P3 in IS   作:ティターニア

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大変長らくお待たせしました。

久しぶりの投稿となります。
ちょっとだけ短めです。


28:シャルル・デュノア

「織斑、それに神名、デュノアの面倒を見てやれ。

特に神名、デュノアはお前と同じ部屋になる。

色々と教えてやるように。」

 

HRが終わり、アリーナの更衣室へ向かう準備を急いでしていると、織斑先生がそう声をかけてきた。

やはりデュノアが僕と同じ部屋になるらしい。

同性のルームメイトの方が気を使うことも無いだろうから少しホッとする。

…まぁ、本音の時もそんな気を使うことは無かったかな。

 

「あ、えっと織斑君に神名君だよね?

僕は______」

「あー、自己紹介は後回しだ。

とりあえず急ぐぞ。」

「え? ど、何処に行くの?」

「織斑先生も言ってたでしょ?

今日は実習だから、更衣室へ着替えに行くんだ。」

 

説明しながら、デュノアを外へと促し更衣室へと走って向かう。

 

「教室では女子が着替えるから俺たち男子は空いてるアリーナの更衣室で着替えるんだ。」

「そ、そうなんだ。 でもなんで走るの?」

「織斑先生は時間には厳しいからね。

それにこの学園の情報網は___」

 

と、階段を下りて一階に着いたとき、僕達の前に立ち塞がる者が現れた。

 

「ああっ!転校生発見!!」

「しかも織斑君達も一緒よ!」

 

それはHRが終わり、転校生の情報を聞きつけた他学年他クラスの女子達だった。

…というより、幾ら何でも情報早すぎるだろう。

これだと、僕達のプライバシーも筒抜けになってそうで心配だ。

何はともあれ、彼女らに捕まってしまえば遅刻は確実だ。

一夏と目配せをし、デュノアの手を引いて逃げる。

 

「あっ!逃げた!」

「見た?見た?

神名君が転校生君の手を引いてあげてたわよ! きゃ〜〜〜!!」

「逃がしちゃダメよ!

者共、出会え出会え!」

 

法螺貝の音が聞こえてきそうな雰囲気だった。

デュノアは後ろから追いかけてくる女子達に少しビビっている。

 

「ね、ねぇ!なんでみんな騒いでいるの!?」

「そりゃあ、男子が俺たちだけだからだろ?」

「? ……あっ、ああ! うん、そうだね!」

 

と、デュノアは一瞬意味がわからないという顔をしたが、

すぐに慌てて頷いた。

 

「まぁ、兎に角この包囲網を抜けなければ……っ!!」

「一夏どうし……しまった!」

 

思わず立ち止まった廊下の先には先回りしていたのであろう、別の女子の集団がいた。

さらに後ろからも女子がどんどん近づいてくる。

完全に囲まれてしまった。

 

「さあ!もう逃げ場は無いわよ!」

「転校生君のあんなことやこんなことを聞いちゃうんだから!」

 

一体何を聞くつもりなのだろう。

僕は自分たちのすぐ横にある窓をちらりと確認して、一夏と目で会話する。

 

『理! どうする、この状況!』

『…最悪、僕達は遅れてもいい。

そして罰を甘んじて受けてもいい。』

『確かにそうだ。

…だが! 転校初日のシャルルが千冬姉の出席簿の餌食になるのだけは!!』

『ああ、それだけは避けなければならない。

そのためにも! …一夏解るよね?』

『おう!もちろんだ!!

……それで俺は何をすればいいんだ?』

「ありがとう一夏!! 君の犠牲を無駄にはしない!!」

 

言うが早いか、ぼけっとしている一夏を前方の女子の群れに押しだし、

 

「みんな!! 一夏がハグしてくれるらしいよ!!」

 

と高らかに叫んだ。

 

「「「「「きゃああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」

 

前方の女子達が一斉に群がる。

僕がデュノアの手を引き窓際に寄ると、後ろから追いかけて来ていた女子達も一夏の方へと向かっていった。

 

「___ちょ______まこt____」

「一夏、あとは任せた。」

 

そう言って、僕はデュノアを連れて窓から外へと脱出をはかる。

窓から外へと出て、更衣室へ向かう前に一応一夏を確認する。

女子の群れは綺麗な円状になっており、その中心におそらく一夏のであろう右手が沈んでいくのが見える。

その右手も完全に飲み込まれてしまう直前、最期に見せた僕達へのメッセージはサムズアップであった。

 

『I'll be back.』

 

なんだ、意外と余裕そうじゃないか。

 

………

……

 

一夏の尊い犠牲もあり、僕達は何とか更衣室に辿り着いた。

 

「ふぅ、無事に到着っと。

えっと、引っ張ってきちゃったけど大丈夫?」

「ふぇっ!? う、うん、大丈夫だよ…。」

 

ずっと手を引いて来たデュノアの顔は何やら赤くなっていた。

 

「? …少し時間にも余裕があるね。

改めて、僕は神名理。 今後ともヨロシク。」

「あっ、うん、よろしく。僕のことはシャルルって呼んでね。」

「ああ、よろしく、シャルル。

これから同じ部屋になるし、わからない事とかあったら色々聞いてね。」

「うん、ありがとう。」

 

そう言ってシャルルはニッコリと微笑んだ。

その笑顔に何故だか違和感を感じた。

 

「…さてと、そろそろ着替え始めるか。」

 

そう言いながら、上の制服を脱ぎ、上半身裸になる。

 

「わひぁあ!!?」

 

?。 何やらシャルルが声をあげた。

そちらを向くと、何故かシャルルは目を手で覆っている。

…が、手の隙間からチラチラとこっちを見ているのは気にしない事にする。

 

「どうしたの? 着替えないの?」

「も、もちろん着替えるよ!?

で、でもこっち見ないでね?」

「そりゃあ見ないけど…。」

 

と言って、改めて着替えにとりかかる。

……時々、シャルルの方から『ひぅっ!?』とか『うわぁ…』とか聞こえてくるのだが、気にしない事にする。

 

「そ、そういえば織斑君は大丈夫なのかな?」

「一夏…? そんな奴いたっけ?」

「いたよ!? ってゆうか一夏ってちゃんと名前で呼んでるよ!?」

「ああ、あいつが自分の身を削ってくれたおかげでたどり着く事が出来たんだ…。」

「身を削ったって言うより、理が生贄に捧げてたよね。」

「大きな勝利を得るためには小さな犠牲もつきものさ。」

「それ、生贄を差し出した側が言っていいセリフじゃないよね…。」

 

と、その時更衣室のドアが開き、ボロボロの一夏がやって来た。

何やら服も脱がされかけていた。

 

「ま、理…! よくも俺を生贄に……。」

「一夏! 君のおかげで僕もシャルルも助かったよ。

君の命がけの行動っ! 僕は敬意を表する!」

「お前が差し出したんだろう!!」

 

そう言いながら、一夏も急いで着替え始める。

…またシャルルは一夏の着替えをチラチラ見ていたが、気にしない事にする。

 

「シャルルのそのスーツ着やすそうだな。

俺の着るときに引っかかるんだよなぁ。」

「ひ、引っかかる!!?」

 

再びシャルルの顔がカーッと赤くなる。

…気にしない事にしよう!

 

「えっ、えっと、僕のはデュノア社製のオリジナルだよ。

ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品。」

「デュノア社? って事は…。」

「うん、僕の家。

父がね、社長をしているんだ。

一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う。」

「へぇ、じゃあシャルルって社長の息子か!

道理でなぁ。」

「道理でって?」

「こう、気品っていうか、いいとこ育ちって感じがするんだよな!」

「…いいとこ……か…。」

 

と、シャルルの顔が暗くなる。

何やら複雑な事情があるのだろうか?

 

「…と、そろそろ時間だし行こうか、シャルル。」

「えっ、う、うん。」

「ちょ、おい理! 俺を置いていくのか!?」

「喋りながらでも着替えられただろうに。

手を止めていたのが悪いよ。」

「えっと、じゃあまた後で。」

「シャルルも置いていくのか!?

シャルルは兎も角、理は置いていくなよ!」

「神名理はクールに去るよ。」

「去るんじゃねぇ!!」

 

『裏切り者ぉ〜〜〜!』という、結構前に聞いたようなセリフを背に受けながら、シャルルを連れ立って第二アリーナへと向かう事にした。




お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
大学生活が始まり、かなり慌ただしい時間を過ごしておりなかなか執筆が出来ませんでしたが、ここ最近再開を待つコメントを頂き、こんな拙い作品でも読んでくださる方がいるんだと思い、書かねばという使命感が生まれました。
この先もどのようなペースになるかは分かりませんが、続けさせてもらいたいと思います。

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