転生と狐と魔法少女   作:隣乃芝生

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おまたせしております。




魔法少女と新たな出会い

 迂闊な発言をしたジルに怒れる乙女達が制裁を加えた後、

 

「グスン・・・おねーちゃん達にお嫁に行けない体にされた。」

「何を人聞きの悪い事言ってんのよ!?なのはじゃあるまいしそこまでしてないわよ!」

「・・・二人ともお話が必要なの?」

 

 態とらしく嘘泣きをするジルへと突っ込むアリサに引き攣った笑みをなのはが浮かべる。

 

「まぁまぁなのはちゃん落ち着いて?お願いだから。」

「まったくもう・・・あれ?ユーノ君は?」

 

 震えだした二人を見たすずかに宥められ、頬を膨らませながら席に着いたなのははふと、先程まで居たはずのユーノがテーブルに居ないことに気が付いた。すると、

 

「キューー!?」

「あっ!おねーちゃんあそこ!」

「ああ!?猫ちゃん!離して!って何かデジャヴを感じるの!」

「ってか何でユーノいつの間にかネコ耳付けてるの!?」

「た、確かに気になるけど今はそれどころじゃ無いと思うよ!?可愛いけど!」

 

 視線の先には一匹の猫に咥えられたフェレット――フリフリの服にネコミミを付けた――が、月村家敷地内の森に入るところで有った。

 

「た、助けに行ってくるね!」

「あ、おねーちゃん私たちも行く!」

 

 なのはとジルの二人が慌てて追いかける為に駆け出し、森へと入った。

 

「ちょっと二人とも!?」

「と、取り敢えず私達は待ってようよ。」

 

 アリサもそれに続こうとするが、すずかに止められる。

 

「そ、そうね。先ず落ち着いてから恭也さんに伝えて探しに行きましょう。」

「え?あ、うん。そうだね・・・で、でも大丈夫じゃ無いかなぁ?ジルちゃんも居るし。」

「普段のあの子見てて、大丈夫な要素があんまり無いんだけど?」

 

 若干挙動不審になったすずかに一瞬疑問を浮かべたアリサだが、気のせいだと思いもう一度なのは達が入った森に顔を向けた。

 

「本当に大丈夫かしら?」

 

 

 

 

 

 一方森に入り、ユーノを咥えた猫を追い掛けるなのはとジルは枝を除けながら猫を追い続けた。

 

「ま、待って~。ユーノ君は美味しくないと思うの~。・・・あれ?でも久遠ちゃんにも咥えられてたし・・・」

「そこは否定してなのは!猫さん僕は美味しくないですから!」

「・・・?」

 

 追い掛けるジルは、ふと妙な事に気が付いた。相手の猫は、何故か自分達から常に一定の距離を保ち、時折こちらに気を向けている。

 

(誘い込まれてる?)

 

 そうして猫に誘導された先で、少し開けた場所に有った一本の木の根元に転がっていた青い宝石を見て3人は声を上げた。

 

「「「ジュエルシード!?」」」

 

 思わず足を止めたなのは達を見届けた猫は、ユーノを離し草むらへと姿を消した。

 

 

 

「こんな所に有るなんて。」

「おねーちゃん。何か怪しくない?」

「そうかなぁ?」

 

(アサシンには怪しまれましたが・・・どうやら上手く行きましたかね?庭で偶然ジュエルシードを見付けた時にはどうしようかと思いましたが、これで一安心ですね。)

 

 少し離れた木の上に登り、なのは達の様子を伺っていた山猫ーーーリニスは一息吐いた。

 

(リニス。そっちは大丈夫?)

 

 そこにすずかからの念話が届いた。

 

(大丈夫ですよすずか。ちゃんと二人にジュエルシードを見付けてもらいました。)

(よかったぁ。森でライダーが見付けた時にはどうしようかと思ったけど、これで大丈夫だよね。)

(大丈夫かねぇ?)

 

 

 偶々、敷地の森で見付けたジュエルシード。一時は如何するか月村家一同であーでも無いこーでも無いと話し合った挙げ句、こうして偶然を装い回収して貰う事にした。前日に散々ライダーに飲まされ、未だに二日酔い気味だが何とか任務達成でき、ほっとする。

 

 安心したらしいすずかの声を聞いたリニスは、目の前でデバイスを取り出したなのはを見届けた後に立ち去ろうとし―――

 

(え・・・?)

(リニス?どうしたの?)

 

―――その場所に接近する少女を見て、呼吸すら止める事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見付けた。バルディッシュ。」

〈yes sir〉

 

 なのは達の耳にそんな声が聞こえた。振り返れば、そこには宙に浮く一人の金髪の少女。長い髪をツインテールにしてまとめ、黒いレオタードの様な衣装に革のベルトを巻き、マントを付け、その手には黒く光る斧を握り締めた少女はなのは達とジュエルシードを見つめていた。

 

「あの子、もしかして・・・!?」

「私以外の魔法使い・・・レイジングハート!」

〈了解しました。〉

「見ておねーちゃん・・・あの子格好が破廉恥だよ。・・・恥ずかしくないのかな?」

 

 レイジングハートを起動させながら思わず、といった感じでなのはがジルを振り向けば、私服からいつもの黒い革のやたら露出した服で首をかしげていた。

 

「・・・え?いや、ジルちゃんがそれを言うの?」

「私たちはせくしぃなアサシンだからいーんだもん。」

「何その理論!?」

 

 薄い胸を堂々と張って答えるジルに頭を抱えるなのは。一方金髪の女の子は、行き成り目の前で言い争いが始まり、困惑した顔で二人の顔を見比べている。

 

「私達・・・?えっ?でもそっちの白い子は・・・?」

「わ、私は違うの!!」

「おねーちゃんは、変身がせくしぃな魔法少女だから大丈夫。仲間。」

「だから!私は違うの!大体ジルちゃんの格好もあの子と大差無いの!」

「えっ?」

「あんな痴女と一緒にしないで。」

「えっ?えっ?」

「ジルちゃんはスカートくらいちゃんと・・・!」

「貴女方ちっとはシリアスにできませんかねぇ!?」

 

 ユーノからも魂の籠もったツッコミが入った。

 

「わ、私は真面目にやってるの!」

「というかフリフリのドレス着てネコミミ付けたユーノに言われたくない。」

「誰が!着せたと!思ってるんですか!?」

 

 ユーノ・スクライア。これまでの気持ちを込めた渾身の一言である。

 

「・・・何?ユーノは、お母さん(マスター)の用意した服に文句が有るの?」

 

 しかしそれも、スッと目を細めたジルの殺気の前に雲散霧消する。

 

「そ、それは無いです!無いですからそのナイフを仕舞って下さい!ネコミミはさっき二足歩行のネコが・・・」

「そんな非科学的なのいるわけ無いじゃない。」

「そうだよユーノ君。現実を見ようよ。」

「貴女達が言いますか!?・・・じゃなくて二人ともあの子が!」

「「あっ。」」

 

 ナイフでピタピタと頬を叩かれるユーノの言葉に二人が振り向けば、

 

「・・・バルディッシュ・・・ちじょ?って何?この格好最初からリニスが設定してくれてたし、動きやすくて気に入ってたんだけど・・・変なのかなぁ?」

〈その単語はsirの年齢的にお答えできませんが、マイスターが様々な書籍を参考にして設定されましたので変では無いかと。〉

「うん分かった。単語は今度母さんに聞いてみる。」

〈・・・それは(卒倒しかねませんから)止めた方が・・・それよりもsir、ジュエルシードは宜しいのですか?〉

「えっ?・・・あ。」

 

 なのはと少女の目が合った。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 そして、そのまま二人して木の根元に放置され、若干黄昏れた様子のジュエルシードに目をやった。

 

 

「・・・」

「・・・」

「と、とにかくそのジュエルシードは私が貰う。」

「えぇ!?あ、あの・・・」

 

 そう声を掛け、近付こうとしたなのはに対して金髪の少女は無言のまま斧状のデバイスを向け、周りに雷で出来た球を幾つか浮かべる。

 

――近付いたら撃つ。

 

 その敵意に少し怯みながらも、言葉を続ける。

 

「あの、あなたもジュエルシードを探してるの?」

「・・・近付かないで。」

「いや、その・・・お話したいだけなの。・・・あなたも魔法使いなのとか・・・何でジュエルシードを探してるのとか。」

 

 そう、なのはが言葉を続けようとした時、

 

〈ファイヤ。〉

 

 主人の意を受けた黒いデバイスが、少女の周りの雷球をなのはに向けて放った。

 

 

 

 

(ごめんね・・・)

 

 まさか魔法の無いと言われていた管理外世界で、自分と同じ魔導師に会うとは思わなかった。本当は攻撃なんてしたくなかったけど、自分の目的のジュエルシードを狙っているなら仕方ない。

 

 そう思いながら金髪の少女は、自分の放った攻撃がなのはに向かって行くのを眺め、

 

―――当たる前にその全てが横からの投擲により撃ち落とされたことに驚愕し、目を見開いた。

 

「くっ!?」

 

 ついでとばかりに自分に向かって飛んできた小型の刃物に、驚きながらも手に持つ得物――バルディッシュと呼ばれたデバイスの柄で弾きながら距離を取り、反撃用に魔法を組み上げる。この年齢にしてこの高速並列思考と行動は、彼女の積み重ねた努力と才能を窺わせる。

 

「死ね。」

「キャア!?」

〈sir!?〉

 

 ただし、それも突如として目の前に現れ肉切り包丁で頭蓋骨をかち割らんと振り下ろした白い髪の少女の放つ殺気に凍り付く。

 

「ジルちゃん、ダメ!」

「おねーちゃんはじっとしてて。こいつ殺す。」

(この子!?そうだ、さっきまで気配が消えて・・・っツ!?)

 

 咄嗟にバルディッシュを振るい防いだものの、柄を握る自分の手が余りの衝撃に痺れ、愛機に刻まれた刃傷を見て背中に冷たいものが走る。

 加えて、森に霧が掛かり始める。

 

〈警告!幻術・・・更に硫酸の霧です!〉

「!!!?」

 

 目と、肺に鋭い痛みが走り始め、声にならない音を立てつつも広範囲に雷を撒き散らしながらその場から離脱を開始する。

 

(一体何が起こっているの!?)

 

 

 

 

 

 

 

『キャスターさん!キャスターさん!』

「のわっ!?」

「如何しましたかキャスター?」

 

 その頃、翠屋でアーチャーと話し合っていたキャスターは、なのはからの念話を受けた。

 

『ど、如何したんですかなのは様!?』

『い、今すぐ来て欲しいの!すずかちゃんのお家の森でジュエルシード見付けて、ユーノ君がネコ耳で、金髪の女の子が魔法使いで破廉恥で、ジルちゃんが殺そうとしてて・・・!』

『はい!?何がどうなったらそうなるんです!?つか、落ち着いて下さいませなのは様!?』

『ジルちゃん追い掛けるからキャスターさんも来て!』

『なのは様!?』

 

 と、なのはからの念話は一方的に切られてしまった。

 

「どうしたのキャスターちゃん?」

「なのは様からだったんですが・・・ちょっと私急いで行きます!!」

 

 心配げな顔の桃子と士郎に伝え、店のスタッフスペースに入って直ぐに霊体化しキャスターはなのはの下へ向かった。

 

(アサシンがいるなら無事だと思ってましたが・・・あの子の性格本当に厄介ですね。)

 

 アサシンことジルは仲間と認めた相手、正確に言えばマスターである桃子の家族とその仲間には大人しい。

 だが、それに手を出す敵に関しては普段とは打って変わって残忍性を見せる。

 

(早まらないで下さいよアサシン・・・)

 

 

 

 一方、月村家の森では霧の中、必死に逃げ惑う金髪の少女の姿が有った。四方を霧に囲まれ、どこから襲われるか分からない恐怖と痛みに必死で耐えながら、足を止めないように逃げる。

 

(何とか反撃して、ジュエルシードを・・・!)

〈硫酸の霧に対する対抗プログラムを構築します。sir今暫く・・・〉

『させるわけ無いじゃ無い。』

「!!?うわああああ!!」

 

 突如、自分の後ろで、隣で、前で同時に聞こえた声に

反射的にバルディッシュを振るい、

 

「えいっ。」

 

 そんな舌っ足らずな軽い声を出し、軽くバルディッシュを躱したジルに腕をとられた少女は、

 

「ガッ!?」

 

 背中から凄まじく硬い石で出来たオブジェに叩きつけられた。

 

 

 

 

「へぇ?やっぱりおねーちゃんのレイジングハートにそっくり。」

〈離せ。〉

 

 背中の痛みに耐え、ふらつく頭を上げれば何時の間にか自分の手から奪われたバルディッシュを無邪気に弄ぶ黒い革の服を着た少女が立っていた。

 

「そうだ!私たちがこの子の代わりにあなたを使って上げる。」

〈断ります。私の主は後にも先にもフェイトだけです。〉

「ふうん。」

 

 途端に機嫌が悪くなったジルは、手に持つバルディッシュの金色の宝玉部分をフェイトと呼ばれた少女の背後に有ったオブジェに叩きつける。

 

〈#m5p3@&!!?〉

「や、やめて!やめて!」

 

 痛みを堪えて起き上がったフェイトは、そのままジルに飛び掛かるが、軽く突き飛ばされて再び叩きつけられる。

 

「まあいいや。折角だから貴女の大事なもので殺して上げる。」

〈ぐ、何を・・・!?sir!早く逃げ・・・!〉

「・・・うっ・・・え?」

 

 愛機の声に顔を上げたフェイトが見たものは、

 

―――こちらを冷めた目で見下ろす少女。

 

―――その掲げられた右手で必死に声を上げる愛機。

 

 

 

――それがそのまま、自分に向かって振り下ろされ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それをデバイスで受け止める白い背中だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ま、間に合った~・・・怪我は無い?」

「・・・」

「えっと・・・」

「あ、うん。大丈夫だよ・・・」

「よかったの。」

「・・・おねーちゃん・・・」

 

 

 呆然と見惚れていたフェイトにほっとしたような笑顔を向けた後、クルリとジルにとなのははジルに向き合い。

 

 

 

 

 

「・・・ジルちゃん・・・本当に何をしてるの?」

 

 聞くものがゾッとしそうな程、怒りを含んだ静かな声でジルに問い掛けるなのは。

 

「だ、だっておねーちゃんをそいつが・・・」

「何を、しようと、したの?」

「ヒイッ!?」

 

 結構長く一緒に暮らし始めて尚、見たこと無いほどになのはが切れている事を理解したジルは思わず手に持つバルディッシュを投げ捨てる。

 

「ちょ、ちょっと痛め付けようとしただけ・・・」

「殺そうとしてたよね?」

「だ、だってだって・・・」

「いつ、私が!そんな事してって言った!?まずはちゃんと話し合って解決をしようよ!」

 

 涙目になりながらジルは反論する。

 

「わ、私たちはお母さん(マスター)におねーちゃんを守るように言われてるんだからおねーちゃんを攻撃した敵をやっつけたり、殺したりするのは当然だもん。」

「お母さんは、そんな事望んでないの!」

「そんな事無いもん!マスター(お母さん)のサーヴァントとして間違って無いもん!」

(・・・『サーヴァント』?『マスター』?この女の子が使い魔?)

 

 目の前で言い争いをする二人の会話から少しでも情報を集めようとするフェイトが、気になる単語について考え始めたとき、地団駄を踏み始めたジルが、キッとフェイトの方を睨みつけた。

 

「じゃあ『殺さなければ』良いんでしょ!?半殺しにして連れて帰る!」

「!?グッ!!」

「やらせないの!」

 

 動こうとして痛みを感じたフェイトを見て庇うなのはから離れたジルは、魔力を使い始める。

 

「ふんだ。おねーちゃんがそこで庇ってもかんけー無いもん。今は『夜』じゃないけど『雌』と『霧』の2条件は達成してるから殺せなくても半殺し位には出来るんだから!」

「!!!?ジルちゃんその『宝具』は駄目!!」

 

 ジルの狙いに気付いたなのはが止めようとするが、冷静さを欠いたアサシンは止まらない。霧の中、フェイトを標的に捉え、情け容赦なく自身の持つ二つ目の宝具を発動させる為の詠唱を始める。例え桃子に念話を入れて令呪を使って止めて貰うまでよりも早く宝具は発動するだろう。

 

「此よりは地獄、わたしたちは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ悪ガキ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として一帯に響き渡る轟音。そしてジルが周囲に展開した霧を爆風が吹き飛ばした。

 

「キャア!?」

「!?何が・・・」

 

 何が起こったのかと混乱するなのはとフェイトの耳に連続して渇いた銃声が聞こえ、顔を上げれば

 

「ジルちゃん!!!?」

 

 両腕と、両脚を撃ち抜かれ崩れ落ちるジルの姿。

 

「ちっとばかしおいたがすぎるよアサシン?霊核をぶち抜かれてないだけ有り難いと思いな。」

 

 その声に振り向けば、森からこちらに歩いてくる一人の女性。

 

「まぁこれで前に家の上官殿にやらかした落とし前と、そっちのガキにやらかした事でブチ切れてるダチの分の借りはチャラにしてやるよ。」

 

 燃えるような紅く長い髪、貌に大きな傷を持ち、両手にクラシックな拳銃を構えていた。

 

「ジルちゃん!ジルちゃん!?」

「うえぇぇぇ・・・いたいよう・・・」

「ジルちゃん!待ってて、今・・・!?」

「だ、駄目!!」

 

 思わずなのはは、血を流すジルに駆け寄ろうとしたが、足元に銃弾を打ち込まれ牽制される。

 

「おいおい、目の前の相手から目ェ逸らすなんざ随分と余裕じゃ無いか?舐められたもんだねぇ。」

「貴女、何なんですか!?」

「・・・おねーちゃん逃げて。そいつ・・・」

「あん?目の前の獲物を逃がす海賊が居るか?」

(海賊?)

 

 傷付いたジルを見てなのはは、相手を見る。

サーヴァントであるジルを容易く行動不能に追い込む。

―――そんな事ができるのは同じ存在だけ。

 加えて先程の轟音。そして、周りの抉れた地面、へし折れた木々。

―――まるで砲撃でも撃ち込まれたかのような。

 此方をニヤリとした表情を浮かべて見ている女性の格好は、家のテレビでやってた映画に出てくる船乗りのような格好。

 

『クラシックな二丁拳銃』

『海賊』

『砲撃』

『船乗り』

 

―――該当するサーヴァントは

 

「・・・『ライダー』のサーヴァント・・・!?」

「おや、喋り過ぎちまったか。・・・如何にも。」

 

 なのはにとっては『魔術師』、『暗殺者』、『弓兵』に続く四体目のサーヴァント。

 

『騎兵』のクラスを持つ女海賊は

 

 

「・・・で、そいつが判るお嬢ちゃんは・・・」

 

 

 くるり、と煙を吐く拳銃をなのはに向け

 

 

「アタシの敵って事で良いのかい?」

 

 

 ニタリとした笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ『その頃のアーチャー主従』

 

 

「では、私も向かいます。」

「アーチャーさん・・・どうか宜しくお願いします。」

「承りました。」

 

 頭を下げる高町夫妻に頷き返し、スタッフスペースを借りるべく動いたアーチャーは、ふと先程注文した商品を堪能していた黒服達のテーブルの近くに行き足を止めた。

 

「よし、コレ食べたらそこに行ってみよか。」

 

 などと話し合う車椅子の少女達に上手く聞こえる程度の音量でポツリと呟く。

 

「・・・これは独り言です。今日私は家を出る時に危険度も分からないというのに付いて来たがる教え子に、課題を出して来た筈なんですが・・・」

「・・・えっと・・・せんせ?やっぱ気付いて・・・」

 

 ビクリと手を止めた一堂が冷や汗を流す。関西弁の少女がアーチャーを見るととても、そう歴戦の戦士ですら手足が震える程のきれいな笑顔を浮かべていた。

 

「万が一にも有り得ないでしょうが、私が帰った時までに終わっていなければ・・・まして、外でサボって遊んでいた日には・・・『特別コース』を用意しなければなりませんね。あ、士郎さん私もスタッフスペースお借りしてよろしいでしょうか?」

「え、ええどうぞ。」

「すみません!お会計お願いします!早急に!」

 

 慌てて帰り支度を始めた黒服達を後ろにアーチャーは、キャスターと同じく霊体化して向かうのであった。

 

 ソレを見送り、美由希は目の前のアーチャーのマスターと思われる少女のお会計をしながら思う。

 

「あれ?課題が終わっても外で遊んでたことに変わりないから・・・結局、特別コースは用意されるんじゃ・・・?」

「・・・もうだめやぁ・・・おしまいやぁ・・・」

「あ、主!?気を確かに!」

「そ、そうですよ!ケイ・・・んん!先生もキチンと話せば分かって・・・」

「いや、無理じゃねーか?」

「・・・だろうな・・・」

「・・・イヤやぁ・・・英雄育成コースはイヤやぁ・・・」

「主いいいいい!」

 

 

 目の前で車椅子の少女が真っ白になった。

 


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