P3 in IS   作:ティターニア

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ブフをフブと勘違いしてたのは俺だけじゃないはず。
だってフブーラとかフブダインのほうが言いやすいんだもん。


どうでもいいなんて言いつつも、アフターケアを欠かさない神名君。



8:試合終了!そして疑心の目

観客席からの歓声が止まらない。

まさかIS初心者の男が代表候補生に勝つとは誰も思っていなかったのだろう。

僕は地面へと降り立ち、オルフェウスを解除する。

このままピットへ戻ってもいいのだが、まだやる事が残ってる。

僕は数m先でへたり込んで悔し涙を流しているオルコットの方へと向かう。

彼女は俯きながら、肩を震わせている。

僕が目の前まで来たのに気付くと、僕を見上げてキッと睨んできたが、その目には怯えの色が見てとれた。

僕はしばらく彼女を見下ろしていたが、優しく微笑みかけて右手を差し出した。

オルコットは僕の差し出した手を少し躊躇した後に、掴んで立ち上がった。

 

「どうしてあそこまで避けることが出来たのですか?」

 

オルコットがそう尋ねてきた。

その表情はまだブスッとしている。

 

「えっとね、オルコットさんの射撃はすごく精確なんだよね。」

 

僕は試合中に観察してて気づいた事を言う。

 

「ビット攻撃に関しても確実に死角に入ってきてるから、普通の人達ならかなり苦しむんだろうけど、僕の場合はここにくるなって予想した所に撃ってくるから避けやすかったんだ。」

「…型にはまりすぎ、ということでしょうか?」

「まあ、そういう事だね。

それに、時間が経つにつれて慣れてきちゃうんだよね。

あえてずらして撃つとかして、もう少し撹乱する感じにしてみるといいと思うよ。」

 

僕の解説にオルコットは納得したような顔をする。

 

「さて試合の反省はこれくらいにして、ちゃんと僕が勝ったから、皆に謝ろうね?」

 

僕がそう促すと、オルコットは再び俯いてしまった。

 

「約束だからね、ちゃんと守ってよ?」

「………。」

「ほんとはもう反省してるんでしょ?」

 

オルコットは俯いたままだ。

 

「気を張りすぎてついついあんな態度とっちゃっただけでしょ?

母国から遠く離れての生活ってすごく心細いもんね。

それに代表候補生っていうプレッシャーもあるから、凄く辛かったと思う。」

 

この一週間彼女は孤立していたが、それが辛くもなんともないという顔ではなかった。

むしろ、時々寂しそうな顔をしていた。

 

「…ですが、今更謝って許していただけるでしょうか…。」

「その時は、僕からも許してあげてってお願いするから。」

「…どうして貴方はそこまでしてくださるのですか?

わたくしはあなた方を侮辱したのに…。」

 

オルコットは再び涙を流している。

 

「…1年ってさ、結構あっという間に訪れるよね。

でさ、同じクラスのメンバーとはその1年しか一緒にいれないわけでしょ?

だから僕はその短い期間を皆で、1年1組のメンバーと楽しく過ごしたいんだ。」

「………。」

「君だって1組のメンバーだ。」

 

オルコットはハッと顔を上げる。

 

「そりゃ、何人かは次の年も同じクラスになるかもしれないけど、君も含めたあの1年1組のメンバーはこの1年間しか一緒に居られないんだ。

代表候補生とか色々背負わなきゃいけないものもあるけど、皆と一緒に学生らしく青春を謳歌するのも大事だと思うよ?」

 

1年は短いからね、と付け足しておいた。

オルコットはしばらく涙を流し続けていたが、やがて涙を拭き頭を下げた。

 

「今までの非礼の数々、本当に申し訳ありませんでした。」

「うん、許す。」

 

顔を上げた彼女の顔は胸につかえてたものが取れたかのように和らいでいた。

 

「ちゃんと皆に謝れる?」

「はい、必ず皆さんに謝罪します。」

「じゃあこれから1年間よろしくね、オルコットさん。」

「わたくしの事はセシリアとお呼び下さい。

此方こそよろしくお願いします、理さん。」

 

そう言って再び握手を交わす。

会場の歓声は鳴り止まなかった…。

 

………

……

 

「すげぇな理!オルコットに勝つなんて!」

 

ピットに戻ると、一夏は自分の事のように喜んでいた。

横で箒も笑っている。

 

「お見事でしたよ神名君!

オルコットさん相手にとても良い立ち回りでした!」

 

と、山田先生も嬉しそうにしている。

織斑先生だけが何やら難しい顔で僕を見ている。

おそらく僕のこれ(ペルソナ)がISじゃない事に感づいているのだろう。

 

「じゃあ次は俺の番だな!

俺も理に負けてられないな!」

「そうだ一夏。負けたら私が許さないぞ!」

 

一夏が意気込んでおり、箒も発破をかける。

 

「えっと、オルコットさんの補給が終わった後に織斑君対オルコットさん、その後に神名君対織斑君の試合を___

「いや、神名と織斑の試合は中止だ。」

 

織斑先生の発言に3人が驚く。

 

「神名、お前のそれ(・・)を調べさせてもらってもいいか?」

 

織斑先生が僕に尋ねる。

織斑先生の目は僕の出方を窺っているようだった。

 

「あ、はい。いいですよ。」

 

と、僕は躊躇いなく召喚器を差し出す。

先生は素直に渡してきたことに少し驚きの表情を浮かべていたが、すぐにそれを隠した。

 

「済まないな、別に取り上げる訳では無い。

ただ、個人的に調べさせてもらうだけだ。

明日には返そう。」

 

そう言って、召喚器を受け取った。

 

「そういう訳だから、一夏とは戦えないね。」

「まじか〜。でもまあ、また今度戦えばいいだけか。」

 

と、一夏は残念そうにしている。

 

「おい、一夏。今はオルコットと戦うことを考えろ。」

「ん、ああそうだな。」

 

箒にたしなめられ、一夏は顔を引き締める。

 

「織斑、神名とオルコットの試合中に説明したように、その白式の武器は雪平弐型だけだ。

近接武器のみでいかに立ち回れるかが勝敗の鍵だ。」

 

織斑先生が一夏にアドバイスしている。

やはり弟の事が気になるのだろう。

と、急に織斑先生が睨んできたので考えるのをやめた。

 

「よっしゃあ、やってやるぜ!!」

 

一夏が気合を入れてるのを僕も笑って見ていたが、ここである事を思い出し、あ、と声を漏らす。

 

「ゴメン、一夏。」

「?。何が?」

「セシリアにどうすればもっと良くなるかアドバイスしちゃった。」

「………えっ?」

 

………

……

 

その後、一夏とセシリアの試合が行われた。

試合開始の前に、セシリアと一夏は何かを話していた。

セシリアが頭を下げているのが見えたのでおそらく謝罪していたのだろう。

一夏は戸惑っているようだったが、その後の2人の表情が明るかったから、許したのだろう。

しかし、ほんわかとした空気はそこまでだった。

試合が始まると、セシリアは全力で一夏を文字通り迎え撃った。

彼女は僕のアドバイスを早速実行しており、一夏の方にも助言はしていたが完全に翻弄されてた。

しかし、既に一夏のIS、白式は一次移行(ファースト・シフト)が完了しており、そのスピードでじきに避けれるようになっていた。

かなり善戦を繰り広げていたが、最終的に一夏が剣を振りかぶりながら迫り、斬りかかろうとした直前で一夏のシールドエネルギーが切れてしまい、試合はセシリアの勝利で終わった。

最後一夏の剣が光っていたので尋ねてみると、あれは『零落白夜』という白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)らしく、シールドバリアー等を無効化して相手に大ダメージを与えるらしい。

しかし、その分シールドエネルギーを大幅に消費するらしく、一夏の敗因はそれが原因らしい。

ピットに戻って来た一夏も首を傾げていた。

その後、織斑先生と箒に厳しいお言葉を頂き凹んでいる一夏を慰めながら、食堂へと向かうことにした。

 

こうして、クラス代表決定戦は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりな……。」

 

モニターに映るエラーの文字を見ながら、私は呟く。

神名の渡してきた銃はISではなかった。

そもそもこれにはISを動かすのに必要なコアが無かった。

しかし神名は確かにこれを使って、あのISのような何か(・・)を纏っていた。

あれは一体なんなのか?そして何より…。

 

「本当にお前は何者なんだ…?」

 

あいつなら…、私の友人であるあの“天災”ならこれが何なのか分かるのだろうか…。

しかしこれをあいつに渡してしまうと、何か恐ろしい事になりかねない気がしてならなかった。

 

「…一体どうすればいいんだ?」

 

私の心はどうすべきか決めかねていた…。




こんなん惚れてまうやろ…。

だが、ここは尊敬する人物止まりです。

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