鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

26 / 90
俺、ツインテールに出会います!
一話 バッドファーストコンタクト


 

 放課後。

 

 今日も特訓をするってみんなが言っていたけど、僕は少し遅れていくことにした。

 

『どうしたんですか、氷雨』

 

「いやね。突然ドクペが飲みたくなることってない?」

 

『理解不能です』

 

 前飲んでから、また飲みたくなったんだよね。好きな人ならわかると思うけど、あれには中毒性があるよ。味はシップだけどね。なぜかまた飲みたくなるんだよね~。

 

「でも、こっちの自販機にしかないっていうのがつらいところだね」

 

『検索したところ、ドクペというものは高笑いして飲むものだそうです』

 

「なるほどね。フゥーハハハ!!」

 

 まだ買ってないけどね。

 

 財布から百円硬貨を取り出す。自販機の挿入口に持っていこうとすると、横からカツンカツンと、足音がする。

 

 何気なくそちらに顔を向ける。

 

 僕は足音の主を視界に収め、それが誰であるかを認識した瞬間、手に込めていた力が抜け、100円硬貨は重力に従い自由落下を始めた。

 

 そこに立っているのは紛れもなく、見間違うはずもなく、唯一にして絶対のヒロインである凰鈴音、通称鈴ちゃん、であった。

 

 その夢にまで見た顔に僕は見とれ、しばし放心していたが、我に返ると、僕は鈴ちゃんの方へ駆け出していた。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 ようやく手続が終わり、中国の代表候補生である凰鈴音はIS学園にたどり着いた。手にはボストンバッグ一つのみ。最低限の必需品を持ち、単身外国へ乗り込む思い切りの良さが彼女の長所だ。

 

 そんな彼女は出迎えの一つもないIS学園に少し不満を抱きつつも、校内をずんずん進んでいく。

 

「(一夏、元気かな)」

 

 代表候補生になった理由の一つに初恋の相手、織斑一夏との再会というものが含まれている。代表候補生になって、IS学園に入学すればまた会いに行ける、と。

 

 うれしい誤算であるのは彼もIS学園に入学したということだ。TVで彼の姿を見た時の彼女の驚き様は容易く目に浮かぶだろう。

 

「(さみしがってるかな? うん、そうに違いないわよね!)」

 

 IS学園というのは女子ばかり故に、一夏は肩身の狭い思いをしているだろうと考えている。もう一人の男性操縦者の存在は眼中にないようだ。

 

「(あー、それにしても無駄に広いわね、この学園。どこよ、総合事務受付って)」

 

 くしゃくしゃの紙切れで確認するも、肝心の場所は分からずである。場所を確認せず、校内を歩き出すこの行動力も彼女の魅力である。この場合は裏目に出ているが、それは些細なことである。

 

 校内を歩き回っていると、懐かしい声が聞こえてきた。

 

「一夏?」

 

 不意を突かれたその声に彼女はピクリと体を震わせる。 声はIS訓練施設から聞こえてくる。その声が一夏であることはIS学園という特異な環境が確信させてくれる。女子しかいないはずの学園で男の声が聞こえれば、鈴にとってそれは一夏のものなのである。氷雨? 誰それ。

 

 彼女はなんだかうれしくなって走り出す。一番会いたかった人物がすぐ近くにいる。それだけで鼓動は早くなり、弾む心を抑えることができなくなった。

 

 アリーナを覗き、声をかけようと口を開く。

 

 しかし、目にした光景に言葉は出ず、頭は急に冷めたものになった。

 

「(何、あれ)」

 

 そこにいたのは確かに一夏であった。だが、その周りを囲むように女子が三人。実際には、そのうちの一人は男のつもりのシャルであるが、遠目では判別できず、先入観により女子にも見える。

 

 その中で楽しそうにしている一夏を見て、彼女は声をかけるのを止めた。

 

 ドスドスと、自身の中に生まれた苛立ちの捌け口を探すように床を踏みつける。そうして感情を発散していると、しだいにその怒りも冷めて行き、対の感情である寂しさが込み上げてきた。

 

「(何よ、あいつ。あたしがいなくても全然寂しそうじゃないし……。あたしのことなんて、忘れてるのかな)」

 

 一夏と仲が良かった自信はあった。自分が寂しい思いをしているのだから、あいつも寂しがっているだろう。と、そんな風に感情を共有していると思っていた。それが繋がりのようにも感じられ、つらいISの勉強も頑張ることができた。しかし、現実はどうだろう。複数の女子に囲まれ楽しそう(鈴の主観であり、一夏自身はどうであるかは知らない)にしていた。そこに自分の居場所は、まだあるだろうか。気持ちが滅入っている時には、思考が悪い方へ悪い方へと向かってしまう。

 

「(だめだめ。変なことばっか考えちゃう)」

 

 彼女は自身の頬を叩き、気持ちを切り替えようとする。

 

 そんな時、チャリンと硬貨が落ちる音が響いた。人がいるならちょうどいい。総合事務受付までの道を聞こう。

 

 そう思い、彼女は音のする方へ体を向けた。そこにはこちらにかけてくる一人の男の姿があった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

「な、なによ、あんた」

 

 彼女、鈴ちゃんのもとへ駆け寄ると、鈴ちゃんは驚いた表情というか、困惑したような顔をし、僕を見つめる。鈴ちゃんが僕を見て、僕を認識してくれている。それだけでテンションが上がるよね! やばい、心拍数がやばい。口から心臓が飛び出しそうって言葉を初めて体感しているよ。

 

「凰鈴音さんですよね!」

 

「そうだけど?」

 

 この十年、十年だよ? そんな長い間抑えられていた感情、常に忘れたことがない恋情が溢れだしてくる。もう、抑えることは……。

 

『落ち着きましょう、氷雨』

 

「? 誰かいるの?」

 

 ペイルライダーの静止で止まるようなら、転生者なんてしてないよね!

 

「好きです」

 

「は?」

 

「ずっと前から大好きでした。付き合ってください!」

 

『氷雨……』

 

 ……あれ? ちょっと待って、今回のこれがファーストコンタクトだよね。あ、やべ。やっちゃった。

 

 そう思った時にはもう遅いんだよね。後悔先に立たずってね。

 

「はあ!?」

 




あ、この作品のヒロインって鈴ちゃんだったんだ


て、思った人もいるかもしれませんけどね!
タイトル通り、鈴ちゃんがメインヒロインですよ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。