん、ガンダム分かる感じ!?」

 

「え、あ、うん。知ってる」

 

 なんと! 戦隊ヒーローものが好きだという情報はあったけど、まさかガンダムにまで精通しているとは!

 

「よもや君に出会えようとは。おとめ座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」

 

「おとめ座なの?」

 

「いや、かに座。最弱聖闘士だよ」

 

 なぜ僕の聖闘士だけこんなにも不遇なんですか!

 

「でも、僕の中の燃え上がるコスモは獅子座の聖闘士すら打ち倒す勢いだよ!」

 

「獅子座の聖闘士?」

 

「多分千冬さんだよ。なんか獅子座ってオーラ出してるしね」

 

 千冬さんは獅子座以外あり得ないね! あ、でも、あれで実は乙女座って言うのはありかもしれないね。そのギャップが受けるかも。

 

 そんな風に思考を巡らせていると、ふいにクスリと小さく笑う声が聞こえてきた。

 

 僕がそちらに視線を向けると、ハッとしたように口元を抑える。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「いやいや、全然気にしないよ。むしろもっと笑顔見せてくれた方が僕は嬉しいよ」

 

 女の子には笑顔が似合いますからね。

 

「……なんだか、想像と違った」

 

「ほえ?」

 

 一瞬、神妙な顔になったかと思うとかんちゃんは表情を緩めて僕の方をおずおずと見る。

 

「篠ノ之束の弟だから、それを鼻にかけた嫌な人だと思ってた」

 

「なんと……」

 

 なるほど、僕の断片情報だけ聞けばそう言うイメージを持たれる可能性もあるわけなのか。これはさらに第一印象を大事にしていかなきゃいけないね。

 

「でも、実際の篠ノ之くんは嫌な人じゃなかった」

 

 おお、今回はバッドファーストコンタクトにならなかったみたいだね。よかった~。

 

「思ったより……バ、陽気だった」

 

「今、バカって言いそうになってなかった!?」

 

「な、なってないよ」

 

 こ、これはほんとにバッドじゃないといえるのだろうか? うん。少なくともグッドではないね。ベターかな?

 

「ま、いっか」

 

「いいんだ……」

 

「いやー、実はね。ここでクラスメイトと特訓する約束だったんだけど、来なくてさ。暇だったから、かんちゃんに話しかけたんだ」

 

「そ、そうなんだ」

 

 まあ、そんな理由で作業を中断させられたらかんちゃんも迷惑だろうし、離れたほうが良いのかな。

 

「そう言うことだから気にせず作業してていいよ」

 

「え、あ、うん」

 

 かんちゃんは少し僕の視線に戸惑いつつも、作業に戻る。やっぱり見られてるとやりづらいかな? うーん、作業の邪魔してるのなら申し訳ないなぁ……。

 

「それにしても遅いな、鈴ちゃんは。ラウラとかも時間にきっちりしてる気がするんだけど」

 

「あ、あの……」

 

 僕のつぶやきにかんちゃんが声をかけてくる。

 

「もしかして、集まる場所を間違えてるんじゃ……」

 

「え? いや、確かに第三アリーナでやるって言ってたと思うけど」

 

「あの……ここ、第二アリーナだけど」

 

 え?

 

 僕の思考の一切がその言葉に止まり、しばしのフリーズを起こす。

 

「ここ、第二?」

 

「う、うん」

 

 なるほど。ということは待たされているのは僕ではなく、鈴ちゃんたちというわけだ。

 

「なるほどなるほど」

 

 ……

 

 …………

 

「うわぁぁああああああ!」

 

「ひゃっ」

 

 僕の絶叫にかんちゃんが驚いた声を出す。

 

「あ、ごめん、かんちゃん。僕は重大な勘違いをしてたみたい」

 

「う、うん」

 

「僕は……行くよ」

 

「あ、うん」

 

 僕は駆け出す。第三アリーナへ向かうために!

 

「あ、またねー、かんちゃん!」

 

 外に出る前に手を振る。小さく振り返してくれるかんちゃん。それを見てから僕はアリーナを後にしたのだった。

 

 しかし、関わるつもりはなかったんだけど、まさかガノタだったなんて……。これは関わらざるを得ない。

 

「何とかしてあげたいね」

 

 そんな風に僕の考えは変わったのだった。

 

 

 

 

 

 ちなみにその後鈴ちゃんにすごく怒られました。

 




この後、手伝う話が入ってきますが、それは記憶が戻ってからの時系列になります

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