鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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千冬さんの期待に応えるという目的<鈴ちゃんに格好いいところを見せたい


十話 タッグ……マッチ……トーナメント?

 そんなこんなでシャルの話しは置いておきましょう。

 

 え、なんで置いておくのかって? 後日談みたいにして話すからだね。だってシリアス(?)回は続くと読んでて疲れるじゃないですか。

 

 多分、この作品にシリアスは求められていません。だって、タイトル見てよ。……あっ(察し)

 

 

 

 

 

 そう言えばね、学年別トーナメントってタッグだったよね。誰と組もうかな。ペイルライダーは基本近接型だから遠距離射撃武器との相性の方がいいよね。

 

 一番の理想はセシリアのブルーティア―ズだね。ビットの牽制力は敵を分断するのに最適だから、近接に持ちこみやすくなる。

 

 まあ、それは戦術的な観点で相方を考えた時の話だけど、僕は鈴ちゃんと組みたい。甲龍が近接タイプだとかはこの際どうでもいいから鈴ちゃんと組みたい。

 

「ペイルライダー的には誰が良い?」

 

『白式がいいです』

 

 え、近接同士が組むの? 作戦が突っ込むしかなくなるわけだけど……。

 

「あ、コアが白騎士だから?」

 

『そうです』

 

 やっぱり対で造られたから思い入れがあるのかな?

 

『あの女に私が優れている所を見せつけたいからです』

 

「あの女って……いったいどういう関係なのさ」

 

『冗談です』

 

 冗談なのか。

 

『相性はともかくどうしてタッグだと思うのですか?』

 

「え」

 

 ああ、そう言えば、未だにタッグ戦の発表はされてないね。

 

「ええと、勘かな?」

 

『それでは考えるだけ無駄そうですね』

 

 どういう意味ですか、ペイルライダーさん。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 そんなこんなでトーナメント前日になりました。

 

 え、なんでタッグ戦に変更されたっていう通知が来てないの!? あれ? 僕の思い違いだったっけ? 確かに学年別トーナメントはツーマンセルのタッグマッチだった気がするんだけど……。

 

 あ、そうか。そう言えばあの変更はクラス対抗戦での襲撃を受けて、より実践的な形式にして、代表候補生たちに自衛の力をつけさせるためって名目だっけ。

 

 つまり、原作と違って、襲撃どころか、クラス対抗戦すらしてない現状ではタッグ戦にする動機がないということらしい。

 

 ……え、一対一の戦闘だったらラウラ一強じゃないですか。

 

「なかなか難しくなってきたね」

 

「そう言えばさ」

 

 正面に座る鈴ちゃんが何かを思い出したように口を開く。

 

 あ、ちなみに今は昼食の最中だよ。鈴ちゃんと一夏の冷戦は未だに続いてるから、僕はここ最近一夏とお昼を食べた記憶がないよ。

 

「一夏とあんた、それにシャルもだっけ、明日のトーナメントの景品らしいじゃない」

 

「らしいね」

 

 優勝したら付き合えると言うやつだね。

 

「どうなのよ、あれ」

 

「どうといわれてもね。僕たちの知らないところで言われてるだけだから、なんとも言えないよ」

 

 ふーん、と鈴ちゃんは何かを思案する。

 

「もしそれで告白されたらどうするの?」

 

「え、告白? はは、されるわけないよ」

 

「ん、なんでよ? あんた、意外と人気あるわよ?」

 

 いや、人気があるのかどうかは別としてね。……ていうか、さらっと本人にそれを言う鈴ちゃん、ほんとに僕のこと友人としてしか見てなさそうなんだけど……。

 

「だって、僕以外優勝させる気ないしね」

 

「……」

 

 その言葉に鈴ちゃんは唖然とする。

 

「あんた、目の前に代表候補生がいるって分かってて言ってるわけ?」

 

「え? あ~、うん。り、鈴ちゃんには苦戦するかもしれないね!」

 

「かもしれないって何よ。どんだけ自信あるのよ」

 

 自信があるってわけじゃないけど、千冬さんの期待を裏切るわけにはいかないし、それに僕は稼働時間だけで見たら世界一位だからね。天才とかにはいつか負けると思うけど、今のところは同年代に負ける気はしないよ。

 

「あ、そうだ。じゃあ、僕が優勝したら鈴ちゃんに告白していい?」

 

「はあ!?」

 

 僕のいきなりの提案に鈴ちゃんは驚いて声を上げる。

 

「……て、別に改まって告白しなくても知ってるんだけど」

 

「だよね~」

 

 気持ちは伝わってるのに答えてくれないって言うのは結構絶望的な状態である気もするね。

 

「ま、あんたの戦い見て気持ちも変わるかもね~」

 

 鈴ちゃんはからかうような口調で言う。

 

「! それだっ!」

 

「え?」

 

 しかし、からかわれていると分かっていても、行動しないことには成果を得ることはできない。からかうためとはいえ、一度口に出した言葉だ。鈴ちゃんも少なからず、それを意識してくれるに違いない。

 

「僕は、明日、鈴ちゃんのために戦う」

 

「いや、どういう意味よ、それ」

 

 細かいことは置いておいてほしいです。

 

「だから、見ててね」

 

 明日のトーナメントで僕は鈴ちゃんに漢を見せる。

 

「かっこいいところを見せつけて、鈴ちゃんを虜にしてやるんだから!」

 

「……もっと違う言い回しはなかったの?」

 

 鈴ちゃんは少しあきれ顔になる。

 

「ま、観戦はするからせいぜいがんばりなさいよ」

 

「わーい」

 

 見てほしい人が見てくれている。

 

 これ以上に力が出せる戦場はないと思いました。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 アリーナ、ピット。

 

 なるほど。これが世界の選択か。

 

 そう思いながら見つめるのは本日行われる、学年別トーナメントのトーナメント表を映し出す電子掲示板である。

 

 初日、午前の部、一回戦。詰まる所一番最初の試合だね。各国からお偉いさんも来るし、この一番最初の試合に代表候補生を置くのは、まあ分からなくもないけど……。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ VS 篠ノ之氷雨

 

 なんだか悪意……というか、千冬さんの思惑がもろに反映されている気がしてならないのは気のせいでしょうか?

 

「氷雨は初戦からか」

 

 一夏が僕の横に立ち、同じように電子掲示板を見る。

 

 そういう一夏は午後の部の一戦目だ。対戦相手は……鈴ちゃんだね。

 

「一夏は大変そうだね」

 

「ん? 氷雨の方がやばいだろ。相手はあのボーデヴィッヒだぞ?」

 

 確かにそうだね。VTシステムがあるから本当に面倒くさいね。そこそこ善戦を演じながらギリギリで勝つのが理想的かな? でも、ラウラ相手にそんなことできそうにないんですけど。

 

 ま、まあ、VT状態のラウラは一夏でも勝ててたし、ぼ、僕でも勝てるよね?

 

『一戦目の各選手は対戦の準備を始めて下さい』

 

 アナウンスが聞こえ、僕は着替えるために移動しようとする。

 

「じゃあ、僕は着替えに行ってくるよ」

 

「ああ、しっかり観覧席で見てるからな」

 

「うん。応援よろしくね」

 

「おう」

 

 掲示板から踵を返すと、そこにはシャルの姿があった。その表情はどこか不安げである。

 

 それもそのはずだ。今日は各国のお偉いさんたちが集まる。もちろんその中にはデュノア社の社長である、シャルの父親も来ているわけだ。

 

「氷雨……」

 

「大丈夫。任せておいてって言ったでしょ?」

 

 そう、もうすでに手は打ってある……あ、僕がじゃなくて、束さんがだけどね。

 

「だから、シャルは安心していいからね」

 

「ありがとう、氷雨」

 

「いいって。それに、僕は本当に何もしてないから」

 

 僕は何もしてないのに感謝されるのはむず痒いからね。

 

「じゃあ、いってくるね」

 

「うん。頑張ってね」

 

 そうして僕はピットを後にした。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 待機室。

 

 ベンチに腰掛ける銀髪の少女はこの後の試合を思い、笑みを浮かべていた。

 

 勿論、氷雨と戦えることが嬉しいのではない。自分の教官であった女性、千冬を連れ戻すことができるからである。

 

 自信の目に付けられた眼帯に触れる。その冷たさに、以前自分が晒されていたあの視線たちを思い出した。

 

 蔑み、嘲笑、それらを孕んだラウラを見下す眼は冷たく、人に向けられるものではなかった。

 

 できそこない。

 

 戦うために生まれ、戦うために教育された試験管ベイビーである彼女は、戦うことができなければ、そういうレッテルを張られるのは必然だ。

 

 戦うこと以外に存在意義を主張できない。その唯一の存在意義を奪われた彼女の心は、深い深い闇の中に放り込まれていた。

 

 そんな彼女を再び光の元へ連れ出してくれたのは、千冬だ。

 

 自分に再び生きる理由を与えてくれた教官。今更、放り出すなんて許さない。そんな依存が彼女の根底には流れている。

 

 彼女の中の千冬像を穢すものは許さない。千冬はこんな守られて育った甘い学生たちに教えるべき人物ではない。

 

「必ず、連れ戻します、教官」

 

 故に氷雨を倒す。

 

 そのへらへらとした面を土にまみれさせてやる。

 

 闘志の炎は燃え上がる。静かに、しかし確かに、ラウラの胸には宿っているのであった。

 




タッグマッチが書きにくいからとか言う理由ではございません

本当です!
うそじゃないんです!!

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