鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
朝。
教室。
昨日のこともあり、僕の周りにはいつものメンツが集まってきている。といっても、箒だけは自分の席に座ったままだ。
昨日の時点で心配は消えたからかな?
「もう大丈夫なの?」
シャルが心配してくれる。机に手をついて、乗り出した体勢で僕に迫るのですごく顔が近い。シャンプーの匂いとかがふわりと鼻をかすめるといつかのベッドインを思い出し自己嫌悪に陥りそうになる。というか、シャルの方も恥ずかしくないのかな? あ、僕なんか眼中にないのか。それなら納得だね。
「うん。大丈夫だよ。一時的な発作みたいなものだったからね」
「いやいや、それで気を失ってたらやばいだろ」
言葉とは裏腹に、一夏は僕が普通に登校したことに安心していつものように笑みを浮かべた表情をしている。
「でも実際大事がなくて本当によかったですわ」
「あれ? デレた?」
「ち、違いますわ! わたくしが勝つ前にいなくなられては困ると思っただけですわ!」
「それ、一生一緒にいないといけないよね?」
「い、いってくれますわね……」
ぴくぴくと頬を引きつらせるセシリア。そもそも、セシリアの機体は一対一で本領を発揮するような機体じゃないから、模擬戦じゃ僕との優劣はつけられないと思うんだけどね。
「よかった。本当に元気そうだ。すごく心配したんだから」
シャルが乗り出していた身を引く。
「ありがとう、シャルル。この通り元気だからね。心配かけてごめん」
「ううん、いいよ。氷雨が元気なら」
何とも優しい。シャルを天使だっていう人たちの気持ちの一端を理解できたかもしれない。
「それにしても、なんだかクラスが騒がしくないか?」
一夏の言葉に周りを見る。ざわざわと騒がしいのはいつものことのように思えるけど、何か焦るような表情をして話している。
「確かにそうかもしれないね」
耳をすましてみると、どうやら学年別トーナメントの話題について話しているらしい。
掻い摘んで内容を示すと、二組に転校生がやってくる。それも中国の代表候補生で専用機を持っているとか。強敵がまた増えて優勝が遠ざかった。私の織斑(orシャルルor篠ノ之)くんがぁぁああ! といった具合だね。
今の段階で専用機持ちが五人もいるのに、さらに増えたらそりゃ騒ぐね。
と、そんな喧騒の中、ガラリと教室の扉が開く音がした。
「一夏、いる?」
そんな元気な声が教室に響き、僕の耳に入ってきた。声の主は見るまでもなく、今話題の鈴ちゃんであると分かった。
「お前、鈴か?」
そう一夏が言うと、いつの間にこっちに来ていたのか、一夏の机の前に陣取った箒が一夏に尋ねる。
「知り合いなのか?」
そう箒が言うと、一夏は頷く。
「ああ。箒や氷雨が引っ越した後に転校してきたんだ。言うなれば、箒や氷雨がファースト幼馴染、で、鈴がセカンド幼馴染ってとこだな」
そのネーミングは苦笑ものだね。
「久しぶりね、一夏。元気してた?」
一夏の紹介が終わり、鈴ちゃんが声をかける。
「ああ、そっちも元気そうで何よりだ」
思わぬ再会に嬉しそうな顔をする一夏。それを少し面白くなさそうに見る箒。こらこら。
「てか、IS学園に居たならもっと早く来てくれれば良かったのに」
「仕方ないじゃん。昨日、こっちに来たんだしさ」
それを聞いて察しのよいセシリアが気付いた。
「ああ。あなたが二組に転入してきた凰鈴音さんですわね」
「そうだけど、なに? なんか噂にでもなってんの」
まあ、間違ってはいないね。
周りに目を向けて、一組のクラスメイトを見渡した鈴ちゃんは、その後、その目を一夏の元に戻す過程で僕と目が合った。その瞬間、鈴ちゃんの顔は少し歪む。嫌なやつを見つけた、と言わんばかりの目に、昨日の鈴ちゃんの拒絶の言葉が思い出され、鼓動が早くなる。バクバクと脈打ち、僕は手足が痺れるような感覚に陥り、背筋を嫌な汗が流れる。
「あんた、昨日の……」
「や、やあ」
辛うじてまともな返答ができた気がする。でも、第一声で謝罪ができなかったのには後悔だけどね。あのね、うまい具合に頭が回らないんだ。思うように会話を組み立てられなかった。
「昨日?」
鈴ちゃんの言葉に目ざとく反応したのはシャルだった。その疑問の言葉はどちらかというと、僕ではなく鈴ちゃんに向けられている。シャルの言葉に鈴ちゃんはどう答えるべきか迷っているようだった。
ああ、また僕のせいで鈴ちゃんが困っている。これ以上彼女に迷惑はかけたくないね。
「き、昨日は総合事務受付までの道を聞かれたんだけど、僕も分からなかったから案内できなかったんだよね。あ、あの後ちゃんと辿りつけた?」
そう言い終えると、鈴ちゃんは少し面食らったような表情を僕に向けた。次には僕の真意を測りかねていることを目で訴えてきた。
そんな鈴ちゃんに僕はぎこちない笑みで返すと、話しを合わせてくれた。
「ま、まあね。あの後、他の子に聞いて無事にたどり着けたわ」
「そっか、それは良かったよ」
鈴ちゃんと言葉をかわすことに、冷や汗をかくほど緊張している自分に苦笑する。
昨日も話した通り、一夏の耳に僕が告白したことを入れさせるのは駄目だ。確かにそうすれば、一夏の性格上、僕に遠慮して鈴ちゃんの好意を受け入れるようなことはしないだろうけど、それは僕にとって好都合ではない。だって、それは卑怯なことだし、鈴ちゃんを傷付ける行為だからね。
と、そんなことを言っていると、始業のチャイムが鳴りだした。
「鈴、早く戻った方がいいぞ」
「は? なんでよ」
鈴ちゃんは一夏に無下にされたと勘違いして少しムッとする。だが、それも背後に迫る影が否定してくれるだろう。
「うちのクラスの担任は……千冬姉だ」
クラスに打撃音が二度響き渡る。一度目は鈴ちゃん、二度目は一夏だ。
「凰、クラスへ戻れ。ホームルームが始まるぞ」
「ち、千冬さん……」
出席簿で叩かれた頭を押さえながら振り向く鈴ちゃんの前にはこのクラスの鬼教官こと、千冬さんがいた。
「な、なんで俺まで?」
「学校では織斑先生だ。何度言えば分かる。凰も次からは気を付けろ」
「は、はい。織斑先生」
そう言って、鈴ちゃんは教室から出ていく。去り際、一夏に「また、後でね」と言っていたが、多分お昼休みの食堂だろう。
そうして鈴ちゃんの姿が見えなくなると、僕の緊張の糸はプツリと切れる。
「先生」
「どうした、篠ノ之。ん、顔色が悪いぞ」
その声に、シャルと箒がこちらを見る。
「ちょっと、保健室で休んでいいですか」
「構わん。もう今日は出なくてもいい。何かあれば、養護教諭に言え」
千冬さんの了解を貰ったので、鞄を持って席を立とうとする。
「氷雨、荷物は俺が持って行ってやるから、早く休めよ」
そう言って僕の手から鞄を奪う。
「そうだよ。昨日から体調が悪いんだし、きちんと休んで早く良くなってね」
「うん。ありがとう二人とも」
千冬さんに頭を下げて、僕は教室を後にした。
「…………」
無言で僕を見送る箒に一抹の不安を覚えなくもなかったけど、今の僕はそれを深く思考する余裕がなかったんだ。
それが、あんなことになるなんて……。
◇ ◇ ◇
教室。
昼休み。
氷雨は結局午前中ずっと教室には戻ってこなかった。それ故に、一夏は有言実行すべく、氷雨の鞄を持ち保健室に向かうと言った。
「僕も行くよ」
シャルも付いて行くという。
「ああ、いいぜ。箒とセシリアはどうする?」
一夏はいつものメンバーに声をかける。セシリアは少し思案したのちに断った。
「大人数で押し掛けても氷雨さんの気が休まらないだけですわ。わたくしは放課後に行くことにします」
「私もいい。少し確認しなければならないことがあるからな」
箒の言う確認の言葉に、一同は疑問符を浮かべるが、それ以上のことを箒が言い出さないので、皆もそれを聞き出そうとはしなかった。
「じゃあ、俺とシャルルの二人で見舞いに行ってくるぜ」
「また、後でね」
そう言って教室から出ていく二人を見送ると箒は立ち上がった。
「どちらに行かれますの?」
セシリアの声に箒は顔だけそちらに向けて、答えを返す。
「二組の、凰鈴音のところだ」
その目を見たセシリアは一人で行かせてはいけないと思った。
おや?ブラコンの様子が……
bbbbbbbbbb
次回はそんな感じ