鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
一話 始まりの号哭
食堂。
何とも締まらない幕引きをしたものの、僕は無事、鈴ちゃんとの仲を良好なものにすることができた。
でもそれは、偶然の重なりのおかげで、僕自身が何かを成したわけではないような気もするけど、結果オーライなので問題はないということにする。
そして、仲が良くなった鈴ちゃんと今、食堂でお昼を共にしているのだ! 食堂のオムライスは卵がふわっふわで君を見てるといつもハートドキドキな時間なのだ! ふわっふわターイム♪
まあ、僕がそのお供に選ばれた理由は消去法なんですけどね。一夏とは喧嘩中だから僕しかいない、ということだ。嬉しいような、悲しいような……。
「別にいいけどさ、なんで他に二人も付いてきてるわけ?」
同じ机についているのは四人。
一人は鈴ちゃん。一人は僕。
そして、あとの二人はシャルとのほほんさんだ。
「僕も転校生の凰さんと仲良くなりたいな~って思って」
「えへへ~、私もそうだよ~」
「て、ことらしいよ?」
「ふ~ん。ま、別にいいけどね。私は凰鈴音。鈴でいいわよ」
「僕はシャルル・デュノア。僕もシャルルでいいよ。よろしくね、鈴」
その自己紹介を聞いて、鈴ちゃんはなんだか引っかかるところがあったらしく、小首をかしげる。
「男みたいな名前なのね」
「「えっ!」」
「あはは~、りんりん、でゅっちーは男の子だよ~」
「……そのりんりんって言うのは止めてもらっていい?」
「え~、なんで? 可愛いよ?」
「昔、パンダの名前みたいって馬鹿にされてたのよね……」
パンダ……ああ、確かに居そうな名前だね。
「う~ん。じゃあ、ふぁんふぁんっていうのは~?」
「まあ、それなら別にいいけど」
「決まり~。じゃあ、今日からりんりんはふぁんふぁんだ~」
のほほんさんの中では鈴ちゃんのあだ名はふぁんふぁんで決定したらしい。
「あの、鈴」
会話が途切れたあたりで、シャルがおずおずと鈴ちゃんに声をかける。
「なに?」
鈴ちゃんはシャルの方を向き、続く言葉を促した。
「僕は、男みたいじゃなくて、一応男なんだけど……」
一応って付けている辺り凄く怪しまれそうなんだけど、シャルはそれでいいのかな?
「え、そうだったの?」
「あはは。まあ、一夏や氷雨と違って大々的に報道はしてないから知らないのも無理はないけどね」
「いや、鈴ちゃんは僕のことも知らなかったよ」
一夏のことしか見てなかったからね。
「へ~、女だと思ってたわ。なんか悪かったわね」
「い、いや、別にいいよ」
まあ、中性的な顔立ちって、男が女みたいな顔をしているときに使うから、あながち間違ってないよね。男だって紹介をされなかったらクラスのみんなも女だと思ったんじゃないかな?
「凰さんはどう? 一夏と仲直りできた?」
「できてたらあんたとここに居ないでしょ」
「それもそうだね」
あれから二日たつけど、全然進展はないみたいだ。一夏の方は一夏の方で、『何がどう間違ってるのか分からないのに謝れるわけないだろ』って謝る気はなさそうだしね。
あ、この時は一発殴りました、ボディーを。そしたら頭をどつかれました、千冬さんに。いったいどこから現れたんだ……。
「……ねえ、氷雨が鈴に振られた話って本当?」
「ごはぁ!」
僕の正面の机が紅い滴で染められる。それに驚いたシャルが慌てだす。
「わ、わわわ。だ、大丈夫、氷雨!」
「ふ、シャル……後のことは、たの……んだ……ガク」
「氷雨ー!!」
自前効果音と共に倒れる僕と、その肩を掴むシャル。それを冷めた目で見つめる鈴ちゃんに、我関せずとホットケーキをマイペースに頬張るのほほんさんの姿が凄くカオスな昼食時の食堂を彩っていた。
「シャルル、それ、ケチャップだから」
「え?」
「あ、ばれてた?」
鈴ちゃんとの仲が改善された今、それは最早トラウマにはなり得ないワードなのです。だからもう前みたいに失神する事はないのだ! はははは、ああ、手が震えてやがる……。
「ていうか、シャルルはなんでそれ知ってるの? あ、そういえば一夏も知ってたよね」
「え、あんたがしゃべったんじゃなかったの?」
いやいや、僕が鈴ちゃんの不利益になることなんてするわけがないじゃないですか。え、僕とくっ付くことこそが不利益だって? ちょっと、そこの君、屋上行こうか?
「えっと……それは……」
言葉を濁すシャルが一瞬ちらりとのほほんさんの方を見る。それを見逃すはずもなく、僕は誰がこの事態を引き起こした犯人であるかを理解した。
「のほほんさん、貴女、しゃべりましたね?」
「ほへ? な、なんか顔が怖いよ、ひさめん」
失敬な。満面の笑みを浮かべているじゃないですか。
「毎度毎度、のほほんさんの口は軽すぎるんじゃないの~?」
「ほにゃっ! ほ、ほっへたつねははいへ~」
ふにふにとのほほんさんの柔らかい頬肉を弄る。その感触はいままで最高のさわり心地だと思われていたビーズクッションをも凌ぎそうな柔らかさだった。こ、これが女の子! お、恐ろしい。
「い、いつまで触ってるの、氷雨!」
「ごめんなさい!」
シャルに頭を叩かれてしまった。あの温厚なシャルが手を出すほどに、僕はふにふにしていたのだろうか。
「うう、私はただ噂が本当なのか確かめようと思っただけだよ~」
頬をさすりながら僕に抗議してくる。ちょっと涙目になっている所を見ると本当にやり過ぎたようだ。ごめん。お詫びに後でオリ主にありがちなお菓子作りスキルを発動させるから。……まあ、僕にそんなスキルはないんですけどね。
「まあ、過ぎたこと怒ってもしょうがないし、別にいいじゃない」
「凰さんがいいなら僕はいいけどね」
そもそもの被害者は僕じゃないので、本人がいいというなら問題はない。
「ええと、つまり噂は本当ってこと?」
「まあ、そうなるね」
「へ、へえ~」
何故か引きつり気味の笑顔を浮かべるシャル。どうかしたんだろうか。
「それより、一つ気になってたんだけどさ」
「ん?」
鈴ちゃんが僕の方を向いて話す。
「あんた、一夏のことなんて呼んでる?」
「一夏」
それは鈴ちゃんの前でもよく言ってるけど……。
「妹は?」
「箒」
「イギリスの代表候補生は?」
「セッシー」
「え?」
シャルがそんな呼び方してたかな? と不思議そうな顔をしているけど、気にするなと目で訴えよう。いやいや、なんで紅くなってるんですか、シャルさん。
「シャルルは?」
「シャルル」
「あたしは?」
「凰さん」
「なんでよ!」
「ええっ!?」
ちょっといきなりどうしたの、鈴ちゃん。
「あんた、あたしに告白したわけじゃない?」
「うん、まあ振られたけど」
「なのになんで他と違って、あたしだけ名前で呼んでないの?」
う、そ、そこを突っ込まれますか……。
「は……」
「は?」
……言わなきゃダメかな?
「(ボソボソ)」
「え、聞こえないんだけど」
ええい、こうなりゃやけだよ!
「恥ずかしいからだよ!」
僕の叫びが騒がしい昼食時の食堂に響き渡る。
「こっちのほうが恥ずかしいわよ!」
おっしゃる通りです! 食堂にいる人たちの視線が一斉に僕に集まって嫌な汗かいちゃったよ。
『でも、それすらも快感にしてしまうのが氷雨ですよね』
けったいなこと言わないでください。そんなことないからね!?
僕に集まっていた好奇の視線も消えたとき、再び鈴ちゃんは僕に向かって話し出す。
「あんた、すでにあれだけ恥ずかしいことしたんだしさ、これ以上恥ずかしがることないでしょ?」
「え? ……うん、まあ、確かにそうかもしれないね」
「どんな告白~。気になるね、でゅっちー」
「え、ぼ、僕は別に……」
のほほんさんに遊ばれてるね、シャル。顔も赤いし、そういうのには疎い初心なのかな? 原作からはあんまりそういう印象受けなかったけど。
「だから、あんたはこれから私のことも名前で呼びなさい」
「えっ!」
「なによ。嫌なわけ?」
嫌なわけないけど、心の準備がその……。
で、でも、鈴ちゃん直々に言われたらそうするよね。ていうか、そうしたかったし。
「り、鈴たん」
あ、緊張しすぎて噛んじゃった。って、あれ? 鈴ちゃんの様子がおかしい。
「さ、さすがにそれはあたしでも引くわ」
「ひさめん、おもしろいね~」
「ひ、氷雨……」
いや、違うの! 噛んじゃっただけなの! だから、そんな非難の目を浴びせないで!
「ち、違うよ! 噛んだ、噛んだだけだから!」
『上手い具合に噛むのですね。つまり潜在的に氷雨は変態』
ちょっとペイルライダーひどくないっ!?
「ワンモア! ギブミーワンモアチャンス!」
「なんで英語なのよ」
深呼吸をする。ひっひっふー、ひっひっふー。よし、あまり落ち着かない。
「鈴ちゃん」
その言葉は声に出すと思ったよりもしっくりくるものだった。
「鈴ちゃん」
ずっと前から口にしていたその単語は、やっぱり耳に慣れた響きで、なんだかそれを本人に伝えられるのがうれしくて……。
「鈴ちゃん……鈴ちゃん。鈴ちゃん! 鈴ちゃん!」
ここから、始まるんだな……って実感できたんだ。
「鈴ちゃああああああああああああああああああああああああん!!!!!!」
「うるさいわよ!!」
「ひさめんはおもしろいね~」
「氷雨……」
また初めの一歩を踏み外したような気もした。
ふっふっふ
書いてやったさ!(死ぬかと思った
課題そっちのけでな!
これから作者は勉強モードに移行します
次回更新はさすがに週末になります