そして、絆の力を発動します!
「くっ、また躱されたか!」
一夏の斬撃が宙を切るのを見ながら、僕は悪態をつく。
これで4度目。
僕と鈴が囮となり相手の注意を引き、死角から一夏がシールド無効化攻撃で攻める。
今できる中で1番の策だが、未だにダメージを与えられていない。
「理!もうシールドエネルギーがない!
あと1回ぐらいしか使えない!」
「っ!一夏、一旦下がるんだ!」
「ああ、わかっ__!?」
距離をとろうとする一夏に、敵が腕を伸ばす。
「させないっての!」
「“アギ”!」
一夏を守るため鈴が衝撃砲を、僕はアギを放つ。
敵は腕を振ってそれらを叩き落とす。
そして、砲身を僕の方へ向ける。
「っ!」
飛んでくるレーザーを慌てて躱していく。
「ああもう!なんで理の方ばかり狙うのよ!」
そう言って鈴が再び衝撃砲を放つ。
敵はレーザーを撃つ手を止め、また衝撃砲を叩き落とす。
「なんなんだこいつ?
どうして僕ばかり…。」
相手の攻撃の手が止まったので、僕達は一旦集まる。
「かなり厳しいわね…。
一夏のエネルギーももう無いし、次で確実に決めないと。」
「ごめんね一夏。もともとダメージを受けてるのに前線に立たせて。」
「大丈夫だ。それに俺には
現在の状況では、一夏のシールド無効化攻撃が鍵を握っている。
鈴の衝撃砲は叩き落とされるし、僕には相手に決定打を与える武器がない。
「それにしても、なんなのかしらアイツ。
さっきから理ばかり狙って。」
そう、敵はレーザーを撃つ時、必ず僕の方を狙ってくる。
鈴がどんなに攻撃しても、防ぐだけで鈴には見向きもしない。
「…で、どうすんのよ?」
鈴が敵を睨みながら言う。
「…ここからは僕が前に立とう。
一夏、僕が何とかしてチャンスを作るから必ず決めてくれ。」
「大丈夫なの?あたしが前の方がいいんじゃない?」
「あいつは僕を狙ってきてるんだ。
だったら、僕の方がいい。
それに、鈴のエネルギーもそこまで残ってないでしょう?」
鈴は先程から僕達を逃すためにずっと衝撃砲を撃っていて、その分エネルギーをかなり消費しているだろう。
「はぁ、わかったわ。いい、一夏?
理が体張ってチャンスを作るって言ってるんだから、絶対決めなさいよ。」
鈴が一夏にそう声をかけるが、一夏は敵を見ながら何かを考えているようだった。
「一夏?」
「…あいつさ、何かおかしくないか?」
「おかしいって、何がよ?」
「なんていうかな、機械じみたっていうか…。」
「そりゃあ、ISは機械よ。」
鈴は何を当然の事をという顔をしている。
「そういうんじゃなくてさ。
えーと、…あれって本当に人が乗ってるのか?」
「は?人が乗らなきゃISは動か
「ああ、なるほど。違和感の原因はそれか。」
一夏の言葉に僕は感じていた違和感が晴れた。
「どういうことよ?」
「あいつの動きだよ。
あいつの行動には人間らしさみたいなのがないんだよ。
まさにロボットのような動きというか、基本受け身の行動しかとってないんだよね。」
「…確かに、さっきからあたし達が会話してる時って、攻撃してこないわね。
まるで興味があるように聞いているような…。
…でも、無人機なんて有り得ない。
ISは人が乗らないと動かない、そういうものよ。」
それが事実。教科書にも書かれている。
が、それが本当に真実なのだろうか?
「仮に、無人機だとしたら。」
と、一夏が口を開く。
「全力で攻撃しても大丈夫だってことだね。」
僕が一夏の言葉に続く。
「全力も何もその攻撃自体が当たらないじゃない。」
「次は絶対決める。それに考えがある。」
「「考え?」」
一夏は僕達にその考えを話す。
「どうだ?」
「うーん、もう連絡は取ってるのかい?」
「ああ、すでにしてる。」
「アンタ正気?どうなるか分からないわよ。」
「構わない。絶対に成功させてやる。」
「…そっか。じゃあ一夏の作戦に乗ることにしよう。」
僕の言葉に2人も頷き、敵に向き直る。
「じゃあ僕があいつの相手をするから、2人は作戦の準備を___
『一夏ぁっ!』
っ!?」
突然アリーナのスピーカーから大声が響く。
何事かと中継室の方を見ると___。
「箒っ!?」
そこにはマイクを掴みながら、こちらを見ている箒の姿があった。
その後ろでは、審判とナレーターがのびていた。
どういうことだ?
箒は管制室にいたんじゃなかったのか!?
『男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!』
箒が声をあげる。
一夏の叱咤激励にきたのか、だがそんな所にいたら__。
「___っ!!」
敵が箒の姿を捉えている。
そして、その腕を中継室へと向ける。
「まずいっ!」
すぐさま敵の元へと向かい阻止しようとするが、すでに砲口に光が溜まり始めている。
アギを…いや、それでも間に合わない!
だけど、このままでは!
全てがスローモーションになったかのような感覚がする。
敵の元へと向かう僕の頭の中にある光景が浮かび上がる。
レーザーが放たれ、中継室へと突き刺さる。
煙が晴れた先で待っていたのは、熱でドロドロに溶けた壁。
そして、赤く染まった
“死”
「___っ?!」
頭の中に声が響く。
『今こそ力を使う時がやって参りました。
あなたが築いた___絆の力を。』
イデアの声に、僕は右手に召喚器を出現させ、こめかみに当てる。
僕の中で“力”が胎動する。
僕はその引き金をひいた___。
………
……
…
「箒ぃっ!!」
俺は無我夢中で箒の方へ向かう。
敵は完全に箒の方を狙っている。
「うおおおおおおっ!!」
間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合_____
ビーーーッ
「っ!」
が、センサーに警告の文字が表示され、そちらを見る。
そこにはレーザーのチャージが完了した敵が。
箒との距離はまだ空いている。
………このままじゃ、
「___死ぬ?」
箒が?死ぬ?死んでしまう?
「__やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!」
俺の叫びも虚しく、砲口に溜まったレーザーが膨らむ。
そして、箒へと、レーザーが放たれ
ドゴォッ!!
突如敵の腕にきた衝撃に軌道をずらされたレーザーは、中継室の右側を飛んでいった。
「………は?」
何が起きたんだ?
箒が助かった?でも何で?
その時、敵の懐から何かが飛び出してきたのが見えた。
「……理?」
それは先程と少し姿がかわった理だった。
………
……
…
懐に入り相手の右腕を
敵は僕の姿を見て、殴られた右腕を僕に向けるが、違和感に気づく。
その右腕は
「…“ソニックパンチ”からの“ブフ”…。
いきなりだったけど、上手くいったみたいだね。」
「ちょっと理!なんなのよ今の!
それにその姿…!」
鈴の声が聞こえてくる。
驚きを隠せないでいるようだ。
彼女が驚く理由、それはオルフェウスの変化にある。
頭には二本角のようになっている青い帽子。
首元はスカーフから周りがトゲのようになっているこれまた青い襟に変わり、手は頭に被った帽子と同じのをつけた、変な顔をしたグローブになっている。
「__“ジャックフロスト”」
僕はその名を口にした。
「ジャック…?」
「僕の武器みたいな感じかな?」
そう言うが、鈴はまだ首を傾げている。
「理!」
一夏が後ろから僕を呼ぶ。
「一夏!まずは箒達の安全を確保して!
それが出来次第、鈴と作戦の準備を!」
「わ、わかった!」
そう言って、一夏は再び箒の方へ向かった。
「鈴も一夏の方に行って!」
「分かったけど、アンタは大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ。さあ、早く!」
僕がそう言うと、鈴は一夏の方へ向かった。
「…さて。」
敵に向き直る。
「君の相手は僕だよ。」
そう言って一気に接近する。
敵は凍らされた自分の右腕を興味深そうに見ていたが、僕が近づくと凍らされてない左腕を振り下ろす。
「ふっ!」
僕はそれを躱して、ボクシングの要領で殴りにかかる。
敵はまた凍らされるのを危惧してか、回避に専念する。
「だったら、…“ソニックパンチ”!」
そう言って、高速の拳を相手に放つ。
敵はそれに反応できず、拳がボディに入り吹き飛ぶ。
敵が壁に激突するのを見ていると、再びイデアの声が聞こえてきた。
『上手く使いこなせているようですね。
そのように絆の力は、
イデアの言葉に僕は自分の手を見下ろす。
絆の力がオルフェウスをサポートする力になる。
言うなればそれは___。
「……
口にすることで改めてその力を実感する。
と、敵がこちらに向かってくる。
と同時に、一夏の声が飛ぶ。
「理!準備出来たぞ!」
「! よし、わかった!」
そう言って、距離を取りながら召喚器を構える。
「“ジャックランタン”!」
再び姿が変わる。
魔法使いのような黒い三角帽子にマント、手のグローブから左手はランタン型のキャノンに変わる。
敵が左腕を上げて僕を狙う。
「“アギラオ”!」
が、敵が撃つよりも早く僕がアギラオを放つ。
アギよりも速くて威力の高い炎の玉は、腕のの砲身に当たり、攻撃を阻止する。
敵は一瞬動きを止めたが、僕がまた火の玉を撃ってきたのをみて叩き落とそうとする。
しかし、火の玉は敵の手前で速度を緩め、一際膨らむ。
「それはさっきまでのとは違うんだよ。
…“マハラギ”!」
そして火の玉は爆発し、敵の周辺に拡散した。
敵はもろにマハラギを喰らい、膝をつく。
隙が出来た!
「一夏!鈴!今だ!」
「「分かった!」」
地上の方で準備していた一夏達に指示を送る。
「行くわよ、一夏!」
「おう、どんとこい!」
そう言って、鈴は衝撃砲を
衝撃砲を背中に受けると同時に一夏は“瞬時加速”を作動する。
瞬時加速の原理を用いて、外部からのエネルギーを取り込む。
それが一夏の考えた作戦だった。
「___おおおおおっ!」
一夏の雪片弐型がより一層光を放ち、いつもより一回り大きいエネルギー状の刃を形成する。
そして、敵に向かって一気に加速する。
敵はそれを確認すると、薄い光を帯び始める。
残ったエネルギーをシールドに回そうとしているらしい。
「させないっ!
“ピクシー”!“ラクンダ”!」
再び引き金を引くとジャックランタンの装備が消え、髪が赤くなり背中に妖精の羽のようなものが表れた。
右手に力を集中させると、エネルギーの玉が生みだされそれを敵に向けて放つ。
敵はそれを防ごうと腕を振るうが、エネルギーの玉に触れた瞬間、玉は敵の内部に入っていき敵を包んでいた光が雲散する。
これで敵の防御力が元に戻った。
「うおおおおおおおっ!!」
一気に間合いへと入った一夏が後ろの遮断シールドごと、敵の左腕を切り落とした。
敵は他にダメージがないのを確認して、一夏に凍った右腕を振り下ろす。
「__狙いは?」
一夏がそう言った瞬間、敵の背中に無数のレーザーが浴びせられる。
「完璧ですわっ!」
敵の背後の壊れた遮断シールドの先にはブルー・ティアーズを装着したセシリアがいた。
敵はスラスターを破壊されたのか、上手くバランスが取れないでいる。
「一夏、下がれ!
鈴!セシリア!総攻撃だ!」
「いくわよっ!!」
「覚悟さないっ!」
「“マハラギ”!」
僕の掛け声に鈴が一際大きな衝撃砲を、セシリアは四基のビットから同時狙撃を、僕はジャックランタンにチェンジし、マハラギを放つ。
「_____!!」
総攻撃を受けた敵はボンッ!と爆発を起こしながら、地上へと落下していった。
動かないのを確認し、胸をなで下ろす。
「…なんとか勝てたね。」
「急に連絡してくるので何かと思いましたが…、ギリギリのタイミングでしたわね。」
「セシリアならやれると思っていたさ。」
「とっ、当然ですわ!
何せわたくしはセシリア・オルコット。
イギリス代表候補生なのですから!」
一夏に褒められ、セシリアは顔を赤くする。
「それより理!
なんなのよそれ!」
「あっ、そうだぞ。
理今までそんなの使ってなかったじゃないか!」
「そうですわ!
もしかして隠してたのですか!?」
僕の姿を見ながら皆が詰め寄る。
「…いや、さっきの戦闘で使えるようになったんだよ。」
「何か都合がいいわね…。
武器も姿もコロコロ変わってたけど、どんな仕組みなのよ?」
まだ納得のいってない鈴が尋ねてくる。
「…そうだね、言うなれば___」
僕は召喚器を見つめながら呟く。
「___絆の力かな?」
「…はぁ?」
意味のわからない鈴は首を傾げる。
「まぁ、いいじゃないか。
何にしてもこれで終わり___」
と一夏が締めようとした時、動かなくなったはずの敵が動いた。
「「「「っ!!?」」」」
敵は右腕を僕達の方に向け、ビームを貯めていた。
何故だ!?右腕は凍らせて使えないようにしたはずじゃ…、そうか、セシリアのレーザーや僕の呪文の熱で溶けてしまったのか!
「っ!まずい!離れ___」
指示を送ろうとしたが、遅かった。
レーザーが放たれる。
次の瞬間、視界に捉えたのは敵の方へ飛び込んでいく白い機体の姿だった。
次回でゴーレム編は終了予定です。
というわけで、新たな力、“サブペルソナ”でした!
このシステムはペルソナQから用いました。
元々はペルソナチェンジするごとに全身姿が変わるように考えてたのですが、それだと人型のペルソナしか使うことが出来ず、ほとんどのペルソナが出せないなぁと悩んでました。
そんな時思い出したのが、ペルソナQで使われていたサブペルソナというシステムでした。
これでほとんどのペルソナが出せるようになりました。
想像としては、オルフェウスの姿にそれぞれのペルソナの特徴が追加されるという感じです。
オルフェウスがコスプレをする感じで考えてもらうとよいです。
これで今後も他のペルソナも出して行こうと思っています!