鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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八話 実習

 授業。

 

 今日から実際にISを用いた訓練が始まる。その初回ということで、まだ生徒はISに乗ることはできないが、僕たち専用機持ちが諸々の動作を実践し、みんなに見てもらうというオリエンテーションをするみたいだ。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、篠ノ之、オルコット。試しに飛んでみせろ」

 

 専用機は待機中、アクセサリーの形状でその操縦者の身につけられている。僕の場合はペンダント。アクセサリーである必要はないと思うんだけど、そういうところも女性しか扱えない制限に関係しているんだろうか。

 

 ……まあ、関係はしてなさそうだね。作ったの束さんだし、何も考えていないに一票だよ。

 

「熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

 その言葉通り、僕はペイルライダーを即座に展開する。伊達に長い付き合いってわけじゃないからね。

 

 セシリアも僕ほどじゃないにしろ、すばやく展開を終える。代表候補生だもんね、流石だね。

 

「集中しろ」

 

 ISはイメージがものを言う。展開するにも、頭の中でイメージが固まっていないと、それに答えてくれない。その点に関しては兵器として駄目なところだろうと思う。近代兵器の強みは持てば誰でも兵士になれる所だからね。あ、でも戦闘機とかは別になるのか。じゃあ、さっきの僕の持論は論破されちゃうね。

 

 まあ、そういうわけで、一夏の手を前に突き出すポーズはかっこいいつもりでやっているのではなく、白式を展開する上で必要なモーションであるということをみんなに弁解しておきたい。決して、一夏が拗らせているわけではない。原作者は拗らせているかもしれないけど。

 

 一夏も展開を終えると、千冬さんがそれを確認し、号令を出す。

 

「よし、飛べ」

 

 言われると同時に飛び出す僕とセシリア。その後を少し遅れて付いてくる一夏。

 

 一夏は強くなったけど、それは戦いにおいてだけなんだよね。

 

「一夏、おっそーい」

 

「うるせえ」

 

 イメージ操作、稼働時間。この二つが重要となるIS操縦ではまだまだ一夏は白式の全てを発揮できていないね。

 

『そういう、あなたも性能の8割しか出せてません』

 

「まじで?」

 

 そんなこと言いながらセシリアのブルーティアーズよりは前方にいる。まあ、そもそものカタログスペックがペイルライダーのほうが速いので、稼働時間も上回る僕が遅れるはずはないね。

 

「スペック上の出力では白式のほうが上だぞ」

 

 一夏にとっては昨日習ったばっかりの急上昇。とはいっても、イメージを口頭で伝えられても理解できないだろうというのが本音だね。

 

 ある程度の高さで留まり、後続の二人を眺める。オープンチャンネルでセシリアが一夏に優しく助言をしている。コロッと態度を変えてるけど、僕に対してはあまり前と変わっていない。

 

 なぜだ! 

 

『坊やだからです』

 

 いや違うよ。不意打ちが気に入らなかったらしいですよ。まあ、僕が考えるに、表ではそう言ってるけど実は……

 

「ベクターキャノンのかっこよさに嫉妬してるだけだよね?」

 

『その可能性は限りなく0であると提示します』

 

 いやいや、そんなわけないでしょ。ベクターキャノンを見たら誰だって欲しくなるよ! その証拠に、真耶ちゃんももう一度展開してみてくだいって頼んできたし。

 

 そんなことを考えているとセシリアがやってくる。

 

「遅かったじゃないか……」

 

「毎回思うんですが、あなたたまに言動がおかしくなりません?」

 

 おかしくなったんじゃないです。パロってるだけなんです。しかし、その実、おかしく聞こえているんだったら……はい、私がおかしいですよね。

 

「そういうセシリアも一夏の前ではおかしくなってない?」

 

「あら、そんなことありませんわ。だ、第一、一夏さんの前だけなんて、まるでわたくしが一夏さんを特別視しているみたいではありませんか」

 

「してるよね?」

 

「してませんわ!」

 

 オープンチャンネルじゃなくてよかったね。

 

「あ、あなたこそ、わたくしの前で言動が変わったり、わたくしを特別視してるんではありませんの?」

 

 セシリアが苦し紛れに反撃する。

 

「いや、別に誰彼かまわず変わるよ?」

 

「くっ」

 

 一夏から千冬さんまで、ネタのためなら体を張る。それが……ガンダムマイスターだ。マイスターになるとしたら、僕は誰だろう。機体がオールラウンダーだから、これといってないけど、個人的にはミスターブシドーがいいな。

 

「二人とも早いな……」

 

 最後尾の一夏もようやく追いつく。

 

「いえいえ、一夏さんも初めてなのにお上手ですわよ」

 

「うんうん。白式の性能に助けられているところもあるけど、一夏は呑み込みが早いよ」

 

 僕も慣れるまでは何とも言えない抵抗を感じながら上昇をしてたよ。今そんなことしたらペイルライダーにどれだけなじられるか分かったもんじゃないよ。

 

「そうなのか? でも、氷雨にもセシリアにも程遠いぜ?」

 

「え、僕に追いつく気なの? ワロス」

 

「おい」

 

 そんなこと言いつつも、前言ったように一夏にはいつか追い越されるんじゃないかと冷や冷やしてます。僕が一夏に勝てるところって、そこくらいのものだと思うんだよね。

 

 鈴ちゃんにアピールするものがほとんどないのが現状です。どうしよう。

 

「何頭を抱えてますの? 急降下と完全停止、織斑先生からの指示ですわよ?」

 

「あ、そうなの? ありがとう。僕先に行っていい?」

 

「別にいいですわよ」

 

 僕は今、一刻も早く地上に降りて確認しなければならないことがあるんだ。

 

「……ペイルライダー」

 

『何でしょうか』

 

「最高速……出せるよね?」

 

『えっ』

 

「最後まで付き合ってもらう」

 

 非固定装備のスラスターを最大までふかす。一瞬の内に最高速付近に加速する。地面が数十メートルに迫ると、眼前に厚いクッションをイメージしを瞬時に速度を殺し、完全停止を完遂する。

 

「上出来だな」

 

 千冬さんの賛辞を軽く無視したのち、箒に迫る。

 

「箒っ! 僕の魅力って何かなっ!」

 

「むっ? その頭の悪そうなところではないか?」

 

 なるほど! 一言目に出てくる言葉がそれか! 

 

「撤退する!」

 

「どこへ行く馬鹿者」

 

 千冬さんに頭部をがっしりロックされて動けなくなる。話が……違うっすよ……。

 

 空を見ると、一夏が加速し降ったきた。轟音を響かせ、一夏はクレーターを作り上げた。

 

「なんか安心するな~」

 

「どういう意味だよ」

 

 深い意味はないよ。ただ、まだ僕の唯一の優位性は保たれているみたいだと確認できてまだ勝機があることに安堵しただけだよ。我ながら性根腐ってるね。

 

「大丈夫か、一夏」

 

「大丈夫ですか、一夏さん」

 

 箒とセシリアがクレーターの中の一夏を心配して声をかける。

 

「大丈夫だ。ありがとう」

 

 感動的だ。箒が一夏の心配をしてるよ。あ、でも僕だけ心配してない薄情な奴だって思われないかな? よし。

 

「そんなISで大丈夫か?」

 

「? 大丈夫だぞ。問題なくエネルギーバリアも作動してたしな」

 

「あ、はい」

 

 惜しい回答が得られたね。

 

「授業中だ。緊張感を持て」

 

 怒られた。けど、授業ってそういうものだっけ、千冬さん?

 

「三人とも武器を展開してみろ。織斑もそれくらい自在にできるようになっただろう」

 

「は、はい」

 

「ビームブレード、レディ!」

 

『私のセリフです』

 

 瞬間、僕の両手にはビームブレードが握られていた。早いってだけならセシリアも同様の速さだった。

 

「セシリア、そのポーズかっこいいね」

 

「ふふん。分かります? まあ、このわたくしがとれば、どのようなポージングも恰好が付くってものですわ!」

 

「……オルコット。そのポーズはやめろ」

 

「え……」

 

 千冬さんの言葉にセシリアがこの世の終わりを目の当たりにしたような呆気にとられた顔になる。

 

「横に銃身を展開させて、一体どうするつもりだ」

 

「で、ですが、これはわたくしが武器を展開する上で大事なイメージ構築の要素ですし、それに恰好いいじゃありませんか!」

 

「……オルコット、勘違いしているようだが、これは助言ではない。命令だ」

 

 すさまじい威圧感を感じてびくりと体を震わすセシリア。

 

「は、はい」

 

「可能性は感じたが……」

 

「あ、あの圧力に逆らうのは無理ですわ!」

 

 プライベートチャンネルでセシリアに言うとそう返された。確かにね。あれに勝てるのは、天上天下唯我独尊の束さんくらいなものだよ。

 

『足掻くな。運命を受け入れろ、ですね』

 

「分かってるじゃないか」

 

 諦めは肝心だよね。

 

「ふむ。ある程度はできているようだな。だが、まだまだ遅い。0.5秒で展開できるようにしておけ」

 

「はい」

 

 一夏も既に展開を終えていた。見てはいないけど、千冬さんのコメントがマイルドになってるから、もたつかなかったんだね。

 

「それと、オルコットは近接用の武装を、篠ノ之は……」

 

「ぜひ……ぜひベクターキャノンを展開してくださいっ!」

 

「任せてっ!」

 

「座っていろ」

 

 出そうとしたら千冬さんに止められた。

 

「山田先生。自分が教師であると言うことをお忘れなく」

 

「す、すいません……」

 

 しゅんとうつむき加減になる真耶ちゃん。可愛そうに……。ただ、ベクターキャノンの魅力に気付いたばっかりに。

 

「他の射撃武器はないのか?」

 

「ありますよ。出しますか?」

 

「ああ、展開してみろ」

 

 新しく拡張領域に追加した武装はジャイアントガトリングである。

 

『ジャイアントガトリング、レディ』

 

 イメージし展開する。脇に抱えるようにその長い銃身を露わにした。

 

「近接武器だけにかまけているかとも思ったが、さすがと言ったところか」

 

「ペイルライダーは伊達じゃない!」

 

 僕の言葉に千冬さんは反応しない。慣れているからなんだろうね。

 

「で、オルコットはいつまでそうしているつもりだ?」

 

 隣で唸るセシリア。

 

「ああ、もうっ! 《インターセプター》!」

 

 名前を叫ぶとようやく手元に武装が展開される。これ初心者の出し方らしいけどさ、僕はペイルライダーがかわりに呼んだりしてるね。呼ばなくてもいけるけど、言葉にするだけで出せるなら言ってもいい気がするんだけどね。

 

「……貴様は実戦でも相手に待ってもらうつもりか?」

 

「そういえば、前僕にやられる時も出せてなかったね」

 

「一夏さんに接近された時、ですわ!」

 

 そうとも言えるね。

 

「で、ですが、あのように接近されることはまずありませんわ! ですから問題はありません!」

 

「いや、あるでしょ」

 

「ないですわ!」

 

 千冬さんがあきれてため息を吐く。

 

「まぐれでも、実戦で起こればそれが命取りだ。出せるようになれ、いいな?」

 

「は、はい」

 

 基本が大事。はっきり分かんだね。

 




今回はちょっとした氷雨のスペック紹介みたいになってますね
ベクターキャノンは熟練度関係なく展開に一定時間を要しますから、何とも使づらいロマン砲です

いや~、もうすぐ鈴ちゃんの転入の時期ですね!

次回投稿は五時になります

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