鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
寝静まった夜。
僕は立ち上がり一度トイレに入る。別に出るものなんてないけど、こういう振りが必要なのと、ペイルライダーとの会話を聞かれないためだ。
まあ、熟睡しているならその心配はないんだけどね。
「作戦会議を開くよ」
『……了解しました』
「寝てた?」
『寝てません』
「熟睡だった?」
『熟睡でした』
「ごめんね」
『問題ありません』
ISが寝るのかって? 一応スリープモード中にそれに近い状態になるらしい。
「今からシャルに接触する」
『夜這いですか』
「違う。……いや、違わない」
でもえろいことするわけじゃないよ。あ、そういえばエロイコってイタリアの言葉で英雄って意味らしいね。英雄、色を好むとはまさにこのことだね。
「じゃあ、任せたよ、ペイルライダー」
『了解しました』
決意とともに、僕はトイレを出た。
◇ ◇ ◇
深夜。
部屋の中は静かだ。だが、環境の変わったばかりのシャルはあまり深い眠りにつくことができていなかった。
故に、ちょっとした音や光の刺激で目が覚めてしまう。
「(ん……。トイレかな)」
うっすらと目を開けると、トイレから出る氷雨の影が見えた。
その影はこちら側に歩いてくる。
簡易ベッドは位置的に一番窓際にある。なので、氷雨の影はシャルの視界を通り過ぎ、後ろに回る。
「(…………)」
うとうとしてきたシャルは瞼が落ちて、視界が狭くなる。
「(……。っ!?)」
そんな微睡みに向かっていたシャルの意識は一気に引き戻される。
「(えっ! ええっ!)」
何に驚いているのかというと、自身の布団の中に何者かが入ってきたからである。
首だけ回し、後ろを確認すると、背中にぴったり引っ付くように誰かがこちらを向いて眠っていた。
「(ひ、氷雨!?)」
当たり前のごとく氷雨であった。彼は気持ちよさそうな寝顔を浮かべている。
「(寝ぼけてるのかな……。ど、どうしよう)」
もともとこのベッドは氷雨が使っていた。だから、寝ぼけてもともとのベッドに入ってしまったのだろう。シャルはそう考えた。
しかし、この感じ。背中から伝わる熱や、首筋をくすぐる吐息。シャルにとっては耐えられる空間ではない。
「(か、簡易ベッドに移動しよう)」
そう思って、体を浮かそうとしたとき、体を掴まれる。
いや、正確に言うと、後ろから手を回され、抱きしめられているのだ。
「(ええぇぇぇ!!)」
叫びそうになったのを抑えられたのは、驚きすぎて声が出なかったからだ。解く為にもぞもぞと動くも、バカの割に体は鍛えられている氷雨の腕は微動だにしなかった。
それでも抜けようと動くと、氷雨の腕が下のほうにずれだす。
「(ひゃう)」
そこまでになると、さすがにシャルも抜けるのをあきらめる。これ以上ずれると、本当にまずい。R18タグ付けなきゃいけなくなっちゃうからね。
「(……氷雨って、意外と鍛えてるんだなぁ。見た目じゃ分からなかったよ)」
腕の堅さを感じつつ、シャルは少し頬を染める。
「(うう、今日は眠れなさそうだなぁ……)」
シャルの眠れない夜は続くようだ。
「すう……すう……」
なんてこともなく、睡魔はシャルをしっかり眠りに引きずり込んだ。
◇ ◇ ◇
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もうね、罪悪感で胸が押しつぶされそうなんだけど……。
さすがにね、セクハラのキツさを味わった後の僕は、もう嬉々としてシャルにセクハラをすることはできないよ……。
女の子に触れることが、こんなに苦しいことだったなんて……。
『システム削除、約二十パーセント』
うう、こんな作戦決行しなきゃよかったよ。
そんな後悔を抱きながら、僕は温もりを抱き続けるしかなかったのだった。
◇ ◇ ◇
朝。
昨晩、シャルはしっかり眠れたらしい。結構神経図太いんだね。そりゃ、単身IS学園に男装で乗り込むくらいだからね。それくらいの度胸はあるんだろう。
「も、もういいから。僕は大丈夫だから」
え~と、今どういう状況かと言いますと、僕がシャルの前で土下座をしている。
「氷雨は大げさだな。男同士なんだからそこまで謝るものじゃないだろ」
「貴女には、その質問を行う権限がありません」
一夏には僕の心情もシャルの心情も絶対分からないだろうね。だって、シャルが女子だって気づいてないもんね。
「一夏の言うとおりだよ。ね、僕も怒ってないし、氷雨は僕のことを想ってベッドを交換してくれたんだし。もう顔を上げてよ」
うわあ、優しい言葉をかけないでええ。僕は最低な男なんですうう。
「もう……。じゃあ、こうしようよ。放課後の特訓の時に僕の練習も見てよ。それで、許すってことでどうかな?」
「え、そんなことでいいの?」
もう、データ転送の心配はないし、それくらいのことならやるつもりだったけど。
「うん。それに、篠ノ之博士の弟に教えてもらえるって、すごいことだと思うよ?」
「そうか、考えてみたら氷雨に教えてもらえるって、結構贅沢だよな」
「いやいや。束姉の弟ってだけで何もないからね」
ISのことも独学だったし。主にペイルライダーに教えてもらっていただけだけどね。
「でも、僕に教えられることなら何でも教えるよ」
「ほんとに? ありがとう、氷雨」
シャルが元気そうでよかったよ。
◇ ◇ ◇
休み時間。
「氷雨~」
休み時間ごとにシャルが僕らのところにやってくる。なんというか、懐かれた? そんなん感じがする。あれ、そんなイベント起こしたっけ?
「さっきの授業分かった?」
「僕は楽勝だったけど……」
言いよどみつつ隣の席を見る。そこにいる、頭から湯気が出ていそうな男、一夏の肩をたたく。
「ほら、休み時間だよ」
「う、慣性をなくして、推進翼で小型翼を任意に三次元動勢……」
あ、だめだこれ。完全に混乱してる。
「仕方ないよ。だって一夏はISの勉強を始めたばかりだもん」
「まあね。一夏の場合、受験の後だから、三月くらいからになるのかな?」
電話帳のような冊子は捨てたらしいから、実際は四月からになるけどね。
「いやー、未だにさっぱりなんだよな。感覚は掴めるんだが、理論にされると……」
「拒絶反応でちゃうよね」
僕も知識を詰めるときは蒼騎士に乗って実践しながら覚えたからね。体を使って覚えることが大事だって、よく聞くもんね。
「それでも重要なのは実践で扱えるかどうかだから、感覚がつかめているなら十分だと思うよ」
「うん、氷雨の言うとおりだよ」
でも、今はこんな感じの一夏だけど、大部分の授業は理解できてるみたいなんだよね。恐ろしい学習能力だよ。僕なんか三年かけて準備したのにね。
「あ、僕ちょっとトイレに行ってくるよ」
「ああ、行ってらっしゃい」
そう言うと一夏はもう一度机に突っ伏した。相当ダメージ受けたみたいだ。
「僕も一緒に行っていい?」
「ん? 別にいいけど、シャルルもトイレ?」
「う、うん」
僕の問いに少し顔を赤くするも、動揺を隠して答える。あ、女子にそういうこと聞くのはデリカシーに欠けるよね。
「じゃあ、行こうか」
二人で教室を出る。
なぜか少し斜め後ろを歩くシャル。
「ねえねえ、話しづらいから横に来てよ。あ、僕歩くの少し速かったかな?」
「え? う、ううん。そんなことないよ」
たたっと距離を詰め、「エヘヘ」と笑顔を見せる。あれれ~おかしいよ~。だってこれ、フラグ立ってるもん。見た目は子供、頭脳も子供だけどさ、これはまずいなぁ……。
「氷雨はISのこと詳しいよね。やっぱり篠ノ之博士に教えてもらったの?」
「いや、そういうわけじゃないよ。まあ、自分の姉が作ったものだから、知っておこうかなって思って調べただけだよ」
だから、一般公開されている技術のレベルまでしか知らない。まあ、ちょっとメタ知識も持っているけどね。
「そうなの? 独学でするなんてすごいね」
「いやいや」
僕なんて時間をかけただけだよ。学校の勉強は生前の知識でしなくていいから、その分の時間をISに回しただけ。
その点、一年で代表候補生にまで成り上がった鈴ちゃんってさすがだよね!
「そういえば、シャルは代表候補生なんだよね」
「うん、そうだよ」
「男を代表候補にするなんて、フランスってなかなか度胸あるよね」
僕や一夏は保護という名目でIS学園にいる。それは男性操縦者という例外を利用しようとする国や組織からだけでなく、男がISを駆るということを好ましく思わない団体からの脅威から守るという意味でもある。
だから、そんな男を候補生すると多方面から苦情が来ると思うんだよね。
「え! あ~、うん。なんか大丈夫みたい」
……まあ、元々代表候補生だったシャルを男装させたってことだろうね。
「氷雨も専用機を持ってるみたいだけど、代表候補生なの?」
「いやいや、さすがに起動して二か月じゃ候補生は無理だよ」
「あ、そうだよね。ISを動かしたのはここ最近なんだよね」
うん。実は二か月なんだよね、公ではね。
「あのね、氷雨の専用機ってもしかして、篠ノ之博士が作ったの?」
「あ、トイレ着いたよ?」
シャルの問いに答える間もなくトイレに入る。シャルはさすがに個室なのね。
どうでもいいけど、シャルはただ付いて来ただけみたい。え? なんでわかるかって? ……五感を使うんだよ。
『変態ランナー』
なにこれぇ
初めてこういう(ベッドシーン)描写書きました
アドバイス求む
いや~、難しいですね。楽しかったですけど。
同時に胸が痛くもなりましたけどね
シャルかわいそす