鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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十三話 HADES

 昼休み。

 

 一夏に昼食を誘われたけど、昼休みにある人物に呼び出されているので丁寧に断った。

 

 ある人物ていうのは、僕の姉である束さんだ。

 

「やあやあ、来てくれたんだね」

 

 どこにいるのかというと、僕の部屋だ。IS学園のセキュリティ、笊すぎでしょ。相手が悪いともいえるけどね。

 

「それで、どうしたの? いきなり呼び出して」

 

「そんなそっけない態度しないでほしいなぁ。面白いもの上げたでしょ?」

 

 面白いものって、デコイのことかな。

 

「確かにあれは面白いね」

 

「でしょでしょ」

 

 装甲に負荷をかけて分身を生成する。作られたデコイはISのシステムに干渉して、センサーに自機だと誤認させる。

 

「控えめに言っても強すぎない?」

 

「そうかな? 試作段階だから何とも言えないけど、装甲を消耗するから一回使ったらしばらく使えないよ」

 

 つまり、タイミングが大事ってことだね。

 

「それで、本題は?」

 

「せっかちだなぁ、ひーくんは」

 

 やれやれと言った顔をする。

 

「フランスから来た転入生のことだよ~」

 

 シャルのことだね。それについて話があるって、シャルが女だっていうことかな?

 

「シャルルがどうかしたの?」

 

「うん。そいつ、フランスの企業の娘らしくてね。ひーくんの蒼騎士のデータを盗もうとしてるんだよ!」

 

 語気を荒げる束さん。あの、さらっと娘とか言ってるけど、束さんにとってそこはどうでもいい情報なんですね。

 

「って、僕の!? 一夏の白式じゃなくて?」

 

「そっちも取る気なんだろうけど、優先は蒼騎士みたいだね~」

 

『蒼騎士ではありません。ペイルライダーです』

 

「あ、そうだったね。ごめんごめん」

 

 ペイルライダー、名前気に入ってたんだ。

 

「それでね、はいこれ」

 

「?」

 

 手渡されたのは折りたたまれた薬包紙だった。

 

「何これ」

 

「劇物」

 

「どうしろと?」

 

「やっちゃって」

 

「馬鹿か、お前。馬っ鹿じゃねーのか!」

 

『またはアホですか』

 

「えぇー」

 

 残念そうな顔しないでよ。弟を殺人犯にしたいんですか!?

 

「でもさ、取られたところでどうってことはないでしょ?」

 

「世界一の天才科学者、束さんが作ったものだよ。オーバーテクノロジーの宝庫なんだよ? 真似されるのは癪じゃない」

 

 まあ、確かにペイルライダーにすら第四世代の展開装甲の試作システムが積んであるしね。白式にはそのものが積んであるけどさ。

 

「まあ、盗まれていい気はしないよね」

 

「でしょー」

 

 だからといって、どうすればいいんだろうか。原作ではシャルの中で、デュノア社に情報を送るシーンはなかったね。

 

「注意はしておくけど、僕から何か行動することはしないよ?」

 

「うんうん、それでいいよ」

 

 でも、それだけの要件ならなんでわざわざここまで出向いてきたんだろう?

 

「束姉、それだけなの?」

 

「お、鋭いね、ひーくん。さすがは篠ノ之流後継者だね」

 

「束姉のほうが強いのにね」

 

「いやいや、剣を持たれたらひーくんにはかなわないよ~」

 

 全然そんなことないです。束さんの体はDG細胞でできてるんじゃないかと思うくらい生身で最強です。千冬さんの化け物加減とどっこいだよ。

 

「それでは、重大発表です!」

 

「いぇえーい!!」

 

『パチパチ』

 

 乗りいいねペイルライダー。

 

「なんと! この束さんがお弁当を作ってきたのだ~」

 

「うおおぉおお……お?」

 

『理解不能です』

 

「冗談だよ、冗談。あ、でもお弁当はあるよ。クロちゃんが作ってくれたの」

 

 差し出された重箱を開けると、真っ黒の塊が鎮座している。

 

「なにこれ」

 

「お弁当」

 

「ひと、これを炭という」

 

 蒸気機関でも搭載していないとこれを摂食行為に使えないよ……。

 

 ガリガリ

 

「食べるんだ」

 

 それを見送って、僕は購買で買ってきた惣菜パンをかじる。

 

「それでね、いいもの持ってきたんだよ~」

 

 そういって、粒子が集まり手元に何かが展開される。

 

「そのボールみたいなのが?」

 

「そうそう」

 

 表面に模様が走っているが、それだけのものだ。機械的ではあるけど、どんなふうに使うのかはわからなかった。

 

「この中にはすごく面白いシステムのデータが入ってるんだよ」

 

「それ、データだけ送れなかったの?」

 

「ものすごい容量だからね~。たぶんインストールしたら追加の武装は入れられなくなりそうだね」

 

「そうなの? ベクターキャノンは?」

 

「無理」

 

「そのシステム要らないわ」

 

 ロマン砲を捨てるくらいならどれほど実用性があっても要りませんよ。

 

「ええ~」

 

「いや、だってさ、ベクターキャノンだよ? 漢のロマンだよ?」

 

「このHADESシステムもすごいのになぁ……」

 

 え、今ハデスって言った? HADES? EXAMの後継の?

 

「まあ、これごと置いていくから、気が向いたら試してみてね」

 

 じゃ、と言って束姉は窓から外へ飛び出していった。

 

 次の瞬間、寮のドアが開いた。

 

「……ここに誰か来たか?」

 

そこに立っていたのは千冬だんだった。たぶん、束さんの侵入に気がついてここにやって来たのだろう。

 

「バカもーん! そいつがルパンだー!」

 

「…………」

 

「睨まないでくださいよ。束さんならもうどこかに行きましたよ」

 

「ちっ」

 

 なんで舌打ち?

 

「あの馬鹿と何の話をしていた」

 

 あ、この目は嘘ついたら殺されそうだ。

 

「えと、ISの新しい機能の入ったボールをもらいました」

 

「……嘘はついてないみたいだな」

 

 嘘を吐く気なんて……ただ、すべて言ったわけではないけどね。

 

「だが、真実を言ったわけでもなさそうだな」

 

 オワタ。

 

      ◇   ◇   ◇

 

「なるほど。デュノアのことを教えられたのか」

 

「イエス、マム」

 

 正座して、敬礼のポーズをとる。

 

「学園のほうにどういう意図があるかは知らんが、デュノアは男として扱われている。束の言う通り、デュノアの目的はお前の蒼騎士と白式のデータを盗み、第三世代機の開発に着手していくつもりだろうな」

 

『ペイルライダーです』

 

 デュノア社は第三世代の開発に出遅れているみたいだから必死なんだろうね。ペイルライダーは黙っててね。

 

「にしても、どうしてこんな突飛な策がまかり通ったんですか? フランス政府なんかはパスポート見ればすぐわかるものなんじゃ?」

 

「フランス政府が自国の利益になる不正にいちいち介入するわけがないだろ。束の技術を盗んで作ったISが量産されれば、自国の軍事力は欧州で頭一つ抜けるだろうからな」

 

 学園内にいる僕らは守られているからね。そのISの情報の開示も求めることはできない。それなら、学園に刺客を送っちゃえ~ってことだね。

 

「それはいいんだけど、シャルルはどうやって情報を盗む気なの?」

 

「ISのハイパーセンサーでとらえたデータをコアネットワークを通して本社に送るんだろうな」

 

 なるほど、つまりシャルのISのシステムに直接干渉しないといけないわけか……。

 

「お前は何もしなくていい」

 

「いえいえ、何もする気なんてないですよ?」

 

「ならいい。午後の授業も遅れずに来るように」

 

 そう言って、千冬さんは部屋から出ていった。

 

「で、ペイルライダー。シャルのラファール・リヴァイヴ・カスタムIIに接触できるか?」

 

『…………』

 

「ペイルライダー?」

 

 なぜか返事がない。なんでだろう。起動もしてるし、システムに欠損も見つからない。

 

「どうしたの、ペイルライダー」

 

『黙っていろと言われましたから』

 

「いいから、そういうの」

 

 柔軟な思考が可能のAIが何を言ってるんだか。

 

『接触は容易です。ですが、数時間接触する必要があります』

 

「なにを?」

 

『操縦者同士の接触です』

 

「数時間?」

 

『はい』

 

「ムリゲー」

 

 どうしようか思案しながら、コロッケパンを頬張りました。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 放課後。

 

 自室にて、夕食後のお茶を飲んでいる。

 

 先ほどまで食堂で質問攻めになっていたシャルだが、どこまでも続きそうだったのでちょっと無理やりだけど、自室に戻ってきた。

 

 そして、いつものように一夏の入れたお茶でのんびりとしている。

 

「紅茶と違う感じだけどおいしいね」

 

「気に入ってもらえたようで何よりだ」

 

 シャルものんびりとしている。簡易ベッドに腰掛けるシャルはジャージ姿に着替えている。うーん。寝る前だというのに、コルセットを巻いているのはつらくないのかな?

 たぶん苦しいと思うんだけどな~。

 

「そういえば、一夏は放課後ISの特訓をしてるって聞いたけどそうなの?」

 

「ああ、氷雨と箒とセシリアと一緒にな」

 

「一夏は覚えがいいからね。スポンジみたいだよ。カッピカピの」

 

「か、カッピカピ……」

 

「なんだよ、それ」

 

 シャルは戸惑い、一夏は笑う。シャルは耳年増か。

 

「ぼ、僕も加わっていいかな? 専用機もあるから少しは役に立てると思うんだ」

 

「おお、それはありがたい話だ。ぜひ頼むよ」

 

「そうだね。僕が教えられるところは結構限られてるしね」

 

 主に教えるのは操縦技術。剣術は僕より箒に教わったほうがいい。バトルスタイルが二人は近いし、どうせ一夏のことだから、僕みたいに待つのは性に合わないだろうからね。

 

「うん、任せて」

 

 となると、明日の放課後から参加することになるか……。ならば、手を打つなら今日の夜しかない。

 

 あ、結構いいこと思いついたよ。

 

「んじゃ、今日はシャルルも転校初日で疲れているだろうからさ、僕のベッド使っていいよ」

 

「え?」

 

「そっちの簡易ベッド堅いでしょ? それじゃ、疲れが取れないよね」

 

「そ、そうかな?」

 

「だよね、一夏」

 

「まあ、そうだけど。氷雨はいいのか?」

 

「僕は二人より体ができてるからね」

 

 飲み干した湯呑にお代わりを入れて簡易ベッドのほうへ行く。

 

「シャルルは見るからに華奢だからね。あ、でも、今日だけだからね。僕はそこまで優しくないから」

 

「あはは。うん、ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

 そんなわけで、湯呑を傾ける。

 

 ほうっと息をつき。ニヤリと笑う。

 

「(計画通り)」

 

 夜の作戦開始だ。

 




はい、来ました、外付けのシステム”HADES”です

ガンダム知ってる人でもあまり耳にしないであろうこのシステムは
ブルーデスティニーでおなじみ、EXAMの後継に当たるシステムです
作者はガンダムオンラインで知りました

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