鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
前回のあらすじ。
僕、篠ノ之氷雨は所謂神様転生とかいうもので異世界に転生してきた転生者だ。異世界というよりはある作品、インフィニットストラトスの世界観を構築した世界であって、いろいろ原作と違う部分がある似ているようで異なった世界なんだけどね。まあ、そんなことはおいといて、ふと思ったんだけど、転生者ってみんな現世に未練なさすぎだよね。神様の間違いで転生させてくれるなら、現世に戻りたいって普通思うからね。え、ブーメラン? 僕自身は高度な政治的判断により現世に未練はなく、このISの世界を選んだよ。……ぶっちゃけ、鈴ちゃんが好きだからです、はい。恋は盲目ってやつ? そんな感じ。
で、そんな僕はISの世界でいろいろしながら生きてきたんだけど、前回やっと、やっっっっっっと、鈴ちゃんに出会うことができたわけですよ、ほんとに。世界の悪意が見えるよ、ってくらいに鈴ちゃんが出てきませんでしたからね。しかも後からそれは前座でしたって言われても納得できるかってね。
まあ、そんなわけで、初めて近くで見たらさ、画面越しに見ていた姿より、数倍、いや、十倍、いや、百とんで千倍可愛かったんですよ。だから……ねえ。おもわずさ、ほら、なんていうの? こ、告白をね、初対面で……
◇ ◇ ◇
してしまったのさ!
「あんた、いきなり何言ってんのよ!」
突然の告白に頬を染め、狼狽える鈴ちゃん。それが可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。
「何笑ってんのよ!」
「ほえ!? い、いや、慌てた姿も可愛いなと思いまして」
「なっ!」
しまった。正直に答える奴があるか! でもさらに赤くなる鈴ちゃんが可愛いから結果オーライ?
「あんた……バカにしてんの?」
わなわなと体を震わせながら怒りを露わにしている鈴ちゃん。全然結果オーライじゃなかった!!
「え、いや。まったくそんな気はないんだけど」
「馬鹿にしていなかったら何なのよ!」
怒鳴り声が響く。その語気の粗さに本気で怒っていることを感じた。
ああ、すごく怒ってらっしゃる。でも、正直そんなに怒らせるようなことした覚えがないのですが。確かに、告白は突然だったかもしれないけれど、それで怒られるのはひどく傷つくよ。
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ」
「はあ? あたしは落ち着いてるわよ。一夏といいあんたといい、なんなの? あたしを馬鹿にして楽しい?」
一夏関係ないじゃーん。ていうか、え? 一夏?
あ、そうか。原作ではここに来る前にアリーナから出てくる一夏を見つけるんだったね。で、その一夏の周りに女の子が居たから、機嫌が悪い、と。それも相まって、鈴ちゃんはこんなに怒っているんだね。
「大丈夫! 一夏と一緒にいたのはただのクラスメイトだから!」
「はあ!? なんでそこで一夏が出てくんのよ!」
少し驚きを顔に出すも、それを指摘されたことに怒っているようにも見える。
「え、だって今一夏って言ったから」
「っ!」
その反応から、それが図星であることは間違いなかったが、だからと言って僕の言ったことが正解というわけでもなかった。
「……あんたに何が分かるって言うのよ」
影をおとし、鈴ちゃんは小さな声で僕に訴える。その声は震えており、その小さな肩から感じる儚さがそのまま声から伝わってきた。
「あんたに何が分かるって言うのよ!」
鈴ちゃんの叫びに込められた感情。怒り、哀しみ、どちらもが相混ざりあった言葉。僕はどうして鈴ちゃんにこんな言葉を言わせるんだ。
「分かったような口、利かないでよ!」
鈴ちゃんの怒りの矛先が僕に突き刺さる。それは明確な敵意を僕に示しており、それを受け取った僕の体は震えた。
僕を嫌悪の対象として見ている彼女を目の当たりにして、僕は思い知らされる。この鈴ちゃんはただのキャラクターではないのだ。意思を持っている。脚本に踊らされているだけの存在じゃなかった。こんな風にずかずかと踏みいってしまえば、拒絶される。なんでだろう。なんでこんな当たり前の、人との距離の取り方を今まで忘れていたんだろう。
思えば今までうまくいきすぎて、距離をとる必要がなくて……。
「ほんと嫌い」
「え」
泣きそうな顔で睨み付け、鈴ちゃんは少し声を震わせる。僕はこんなに彼女を追いつめてしまったのか。
恋愛ってこんなに……
「あんたなんて、大嫌い!」
難しいものだったんだね。
◇ ◇ ◇
夕食時、食堂。
夕食時の食堂は賑わい、騒がしく、楽しそうに笑い合う声が飛び交い、活気に溢れた場所となっている。ある者は純粋にご飯を食べに、ある者は友人たちと集まり雑談に花を、パーっと、パーっと晴れやかに、咲かせているのかもしれない。
しかし、そんな賑わいを見せる食堂の一角、あるテーブルでは、花は花でも彼岸花が咲いていた。
「氷雨さんはどうなさったのですか?」
「俺が聞きたいよ」
セシリアが氷雨の沈みようを気にかけ、一夏に問いかけるも、その実情を知っているものは当人だけなので、一夏も皆目見当がつかない状態なので、答えることができなかった。
そもそも、氷雨はあまり人に弱ったところを見せないので、一夏にとってこんな氷雨を見るのははじめての経験だった。それ故に、その原因がなんであるのかを検討することも儘ならない。
「どうしたんだよ、氷雨」
一夏たちからすれば、放課後の特訓に来なかったかと思えば、次に会ったときにはこの落ち込みようである。なにがなんだかわからないというのが、皆の感想である。分かることと言えば、時折氷雨から聞こえてくる呻き声くらいのものだった。
「僕らが特訓してる間に何があったんだろう?」
「氷雨のことだ。なにか考えもなくしたことに後悔してるとかそんなところだろう」
妹の的確な解答に氷雨はピクリと体を震わせる。そうした後に、また過去を嘆くかのように呻き声をあげ始める。
「……当たってるみたいですわね」
「何したんだろうね」
セシリアはやれやれと呆れた様な素振りをし、シャルは心配そうに氷雨を伺う。当の氷雨はなんとか頭を起こし、皆に心配かけまいと声を出そうとするが、真っ赤に腫れた目が皆の目に入り、氷雨が口を開ける前にシャルと箒が声をあげた。
「どうしたの!?」
「何があった、氷雨!!」
その声に氷雨は口を少し開けたまま、どう説明したものかと思案したのち、再び顔を伏せた。
「……重症っぽいな」
「ですわね。氷雨さんがこんな風になる原因……想像もつきませんわ」
皆が知る氷雨という人物はいつも謎の余裕(原作知識)を見せ、笑っている。そんな氷雨がこのようになる大きな自爆を一体だれが想像出来ようか。出来たらニュータイプですよ。
「ここまで落ち込むとなると、失恋とかでしょうか」
セシリーまじニュータイプ。さすがファンネル使っているだけはありますね。どうでもいいですが、ファンネルというのは円錐という意味らしいですよ。キュベレイのファンネルはその物の形ですよね。フィンファンネル! ……え、フィン? って感じになっちゃいますね。
図星であるが、しかし、氷雨はその言葉に反応を見せなかった。
「違うみたいだね」
氷雨が反応しなかったことにホッとするシャル。セシリアも半ば冗談で言ったので、さほど驚きもせずに、また話し出す。
「こうなってくると、本人に直接聞くのが一番ですわ」
「え、いや、でもなあ……」
氷雨に悪いような気がして乗り気ではない一夏。
「だが、このまま放っておくわけにもいかんだろ」
箒にそう言われ、確かにそうだと思いだす。大体、氷雨だし、遠慮はいらないだろうと、一夏はそう結論を出した。氷雨の日頃の行いの悪さがここで祟ってきたわけだ。しかし、本人に聞いたところで答えられる解ではないと思うが。
「氷雨、何があったの?」
シャルが優しく声をかけるも、案の定返事はない。
「おい、氷雨。皆が心配しているだろう。何とかいったらどうだ」
「お、おい、箒」
心配のあまり、少し乱暴な口調になるも、やはり反応はない。ピクリとも反応していない。
それを不信に思った一夏が箒を止める。
「なんか様子がおかしくないか?」
「? おかしいのは最初からだろ」
「まあ、それもそうですが。……言われてみれば、ピクリとも動かなくなりましたわね」
箒はまさかと思い、無理やり氷雨の体を起こす。するとそこには白目をむいた氷雨の姿があった。
そのホラーっ振りに一夏、セシリア、シャルは悲鳴をあげそうなくらい驚くが、箒だけはすぐに気絶していると認識すると、氷雨の手を自身の肩に回し、担ぎ上げる。
「保健室に連れて行ってくる。悪いが食器を片付けておいてくれ」
「あ、ああ」
呆気にとられているうちに箒は氷雨を連れ、食堂から消えていった。
正気に戻り、氷雨を心配する三人。
「大丈夫かな……」
もう氷雨が見えなくなった出口を見つめるシャルであった。
え、巻き返すと思いましたか?
残念、二段堕ちでした!
正直、恋愛が難しいのではなく、ただのコミュ障なだけの気もしますが