鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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先に言い訳しておこう。
あくまでこの小説のスポットは鈴ちゃんなんです
ラウラ中心の話とか作っちゃったけど、鈴ちゃんなんです……
だから……シャルは本筋じゃないんです!


十五話 事後処理回

 保健室。

 

 そこに居るのは、ラウラと千冬であった。

 

 あの後、駆けつけた教員たちによって、氷雨とラウラはこの保健室に運び込まれたのだが、氷雨は早々に目を覚まし、教員たちの制止を聞き流し、何故か時間を気にしながら走り去っていった。

 

 故にここに居るのはラウラと、二人の様子を見に来た千冬だけしかいない。

 

 意識を取り戻したラウラは、千冬に問いかける。

 

「私は……何が起きたのですか?」

 

「……重要機密だ。あまり多くは口に出来ん」

 

「ですが、私は当事者です」

 

 そう言われてしまうと、千冬も何も言えず。一つ息をつき、ラウラを見据える。

 

「VTシステムは知っているな?」

 

 千冬の問いにラウラは頷く。VTシステム、それはIS世界大会の優勝者であるヴァルキリーの動きをデータ化し、再現するというものだ。

 

「ですが、あれは……」

 

「そうだ。条約で使用は禁止されている。だが、それが今回お前のISに組み込まれていた」

 

 ラウラは言葉を発しない。

 

 あの手を思い出す。力を欲したが故に、千冬のようになろうとしたが故に、それは発動してしまった。

 

「巧妙に隠されてはいたがな。操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして操縦者の意志」

 

「意志……」

 

「ああ。それらが揃うことで、VTシステムは発動する」

 

 その言葉にラウラは目を伏せる。

 

「……氷雨、篠ノ之と戦って、どうだった」

 

 突然の言葉にラウラは驚き顔を上げる。少し言葉に詰まったラウラであったが、真っ先に出た言葉は――

 

「強かったです」

 

 それだった。

 

「そうか」

 

「はい。教官に認められているのも納得がいく実力でした」

 

 そう答えたラウラに千冬は苦笑する。

 

「? なにか、可笑しかったでしょうか」

 

「いや。私があいつを認めているのはそこではないさ」

 

 千冬の言葉にラウラは疑問を抱く。だが、どこかその答えに納得している自分もいた。

 

「確かにあいつは強い。だが、それだけならまだまだ上はいるだろう」

 

 そんな尺度で人は語れない。そんな当たり前の感覚も、ラウラには新鮮なものである。

 

「それでは、教官は氷雨のどこを認めているのですか?」

 

「一途さだな」

 

 その千冬の返答に、ラウラは困惑する。

 

「あいつは何事にも一途に行動している」

 

「……どういうことですか?」

 

「迷いがないのさ。自分の決めたことに迷いがない。だから強い」

 

「迷いがない……」

 

 それが、氷雨の強さ。そう言われて、なんだか納得するラウラ。

 

「別に見習えとは言わん。だが、お前も自分で疑うことのない何かを見つけてみろ。そうすれば、そんなものに惑わされることはなくなるだろうな」

 

 そんなもの、VTシステムに惑わされない……。

 

 ラウラの中に一つ、答えが生まれたのであった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 ところ変わって僕は束さんとの待ち合わせ場所に来ている。

 

 え、なんで束さんなのかって? シャルの問題解決の顛末を聞くためです。

 

 でもね、それなら別に電話でもいいと思うんだけど、なんか……直接……この格好を、みたいからって……。

 

「女装で来てるんだよね!」

 

『変態野郎……いえ、失礼しました』

 

「ほんとに失礼だよ」

 

 別に僕が変態なんじゃなくて、束さんが変態なんだよ。そうそう。こんな恰好させる人の方が変態なんです!

 

『変態貴婦人』

 

「そこ!? いやいや、そこは問題じゃないんですよ、ペイルライダーさん!」

 

 確かに今の僕は野郎じゃないけど、あ、いや、待って。野郎であってる。別に僕の性別は変わってないよ。

 

『大体、何ですか。何故、女性用の制服を持っているんですか』

 

「え、千冬さんがくれたよ?」

 

『千冬はまともだと思っていました』

 

 いや、別にその認識は間違ってないと思うんだけど。

 

「だってまともな理由だったし……」

 

『どこがですか?』

 

 そんな会話をしていると、向こうの方から特徴的なうさ耳の女性が走ってきた……ボルト並の速さで。

 

「おっまたせー!」

 

「速い! 速すぎる!」

 

『世界記録を何だと思っているのですか』

 

「まあまあ。束さんは細胞レベルで天才だからね」

 

 端から聞けばバカみたいな言葉なのに、束さんが言うと事実だから何も言えなくなる。

 

「それで、どこに移動する? その辺の喫茶店とかでいい?」

 

「おお! ひーくんは全然女装に恥じらいがないんだね」

 

 いや、もう何回目だよって感じだから……。

 

「じゃあ、あそこに行こうよ」

 

「あそこ?」

 

 僕は別にこだわりがないから束さんについて行くことにした。

 

 でも僕は油断していたんだ。束さんが何も企んでいないはずがないのに……。

 

 

 

 

 

「「お帰りなさいませ、お嬢様!」」

 

「タイム!」

 

「認めません!」

 

『諦めましょう』

 

 可笑しい、可笑しいよ、カテジナさん。

 

 状況を整理しよう。

 

 メイド喫茶に、女装姿で、真面目な話をしに来た。

 

 なんだこの不協和音……。真面目な話をするようには見えない状況だよ! ていうか、女装でメイド喫茶って、何の罰ゲームだよって感じじゃないですか……。

 

「ほらほら、ひーくん早く」

 

「分かったよ、束姉」

 

 束さんに急かされる形で席に着く。メニューを開くと、なんともファンシーな色合いが目に痛かった。

 

「ひーくん。束さんはこれね」

 

「ん、分かった」

 

 メニューを指差され、僕は了解する。

 

「あ、すいませーん」

 

「はーい、ご注文はなんでしょうか、お嬢様?」

 

 小首を傾げ注文を聞いてくる。あざといメイドさんだね。

 

「あ、このあちゅあちゅブレンドコーヒーとおえかきオムライス下さい」

 

「かしこまりましたー」

 

 語尾を伸ばしつつ、注文を取ったメイドさんが消えていく。

 

「ひーくん、お腹すいてるの?」

 

「お昼食べてないからね~」

 

 まあ、注文が来るまで時間があるだろうし、先に聞いておこうかな。

 

「で、どうなったの?」

 

「どうなったも何も単純だよ」

 

 束さんの語る顛末はこうだ。

 

 そもそも、シャルの罪というのは学園に提出する書類を偽っただけだ。入国時のパスポートも本物であり、性別を偽ったりもしていない。ただ男ものの服を着ただけの女の子であっただけ。

 

 なら、対処するのはその学園に提出した書類に関するものと、フランスのバックに関してだ。

 

 日本政府に対しては、学園でシャルが男装をしていたことを見逃せという。

 

 もちろん政府は「公の場で世間を混乱させるような行為を見逃すことはできない」と断る。

 

 しかし、今日公の場で僕が女装する。

 

 それを見逃さないということは、僕にも罪を問うということかと半ば脅しの様な言い方そする。

 

 政府は渋々シャルを見逃すことに。

 

 ただし条件で、今後の男装は認めないということだった。

 

「なんだか力押しすぎない?」

 

「そもそも、学園は治外法権だからフランスの代表候補が学園内で性を偽っても日本政府は裁けないからね~」

 

 なるほど。……ん?

 

「じゃあ、なんでそんなことしたの?」

 

「治外法権だからって国から言われたら学園も何らかの処罰をせざるを得ない。だから先に芽を摘み取ったわけだよ」

 

「ああ、それで僕が女装させられたってことなのか」

 

「え、それは私がさせたかったからだよ?」

 

 おい。

 

「お待たせしました、お嬢様。こちらあちゅあちゅブレンドコーヒーになります」

 

「あちゅあちゅですか」

 

「あちゅあちゅです」

 

「らめぇ、ご主人さま、そんな熱いの入らないぃぃい、ってくらい熱いですか」

 

「もっと熱いです」

 

「もっとですか」

 

「はい」

 

「……」

 

「……」

 

 そう言ってクールなメガネメイドさんは去っていった。

 

「はい、束姉どうぞ」

 

「ひーくん、面白い方に成長したね~」

 

 束さんに面白い認定されました。これは喜ぶべきなのでしょうか?

 

「あ、でもフランスの方はどうなったの?」

 

「そっちはホントに単純だよ」

 

 ほんとに単純とは、どういうことだろうか?

 

「フランスの二番目に大きいIS関連企業に……」

 

「うん」

 

「第三世代の技術を上げた」

 

「うおぉぉおおおおおいいい!!」

 

 それ一番やっちゃいけないことじゃないですかぁあ!

 

「アウト! それはアウト!」

 

「なんで? 第三世代の技術くらい時間があればどこでも作れるしいいじゃん」

 

 いや、そりゃ束さんからすればそうかもしれないけど……。ていうより、その時間がないからデュノア社は大変だったんじゃないですかねえ?

 

「まあまあ、もう上げちゃったし、それはいいでしょ?」

 

「いや、いいのかなあ……」

 

「大丈夫。ちゃんと条件も付けたからね」

 

「条件?」

 

 第三世代機の技術を上げるとなると、それなりの条件なら飲んでくれるということなのかな?

 

「一つ目にデュノア社を買収して傘下に置くこと」

 

「一つ目で問題解決しちゃってない!?」

 

「そんなことないよ~。傘下に置いてもまだそのフランスの候補生はそこの娘のままでしょ?」

 

 まあ、そこまでなら親権はデュノアにあるし、国とグルであるなら支援を止めて強制的に帰国させることもできるのか。

 

「だから二つ目に、その第三世代機のテストパイロットをその子にしろって言っておいたのだ」

 

「? それで何が解決するの?」

 

「ひーくんもまだまだだね」

 

 束さんがにやりと笑う。僕は紡がれるであろう言葉を息をのんで待つ。

 

「つまり――」

 

「お待たせしました、お嬢様。おえかきオムライスになりまーす」

 

「あ、こっちです」

 

 手を上げて示すと、僕の正面にオムライスが置かれる。

 

「何を書きましょうかー?」

 

「あ、ブラブレのティナちゃんできますか?」

 

「はーい。お任せ下さい!」

 

 そう言って数分で出来上がるティナちゃん。おお、完成度高い。主に前髪の。

 

「これは食べられないな~」

 

「ありがとうございます、お嬢様。ごゆっくりどうぞ~」

 

 そう言って離れていく元気そうなメイドさん。

 

「あ、束姉続きどうぞ」

 

「むー、邪魔が入るな~」

 

 そんなこと言うならもっと違うところですればよかったんじゃないかと思うけど、言わないでおこう。

 

「じゃあ、続けるよ? フランスで唯一の第三世代機、これのテストパイロットになったら、そのフランスの子の専用機は?」

 

「え、その第三世代機でしょ? もぐもぐ。あ、おいしい」

 

「そうそう。だから、そんな専用機を持った子を国が手放したいとは思わないでしょ? 束さんにもちょとちょうだい」

 

「そりゃそうだよね。……あ、ということはフランスはシャルを代表候補生から外せないわけだ。はい、あーん」

 

 国内唯一の第三世代機持ちを一企業のテストパイロットのままにするわけにはいかない。

 

「あーん、もぐもぐ。そういうこと。これで国からのバックアップの確保したし、デュノア社の社長も口出しできないでしょ」

 

「口出しできない?」

 

「だって、娘のバックは自分の親会社が付いているんだよ? 下手なことできなくなっちゃうよね~」

 

 な、なんともいやらしいやり方だな~。

 

「そういうわけで、解決!」

 

「ありがとう、束姉!」

 

 ひし、と抱き合う。ん? でも何か忘れている様な気がする……。

 

「じゃあ、二つ目のお願いをしようかな」

 

「忘れてた!」

 

 シャルの問題は解決しても、僕の方はまだまだ解決しないようだった……。

 




今回も反応が怖くて胃が痛い
シリアスでも何でもないのに……
なんでかって?

シャルへの対応って、二次創作に置いてなんだか期待されてるんだもん……
それに最近急に読者が増えたことによって重圧がががが

いや、嬉しいですけどね!
書くのも楽しいですけどね!

なにとぞ、お、お手柔らかにぃぃぃいい

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