鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
ラウラが見えなくなる頃には僕の周りにみんなが集まっていた。
「凄かったね! 僕、ビックリしちゃったよ!」
「流石氷雨って感じだったな」
「ま、まあ、あれくらいなら、わたくしでもできますわよ?」
賛辞の言葉が気持ちいい。
「ところで、途中氷雨の動きが止まったけど、あれはなんだったんだ?」
「ああ、あれね」
一夏が疑問に思っているのはAICのことだろう。
「突然身体が動かせなくなったんだよね。なんか、力を入れても同じ大きさの力で抑え込まれてる感じ。ラウラは停止結界とか言ってたけど」
「あ、それは多分AICだよ。シュバルツェア・レーゲンの第三世代兵器。アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略で、慣性停止能力のことだよ」
「ああ、聞いたことありますわ。でも、それはまだ試作段階のはずでは?」
「その辺は操縦者の力量もあるんだろうね。システムさえ開発できていれば、あとは操縦者の精神力がものを言うのが第三世代兵器だし」
実際、ラウラの集中力は目を見張るものがあるしね。両目使うようになったらさらに強くなったりするのかな?
「…………」
そんな中、一言も発しないで、怖い顔をしているのが一人いた。
箒だね。なんで僕は睨まれているんでしょうか……。
「箒、そんな熱い視線で見つめられるとお兄ちゃんといえど照れちゃうよ?」
「お兄ちゃんって……ぷふっ」
シャルが僕の言い回しに噴き出す。失礼なシャルだ。お兄ちゃんはいくつになってもお兄ちゃんだろうに。
「氷雨、後で剣道場に来てくれないか?」
「え、何? 告白? い、いや、確かに僕たちは血が繋がっていないかもしれないけど、しかし、この十年以上の生活で僕らは本物の兄妹の様になったと僕は思って、しかし……」
「氷雨」
箒が僕の軽口を遮る。その目は真剣そのものだった。
これ以上茶化すのは、それこそ兄としてどうかと思うね。
「……分かった。先に行っててね。ちょっと、寮によってから行くから」
「うむ」
そう言って、箒もピットに消えていった。
そんな箒の様子に周りは不思議そうな顔をする。
「どうしたんだ、箒のやつ。さっきまでは普通だったのに」
「また氷雨さんが何かしたんではありません?」
まあ、僕が何かしたんだろうね。じゃないと、あんな目を僕に向けないでしょ。
「でも、篠ノ之さん、氷雨がボーデヴィッヒさんと戦うまでは普通だったよね。氷雨が何かする暇はないんじゃ……」
あ~、何となく分かったかも。
「約束したし、僕は先に戻るね。シャルルにセシリアは一夏のことよろしく~」
「うん」
「任されましたわ」
そうして、僕もピットから退出した。
◇ ◇ ◇
剣道場。
付いた時、箒は袴姿に防具をつけ、面を膝の前に置き、正座の状態で瞑想をしていた。準備は万端ってことだね。
「ごめんね。少し遅かったかな?」
「いや、そんなことはない。ちょうど、私も準備を終えたところだ」
僕も袴に防具をつけた姿。脇に面と竹刀を持っている。こちらも準備はできていた。
「じゃあ、始めようか」
「ああ」
面タオルを頭に巻き、面を付ける。竹刀を左の手で握ると僕らは向かい合った。
竹刀を抜き、蹲踞姿勢を取る。お互いがお互いの目を見据える。目を離さず、立ち上がると、どちらともなく動きだした。
「めえぇえん!!」
「こてぇえ!!」
箒のまっすぐな面に、僕は小手を合わせる。相手の後手を取るのが僕の剣だ。
「そうだ! それが氷雨の剣のはずだっ!! なのに……」
怒りを吐き出すように箒の突きが来る。竹刀を横に払い、箒にぶつかり鍔ぜり合う。
「なぜ本気を出さなかった!!」
それはラウラとの戦いについてだろう。僕にも思惑があったとはいえ、箒の目から見れば、それはただの手加減、遊んでいるようにしか見えなかった……ということだろう。
箒は力を入れて僕を押し、距離を取ろうとする。その押しにのるように後ろに下がりつつ、面を打つ。
「私は……いつも見てきた。氷雨の剣を、氷雨が千冬さんに打ちこんでいたあの剣を」
愚直ではあるが、鋭い面。それを僕は迎え突きで応じる。
「だが、最近の氷雨の剣はなんだっ! 相手の対応を見るような……!」
箒の剣は僕に届かない。
「なぜ本気を出してくれない」
それはどの戦いに対してだろうか。
クラス代表決定戦?
放課後の模擬戦?
さっきのラウラ戦?
全部だろうね。箒は器用じゃないから、一つに絞って感情を表すなんてできないよね。
「私の兄は……あの程度じゃないんだ」
自分の尊敬する兄。それが周りにきちんと評価されていないことに対するモヤモヤ。自惚れかもしれないけど、それが今の箒の心情なんじゃないだろうか。
「まったく、箒はお兄ちゃんが大好きなんだね」
「そんなんじゃない!」
兄が過小評価されていることに苛立ちを感じる妹。世間ではそれをブラコンと呼ぶ。
「仕方ないなあ。ちょっと待ってね」
壁際においていた竹刀袋を取る中にあるのは二本の少し短い竹刀。
「本気……見せてあげるから」
それを見て、箒は嬉しそうに竹刀を構えなおした。
◇ ◇ ◇
中学時代。
篠ノ之箒という少女は力に溺れていた。
それは家族から離され、独り異郷の地で生活する寂しさを紛らわすため、また自身の姉に対する嫌悪を吐き出すため。
そんな場所を箒は剣道に求めていたのだった。
溺れた力はあまりに強く、誰かにそれを諌めてもらうことすらかなわず、徐々に力は歪んでいっていた。
そんな箒の支え、もといストッパーになっていたのは、兄である氷雨であった。
毎晩のような通話。それを一切無下にせず、話を聞き、時に自分の話をして箒の寂しさを緩和させていた。
「県大会も優勝したぞ」
『おお! すごいね、箒。僕も勝ったけど、全国に行かないと箒には会えなさそうだね』
箒と氷雨は住む地方も違う。故に地方大会ではその姿を見ることはできない。
「ああ。だが、県大会程度では相手になるものがいないな。早く、氷雨と対戦したいものだ」
『ん~』
氷雨は少し悩ましげな声を出す。
「なんだ?」
『箒はその子たちが弱いから楽しくないの?』
「楽しくないとは言っていない。剣を振ることは好きだし、勝利というものもうれしく思う」
『そっか』
「だがやはり、強い相手と戦っているときが一番楽しいだろう?」
今の自分は弱いものいじめのようだと感じることもある。
『箒、剣は己を映すっていつも言ってたよね』
「ああ。そうだが?」
『実はね、県大会の試合、映像で見たんだ』
政府の人に頼んで撮ってもらったんだ、と氷雨は付け加える。
『箒の剣、綺麗だったね。相手に反撃の隙を一切与えない』
氷雨の誉め言葉を箒は素直に嬉しいと感じた。
『でも面を取った箒の顔、自分では気づいてないかも知れないけど……とっても醜かったよ』
「なっ!」
突然言われた言葉に箒は驚く。何故剣道ではなく、そこを否定されたのかと。
『あれは相手を見下し、自分の鬱憤を吐き出してスッキリした顔だよね』
箒の口からは否定の言葉が出なかった。
『今の自分の剣……しっかり考えてみたほうがいいよ?』
「……」
箒は黙る。県大会を優勝した時の自分の剣はどうだっただろうかと。
氷雨の言う通り、弱者を叩き潰した自分の剣は自分の醜さを露わしていたのだろう。
そうして変わった。
変わった後も箒は寂しさと姉への嫌悪を抱き続けてはいた。しかし、剣道の時だけは、真摯に相手と向き合うようになった。
そうすることで箒は自分の剣もさらに成長していくのを感じた。
だが、それでも届かなかった氷雨の剣。氷雨はそれを出し惜しみするかのように相手に手加減をする。
「(そんなこと、私は許せない)」
自身の憧れはいつも輝いていてほしいのだ。
◇ ◇ ◇
肩で息する箒。息を乱さず、構えて、箒を見据える僕。向かい合い、構えを解き、礼をする。
面を取った箒は汗だくの笑顔をこちらに向ける。蛍光灯の光にキラキラと光る雫は宝石と形容するに値する気がした。だが、同時に悔しいのだろうか。宝石は瞳からも零れ出す。
僕は何も言わずに箒の頭を撫でた。くしゃくしゃと撫でるも、成すがままにされる箒の髪はしっとり……いや、びちゃびちゃに湿っている。
「氷雨……」
「なに?」
自然に優しい声が出た。
「くさい」
「お互い様だよ」
小手はこまめに洗いましょうね。
剣道は臭い(確信
女子も男子も関係なく臭いのが剣道です
しっかりファブリーズしようね!
この時点で書き溜めが0
五時投稿投稿……間に合わないかも;;
五時に更新がなければ「筆おせーな」と罵っておいてください(笑)