鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
オリ主の原作知識は作者のそれと共有していますが、作者がウィキで調べたことは含めません
一話 始まりは小学生
転生後、一年が経過した。
結論からいえば、一夏と仲良くなるのは容易かった。
一夏と仲良くなる方法はたった一つ。誠実に接すること、それだけだった。
一夏は正義感が強いからね。僕が何か悪いことをすれば怒るし、そうして僕を悪い奴だと認識すれば絶対に友達なんかにはなれない。だから僕は真面目に接してきた。茶化すことはあったけど、絶対に悪意だけは抱かず、間違ったことを進んで行わなければ、一夏は心を開いてくれたのだった。
だから、一夏とは仲良くなれたんだけど、問題は箒なんだよね。
「ほーうーき!」
「き、気易く名前で呼ぶなっ!」
「ほーうーって、うわっ、タイム! 竹刀は駄目! 頭が凹むから! 熟れたトマトみたいに潰れちゃうからっ!」
バキッ!
小学生の腕力とはいえ、そこそこに重さのある竹刀で殴られたらそりゃもうひとたまりもないですよ。
てな感じで、一年生の間はボコボコにされましたよ。まあ、僕のアプローチが悪かった可能性も否めないんだけどね。
そんな状況をどう打開すればいいかのか、一夏に聞いてみたところ……。
「距離感が大事なんじゃないか?」
との回答を得たよ。
「そんな常識的な回答は聞いてないし、十年後の一夏にそっくりそのまま返したいよ」
「なんだよ、十年後って」
ドットの荒いボンバーマンで対戦をしながら相談する。
「箒の事が好きなのか?」
「はっ」
鼻で笑う。ISヒロイン中の僕的ランキング最下位のモップが好きだって?
「笑わせてくれるね」
「なんだか知らないけど、敵を増やしてる気がするぞ」
「こまかいことはいいんだよ!」
ここで一夏痛恨のミス。自分の爆弾で自分を追い詰めてしまう。
「やっちまった」
「ふはは、僕の勝ちだね!」
一夏に敗北という烙印を押した後、時計を見ると門限近い時間になっていたので、僕は一夏に別れを告げ、帰路についた。
◇ ◇ ◇
「ただいまー」
広い玄関で靴を脱ぎ、揃えて端に寄せる。この辺、きちんとしないと父さんに怒られちゃうからね。
「あ、おかえりー。おそいよー。この束さんが作った夕飯が冷めちゃうところだったよ」
ああ、うん。分かる。ツッコミたいところがあるよね。でも安心して。僕も最初はそんな気持ちだったから。
要約すると、僕は数年前、篠ノ之家に養子としてきたらしい。らしいっていうのは、僕の小学校以前の記憶は知識としてしか残っていないからだ。剣の名門である篠ノ之道場。その後を継ぐ男子が必要だったということになっている。
なんともご都合展開で、僕は大助かり。しかも、その数年の間に基礎的な剣術を身につけていて、かつ身体能力もそこそこにあるという、これもう特典と言っても過言じゃないよね、と言いたくなるような感じになっている。
神様ありがとう。
そうは言ってもなかなか僕に慣れてくれないのが箒。人見知りということもあるようだけど、過去の数年では解決できていない所を見ると、仲良くなるのが難しい相手なんだなあ、と思う。
「どうすればいいと思う、束姉?」
食後、リビングに束に聞く。あ、この呼び方強要されています。これやめると物凄く不機嫌になるので不本意ながらそう呼ぶしかないんだよね。
「箒ちゃんは人見知りだからね。何かきっかけがあれば、ひーくんの良さに気づいて仲良くなれるよ」
ひーくんって言うのは僕のことね。篠ノ之氷雨。なんともかっこいい名前にしてくれて僕は嬉しいよ。決して、DQNネームだなんて思ってないよ? 命名してくれた柳韻さんに感謝しないとね(血涙
「きっかけかぁ……。剣道大会優勝とかじゃ駄目かな?」
「うーん、それはあんまり効果ないと束さんは思うな。憧れの対象にはなるだろうけど、ひーくんが望んでるのはそういうのじゃないでしょ?」
「まあね」
ん~、となると、それ以外のきっかけが必要ってことになるけど……。そういえば、一夏と箒はどうやって仲良くなったんだろう? 四年生の時に引っ越すことになって離れ離れになるわけだから、その時までには仲良くなっているはずだけど。
……というより、別に無理に仲良くなる必要はないのかな? 予期せぬ展開から束さんと親密になるっていうノルマはもう達成しちゃってるわけだし、これで鈴ちゃんルート確定だね! え、気が早いって? そんなー。
「ひーくんなら箒ちゃんと絶対仲良くなれるよ。束さんが保証してあげよう」
「それは心強いよ、束姉」
まあ、成るように成るでしょ。
◇ ◇ ◇
そんなこともなく二年生になりました。え、ほんとに? まさか、このまま箒との絡みなしでいっちゃうってことはないよね? 嫌だよ? 学園で兄妹なのにぎこちない関係とか。というより、人見知り過ぎませんか、箒さん!
そんな風に悩んでいると、誰かの足音が近づいてきて僕の近くで止まった。伏せていた顔を上げると、そこには見慣れたショタ一夏の姿があった。
「氷雨、帰ろうぜ」
「おっけー、一夏。ちょっと待ってて」
懐かしのランドセルに教科書を詰め込み、席を立つ。箒は掃除当番らしく、まだ帰ろうとしていなかった。
「お待たせ。今日も一夏のうちで遊ぶ?」
「いいぜ。今日こそ氷雨のフォックスを倒してやる」
最近は二人でスマブラをすることが多い。たまに千冬さんと束さんも一緒にやることもあるんだけど、そうなると二人がフレーム単位の白熱した戦いを繰り広げる中、残機を失った僕らが後ろで観戦するということになる。
今日もそんな風になるのかな、と思いつつ廊下を歩いているとなんとなく物足りないランドセルに気付いた。いつもならもう少しカチャカチャとうるさい気がしたんだけど……。
そういえば給食袋を机の横にかけたままだった。それがないから物足りなかったんだね。
「あ、一夏。忘れ物しちゃった」
「んじゃ、戻るか」
待っててもいいのに付いてくる。
「いいよ。忠犬ハチ公の如くここで待っててよ」
「それ、氷雨帰ってこないじゃんか」
というわけで二人して教室に戻ると、数人の男子が箒を囲んでいた。
聞こえてくる声は『男女』だとか『暴力女』だとか。なんとも的を射た暴言の数々。原作を読んでいるときは僕もそう思ってたさ。
でもなんだろうね、このムカムカ。自分の妹がこう馬鹿にされているのを見ると……。
「いってぇえ!」
「ドナルドは興奮すると、つい殺っちゃうんだ」
にこやかな笑みをぶん殴った男子に見せる。こう見えて、篠ノ之道場で鍛えられてますから。強いんだよね、同年代の中では。
「お前ら、恥ずかしくないのかよ! 寄って集って女の子いじめてさ!」
そんなことを言いつつ一夏も参戦する。とはいえ、そんな正論が小学生男子に通じるのかと言われると、通じないと思うね。だって、彼ら怒った顔してるもん。自分のしていることの邪魔をされると癇癪を起すのが子供というものだからね。
「な、なんだよ。お前ら、この暴力女の味方すんのかよ!」
「家族なんだから当たり前でしょ?」
拳を握り、構える。
「イレギュラーなんだよ。やりすぎたんだ、お前はな!」
「?」
不思議そうないじめっ子の顔にダイレクトアタック。
「ふはは。粉砕、玉砕、大喝さい!」
「俺も加勢するぞ!」
こうして、俺と一夏は数の不利を物ともせず、勝利したのだった。
◇ ◇ ◇
いいか、僕は面倒事が嫌いなんだ。
だが、断る!
といった感じで僕と一夏とその他の少年たちは職員室の隣の会議室で教師から説教をくらっている。これは……面倒なことに……なった……。
別に悪いことしてないのにね。まあ、説教の内容なんてさ、長いだけで中身のないものだったよ。
殴ったら痛いでしょ? だからやっちゃダメ。
何その短絡的思考。でも、見過ごしたら見過ごしたで『それでも男ですか! 軟弱者!』ってビンタされそうなんですよね。二律背反?
その後、先生の連絡を受けて迎えに来てくれた束さんがいじめっ子たちをめちゃくちゃ睨んでらしたんですが、後でちょっかいとかかけないか心配です。明日も登校できたらいいね、いじめっ子たち……。
そんな夕刻の帰り道、不意に箒が僕の服の袖を引いた。
以前の僕なら『やめてよね。本気で喧嘩したら、箒が僕にかなうはずないだろ!』って、腕を固める所だけど……。うん、やっぱ無理。束さんに殺されるね、それ。
「どうしたの?」
引かれた方に振りかえる。そこには少し俯き加減の箒。
僕と視線を合わせるのはまだ恥ずかしいのか、目は合わせなかったが、確かに僕の方を向いていた。
そうして箒から紡がれた言葉は簡単な言葉だけど、すごくうれしいものだった。
「……ありがとう」
あ、分かった。きっかけってこれだ。そういえばそんなこと原作に書いてたかもしれないけど、忘れてたよ。
「いいさ。だって、僕は箒のお兄ちゃんだからね」
え、茶化さないのかって? 隣に束さんがいるのにそんなことするわけないじゃん。
なんとなく……何となくだけどさ。こういう風に外から見るんじゃなくて、面と向かって接してるとさ、箒の株が上がってる自分がいるんだよね。暴力的な一面もあるかもしれないけどさ、それでもここに居る箒は少なくとも普通の女の子だったよ。
手を握ると照れた顔で僕に笑いかける。その笑顔はやっぱり小学生の女の子のもので、剣道場で竹刀を振るしかめっ面だけが箒じゃないことを認識できた。
綺麗な夕焼けはまさに箒のイメージカラーだね。
そんな感じの一日だった。
ロリ箒……これははかどるな!
何がとは言わないけどね。
箒は竹刀さえ持たなければなかなかに好きなキャラですよ。
ISラジオで箒は好きになりました。え、それは日笠じゃないかって?
……(目を逸らす
次話の投稿は五時くらいでしょうかね