鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
モール。
最初は散々な酷評をされたものの、持ち前のタフな精神力で何とか乗り切った僕は千冬さんにしてもらった化粧が落ちないように涙を堪えるのに必死だった。あれ、乗り切れてないよね?
「着いたけど、結構大きいわね」
僕らの目の前には見上げるほどの建物が鎮座している。正面をガラス張りにされたそれはなんともヒートアイランド現象に貢献してそうな見た目だった。
「だね~。ここだけで大体のものが揃うようになってるからね」
日用雑貨から銃火器まで、何でもござれだよ。……あ、ごめん。誇張しました。
「それで、まずはどこから行く?」
「あたしは服が見たかったのよね。私服ほとんど持ってこなかったからさ」
「確かに来た時ボストンバッグ一つだったもんね」
「そうそう。だから他の雑貨もみたいけど、それは後にするわ」
「了解」
そんなやり取りをする僕をシャルがまじまじと見ている。
「ど、どうしたの?」
「え、いや、やっぱりまだ慣れないな、と思ってね」
「似合ってないかな?」
「似合ってて、あんたは嬉しいわけ?」
的確な質問だ。僕的には、ネタとして受け入れてもらえればそれで良いけど。
「ま、あんたの女装はどうでもいいから、買い物に付き合ってよね」
「任されましたとも!」
こうして僕らは婦人服売り場へと移動した。
◇ ◇ ◇
「これはどう?」
「似合ってるよ!」
鈴ちゃんは手に取った服を自分の身体の前で合わせ、示してくる。可愛過ぎて鼻血が出そうだけど我慢せねば。
「こっちは?」
「可愛いよ!」
なんとも、これは良い! 何が良いって、鈴ちゃんが可愛い!
「……これは?」
「キュートだよ!」
その服がなくてもキュートだよ! あ、ちがう。そう言う意味じゃない。だからペイルライダーさん、そのコール一歩手前の110を止めて。
「……あんた、適当に言ってない?」
「ええっ!?」
そんな心外だよ! 僕はありのままの言葉しか言ってないよ! 大体、ニュートンの第四法則にも、鈴ちゃんは如何なる外的要因によらず可愛いってあるし!
「さっきから似合うしか言ってないじゃん」
「だって、実際に合ってるんだから仕方ないでしょ?」
鈴ちゃんのセンスが良いのも一端を担っているんだけどね。
「それに、何を着ても鈴ちゃんは鈴ちゃんだから、可愛くないわけがないしね!」
「っ! ~~~っ!」
顔を紅くして唸り声を上げる鈴ちゃん。か、か……。
「可愛いっ!」
「あんたじゃ、役に立たないわ! シャル、ちょっと付き合ってよ」
「え、僕? うん、いいけど……」
シャルが僕を窺うように視線を向けてくる。
「いってらっしゃい」
沈んだ声でシャルを見送る。
「い、いってくるね」
そう言って去っていく鈴ちゃんとシャル。何故だ、何故鈴ちゃんは怒ってしまったんだ!ほんとに、何がいけなかったんだろうか。女の子の買い物のアドバイスなんて、そもそも男にできるものではなかったということか。
「あ、今僕女だった」
『違います』
だよね。こうなってしまっては仕方がない。次、挽回できるようになっていればいいのさ。だから、次は心まで女装すればいいのさ!
「じゃ、ラウラの買い物でもしようか」
「ああ。ついてこい」
「うん! ……あれ?」
何故か僕の方がエスコートされる形になりました。
◇ ◇ ◇
下着売り場。
連れてこられたのは女性ものの下着が並ぶ、一角であった。
「ラウラ、僕は何か悪いことをしましたか?」
「何を言っている。買い物に付き合うと言ったのはお前だろう」
そうなんだけどさ。こんな場所に連れ込まれるなんて、罰じゃなきゃなんなのさ。うう、目のやり場に困る。
「傍から見たら変態だよ」
「その点は心配ないだろう。今のお前は女だ」
……あ、ほんとだ。
「じゃあ、何も怖くないね!」
「うむ」
『……』
社会から弾糾される心配がないのであれば、僕を束縛するものなど何もないね。
『倫理』
ペイルライダーがぼそりと何か言ったけど、あまり聞こえないね。こんな気持ち初めて、もう何も怖くない!
というわけなので、とことん買い物に付き合ってあげようじゃないか、ラウラ。
「というか、なんで下着?」
「軍の支給だけでは流石に数が足りん」
へえ、軍の支給品ね。
「ちなみにどんな色?」
「全て白だが?」
清潔感漂う良い色だよね。ラウラのイメージカラーは黒だけど、そういうのもギャップがあっていいと思うよ。あ、でも、見た目的にはあまりギャップはないか。逆に黒の方がギャップ? どちらを選んでも見方によってギャップ萌えを生み出すあたり、流石人気キャラだね。
「それで、今日はどんなのを買うの?」
「む? 軍のものと同型のものだが?」
え、そんな保守的なの?
「ここは攻めようよ」
「攻める……だと?」
「そうだよ! そんな保守的な買い物、ラウラらしくないよ!」
保守的という言葉に反応を示したラウラ。
「ふん。お前に乗せられるのは気に食わんが、良いだろう。その攻める買い物とやらをやってやる」
「おお、それでこそラウラだね! じゃあ、まずそこの黒とかど――」
「なにやってんのよ!!」
「なにしてるの!?」
後方から二人の怒声と共にウィッグの上から脳天を貫く手刀の衝撃が僕を襲った。あ、なんだろう。綺麗な河が見える……。
「はっ! 危うくトリップするところだったよ」
「そのまま行けばよかったのに」
物騒な事言わないでしょ、鈴ちゃん。
「ふむ。黒か……」
その後は、床に直に正座させられ、鈴ちゃんとシャルにお説教をくらいました。
うん、弁明のしようがなかったね!
◇ ◇ ◇
おもちゃ屋。
呆れた鈴ちゃんとシャルは二人で日用雑貨を見に行ってしまいました。何故だ! 鈴ちゃんとのデートのはずが、ほとんど別行動なんだけど!?
原因は僕だけどね。いや~、女装したらさ、妙なテンションになっちゃってね。
『普段と変わらない気もしますが』
いやいや、まさかそんなわけないよ。普段からこのテンションだったら可笑しな奴だよ。え、ほんとにいつもこんな感じ? まじかぁ……。
「ラウラはついて行かなくてよかったの?」
「日用品の類は軍の支給品で事足りている」
「そうなんだ」
あれ? だったら別にここまで買い物に来る必要ないような気もするけど……。あれかな、千冬さんはなにか別の目的があるのかな?
「あ、別に退屈だったら外で待ってても良いよ?」
「いや、いい」
そう言うと、ラウラは僕の後ろをついてくる。あ、この感じ懐かしいな。小さい頃の箒もこんな感じで後ろをついてきてたよ。
「それで、何を買うつもりだ?」
「ん? プラモだよ」
「プラモ?」
あれ、ラウラは知らないのかな。
「プラモデルって言って、プラスチックの部品を組み合わせて自分で作る模型だよ」
「ふん、そんな子供だましを買うのか」
馬鹿にしたような眼で僕を見るラウラ。そんな事言っていいのかな? 絶対ラウラは食い付くと思うけどな~。
「まあ、まずは自分の目で見てから、そういうことを言ってもらおうかな?」
「いいだろう。だが、見たところで私の意見は変わら――」
“IS”のプラモコーナーにたどり着くとラウラは目を輝かせながら一つのパッケージをまじまじと見つめていた。
そのISの名は『暮桜』
そりゃあ、ラウラも食い付くでしょうね。
「子供だまし?」
「貴様、教官を愚弄する気か」
そ、そんな気はないから! だ、だからその物騒な銃器を早くしまって下さい。
「ふん」
鼻を鳴らし、銃をしまうラウラ。自分で言っていたことなのに……。
「しかし、これは玩具と侮れない精密さだな。……まさか、我が軍の機体も!」
「うんあるね」
ラウラのシュバルツェア・レーゲンはないけど、レーゲン系の第二世代機は出ている。
「くっ。どこで機密が漏れた……。まさか、内部にスパイが!」
「いや、公式で発表された機体しかないよ」
流石に軍の機密なんて公表したら、会社は潰されるからね。
「それに精密だけど、これ外装のデータだけで作られているから技術の流出は一切ないよ」
「そ、そうか。なら安心だな」
玩具にそんな心配する人、初めて見たよ。
一見は軍人気質で堅いラウラだけど、暮桜のパッケージを嬉々として眺める姿は年相応……ではないかな、見かけ相応であるように思えた。
「お前はどれを買うのだ?」
「僕? 僕はね」
ラウラの横を抜け、ある箱を手に取る。
「これだよ!」
「ああ、中国の甲龍か」
「うん。先週やっと発売されたんだよね。色々あって買いに行けなかったけど、ようやく手に入れたんだ!」
でも、このプラモの欠点は搭乗者が鈴ちゃんじゃないってとこだね。肖像権がどうとかで、モブ操縦者に変更されている。そこを拘らなきゃ意味ないだろ!!
「ふむ。なかなかプラモデルというのも面白いものだな」
「でしょ?」
なんか妙な所で意気投合した僕とラウラでした。
『何故、蒼騎士は買わないのですか?』
「え、も、もう二十個も作ってるからだけど……」
『なぜ蒼騎士も買わないのですか?』
「だ、だから、すでに二じゅ……」
『なぜ』
「買います」
定価5700円の出費が増えました。
ちなみに、私はISのフィギュアは手が出ませんでした
何故かって? ちょっと高すぎるからですよ
紅椿一万弱って、ガンプラばっかり作ってた私の金銭感覚からしたら
ぱっと手が出せる金額ではなかったですね
でも、鈴ちゃんは一番安かったような……